息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

jun( ̄▽ ̄)ノ

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42・先生いっしょに死んでください5

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42・先生いっしょに死んでください5


「なんで今日は先生と会えないんだろう……」

 本日、霊子はとっても不思議だと思ってばかりだった。裏でこっそり愛し合うためのパートナーである教師、愚香進の姿を学校で目にできない。メール送っても返事が来ず、電話してもつながらない。

「ま、学校が終わったらまた電話してみよう」

 あまり、いやハッキリと深刻には考えていなかった。愚香進という国語教師というのは繊細なところがあり、時々はふっと感情切れたみたいな事をする。でも気が弱いから結局はまた情けない自分に戻ってくるタイプ。そういう事を愛し合う仲になって理解したので、霊子は特に何も考えず学校が終わるのを待った。

 そうして迎えた放課後、霊子が今まさにカバンを持って教室から出ようとしたとき、突然校内放送が流れてきた。そしてどういうわけか、霊子を名指しして校長室へ来るようにと言う。

「へ? わたし?」

 なんで? と驚く霊子をよそに校内放送は続いた。全生徒、そのまま教室で待機、なぜなら今日は学校裁判をやる! と。

(学校裁判?)

校長室へ向かいながら霊子は頭をひねった。学校裁判とは聞いたことがあっても、実際にどういうモノかを目の当たりにした事はない。しかも今の流れでは自分が学校裁判と関係があるように感じられるが、なんか悪い事したっけ? と不思議でならない。

「失礼します」

 ノック後にそう言ってから丁寧に立派なドアを開けた。ここだけはスペシャルな空間というオーラに満ち満ちている。

「あ、あれ?」

 思わず霊子が声を出したのは当然。本日まったくどこにいるのか? と思っていた進の姿が神々しい机の近くにあるからだ。

「きみが怪椎霊子くん?」

「はい」

「もうちょっとこっちに来たまえ」

 ゴージャスなイスに腰掛け一本1万円はするであろう葉巻を吸いながら、値段がつけられそうもない机の前まで来るようにと校長が指示。これには逆らいづらいので言われた通りにし、ちょっと距離を持って霊子と進が並び立つ。

「怪椎霊子、きみ……いけないよ。見た目はとっても美人だし成績もいい感じ。それがどうして自分で自分を汚すかね?」

「よ、汚す?」

「生徒と教師の愛し合いなんて昼ドラマなら許される。でも現実で許されるはずもなかろう、それくらいわからないかね?」

「な……」

 おどろいた霊子、隣の男に目を向けるが男の方は霊子に顔を向けず真っ直ぐ立ち続ける。

「ラブホテルに入る姿を撮影されるとか注意力が足りんね」

 校長はそう言って冷ややかな目を霊子に向ける。ただし、誰が垂れ込んだのかは言わず、今すぐ学校裁判を始めると2人に伝えた。

「いいかね? 全生徒は教室内で座っており、それぞれにタブレットを受け取っている。そうして裁判が始まったら、きみたちがそれぞれ個別に数分間おのれの主張をする。それを聞いた生徒たちが判定を下すのだ。2人とも有罪なら免職と退学。片方だけが有罪なら、免職もしくは退学でもう片方はおとがめなし」

「そんな……急に言われても……」

「怪椎霊子、きみは甘い」

「甘いってどういう意味ですか?」

「先生と陰で愛し合っておきながら、いつ何が起こるかと注意しない。いけないね、自分のまいた油で自分が滑るようなモノだよ」

 校長が言い終えると、ここに別の教師が数人やってきた。えっほえっほと長机を持ち込み、そこにノートパソコンを置き、それとつないだビデオで校長室の中央を撮影するようにテキパキとセットしていく。

 霊子、たまらず進に声をかけようとした。ちょっと緊張したような進の顔からは、いったいどうしたらいいのだと悩んでいるように見えたからだ。だから霊子は小さくつぶやく。

「だいじょうぶ、2人で前向きにやった事を認めよう。強くまっすぐなキモチで愛し合っていると伝えれば絶対に無罪を勝ち取れる」

 それから霊子は甘い展開を信じた。教師と教え子のメイクラブも2人が誠実にやった事を認めれば、愛の物語を全校生徒が応援してくれると。

「では始めよう。まずはきみ、怪椎霊子くんからだ」

 校長に言われた霊子、ビデオカメラに見つめられるマイクスタンドの前に立つと、ブーン! って音を立てるマイクに向かってわたしたちは真剣に愛し合っているんですと切り出す。その姿と声は全校生徒がタブレットで見つめている。

「いけませんか? 真剣なキモチで愛し合うなら年齢差とか立場なんて関係ないと思いませんか? わたしと先生はそういう真剣な求め合いをしてきたし、これからもそうしたいと思っているんです。これはわたしと先生の2人が紡ぐ愛の物語。ほかの誰にも迷惑はかけません。だからわたしと先生に無罪をください、よろしくお願いします」

 実にエレガントなオーラと口調で、ほとんど無動で短くまとめた。足りない部分は先生が補ってくれると思っていたので、自分のしゃべる時間が短くなってもかまわないと霊子は思った。

 が、しかし……次に国語教師たる進の番となると、場の雰囲気が一変したのである。それはまるで魔法使いの杖が振られたかのごとし。

 進、ブワっと両目に涙を浮かべると、グッと感情を抱きしめるかのように両手をにぎり、それこそ悲運のオペラ歌手と言わんばかりのノリで演説を開始。その内容は自分被害者であり、自分を惑わした爆乳女子が悪いとするもの。霊子が仰天するほど霊子に罵詈雑言を浴びせまくる。

「仕方がないでしょう、そう思いませんか? 誰が好き好んで暗い人生を送ろうと思います? 誰が好き好んで愛に恵まれない人生を送ろうと思います? それでも仕方ないと思って生きている時、そんな先生がかわいいとか言い寄られたら、しかもそれが若くてかわいくて爆乳って女子高生だったら、免疫のないわたしがコロっとゴキブリみたいにひっくり返っても仕方がないでしょう、ちがいますか? それともわたしが悪いと言うのですか? 惑わされ不本意なセックスをしお金を巻き上げられたわたしが悪人だと言うのですか?」

「ちょ、先生!」

 霊子、たまらず進に歩み寄ろうとするも他の教師に抑え込まれる。そのみっともない姿ははげしく印象を低下させる。

(このクソ野郎!)

 霊子、この展開はハッキリ言って読んでいなかった。先生は潔く教え子との関係を認め、たとえ行き場を失っても愛は貫くだろうと思っていた。男が女の悪口をマシンガントークするなんて夢にも考えなかったのである。

(い、いやだいじょうぶ……絶対にだいじょうぶ。だってここは女子高、絶対にみんなわたしの味方をするはず。おっさんの味方をして同じ女子高生を見捨てるなんてありえない)

 霊子はちょっとドキドキしつつも自分は無罪で腐れ教師だけが有罪と信じた。だが判定は霊子にとってサイアクの結果となる。

「教師、愚香進は無罪。そして生徒、怪椎霊子は有罪。刑事事件にすると学校音評判に傷つくゆえ、これをもって怪椎霊子は退学処分とする、以上!」

「た、退学? わたしだけが有罪? ちょっと待て、ちょっと待て!」

 取り乱そうとする霊子は数人の教師に抑え込まれ、平然と何も言わず校長室から出ていく姿を目の当たりにする。

「怪椎霊子くん」

 ここで校長が怒り心頭な霊子の前に立った。そうして霊子のやわらかいか手にポンと手をくと切な気につぶやく。

「先のくり返しになるが、きみは甘い。きみは女子高生の自分が有罪になるとは考えなかった、ちがうかな? そういう意識を持つから肝心なところでケガをするのだよ。きみが退学となるのは気の毒だが仕方ない、だから最後にひとつきみに言葉を送ってあげよう」

「こ、言葉?」

「居安思危。この言葉をこれからの人生に役立ててくれたまえ」

「ち、ちくしょう!」

 泣き叫ぶ霊子だったが、その悲しい姿は全校生徒がタブレットで見た。そうして気の毒なことに霊子が可哀想と思う女子はひとりもいなかったのである。
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