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7章 魔導学園 1年生編
68話 巨漢
しおりを挟む「それじゃ、これから戦闘を開始するぞ」
「元貴族側、トレイン・トンで元平民側がバルト・ベル」
この学園じゃ地位や家元は関係ない全て平等な学生という位を持つ。この表現も今日で最後になるんだろうなぁ~
トレイン……なんちゃらはかなりでけぇ。筋肉もがっしりあって相対して見ると威圧感が凄い。髪も刈り上げ、若干日焼けしていて、身長はアキトより5cm位大きいかな。目がパッチリとしていて童顔、遠くから見るとマスコット的感覚だろうな。俺と同じで頭は良さそうに見えんな……
俺と同じでまさにパワー系、相手にとって不足なし。
2次試験ではあまり骨のある相手と戦えなかったので入学までの期間トレーニングだけで実戦形式で戦えてなくてうずうずしていたんだ。
今にも動き出しそうな手足を引張叩いてどうにか落ち着ける。
「お互い武器は自分の腕ということで良いのか?」
ウタゲちゃんは呆れた顔で俺達両方を見て尋ねる。
「ガッハッハッハ~。問題ないぞウタゲ先生」
観客席に届くほど大きな声で喋るトレインなんちゃらさん……ま、だが問題ないのは俺も同じだ。
「むしろ素手でやりあいたい相手だぜウタゲちゃん」
こういうガチンコ殴り合いタイプは熱くなる。これで遠距離魔法、スキル型だったら降参するレベルだ。
「ウタゲちゃんは止めろ」
流石に審判やっているので殴っては来ないが目線が痛い。あとで蹴りぐらい来そう……
「ガッハッハッハ~。良いのか小さいのが武器使わなくて」
「はッ!平民チビだからって舐めてると後悔するぜ」
「ガッハッハ~。俺は一度とたりとも平民を下に見たことは無い!いつでも本気の戦いが出来れば良い。今回はお前が武器を使わないで全力を出せるのかが不安でな——」
「それなら心配するな俺はどんな武器も使えるが一番使いこなせる武器はこの体だ!」
そのまま俺達は背を向け逆方向にある程度歩いたところで振り向く。
ちょうど2人の間2、30mといったところかな。
「それじゃ、最後に一応私がダメだと判断したら介入するからそのつもりでな」
最後の注意事項をウタゲちゃんが言ったところで俺は集中力を50%まで上げる。
「私が上空に魔法を放った瞬間スタートだ」
右手を天に掲げ手のひらに魔法陣を出現させる。魔法陣は大中小の円形のリングが3層に重なっておりそこから魔法が放たれる。
このいつ放たれるか分からない緊張感でもう額に汗をかき始める。それは相手も同じで熱気が伝わってくるぐらい闘志を燃やしている。
てか、汗かきすぎだろ!
そう、俺は若干汗かいてるくらいなのにトレインはどっかでトレーニングして来たかと思うくらいの量の汗をかいていた。
全身からは湯気のような蒸気が溢れ出ていてトレインの持つ熱量が凄まじいことが良くわかる。
そんなことを考えていると、ウタゲちゃんの雰囲気が変わる。どうやら始まるようだ。トレインも同じように戦闘体勢に入る。
集中していると野生の勘が働くのかこういった空気の代わり具合を肌で感じ取れるほど敏感になるのですぐ気づく。
俺は魔法陣の魔法が発現するであろう箇所を凝視する。魔法が出る瞬間を見逃さない為、相手よりいかに早く先手を取れるか動けるかがポイントになってくるが————
ウタゲちゃんは魔法を上空に放ったらという曖昧な始め方をする以上恐らく上空の定義やらなんやら言い出したらキリがない。けれど、言われた通り素直に上空まで待つのか、魔法陣から魔法が出た瞬間で始めるのかどちらを取るかと言われれば後者になる。
魔法陣から魔法が出た瞬間で戦闘に入りそれがフライングとして仕切り直されるのは良いが……もし、俺が上空まで待つ選択をして相手が魔法陣から出た瞬間のタイミングで出て来てそのタイミングが大丈夫ならこっちは相当な出遅れとなりリスクを負ってしまう。
そして魔法陣が光だし陣を構成する3つの円状の文字の入ったリングが時計回り、反時計回り、時計回りの交互に回り出す。
人が魔法を放つ瞬間をまじまじ見るのは初めてなのでなかなか緊張するもんだ。
俺は気が高ぶりかかとが浮く。
そして、その瞬間————
ウタゲ先生の真っ赤な火属性の魔法が天高く上がる。
観客はその火に見とれ上空を見上げる。だが、もうその時には俺達は中央で拳を合わせるほんの3秒前だった。
「「はぁあああああああ!!!」」
トレインの拳をまじかで見ると通常の人の拳の約3倍はある。俺の拳との大きさは歴然だった。
お互い魔法、スキルを使わないただの拳を合わせるだけの力比べ……
俺は下からトレインに向けて、トレインは上から俺に向け拳を放つ。身長の差からこの形になるのは分かってたけど、やっぱり下からは不利になる。
魔法、スキルのなんの強化もないただの拳合わせは両者に悲惨な結果をもたらすことになった。
拳と拳が馬車同士がぶつかるような衝撃で交わるので合わさったところの皮膚は剥け出血し一番インパクトが大きいところに限っては肉を裂かれ骨が見えるほど深く入ってしまう。今回は肉だけが裂けるだけで終わったが下手したら骨が粉々になっているところだった。
そして、拳が合わさった音も歪で、誰もが不快に思う重低音が会場に鳴り響く。この響きがあまりに不快な音なので観客席にいる人達は全員喋るのを止めるくらいだった。
その衝撃で返り血がお互いの顔や体に付着するがそんなことは意も返さずお互い笑い合う。その光景をウタゲ先生とシェル先生はまさにドン引きと言わんばかりの視線を放ってくる。
俺だってこの痛みでどうにかなりそうなくらいで気をぬくと気絶してしまいそうな痛みが全身を駆け巡る。
トレインも同じなのか顔は笑ってはいるが目が全くと言って笑っていない。
ああああ痛い痛い痛い痛い。
俺は心の中で叫びながら一旦退避する。考えていることは一緒なのかほぼ同じタイミングでトレインも元いた場所へ跳んで退避する。さっきまでいた場所の石版には俺達の血が模様を作っていた。
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