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7章 魔導学園 1年生編
69話 口内
しおりを挟むお互い利き手の拳からぽたぽたと蛇口から滴る水泡のようにたれている。
痛みが酷いがアイテムは使えないし、俺は回復系スキルや魔法は持っていない、相手トレインは俺よりかはダメージが少なく見える、力の差はやっぱり奴の方が上か……
力負けしたことに若干の劣等感と強者への愉悦が入り混じりさっきまでの痛みが引いていく。興奮で傷の痛みが脳に伝わる前に切り落とされている。
こりゃ絶対後々くるやつだが、今はそんなことはどうでもいい——後で後悔すれば良いのだから。
「ガッハッハ!良い拳だバルトよ。流石だな」
「その上を行くあんたの拳の方がよっぽどだと思うぜ!」
「ガッハッハ!!そうだろ俺は力には定評があるんだ——」
その刹那。
トレインが油断した隙を狙い俺は大きく後ろに跳ぶ。闘技場の中央から端までの大跳躍だ。
そして後方へ跳んだ瞬間すぐさま俺は火魔法<火焰輪/ファイヤウィール>をトレインとその周囲一帯めがけ放つ。この魔法は広範囲に狙った場所一帯を火の海にする。例え有機物がなかろうと最大30分燃え続ける。直接触れれば確実に大火傷になり温度は300°を超える。
俺の放った魔法は油断していたトレインに突っ込みトレインを飲み込むような形で周囲もろとも焼き払った。
魔法がトレインに直撃した後も大きな火柱を上げ燃え続ける。そのせいで肝心のトレインの姿を捉えることが出来ない。
俺は後方から警戒したがどうやらまだあの火の海の中にいるようだ。
こんなんで倒せるようなたまではないので、倒れていないことは分かっているがせめて火傷くらいは負っていて欲しいもんだぜ。
揺れる2m以上の火柱の1本に人影が映る——真っ赤な火の中に黒い影はよく目立つ。
「ガッハッハ!良い奇襲だったぞ!」
相変わらず会場に響き渡る馬鹿でかい声で喋る……ま、そんなこと言ってる余裕は俺にはないがな。
トレインは何事も無かったかのように火柱を潜って出てくる。周りにある火はどうやらトレインの目には写っていないらしい。
面白いじゃないの——ここまでのはウタゲちゃん以来だぜ!!
相手が無傷なことにここまで喜んでしまっている自分がいる。どうやら俺は嬉しくてたまらないらしい。
トレインをよく見ると全身が水で濡れている。水属性?何かもやっとしたものがあるが奴は水を被っているんだからそうなんだろう。
なら、今度は範囲ではなく一点集中!
俺は右手を前方に突き出し人差し指と親指を立て左手で右腕を支え膝を曲げる。
火スキル<火爆旋条銃/ファイヤライフル>をトレインの額に照準を合わせ放つ。俺の指先から放たれた火の弾丸はトレインの額めがけ直線を描きながら狙った場所と寸分狂わず飛んでいく。秒速約500m——気づいた時にはもう遅いぜ!!
トレインは火柱から出てきてまた油断していたのだろう、今度は確実に当たったところを視認する。
そして、額に火の弾丸の反動で上半身を後ろに反らせる。
「いっでー!!」
口ごもった声でトレインは叫ぶ。流石に額を撃ち抜いてしまうと死んで死んでしまうので肌に触れた瞬間に爆散するようになっている。
そう……普通ならもう爆散している筈なのだがトレインは上半身を反らしたままだ。
「ガッハッハ!バルトは油断を狙うのが上手いなぁー!」
また口ごもった声で言い、トレインは上体を起こす。
っ!!
いつもならこのお世辞に言い返していただろうがトレインが口に咥えているものを見て俺は声を出せなかった。
トレインは俺の放った火の弾丸を歯に挟み咥えていたのだ……
爆散する筈の弾丸はまだ燃えているが水泡に包まれており弾丸は無力に等しかった。
そして、トレインは再び上体をさっきより更に深く反らす。
俺は瞬時にトレインが何をするか悟り、悟るの同時に回避行動に移る。
右へ大きく飛び込む形で前転する。無理矢理に回避したので雑になる。
トレインは上体を勢いよく起こしきった瞬間、口に咥えていた水泡に包まれた弾丸の一部を解放し、力の行き場がなくなっていた爆散する力を使い俺の放ったのと同等の威力の弾丸を放つ。
その火の弾丸は俺の足を掠めて闘技場の壁へめり込む。観客席のギリギリの所までウタゲちゃん達が張った結界があるのでそこで弾丸が静止する。
「ガッハッハ!!どうだ俺の弾丸は!」
あれを意図してやってないのは本当に厄介だ。俺のスキルスピードよりトレインの直感が上をいっている。
「む、どうしたそんな驚いた顔して!」
「はっ!緩い弾丸だな!」
「ガッハッハ!そうでなくては面白くない、今度はこちらからいかせてもらうぞ!!」
トレインは両手を地面に触れる。
「ガッハッハ!!土スキル<土砕流/デブリフロウ>」
スキルを発動するとトレインの触れた地面に巨大な魔法陣が出現しそこから津波のような土の塊が俺目掛け襲いかかってくる。
横幅は闘技場の半分近くを占めていて高さは天井から地面のちょうど半分くらいと言ったところか……
クッソ!そんなこと考えている暇はない。ゆったりだが後数秒で俺を飲み込む。横幅がかなりあるので避けている時間はない、ここはスキルで————
そう思った瞬間、トレインがこちらに走り込んでいきているのが見えスキルを放つのを止める。あいつ……いくらスキルを放った本人とはいえノーダメージとはいかないんだぞ!!
玉砕覚悟の突進。俺が今スキルでも使っていたらその硬直時間を狙われ避けることが出来ずに直接ダメージを受けるところだった。
あのがたいでなんでこんな速く走れるんだよ!!
俺はもの凄い勢いで走り込んでくるトレインに愚痴を吐きながら、回避行動に移る。
ちぇっ!!しょうがねぇ。あんまりこの回避はしたくないんだが……
両手を地面に付き、さっき放った火魔法<火焰輪/ファイヤウィール>を今度は今いる真下に目掛けて放つ。
出力された火魔法<火焰輪/ファイヤウィール>によって上空に放り出されその勢いのまま天井にぶつかりトレインが放ってきた弾丸のようにめり込むと思ったらそのまま突き破ってドーム状の天井に降り立つ。
ここまで結界は張ってないのかよ……
どうやら観客席に沿って円を描くように張ってるだけで上は無視されていたらしい。
俺は闘技場の下を覗くとさっきとは打って変わり土砂が闘技場の半分を埋め尽くし、砂漠のようなステージになっていた。
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇
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