少女風呂シーズン2

アッシュ出版

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1)チラシを配っている女の子

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 夕暮れの寒空の下、一人で駅前を歩いていたときだ。

 「お客さん、お風呂なんてどうですか?」

 チラシを持った女の子が僕に声を掛けてきた。

 「お風呂?」

 僕は問い返す。こんな年齢の女の子がお風呂の営業だって? 
 いや、これまで生きていて、どんな女性からも、「お風呂なんてどうですか?」と言われたことがない。

 「はい、お風呂です。銭湯なんですけど」

 その女の子が僕の言葉にそう返事を返した。
 心なしか、どこか恥ずかしそうである。僕は突然、頬を赤らめた女の子を見ながら思った。

 はあ、なるほど。そうか、この子は銭湯屋の娘か孫娘なんだな。でもあまり繁盛していない。
 父親のためか、おじいさんのためなのか知らないが、こうやって自分の家の銭湯屋を宣伝しているのだろう。
 何とも健気な女の子ではないか。

 「いいよ、銭湯。家にお風呂くらいあるけどね。たまには大きなお風呂でゆっくりしてもいいかな」

 こうやって宣伝に駆り出されているのだから、お客さんは少ないのだろう。もしかしたら僕一人で大きな湯船を独り占めかもしれない。たまにはそういうのも悪くない。

 それに目の前の女の子は、とてもかわいかった。つぶらな瞳、ぽにょぽにょした頬、あどけない口元。
 爪楊枝で突き刺すと、パチンと弾けそうなくらい瑞々しい感じのする少女だ。

 「でも、ちょっと、その銭湯、変わってるんです」

 しかし女の子が言いにくそうに口よどんだ。

 「変わってるって?」

 「は、はい。実はお湯がないんです」

 「こんなに寒いのに水風呂?」

 「いえ、お水じゃありません」

 女の子は再び口ごもる。「えーと、私のような女の子たちなんです」

 「はあ?」

 「お湯の代わりに女の子がバスタブいっぱいにいて、みんなでぎゅうぎゅうするので、お客さんは決して寒くなくて、すっごい温まりますよ」

 「えっ?」

 僕は女の子の言っている言葉の意味がまるで理解出来なかった。

 「お気に召しませんか? そんなお風呂・・・」

 女の子が不安そうに尋ねてくる。

 「お気に召すも何も、意味がわからなくて・・・」

 女の子が湯船にいっぱいのお風呂? 
 きっとみんな、水着か何かを着てるんだろうな。いや、それでも、ぎゅうぎゅうするらしいから、僕と身体が触れ合っちゃうよな。
 腕とか肩とか、それどころじゃない。、胸とかお尻とかだって・・・。

 そ、そんなことが許されるのか? 
 やっぱり、訳がわからんぞ。

 「そうですよね。訳がわかりませんよね? そんなんだから、うちのお風呂はいつもお客さんが来ないんです。でも人肌で温ったまるのが、身体に最も良いらしいんです。雪山で遭難したときに、裸で抱き合って、何とか寒さをしのいだっていう話しがあるじゃないですか?」

 「は、裸?」

 「はい、裸でぎゅうっとするのが、一番温まる方法なんです。どうですか、そんなお風呂?」

 「い、行くよ」

 僕はそう答えた。
 本気で言ってるとは思えない。もしかしたら騙されているのかもしれない。下手すると、恐い人からお金を恐喝されたりするのかも。
 でも財布には千円札が数枚ある程度だ。別に守らなければいけない社会的地位だってない。それにこれから何か予定があるわけでもない。この女の子と話せるのなら、もう少し相手をしてあげてもいい。

 「本当ですか! ありがとうございます!」

 女の子は本当に嬉しそうにぴょんと飛び跳ねる。
 嬉しそうにしている女の子を見て、とりあえず「行くよ」と答えておいて良かったって、僕は心から思った。
 だって、かわいい女の子が嬉しそうにしているところを見られるなんて、最高じゃないか。
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