魂の封術士

悠奈

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間章2

激闘? お肉使い編(後編)

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  うわあ……。また変なのに絡まれたなあ……。
  「お肉使い」を名乗る兄妹が突然神社に来て、突然咲姫に戦いを申し込み、彼女はそれを承諾した。
  纏めるとたったそれだけなのに、なんなんだこの疲労感は……。
「我々は二人だが、そちらは一人でもいいのか?  彼も術士なのだろう?」
  兄の方──隆太郎が言う。二人で戦うのは決定事項なのか。
  思わず目をそらす。話をこっちに振らないでほしい。俺は戦えないって。
「一人でも大丈夫だよ」
  咲姫はそう笑顔で言った。
  この二人がどのくらいの強さかはわからないけど、本当に全国を回って小遣い稼ぎをしているのなら、相当な強さだ。疑ってるわけじゃないけど、本当に咲姫一人でいいのだろうか。
「ふふふ……。最近あまりいいとこないから、頑張っちゃうからね!」
  咲姫はやる気満々。
  最近活躍してないって……。そんなことないです。
「ふむ。それでは我々は容赦しなくてもよいということかな?」
「きっとそうだよ。お兄ちゃん、やっちゃおうか」
  拡大解釈されているような気もする。
  肉丸兄妹は不敵な笑顔を浮かべ、自分達の腹を掴んだ。最初は小太りかと思ったけど、服で隠れているだけだった。物凄く失礼な言い方だが、結構太っている。
  こいつ等はなにをするつもりなのか……と思う隙もなく、奴等は肉を引きちぎって投げた。
「喰らえ!  肉弾子!」
  赤黒い塊が咲姫の方へ向かっていく。
  咲姫は自分の札でそれを叩き落とした。
「おお……。珍しいね。お札使わない呪術士なんて」
  あ、あれ呪術士に分類されるんだ。てか、自分の腹引きちぎって攻撃するのにはノーリアクションなんですね?
  肉丸兄妹は咲姫を睨んで歯ぎしりしている。
「くっ……。まさか我々の技、『肉弾子』が防がれるなんて……!」
  そう言うのは妹の方──露子だ。
  その妙にダサいネーミングセンスどうにかならなかったのかな。
  咲姫は二人が投げた肉弾子を拾った。
「これ凄いね~。どうなってるの?」
  それに隆太郎が素直に答える。
「それは我々の脂肪だ!」
  しぼ……え?
  よく見てみると、二人の身体は微妙に痩せている。
「我々の能力は、札の代わりに自分の脂肪を使う!  つまり、太っていれば太っているほど強力である!」
  逆に言えば、痩せている状態──脂肪がない状態だと戦えないわけか。それにしても肝臓に悪そうな能力だな。
「さあ、次へ行くぞ!」
  そう叫ぶ肉丸兄妹は、自分の脂肪をむしりとって次々と咲姫に投げていく。
  だが、咲姫はそんなものをものともせず、全て打ち落とした。
「な、なぜだ……。なぜ我々の肉弾子がきかない……!」
  露子が悔しそうに呟く。
「それはまあ、私が『まじないの封術士』だからだね」
  咲姫は悪びれもなく笑う。
「呪いの……?  つまりお前は……」
「術士の攻撃はほとんど効かないよ。勿論限度があるけど」
  「お肉使い」の二人は相当衝撃を受けている。今にも目玉が落ちてきそうだ。
  なるほど。前に日常生活ではほとんど出番のない能力だと言っていたのは、そういうことだったのか。この兄妹みたいに自分から探しに行かないと、術士なんかそうそう会うものじゃないし、戦うものでもない。
  まあ、俺のも肉丸兄妹のも日常生活で役には立たないけど……。
「ふ、ふんっ。それがどうした!  露子、あれをやるぞ!」
「わかったわ!  お兄ちゃん!」
  突然威勢がよくなった。
  二人は息を合わせてなにか印を切っている。なにをしているんだろう。咲姫もそう思っているようで、目を見張っている。
「「これが、我々の必殺技!  『肉の壁』!」」
  その叫び声と共に、咲姫の四方に赤黒い壁が立ち始める。結構グロい。名前そのままの見た目だ。
「この壁に取り込まれたが最後!  さあ小和田咲姫!  降参するがいい!」
  壁が咲姫を包む直前、彼女は笑ったような気がした。

  パァンと、なにかが弾ける音がした。

  肉の破片が降ってくる。
「な、なに!?」
「お、お兄ちゃん!  あれを見て!」
  露子の指の先にいるのは、ケロッとした顔の咲姫だった。
「うーん……。思ってたより脆かったね」
  彼女は平然とそう言う。肉丸兄妹は信じられないといった様子で、口をパクパクさせている。
「それじゃ、次は私の番」
  咲姫はゆっくりと彼等の方へ近づき、札を出した。
「君達の能力の源、封印してあげる」
  そう言って、札を二人の額に押し付けた。

「ふふふ。やったね今枝君!  お小遣い増えたよ!」
  あの二人が帰ったら後、咲姫はそう笑っていた。
  咲姫はあの二人の能力を完全に封じたわけじゃない。彼等の脂肪を死なない程度に消したと言っていた。「封」術士といえど、全然別の性質を持つ能力を封じることはできないそうだ。
  そして約束通り、彼等の一ヶ月分の小遣いを貰ってご満悦だ。
「あ、そうだ!  今枝君、今からアイス食べに行こ!」
「ええ……。今から?」
  夏とはいえもう夜だ。田舎で電灯もほとんどないから、あまり出歩きたくない。
「それよりも、あの人達弱かったの?  見ててもよくわからなかったんだけど……」
  咲姫は少し考えてから言った。
「うんとね……。手応えはあまり感じなかったけど、そんなに弱くはなかったかな」
  へえ……。つまり咲姫さんが相当お強いということか。
「はぁ……。俺ももうちょっとちゃんとしないとなあ……」
「ん?  今枝君、なにか言った?」
「…………別に」


  自分の弱さを目の当たりにするのは──

──それからすぐ後のことだった。
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