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6章 入学試験 2次試験編
50話 空気
しおりを挟むようやく審判は時間が止まった空間から動き出すように口を開ける。
「ビーン・ガベル!フライングだ一度仕切り直す。次やったら即反則負けとする!」
試験官がビーン・ガベルに実質のイエローカードを出す。
「いや、俺の負けでいい……」
ビーン・ガベルがそう言ったので俺は手を離す。
「お前もハヤトと同じ側か……」
そう言い残し、控え室に帰って行った。審判の試験官はまた突然の出来事に驚いたが、今さっきも起きたことなので今回はすぐ立て直す。
「勝者アキト!!」
そして、審判は躊躇なく即告げる。
「何と!!1回戦の最初と最後のみ試合が1分以内での決着だぁあああああ!!!」
興奮冷めやらぬ実況がまたさらにヒートアップする。
「「「うぉおおおおおおお!!!」」」
観客が、騒めき興奮の渦に包まれる。
俺もそのまま控え室に戻る。ぶっちゃけビーン・ガベルはもっと理性なく突っ込んで来るかと思っていたが意外と考えているらしい。あのままやっても無意味だったのは確かだしな。そこを気づけるからこそこの2次試験まで残っていたのだろう。
1回戦が終わると一旦昼休憩なので何かお昼ごはんをたまには買って食べようかと外に出て見るとそこには夏祭りを彷彿とさせるような人混みと屋台が学園を彩っていた。
俺が朝来た時には全くそんなそぶりを見せてはいなかったのにこの短時間で屋台を組み上げ物資を運び込んでここまでの準備をするとは、商売人はとんでもないやつらだ。
まぁこの時間帯に売れることは間違いなしだからな……店の方も在庫が切れたのかもう閉め出すところがちらほらある。どんだけの売れ行きなんだか。
人混みはごめんなので再び控え室に戻るとみんなが戻って来ていた。
「あーアキトいるじゃねぇかよ!!」
「これで私の勝ち、バルト夜ごはん奢ってね」
ちくしょう!とバルトが地面を転げ回る。どうやら俺が帰って来るか賭けをしていたらしい。
「どこに行ってたのじゃ?」
「ああ、昼ごはんでも買いに行こうかと思ってな」
「あら、昼ごはんなら作ってきてあるわよん♪」
ホルドさんが気を利かせて作って来てくれていた。控え室にあるテーブルには様々な料理が並べられ屋台で並ぶより断然こっちの方がいい。めちゃくちゃ美味しそうだ。
「バルトいつまでやっている食べるぞ」
トルスが言うと項垂れつつも起き上がり席に着く。
「いつもありがとうございますホルドさん」
「いいのよ~私こういうの好きだから」
全員が席に着くとみんな食べ始める。バルトもさっきまでのテンションと思えないほどがっつきながら食べている。
「みんな1回戦どうだった?」
俺がそれを聞くとみんな一斉に食べるのをピタリと止める。確か1回戦身内どうしはバルトとシロネだけであとはみんなバラバラだったはずだ。
「私負けちゃいました」
エーフが悲しそうに言うと、俺は聞いてはいけないことを聞いてしまったと理解する。やってしまった、みんな励まそうとしてたのか……空気を読み違えてしまった。日本人の専売特許なのに気づけないとは不覚。
「すまん、軽率だった」
これしか言えない、どんな励ましの言葉もこう言う時には帰って逆効果、今はただ謝ることしか出来ない。
やっちまったなぁ~試験終わったらちゃんと謝罪しとこう……
「アキトは悪くない。私がちょっとドジちゃって」
そのまま、エーフは俯いてしまった。それほどショックだったのだろう。やばい、俺の罪がどんどん重くなっていく……うぐぅ
「僕らは特訓で足腰を鍛えて1週間前とは比べ物にならないほど軽快に動けるようになり体力も増えた。だけどそれに慢心しちゃったんだ」
一番理解できるであろうエルが説明してくれる。まぁ、そりゃ強くなったらはしゃぎたくなるというか自分が今一番強いってくらい気が大きくなるのも分からなくもない。俺もOOPARTSオンラインで初めて課金した時はこんな感じだった。
すぐにけんや周りの課金者にボコされてすぐに気づけたけど……それからは自分に奢ることはなくなったな。
ま、俺が言うのもなんだが経験は必要だ。まだ、なんとかなる試験で良かったと思うしかない。本当に失敗出来ない時にこういった経験が役に立つ。
「……それだけ」
「ごめんねみんな空気悪くしちゃって」
泣きそうな顔して言われると余計心臓を鷲掴みされてるような罪悪感がやってくる。
「いやいや聞いちゃった俺も悪い」
そんな重い空気が流れる中ホルドさんが手を叩き一喝する。
「はいはい、反省は後、まだ1回戦終わったばっかりだし負けちゃった人も勝った人も精一杯やったならそれで良いのよ。この経験は次までに取っておくのよん♪」
「はい!」
エーフはシロネを抱きかかえ元気を出す。ホルドさんナイスフォローありがとうと俺は目配せすると、ホルドさんは頬を赤くする。
この人は本当に人をおちょくることが好きらしい……頬赤くすな。
「さ!食べるのじゃ!」
バルト以外全員また食べ始める。バルトは終始食べて続けていたのでユイに頭を殴られていた。
**
昼食を食べ終わった後はみんな控え室に戻って行った。エーフはホルドさんとシロネ、ナナミと一緒に観戦席にいくらしいBブロックの。
また1人になった俺は今度は寝坊しないよう座りながらステータスや魔法スキルの確認、アイテムボックスを整理して時間を潰していた。
*
それからは、低位武器、魔法、スキル無効化の3つのパッシブスキルを発動し圧勝し、勝ち進む。ハヤトもそれは同様で特に問題なく勝ち進みついにAブロック決勝まで来た。
これなら最初の1回戦も低位無効を使っておけば良かったと今更ながらに後悔する。
ついに決勝かぁ~
俺は重い腰を上げ会場へ向かう。因みにBブロック決勝はバルトと知らない貴族らしい。他のみんなは身内で当たってしまいせっかくだからと全力で戦い、そのせいで勝ったとしても疲弊しすぎて次の試合負けてしまったらしい……何をやってんだか。
バルトだけは運がよく誰とも当たらずなおかつそこまで大した相手ではなかったらしく決勝に進んだらしい。運の良いヤツめ。
闘技場の中央に行くとすでにハヤトはいた。決勝ってだけあって人が増えている。次のAの優勝者対Bブロック優勝者の決勝はこっちの会場でやるらしいから今の内に来てる人もいるのだろう。
「さぁああ!!やってまいりましたあああ!!ついにAブロック決勝戦です!!」
「今回はどんな戦いを見せてくれるのか!!超絶楽しみですぅうううう!!」
もはや実況が楽しんでいる、それにここまで1人で全力で実況していたせいか声が若干掠れいている。
「やあ、やっぱり来ると思ってたよアキトくん」
「くん付けはやめてくれむず痒いから」
「じゃあ、アキトだね。よろしく」
「ああ、よろしく」
そう言うと、白線のところまで俺達は下がる。審判が両者を見交わし、準備完了の意を確認すると中央に立つ。
「さぁ、もうすぐ開始だぁああ!!」
会場のボルテージも徐々に上がっていき熱気と歓声があたりを支配するが、俺は相手をじっくり観察していた。決勝までに色々攻撃パターンなどを練ってはいたが果たしてこれが通じるかどうか……
審判が手を振り上げる。
両者唾をのみ一拍、
「始め!!」
審判が手を振り下ろし試合の火蓋が切られる。
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