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56)スタートと叫ぶ別の声
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美咲ちゃん? ゆかりちゃんかなあ? どちらかわからないけど、二人に似た可愛い女子だった。
その子が僕のPCの大切なデータを消したらしい。「何やってくれたんだよ、おい!」と僕は激怒している。
おっと、これは夢だ。実際に起きたことじゃない。夢で見ている出来事。
「ごめんなさい、許してくれるなら何でもするから」
一緒に部屋にいるから、その子と僕は恋人関係らしい。お付き合いしているんだろう。
「とても大切なデータだったんだ。許せるものか」と僕は拗ねている。
「ごめんね、本当に何でもするから許して」
「じゃあ、キスしてくれ。それで許してやるよ。その代り、君からするんだ。僕はこうやって壁にもたれているから、君から身体を寄せてきて、僕の唇に」
「うん、わかった」と言って、その女子が僕に近づいてくる。僕はクールな表情でポケットに手なんか突っ込んでいるけど内心はドキドキで。
さっきも言った通り、夢だ。醒めるのが惜しい。
こんなこと自分の人生に起きえないから、すぐに夢だってわかる自分が悲しくなったりするけど、その胸のトキメキだけはガチで。
唇が触れる寸前に目が醒めた。
起きた瞬間、僕は「やってしまった!」と叫びそうになった。
撮影現場の近くのホテルの部屋だ。撮影場所は都内だけど、僕は北関東の端っこのほうに住んでいるので、この二日間はホテルを取った。自費である。
それは別に問題ない。出来るだけ撮影に集中出来る環境を自分で作る。ベスト尽くしたい。
それなのに寝てしまったのだ。ぐっすりと。
しかも呑気に夢なんか見て。
大遅刻だ。僕はベッドから飛び降りる。
本当にグッドスリープだったので、身体の疲れは全て吹き飛んでいて、頭もスッキリだけど、遅刻をしてしまったのなら、そんな快眠に意味はない。
やっぱり寝てはいけなかったか。夜中ずっと起きているべきだった。
しかし時計を見てもまだ5時をちょっと過ぎた時間。窓の外もまだ真っ暗。
確かに5時前には起きるつもりで目覚ましを鳴らした。それはスルーしてしまったようだけど、遅刻でも何でもない。僕はホッと息を撫でおろす。
撮影時間には間に合う。一番乗りは無理かもしれないが、ギリギリ遅刻にはならないだろう。ただ単に僕は最高に充実した睡眠を取ることが出来ただけのよう。
こんなときにぐっすりと眠れるなんて。僕はけっこう度胸があるようで、何だか今日の撮影も上手くいきそうな予感がする。
あの現場で美咲ちゃんとゆかりちゃんが僕を待っている。本当に実力のあるベテランのスタッフさんたちも、僕の指示を待っている。
監督の僕がいないと、何も始まらない。
行くぜ! 世界の中心へ!
そんな浮かれた気分で山の手の線に乗り、昨日と同じロケ現場の学校に到着した。今日はまずプールでの撮影だ。僕は学校の中をワクワクしながら歩く。
誰も僕を出迎えてはくれない。「プールはこっちですよ」と案内してくれるスタッフさんもいない。
僕は軽く迷子になるのだけど、まあ、別に学校は迷路でも新宿の地下街でもない。ちょっと時間を無駄にしたけどプールに到着した。
現場は既に撮影の準備が始まっていた。スタッフんさんたちはキビキビ動き、カメラが向けられるスポットだけ空白になっている。あそこに美咲ちゃんとゆかりちゃんが来れば撮影開始。
そしてもちろん、監督である僕の撮影開始の号令を待っている。
ところでその現場に見かけない男がいた。妙にその人は偉そうなのだ。昨日、あんなスタッフはいなかったぞ。
何者だ?
その男を怪訝な表情で見ていたら、足元にあった大切な機材に躓きそうになる。おっとと。
白髪でサングラスをかけていている。「メタリカ」とロゴの入ったTシャツを着ている。
その男はその現場の中心にいて、スタッフさんたちをあれこれと指示を出している。
「そうじゃねえよ、バカ野郎、余計なことするな。キャメラはここだ。そんなに動かなくていい。時間がねえんだよ」
その男の怒号が聞こえてきた。
「よし、準備オーケーだぞ、モデルたちを呼んで来いよ、さっさと」
「時間がないんだよ! 撮影とは時間との戦いだぜ!」
その男は凄まじい声量で叫んでいるのだ。
その現場はピリピリしている。嫌な感じだ。というか、単純に恐い。
ところで、どうしてこの男の人は僕の現場を仕切っているのだ? 同時に他の作品の撮影も行われてるのか? 昨日の撮影が押したせいで、現場でちょっとしたバグが起きているとか?
ゴルフ場とかであるらしいじゃないか。別の二組みがグリーンの上でかち合って渋滞するってことが。
ということは、この撮影が終わってからではないと、僕たちの撮影は始められない?
しかし不可思議なことがある。その偉そうな男が指示を出しているのは、昨日僕が一緒に仕事をしていたスタッフさんたちである。
「おいおい、モデルはまだかい!」
それに美咲ちゃんやゆかりちゃんのマネージャーさんたちも、そこにいるのだ。
「到着しました!」という声が扉の向こうから聞こえてくる。
「よし、キャメラ、ゴー。回せ、回せ」
スクール水着を着た女の子二人がプールにやって来た。それは紛れもなく美咲ちゃんであり、ゆかりちゃんだ。
「はい、スタート!」
その白髪サングラスの男が叫んだ。
そのとき僕は担当者さんを見つけた。彼はプールサイドの向こう岸にいる。彼も僕に気づいたようだ。
目が合うと、彼は何だか気まずそうな表情で目を伏せた。
その子が僕のPCの大切なデータを消したらしい。「何やってくれたんだよ、おい!」と僕は激怒している。
おっと、これは夢だ。実際に起きたことじゃない。夢で見ている出来事。
「ごめんなさい、許してくれるなら何でもするから」
一緒に部屋にいるから、その子と僕は恋人関係らしい。お付き合いしているんだろう。
「とても大切なデータだったんだ。許せるものか」と僕は拗ねている。
「ごめんね、本当に何でもするから許して」
「じゃあ、キスしてくれ。それで許してやるよ。その代り、君からするんだ。僕はこうやって壁にもたれているから、君から身体を寄せてきて、僕の唇に」
「うん、わかった」と言って、その女子が僕に近づいてくる。僕はクールな表情でポケットに手なんか突っ込んでいるけど内心はドキドキで。
さっきも言った通り、夢だ。醒めるのが惜しい。
こんなこと自分の人生に起きえないから、すぐに夢だってわかる自分が悲しくなったりするけど、その胸のトキメキだけはガチで。
唇が触れる寸前に目が醒めた。
起きた瞬間、僕は「やってしまった!」と叫びそうになった。
撮影現場の近くのホテルの部屋だ。撮影場所は都内だけど、僕は北関東の端っこのほうに住んでいるので、この二日間はホテルを取った。自費である。
それは別に問題ない。出来るだけ撮影に集中出来る環境を自分で作る。ベスト尽くしたい。
それなのに寝てしまったのだ。ぐっすりと。
しかも呑気に夢なんか見て。
大遅刻だ。僕はベッドから飛び降りる。
本当にグッドスリープだったので、身体の疲れは全て吹き飛んでいて、頭もスッキリだけど、遅刻をしてしまったのなら、そんな快眠に意味はない。
やっぱり寝てはいけなかったか。夜中ずっと起きているべきだった。
しかし時計を見てもまだ5時をちょっと過ぎた時間。窓の外もまだ真っ暗。
確かに5時前には起きるつもりで目覚ましを鳴らした。それはスルーしてしまったようだけど、遅刻でも何でもない。僕はホッと息を撫でおろす。
撮影時間には間に合う。一番乗りは無理かもしれないが、ギリギリ遅刻にはならないだろう。ただ単に僕は最高に充実した睡眠を取ることが出来ただけのよう。
こんなときにぐっすりと眠れるなんて。僕はけっこう度胸があるようで、何だか今日の撮影も上手くいきそうな予感がする。
あの現場で美咲ちゃんとゆかりちゃんが僕を待っている。本当に実力のあるベテランのスタッフさんたちも、僕の指示を待っている。
監督の僕がいないと、何も始まらない。
行くぜ! 世界の中心へ!
そんな浮かれた気分で山の手の線に乗り、昨日と同じロケ現場の学校に到着した。今日はまずプールでの撮影だ。僕は学校の中をワクワクしながら歩く。
誰も僕を出迎えてはくれない。「プールはこっちですよ」と案内してくれるスタッフさんもいない。
僕は軽く迷子になるのだけど、まあ、別に学校は迷路でも新宿の地下街でもない。ちょっと時間を無駄にしたけどプールに到着した。
現場は既に撮影の準備が始まっていた。スタッフんさんたちはキビキビ動き、カメラが向けられるスポットだけ空白になっている。あそこに美咲ちゃんとゆかりちゃんが来れば撮影開始。
そしてもちろん、監督である僕の撮影開始の号令を待っている。
ところでその現場に見かけない男がいた。妙にその人は偉そうなのだ。昨日、あんなスタッフはいなかったぞ。
何者だ?
その男を怪訝な表情で見ていたら、足元にあった大切な機材に躓きそうになる。おっとと。
白髪でサングラスをかけていている。「メタリカ」とロゴの入ったTシャツを着ている。
その男はその現場の中心にいて、スタッフさんたちをあれこれと指示を出している。
「そうじゃねえよ、バカ野郎、余計なことするな。キャメラはここだ。そんなに動かなくていい。時間がねえんだよ」
その男の怒号が聞こえてきた。
「よし、準備オーケーだぞ、モデルたちを呼んで来いよ、さっさと」
「時間がないんだよ! 撮影とは時間との戦いだぜ!」
その男は凄まじい声量で叫んでいるのだ。
その現場はピリピリしている。嫌な感じだ。というか、単純に恐い。
ところで、どうしてこの男の人は僕の現場を仕切っているのだ? 同時に他の作品の撮影も行われてるのか? 昨日の撮影が押したせいで、現場でちょっとしたバグが起きているとか?
ゴルフ場とかであるらしいじゃないか。別の二組みがグリーンの上でかち合って渋滞するってことが。
ということは、この撮影が終わってからではないと、僕たちの撮影は始められない?
しかし不可思議なことがある。その偉そうな男が指示を出しているのは、昨日僕が一緒に仕事をしていたスタッフさんたちである。
「おいおい、モデルはまだかい!」
それに美咲ちゃんやゆかりちゃんのマネージャーさんたちも、そこにいるのだ。
「到着しました!」という声が扉の向こうから聞こえてくる。
「よし、キャメラ、ゴー。回せ、回せ」
スクール水着を着た女の子二人がプールにやって来た。それは紛れもなく美咲ちゃんであり、ゆかりちゃんだ。
「はい、スタート!」
その白髪サングラスの男が叫んだ。
そのとき僕は担当者さんを見つけた。彼はプールサイドの向こう岸にいる。彼も僕に気づいたようだ。
目が合うと、彼は何だか気まずそうな表情で目を伏せた。
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