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7章 魔導学園 1年生編
72話 底力
しおりを挟む「ガッハッハ!これほどとはな!!」
上昇していく温度に合わせて熱で溶解した天井がドロドロになって落下してくる。
あのバカやろう回復したら一発どついてやる!
そう、今は何とか天井があるからもっているがこれが全て溶け落ちた時、バルトが放ったなんらかの魔法がここに落下してくる。
バルトの方を見ると尽き果てたのかもう大の字に倒れていた。気絶しているのを確認し、私はバルトを担ぎ上げる。
私が簡単に体重70kg前後あるバルトを片手で持ち上げたのでそれを見ていたトレインが驚いていた。
身体強化系の魔法を使わずともこのくらい朝飯前だ。
「ウタゲちゃ~~ん」
シェルが私の方へすっ飛んで来る。そのままヘッドスライディングの形で私に抱きつこうとしてくる。
流石に今はそんなことしているの暇は無いのでシェルを片手で受け流す。
シェルはそのまま顔から地面に突っ込み3mほどそのまま滑っていく。
すぐに起き上がり、こちらに駆け寄ってくると頬を膨らませてまるで子供の様に怒っている。
「ウタゲちゃん酷~~い!」
「シェル今はそんな事をしてる場合じゃないこいつが放った魔法を止めてくれ」
バルトが放った魔法はこの闘技場全範囲に影響を与えるほど大きく、観客席の方は結界魔法を張ってあるから何とかなるとして問題は私達だ。
ここから退避するのは余裕なのだがそうなるとこの無防備な闘技場が跡形もなくなる事になる。ただでさえ修復が大変だし、後で怒られるの私なんだからほんと勘弁して欲しい。
「ウタゲちゃんの頼みなら!!」
シェルは袖をまくり俄然やる気を出す。
バルトの火属性の魔法にはシェルの属性の方が相性がいい。何とか打ち返す、もしくは打ち消してくれるとありがたいんだがな……
上を確認するともうほぼ崩れていて本来なら闘技場全体光が差し込んでいる筈だが、バルトの放った魔法が邪魔して所々からしか光が差し込まない。
そして、最後まで支えていた天井が溶け落ち、ついにバルトが放った魔法の全貌がはっきり見える。
それは小さい太陽の様な巨大な火の玉、いや、これは超高温ガスの塊、球体の中で常に小規模な爆発が起こり火の波が立ち、帯状の明る光を放ちながら魚が海面を跳ねるように放出される。まだ距離があるのに熱風圧を感じるほどその光景は凄まじいものがあった。
表面は真っ赤な筈なのに光が強すぎて透明に見える。周りの温度は60℃を超えもう汗が滴り落ちお風呂に入った後の様に体中びっしょりになっている。
火属性の同族でもここまで鬱陶しく思うんだから周りにいる奴らなんて相当だろうな。
巨大なガスの球体は無数の爆発を繰り返しながら燃え、ゆったりと垂直落下してくる。
「よしじゃあやっちゃいます!!」
そう言ってシェルは闘技場の真ん中で仰向けの状態で寝そべる。大の字の形から両手を上空に向けて掲る。両手の平から魔法陣が楕円状に広がる。
「海水魔法<海洋守護/オーシャンガーディアン>」
魔法陣からこの闘技場全体を浸水させるほどの量の水が放出され落ちてくるガスの塊に向かって行く。海水は両手のひらを形どりガスの球体を両の手で受け止める様に包み込む。
低音の海水と高音のガスの塊がぶつかり水蒸気を発し辺りは霧がかかっているくらいに真っ白になる。
シェルが放った魔法が包み込むのでずっとこの状態ではなかったがさっきの温度から10℃以上マイナスされた。
水に包み込まれているのにも関わらず未だ爆発を続けていて熱を発している。
シェルは寝ながらかなり真剣な表情で、額からは汗が滴り落ちている。かなり精密な魔法のコントロールをしているのだろう。
*
シェルは30分以上この攻防を続けているが未だに威力が治らない。徐々に小さくはなっているがあの大きさなのであまり変化を感じられない。
「ガッハッハ!俺も手伝おうではないか」
トレインはしびれを切らしたのか協力を買って出る。
シェルの海水に沿って土と水の配分が9:1の粘土魔法を放ち包み込む様に侵食して行く。シェルの海水と土気の多いトレインの粘土が合わさりガスの塊を押さえ込む。
先ほどよりも明らかに速く小さくなる。
だが——
シェルの魔力が尽きるが先か……
30分以上シェルは魔法を放出し続けているのでそろそろガス欠だろう。
私はシェルの元へ近づき、MPポーションを振りかけてあげる。結構高価だが今は背に腹は変えられない。
「タイミングバッチリだよ~ウタ……ゲちゃん」
明らかに体力も消耗しているシェルが私に心配をかけないようにするためか笑顔で余裕さをアピールする。
30分以上集中しているんだから無理もない。普段の何倍もの広範囲を制御するのはいつも以上に体力も消耗する。
「すまんな、助かる」
そこからさらに30分でようやく手のひらサイズまで小さくする。
「可愛い~」
シェルが手のひらに乗せて撫でている。まだ極小な爆発が起こっているが今の状態だと当たってもかゆい位でオブジェにちょうどいい。
といっても触る際には魔法を手に纏わせないと触れない。皮膚と直接接触させると超高温で皮膚が一瞬で溶け肉が焼かれることになる。
「シェル……そろそろ」
「うん~分かってるよ」
シェルは手のひらに乗っている小さなガスの塊を完全に消滅させる。
これで一件落着といったところか——
闘技場は溶け落ちた超高温の瓦礫で埋め尽くされていて、未だに熱を纏っているのでこれ以上続けることが出来ない。今は他の先生の応援を呼び片付けを手伝ってもらっている。
さてと——
瓦礫を華麗にかき分け今回の件の発端者、セア・レインが私の元へ近づいてくる。
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