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ユータにホレちゃいまして8(ファイナル)

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「今日でふつうの人生は終了か……」

 本日午前8時、由美はいつも通りに家を出ようとしていた。その立ち振る舞いや表情から闇の部分を見抜くのは家族でもムリだった。

 本日、由美は家を出たあと学校には行かない。愛するキャラクターを汚した生みの親である作者のいる場所に押し入るつもりだった。そして作者に改変を要求し、それが通らないのであれば作者を殺し自分も死ぬと心に誓っていた。

「行ってきます」

 由美が家を出た。そして最初だけ同じですぐいつもちがうコースを歩き出す。でもそのとき、前方に真央が出現した。

「真央……」

「由美、どこに行くの?」

「ど、どこって……学校だけれど」

「学校はあっちじゃんか」

「考え事して遠回りしようかと思っているんだよ」

「由美……由美がいま考えていることを言ってあげようか?」

「え?」

「あの作者は絶対に殺してやる! とか、明日からはもうふつうの生活はできないんだなぁとか、そんなところだよね」

「な、な……」

「あ、図星。そういう正直なかわいい女の子はさ、おそろしい事なんてできないよ、由美が大それたことをするなんてムリなんだよ」

 真央は少年マンボーを欠かさず読んでいるわけではなかったが、ユータがおかしくなっていると話題になっていることは知っていた。そして特に男子が攻めエピソードと絶賛する回を見て、あ、これはもう由美が狂うのは必至と予測したのである。

「だって許せるわけないじゃんか、あんな風にユータをダサい男にして。あんなのユータじゃない、あんなのわたしに対する裏切り」

「由美、前に言ったよね? ユータは作者が動かすんだよ、だから由美の思い通りになんか動かないんだって」

「だけど……好きだったんだよ、ほんとうに好きだったんだよ。わたしとユータは愛し合ったんだよ。それをあんな風にされたら……どうしてガマンできるの? こうなったらもう作者を殺す以外に道はないでしょう」

 すると由美に向かって接近した真央、さっと右手を動かすと華麗なるビンタをひとつかました。ビシっと透明感のある音が響く。

「しっかりしなさい! 由美、所詮は作り物なんだよ。ユータなんて、架空のキャラなんていい気なもんだよ、だからあんなのに自分をささげたりしてはいけないんだよ」

「だ、だって……だって……」

 ジワーっと由美の目から涙があふれると、真央はすかさず真正面からギュウっと抱きしめた。そして背中をさすって言ってやる。

「由美、つらいけどさ……現実はきついけれどさ、でもあんなお気楽な平面キャラクターたちとはちがって、わたしらはたしかな幸せをつかめるんだ。だからさ、おそろしい事を考えたりするのはやめよう、そんなの由美じゃないよ。わたしが知っている由美はちょっとお調子者だけれど、すっごくいい子なんだから」

「ぅ、う……」

「いいよ、泣いちゃえ、そしてきれいに忘れよう」

 真央が言ってやさしく背中をナデナデしてやると由美がけっこう大きめの声で泣き出してしまった。でもそれにより、もしかしたら起こっていたかもしれないとんでもないって話は抹消された。ただただ健康的で心地よい晴天が広がり続けるだけだった。
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