息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

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24・モテない、過去の思いが吹っ切れない……などから女を殺したいと思う男1

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24・モテない、過去の思いが吹っ切れない……などから女を殺したいと思う男1


 それは今から15年も前の本日だった、当の本人は忘れているが、本人の人生にとっては重要な地点という日。

「ごめん、興味ない」

 放課後、学校の裏庭でクラスメートの女子が言った。やわらかい笑みで、困ったとうい自分を軽く飾った。

「え……」

 告白を断られた男子というのは、女子とちがってひどく動揺した。一応がんばって表は冷静にしたが、心の中は一瞬でつぶされグチャグチャにされた卵たみいなモノ。

「で、でも……」

「うん? いいよ、なんか言いたい事があるなら言いなよ」

 高校1年生の少年は目の前にいる女子を見て苦しそうな呼吸を整える。ショートヘアーがよく似合う色々ふっくらですごい巨乳という特徴の持ち主、その彼女が言いたい事を言わせてくれるというフンイキだから思い切って口の外に出す。

「だ、だって……そっちもおれの事が好きなんだろう?」

「はい?」

「お、おたがい両想いのはずで……」

 言った。常日頃思い確信している事を伝えた。すると少女はやわらかい笑みの中に疲れという文字を混ぜたように息を吐く。何気ない仕草というかひとつの動作だったが、向かい合う少年にはかなり印象的だった。

「なんでそうなるの? アタマだいじょうぶ?」

「え、え……」

「クラスメートだから会話するってだけじゃん」

「で、でも、けっこう波調が合うっていうか……」

「話をする以上はさぁ、できるだけフンイキとか自分のイメージを大事にしたいじゃん。それはそっちも同じでしょう?」

「だ、だけど……両想いで……」

「ちがうし、興味ないし、言っちゃ悪いけどすごい迷惑だし」

「め、迷惑……」

 ここで少女がズイっと少し前に進む。ドキッとした少年は目のやり場に困りつつ、噂によればGカップ超えとか言われているふくらみ部分に目を向けたりする。

「ちょっと会話したら、好きって事にされるの?」

「ぅ……」

「だったら話とかできないじゃん、それくらいわからない?」

「ぅ、そ、それは……」

「青山だって、興味ない女子と誼みで話をしただけなのに両想いとか言われたらびっくりしない?」

「う……」

「ねぇ、青山、言ってもいい?」

「な、なに……」

「よっぽどモテないんだ? モテないくせに神経は太いんだ? モテないのは仕方ないけど、神経の太さは改善した方がいいよ」

「だ、ダメなの?」

「わたし青山には興味ない。好みじゃないもの。告白されただけならよかったけど、勝手に両想いとか言われたらゾッとする。おぇぇぇって感じだよ」

「そ、そんな、よくもそんな……」

 たまらず近くにあったデカい石をつかむ。そして驚きで目を丸くする少女に向かって大きく腕を振り上げる。

―ドカー

「あぅう……」

 中年男が頭を打って両目を開く。

「いってぇ……」

 本棚に当ててしまった後頭部を抑え、くそったれとか言いながら体を起こす。

「ふぅ……」

 ドサっと仰向けになって部屋の時計を見れば午前6時。目覚まし時計がなる40分前の事だった。

「天野みちる……」

 30歳の男は15年前の映像をカンペキに再現した夢の余韻に浸る。夢の最後における暴力的なところは、みちるという巨乳女子にあしらわれた怒りが成す脚色。しかしそれ以前のシーンおよび会話はまったく同じ。15年も引きずる男の純情がすごいのか、それともそんな風ができる哀れな能力と言うべきなのか。

 青山秀樹30歳。ただいまは〇〇商社に勤める男。表向きには問題がなく、親は息子がいつ彼女を連れてくるのかと想像したりするが、秀樹の内面というのはそんな事ができるほど成長していない。

「くそ、モテないって……それっておれが悪いのかよ、なんでここまで苦しまなきゃいけないんだ」

 着替えながら心底腹が立つと怒る秀樹、昔からずっと非モテ星人であった。脳内の妄想は人の3倍分厚いものの、いかんせん勇気がなく内気。見た目は平均的な容姿ではあるが、なぜかいい人なのにモテないというオーラが幼少より浮かんでいた。

 そんな青山秀樹の人生で一大事だったのが高校1年生のとき。クラスメートの気になる巨乳女子に思い切って声をかけた。やっと人並みの事ができた! と思った。しかも相手の女子がやさしく受け答えしてくれたあげく、話がけっこうできる、相性が合いそう! と興奮すれば、非モテの哀しさが反動となって舞い上がる。

「天野みちるかぁ……」

 当時15歳だった少年はみちるに告白したらすぐデートで、愛情を育んだたらほどなくしてセックスだと青春物語を思い描く。
 しかし実際に告白してみれば、夢で見た悲恋ストーリーが展開されただけ。両想いというのは勘違い。相手にその気は一切なし。あげくよっぽどモテないなどと言われ心臓が刃物で切られたかのごとく痛みを感じた。

「行ってきます」

 青山秀樹、自宅を出て駅へ向かう。決まった時間に起き、決まった時間に家を出て、決まった時間に電車へ乗り込み、決まった時間に会社へ到達し、決まった時間だけほぼ同じような仕事をやり、決まりごとのように冴えないキブンで退社する。

「よぉ、青山」

 ビルから出た所で同僚が声をかけた。

「今日、合コンがある、一応誘う。どうだ?」

 30歳にして独身の男にしてみれば、合コンという響きは救済処置みたいに感じられた。そして次第にパワーが薄まっているようにも思えた。つまりあと10年もすれば、合コンに誘われなくなるのではないか? という予感が走る。

「いや、行かない」

「言うと思った……てか青山、おまえほんとうに彼女とかいないの?」

「いない」

「さみしくねぇの? なんのアクションも起こさないでよく平気だな」

「イチイチうるさいな、おれにはやりたい事があるんだよ」

「なんだよそれ、言ってみろよ」

「そ、それは……」

「なぁ青山、今だったらまだ間に合う。おれら若者ではないけど、まだそれなりの若さがあるし、女だって同じ。40歳になってから初デート? 初体験? そんなスカスカな流れを自ら進んでやりたいか?」

「とにかく今日は行かない」

「そうか、でも覚えておけよ。瑞々しいたのしさができるなんて、あと3、4年くらいしかないってな」

 こうしてうるさい同僚を追い払った。せいせいするぜ! と思ったら、なぜか見捨てられたようなキブンにもなる。

「ん?」

 気分転換にといつもとちがう道を歩いていたら、あたらしく出来て間もない回転寿司が目に飛び込む。

「回転寿司かぁ」

 たまには心のリフレッシュが必要かな? と思ったので、家に電話をし夕飯は外で済ませると伝えてから店の中に入った。
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