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11・嫉妬の心2
しおりを挟む他人の不幸は蜜の味という。それは逆に言えば他人の幸せは塩水ってこと。そんな塩水ばかり飲んでいる気がして仕方がないって思う男子、それが火高燃得である。
燃得とかいうのは響きだけ聞くと「萌える?」 という誤解をされそうだが、命名した父親によれば、心を燃やして生き望むモノを自らの手で勝ち取れ! という事らしい。
「よし、心を燃やして、望と佐藤が破局するように努力してやる!」
そうつぶやく燃得、おそらく命名者の意に反する行為だろうことに心を燃やす日々を過ごしていた。
翠名は女子だから一人でいる事が少ない。彼氏といるか友人と固まるかどっちか。したがって彼氏の名誉を落とすような話を持ち掛けるタイミングが掴みづらい。
そこで燃得は考えた。翠名が攻めにくいのであれば、同じ男同士である望の方を攻めればいいのだと。こっちは一人でいる事が翠名よりは多いから、その時を狙えばよろしいとし、そして本日の学校帰りに望をつかまえる。
「よぉ、望」
「ん? どうした?」
「どうしたじゃねぇよ、おまえせっかく巨乳な彼女がいるのに一人で帰るのかよ」
「佐藤は用事があって急いでいるって言っていたから仕方ない。それに……」
「それに、なんだよ? 言えよ」
「まぁ、時々ひとりで物思いに耽るのもいいかなって気もする」
「ブッ! なーにがひとりで物思いだ、あんな魅力的な彼女がいるというのに根暗なやつ。なんならおれに佐藤を譲れよ」
「うっせーよバカ」
こんな前置きをしてから貶め作戦を開始。それは望が失言しそうな事を話題にすること。もしうっかりでも失言したら、それをすぐさま翠名に伝え2人の仲にヒビをいれてやろうという算段。
「なぁ望」
「なんだよ」
「これ、マジメな話とか質問だからさ、怒らずに聞いてくれよ、頼む!」
「ん……なんだ?」
「おまえ、ぶっちゃけ佐藤とやったの?」
「またそんな事を言う、なんだよ、やるとか……」
「え、あんな巨乳が彼女なのに? 実はおっぱいでイカせてもらったんだ! とか、そういうオチはないのかよ」
「あるかバカ……」
いつもならここで、おまえってつまらねぇやつ! とかいう燃得だが、いまはちょっと違う。ここで急にマジメな顔と声にてマジメっぽい会話を続ける。
「でもよぉ望、おまえだって……佐藤が好きだと思ったら……やっぱりやりたいって、あの乳に甘えたいとか思うだろう? 好きならそうなるとおれは思うけどな」
「ん……そ、そうかもな」
「いつくらいにやりたいとか思っているんだ? 言えよ、男同士の話なんだから」
燃得は2人だけの会話とか言っているが、もし望が今すぐにでもやりたいとか言ったら、それを翠名にすぐ伝える。望はおまえと一発やる事しか考えていないぞ! とか言って、望が翠名に嫌われる展開を職人のようにこしらえる。
「いつとかそんなのわかるわけないだろう」
「は? どういう意味だよ」
「好きだからどうのとか言っても……」
「言っても?」
「やっぱりその、きちんとお互いのキモチ……ちょっと恥ずかしい言い方をしたら、愛を育んでから。そうでなきゃ、そんな大それたことは考えるべきじゃないと思う。だって、佐藤に嫌われたくない。大事にしたいんだよ……」
それを聞いた燃得は心の中で絶叫する。くえぇ、愛を育むとかめちゃくちゃ恥ずかしいんですけど! と。だが望が言っている事は清く正しい心だから、それを翠名に伝えたら望のお株が上がってしまう。
(くっそ、あんな彼女がいて純情を貫くとか……いや、待てよ、こいつゲームで興奮するとき以外は基本として弱い心の持ち主だからな、そうだ、プレッシャーをかければいいんじゃないかな、よーし!)
ここでおほん! と咳払いした燃得、演技力を使ってさらにマジメ度を深めた顔をこしらえ、となりの望に言う。
「でもな、望……」
「なんだ?」
「女っておまえが思うほど純情じゃないぞ。おまえがマジメな男子であっても、女の方が好きなら愛し合おうって誘ってくる可能性はあるぞ」
「ぅ……」
いま一瞬だが望がドキッとした。それは明らかに、そんな展開になったら緊張して戸惑ってしまうというもの。それを見た燃得、これはイケる! と攻撃のギアを上げる。
「望、女ってさぁ、佐藤みたいないい子でも共通する事があるんだぞ」
「共通すること?」
「女は男に対して何を求めるか、やさしさ? ちゃうちゃう! 女は結局のところ男にはつよさと勇気を求める。だから自分が興奮して抱かれたいと思ったとき、男子が怖がって逃げるというんだよ。弱虫! って」
「よ、弱虫……」
「望、おまえって根性ないもんな、だから佐藤から迫られても男の対応なんかできないだろうな、ドキドキ純情ぶるしかできないんだろうな」」
「そ、そんなこと……」
「悪いことは言わない、望……おまえ、適当なところで佐藤と別れた方がいいぞ」
「適当なところで別れる?」
「愛情が育ったら佐藤はおまえと愛し合いたいとか言い出す、でもおまえはそれと向き合う根性がない。だからそんな悲劇が生じる前に別れたらいい。そうすればお互いが軽い傷で済むし、佐藤だって不幸にならずに済む」
「ん……ぅ……」
おぉっと! これは効いた、まちがいなくジャブの連打が効いている! と燃得は悪い手応えを感じた。
「おれはこっちから帰る、ひとりで考え事をしたい」
望はそう言うと表情で相手に伝えた、ひとりにさせてくれと。すると燃得、わかった、じゃぁな! と素直に応じた。なぜなら攻撃が効いていることは明らかだったから。ひとりで歩く望の後ろ姿からは、弱い男子のドキドキが浮かんでいるから。だから燃得はガッツポーズを取って小声でつぶやくのだった。
「えへへ、これで2人の仲がガタついて、そこをおれが上手く突けば佐藤って巨乳はおれのモノ。おれが甘い青春をする日は近い!」
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