息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

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166・キャラクターの反乱バトル10

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166・キャラクターの反乱バトル10


「さてと……これでいいのかな……」

 午後9時、修正した原稿をネットにアップしようとする書矢がいた。その修正というのは、他でもない主人公であるカルロスの要請による。

「また批判の嵐になるんだろうな……また大量のブックマークや読者数が消滅してしまうんだろうな」

 そのつぶやきは半壊した街を見るような物悲しさにあふれていた。なんせ一時は夢みたいな上昇気流を経験し、書籍化は目前だ! という興奮も味わった。それからすれば現在の小説は終わりの始まりみたいに感じる。

「いや、今から手直しとかムリ。そんな体力はもうない。このままアップしてやる、もうなるようになれ!」

 やけくそ気味にポチ! っとマウスをクリック。これで原稿はネットにアップされてしまった。

「知るか、読者の反応なんか知るか……もう書籍化だってムリっぽいんだ、今さら読者にすがったところで何になる」

 書矢、そうつぶやきベッドにゴロン。明日の昼くらいまでは読者の反応なんか見ないと心に誓う。ところが……心に誓ってから4時間後、気になってたまらない無名作家はガマンができず読者の反応を見るに至る。

「あ、読者数にブックマークが……増えている」

 ごっそり減るだろうと思ったら逆で、意外と伸びているから驚いた。こうなるとさっきまで沈みがちだった心は一気に恥知らずなほどウキウキモードとなり、ワクワクしながらレビューを開く。そうして書かれているモノと向き合う。

―カルロスがトチ狂ってアデリーヌを押し倒すとか予想していなかったー

―カルロス、グッジョブ!-

―やっと主人公の復活。これくらいの展開は許せるー

―アデリーヌってけっこう巨乳だから、もうちょい乳を揺さぶるべし」

―アデリーヌと一発やって夫婦になる展開をキボンー

「こ、これは……なんという高評価の嵐」

 書矢、久しぶりに興奮。下から上にゾワっと感が吹く。今回アップした小説というのは、カルロスの要請に従った。意識不明から目覚めたカルロスが暴走し、止めようとしたアデリーヌの乳を揉み押し倒し服をビリビリに破き全裸にしてしまうという超展開を書いた。そして読者の気を引くため、全裸にされたアデリーヌが哀願する目で、やめて……という所で終わりにした。

「もしかしてこれ……ゲスな展開にすると一気に人気が回復するんじゃ……」
 
 書矢に生じる邪悪な心。ほんとうならアデリーヌの哀願する目を見てカルロスは我に返るという展開にするつもりでいる。だがここで沸いたよからぬ考えというのは、カルロスがアデリーヌを食ってしまうという展開。

「どうする……やるか、やってしまうか……」

 これは禁断の実を食うか否かの決断である。もしアデリーヌがカルロスに食われたら、この作品は悪の烙印押される。しかしその代わり、よくやった! というマニアックな支持を得られる可能性がなくもあらず。

「ハァハァ……どうする、どうする、どうする!」

 そればかり考えてまったく寝付けなかった。だから一睡もできず朝を迎えてしまったが、そこではこういう結論に達する。

 アップするかどうかは別として、とりあえずは書く! 書けば一応気が済むわけで、やっぱりダメだ! という理性が勝ったとしても後悔の念は薄らぐと思われる。

「よし、書いちゃる。アップするかどうかは別として、アデリーヌをカルロスに捧げてやる」

 本日午前9時より、書矢はひどい内容を書いた。胸は痛む、ごめんよアデリーヌ! というキモチは抑えられない。が、アップするかどうかは別というこれで心は少し楽になる。

「とりあえず書くだけだ、アップしなきゃこの展開は正史に組み込まれないからな」

 そういうわけで書いた。自分でもおどろくほど勢いよく、自分でも困ってしまうくらい何回も書きながら勃起をくり返しながら、実に熱い外道臭に満ちた内容を完成させる。

「ふぅ……」

 書き終えた疲労感と達成感、そして落ち着くとやってくる賢者の意識。やっぱりこれはアップできないよなと自分に言い聞かせる。

「まぁ、いいや……書いただけでもいい。これは正史に組み込まない。だから正視に組み込む展開を休憩してから書くか」

 午後1時に一階へ下りたら、昼飯ということでお湯を注いでカップラーメンを作る。小説で金を稼いで結婚とかできたらいいんだけどなぁ……なんて願望をつぶやきながらズルズル啜って食す。

 こうして腹を満たしキブンもおだやかって書矢、正史の続きを書こうかと部屋のドアを開けた時だった。

―ブン!-

 突然にぶっ太い音と風圧が発生。それは何か? と理解するより先に、もうちょっとで首がぶった斬られるところだったと怯える。

「ち、外れた」

 室内にはアデリーヌがいて、仕留めそこなったとぼやく。そして下から斜め上に振り上げた剣を下ろす。

「仕留めそこなったじゃねぇよ! おまえ、いまのマジで首が飛ぶかと思ったぞ!」

 ハァハァやりながら激怒する書矢。しかしアデリーヌはそれ以上にムッとした顔を見せつけ、もう一度剣を振ろうかって身構え吠える。

「書矢!」

「な、なんだよ」

「なんだじゃない! よ、よくも……よくも乙女にはずかしい思いをさせたな」

「ぷっ! 乙女って……」

「殺す、絶対に殺す」

「あ、待て待て、話を聞かせてくれ」

「話ぃ? ふざけないで。意識不明のカルロスが突然に目覚めたと思ったら暴走。それを止めようとしたら……わたしはカルロスに散々おっぱいを揉まれたりして、あげく服をビリビリに破かれ全裸にされて……」

「まぁな……」

「まぁなじゃない! わたしがどれだけ傷ついたと思っているの? 想いを寄せているカルロスにあんな事をされたわたしのキモチはどうなるの?」

「仕方なかったんだよ。カルロスがそういう風にしてくれっておれを脅してきたんだから」

「はぁ? なに言ってるの? カルロスがそんな外道なわけがない。だってカルロスはすごくいい男で、性欲とか全然持ち合わせていない聖人君子なんだからね」

「あぁ……そう思うんだ?」

「作者だからってウソを吐いていいわけじゃないんだぞ書矢!」

 なんというけなげ……と思ったら、しかも自分の作ったキャラクターとかなれば奇妙なキブンに落とされてしまう。

「で、後半はどうなるの?」

 もちろんカルロスと結ばれるぜ! と言いかけたが、相手が剣を持って構えている以上、うかつな事は口に出来ない。

「アデリーヌピンチ! ってところで、カルロスが我を取り戻す。だからそんな、良い子が胸を痛めるような展開はない」

「ほんとう? 信じてもいい?」

「おれは神だぞ、神を信じろ」

「よかった……ホッとしたよぉ」

 えへっと顔を赤くして喜ぶアデリーヌの顔を見た時、不覚にもかわいいと思う書矢がいた。だから相手が剣を鞘に戻すと、すぐさま近づいて両手首をつかみ近い距離から見つめる。

「な、な、なに……」

「アデリーヌ、おまえってけっこうかわいいよな。しかもEカップだから一応は巨乳」

「一応とか言うな……」

「ど、どうよ、こ、このおれと……セックスとかしない?」

 書矢がドキドキしながら言うと、その両手グワっと払いのけるアデリーヌだった。そして両腕を組み軽蔑した口調で言ってやる。

「やるわけない。書矢みたいな童貞なんか嫌いだし」

「な、なんだと」

「声が震えてるもん。それめちゃくちゃダサいって話だもん。年齢イコール非モテって負け犬臭が漂ってるし」

「く……神に向かって侮辱の言を吐くとかとか……」

「言っとくけど、もしわたしとかカルロスにひどい目に遭わせたりしたら、予告なしに剣を振るから、その首を斬り落とすから」

「アデリーヌ……」

「じゃぁ!」

 サバサバっとしたアデリーヌが姿を消したら、まるで見捨てられた愚者みたいな情けないキモチに落とされる。だから書矢は両手を握り、床を見つめながらぼやく。

「ちくしょう!なんで作者のおれがキャラに愚弄されなければいけないんだ。アデリーヌめ、アデリーヌめ!」
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