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大人の日本昔ばなし・「ボーイン」

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 むかーし、ある村にボーインという18歳の女子がおった。ボイーンはかわいいと同時に、着物の上からでも乳が豊かとわかる女じゃったから、村の若い男たちは密かに気にしておった。

 ところが、ボーインにはひとつ問題があってな、その背丈が10m以上もあることじゃった。そこで村の女たちはそれを利用した。ボーインの乳が豊かなことを常日頃ねたんでおった女たちは、あんなデカい女は呪われておるんじゃといい、子どもたちにあれは人としての出来損ないじゃと吹き込んだりした。それで子どもたちは進んでボーインを罵るようになっておった。

「ボーインじゃ!」

「魔物じゃ、魔物がきよった!」

「こっちに来るな、化け物!」

 子どもたちは固い石とか、臭い馬の糞をボーインに向かってたくさん投げつけるのじゃった。遠目にそれを見ていた女たちは、いつかボーインがこの村から出ていくか、身投げして死ぬことを期待しておった。

「なんでじゃ……なんで……オラは嫌われにゃならんのじゃ……オラだって……みんなと仲良ぅしたいんじゃ」

 ボーインはいつも涙を流しては山でひとりさみしく生活しておった。そんなある日の事じゃった、村にいるひとりの若い男が思い立った。

 若者の名は助平(すけべい)と言って、恋に焦がれる18歳、実は前々からボーインがすごく好みで熱い恋心を抱いておった。

「ハァハァ……ここまで来ればだいじょうぶじゃ……」

 夜、助平はボーインがいるであろう辺りまでやってきたら、念のためにと周りを見渡す。なんせ村人、特に女たちがボーインに向けている冷徹な目は鬼のようにおそろしい。もし自分がボーインに恋しているなどと知られたら一体どんな目に遭わされるかわかったものではない。

「ボーインやぁ、ボーインやぁ」

 助平は勇気を出して声を出してみた。今ならボーインと2人で話ができる……ぜひそうしたいと思い、何度もボーインやぁ、ボーインやぁ言い続けた。

「誰じゃぁ、さっきからオラを呼ぶのは……」

 ボーインが声のする方に向かってやってきた。助平は提灯でしっかり自分を照らすと、ドキドキするキモチを持って言うた。

「ボーイン、オラ助平いうモノじゃ、前から……一度ボーインと話がしたいと思うとったんじゃ」

「オラと?」

 ボーインは初めて言われた事に戸惑った。いつも村の人たちから意地悪をされていることもあり、警戒心を持ってその場にかがみ、そして思い詰めたような顔の助平と見つめおうた。

「助平、オラになんの用じゃ……おまんもオラに何か嫌がらせする気か? そうじゃ、そう決まっとる。オラが嫌がるような事を言いに来たんじゃろう」

 村人たちから嫌がらせを受け続けていたボーインは少しひねくれておった。じゃが助平は真剣な面持ちで、提灯でしっかり自分の顔が見えるようにしてからハッキリ言うた。

「オラ……オラ、ボーインが好きじゃ! ずっとずっと前から……ボーインの事を魅力的な女子と思うて、いつもたまらんキモチでおっただよ」

 その助平の声には恋しくてたらまんというキモチが溢れておった。そしてそれはボーインの豊かな胸を軽く揉むように感じさせたのじゃった。

「お、オラが好き?」

「そうじゃぁ、オラ、ボーインがすごい好みじゃ。その顔とか、その感じとか、そしてその、豊かな胸とか、いちいちすべてがオラに突き刺さるんじゃ。いかんのか? それでボーインが好きじゃと思うたらいかんのか?」

 ボーインは生まれて初めて告白されてよりいっそう戸惑うてしもうた。なんせ助平もボーイン18歳とお年頃、恋という言葉を無視して生きられるほど2人は老いておらん。

「ボーイン、オラ……村の連中、特に女が怖くて……今まで何もできず何も言えん有様じゃった。いつもボーインに対してひどい事をしとる村の連中を止めさせたい思うて、でも何もできんかった。お願いじゃ、これからそういう所も改めるよって、オラと付きおうてくれ」

 助平は提灯を地面に置くと、その場に正座し心を込めて頭を下げた。その姿からは嘘偽りのない真っ直ぐな熱い心が吹き出し、それがボーインの豊かなふくらみと女心にはげしい揺さぶりをかけるのじゃった。

「助平……すぐに戻ってくるから……少しだけ待ってけろ」

 ボーインはそう言うとほんの一時その場を離れた。でも言葉通りすぐに戻ってきたが、手には随分と大きな提灯と敷物を持っておる。その明るさはその周辺を温かい昼間のようにまぶしくさせるだけのモノじゃった。

「助平……ほんとうじゃな? ほんとうにオラみたいな女が好みなんじゃな?」

 提灯を地べたに置いて助平を見下ろすボーイン、そしてゆっくりと着物の帯を解き始めていくのじゃった。

「ボーイン? 何しとるんじゃ……」

 助平は突然のことに仰天した。じゃが、下から見上げるボーインの顔には恥じらいと赤らみがあり、さらにはそこに真剣さもこもっておった。

「助平……」

 ボーインはゆっくりと着物を広げた。するとどうじゃ、ほんとうに色白でふっくら豊満な乳が揺れ動いて出たではないか。しかもボーインは10m以上もある女子じゃから、その豊かな乳を下から見上げる助平はあっという間に頭がボーッとなってしもうた。

「ん……」

 ボーインは色白むっちりな体をすべてさらけ出すと、今まで見た事のない恥じらい顔でゆっくり敷物の上に、左肩を下にして寝転がった。

「助平……こっちさ、来い!」

 左右のふっくらやわらかそうって乳房を重ねているボーインは、真っ赤な顔をしながら助平を手招きした

(なんというきれいな……豊満でやわらかそうなふくらみじゃぁ……見ているだけで……あの谷間で死にたいと願いとうなる)

 助平がモジモジすると、ボーインは重なっているふくらみの谷間に右手の平を当て、なんで飛び込んでこないのかと聞いた。するとどうじゃ、ボーインのふくらみを見つめている助平の目からスーッと熱い涙が流れ落ちた。

「ど、どうしたんじゃ助平……」

「お、オラ……いま、自分でもよくわからんが……でもうれしいんじゃ、こんな、こんな風にうれしいと思う事は初めてなんじゃ!」

「助平……」

 助平の震える声を聞くと、ボーインもまた初めて初めて味わうキモチの高ぶりに少し落ち着けなくてゆく。

「ボーイン、お、オラ……ボーインの乳に甘えてみたいだ……甘えたいだ!」

 助平のまっすぐな声はボーインの顔をこれ以上はムリだというほど真っ赤にさせた。

「ええよ……助平だったら……乳に甘えてくれてもええよ」

 言われた助平、まるで空気の中にある別世界を見つめるような目でゆっくりと体を横にしているボーインに近づいた。

 まず……ムワーっと悩め香しい感じの熱が伝わってくる。それはボーインの体温で、2人の場所という領域を温めてくれる大事なモノ。

 つぎに助平がたまらず表情をビクン! とさせたのは、すごい豊満な……乳輪だけでも大変に豊満! というふくらみに近づくほど、なんとも言えぬいいニオイが無限の広がりみたいにして伝わってくる。助平はあんまりにも大きい左右のふくらみって重なり合いをすぐそこって至近距離で見つめながら言うしかないのじゃった。

「ボーインよぉ……」

「どうしたんじゃ?」

「なんで、ボーインからはこんなにもいいニオイがするんじゃ?」

「そ、そげなこと言われても……自分ではわからんけ……」

「まるで……夢みたいな……いいニオイじゃ……」

 そして助平は右肩を下にし、ボインのあまりにも豊満なふくらみを目の前にしたのじゃが、その間にはボーインの体がすっぽり埋まってしまうとしか思えん。

「ひゃんんぅ……」

 いま、ボーインが少しおかしなテレ声を出したのは、たまらんキモチに突き動かされた助平がふくらみに抱きつきクゥっと顔を甘え押し付けたからじゃった。

「なんて、なんて、なんて大きくやわらかくて……キモチいいんじゃ、お、オラ……こんなの初めてじゃ、初めてじゃ!」

 助平はそのままゆっくり赤い顔の目を細めると、まるで心底甘えん坊になってしもうたかのように、ボーインの乳をねだり始めた。

「す、助平……」

 ボーインはふくらみいっぱいにくすぐったさを感じ、恥ずかしさでいてもたってもおられん! と思いつつ、同時にジワっと湧き上がるキモチ良さに驚かずにおられん。それはボーインの体と心が初めて感じるモノだったからじゃ。

「ん……ぅ……」

 ブルッと鳥肌を起こしたボーインじゃったが、助平が夢中になって乳をねだるものじゃから、まるで母親にでもなったような感じでその時間を包み込んでやるしかなくなる。

「助平は甘えん坊じゃ……」

 そうつぶやいても助平の耳に入らなんだとき、ボーインは致し方ないとし、助平の気が済むまで乳のふくらみに相手が甘えることをやさしく包み込むだけじゃった。

 じゃが……どんなにキモチいいと思うても、どんなにカンゲキして心が震えても、助平が夢中になって乳をねだる時間がものすごく長うても、それだけで終われるはずはなかった。若い2人の体と純真な心には確実なる愛し合いが必要とならざるをえん。

「ど、どうしたんじゃ?」

 これはもう死ぬまで乳に甘え続けるのだろうと思わせていた助平が突如離れたからボーインの心と体が戸惑うてしまう。

「ぼ、ボーイン、お、オラ……ガマンできねぇだ」

 その声を聞いたとき、あぁ……仕方のない事だ……とボーインは豊かなふくらみいっぱいにそう思うた。ところが助平はハァハァとほんに苦しそうな息遣いをしながら、ボーインが思いもしない事を言うて来た。

「ボーインや……おまえも……ガマンできん……とか……ならんのか?」

「な、なんじゃ急に……お、オラは……」

「ボーイン、オラはボーインが好きじゃ……だからいま……思うんじゃ、ボーインと愛し合いたいと、心の底から思うんじゃよ。ボーインはどうなんじゃ? ボーインはそうは思わんのか?」

 ボーインの胸は助平のまっすぐさにしびれてしもうた。恥ずかしぅてたまらんと思うても、助平のキモチと向き合いたいと心が素直な方へと動いたのじゃった。

「お、オラ……もうすでにいっぱい濡れてるだよ……助平が悪いんじゃ……」

「ボーイン、オラに考えがあるんじゃ……股を開いてくれんかのぉ……」

「ん……わ、わかった。でもそれでどうするんじゃ?」

「オラに考えがあるだよ、オラは……ボーインと愛し合いたいと思うとるんじゃよ」

 ボーインは助平の言うた、愛し合いたいというところに豊満なふくらみ内部にある女心を刺激されたのじゃった。

「こ、こ、これでええんかの……助平……」

 いま、ボーインは仰向けになったまま、色白むっちりな両足を立てて左右に広げた。するとたっぷりと濡れてベトベトなボーインの温もり口が助平の前に出現する。

「これで……どうするんじゃ助平……」

「ボーイン……こうするんじゃ!」

 言うが早いか助平はとんでもない行動に出た。なんと着物を脱いで全裸になったと思うたら、そのままボーインの温もりへ飛び込んだのじゃ!

「はんぅ……な、な、な、な……」

 ボーインはあまりの衝撃に全身をビクン! とくねらされた。そして大慌てという手を自分自身という場所に当てたが、そこにはもう助平の存在はない。代わりに内部で……大きな生き物が熱くうごめいておる事をつよく意識するのじゃった。

「バカ、助平……なにしとるんじゃ……そ、そげな事されたらオラ……」

 クゥっと身を震わせるボーインは自分の中に入った助平が想いを伝えんと動き回っている事に対して、やがて細い両目でハァハァとやり始めた。

「す、助平……助平……助平……」

 思えばこれはすごい事じゃったが、この2人が愛し合うには最適なやり方でもあった。ボーインは仰向けになりながら、幾度となく体をくねらせ両足をモゾモゾさせ素直な感情を大きな声として外に出す。

「あぁぁんん!!」

 それはボーインにとって生まれて初めて経験じゃった。そして自分ではどうにもできず、ただひたすら素直になるしかできんのじゃった。

「はん……んぅ……う……」

 いま……ボーインが女として達した。想像した事もないカタチで、それまで経験したという記憶のないとても深い快感に達した。

 と、そのときじゃった、ヌルヌルっとボーインの温もりないから助平が出てきた。もう全身が温かさでヌルヌル状態になっておるが、とてもうれしそうな、そして満たされてやさしさを手に入れたという表情になっておった。

「ボーイン、オラ、オラ初めてじゃ……」

 助平は仰向けのまま、ビクンビクンと震えて声が出せないでいるボーインによろこびの報告をするのじゃった。

「お、オラ……ボーインの温もり内で射精しただ……ものすごくキモチよかっただ、そしてそれ以上に嬉しかっただよ。ほんとうじゃ、ほんとうにすごく嬉しかったんじゃ」

 カンゲキに震える助平の目からはスーッと涙が流れ出る。それは2人が結ばれたことを意味しており、離れられない関係になった事の始まりでもあったのじゃ。

 こうして次の日から、助平はボーインの事しか考えられんようになった。暇さえあればボーインのところへ行くが、それだけで気が済まんようになって、毎日、毎晩、ひたすらボーインと愛し合うようになった。

「なんじゃ、最近の助平はいったいどうしよったんじゃ」

 村の若者たちが寄り合って晩の飯と酒を食らっておるとき、最近の助平はおかしいという話をやり始めた。

「そうじゃ、最近の助平は変じゃ、いっつも心ここにあらずという感じじゃ」

「畑仕事の最中に姿が見えんようになることもしばしばじゃ。なんじゃ、バクチとかそういう悪い話に首でも突っ込んどるんじゃあるまいのぉ」

 するとこのとき、ひとりの若者が確信しているという力強い声で言うた。助平には女ができたんじゃ! と。

「助平に女じゃと?」

「まさか、あの助平に女なんぞ」

「いや、そうとしか思えん。なぜなら最近の助平はイキイキしとるんじゃ。あの顔は何かすばらしいモノを手に入れたという喜びじゃ。それにじゃ、しばらくしてから見ると顔がつややかにになっておるんじゃよ。あれは男が射精で満たされた事で成し得るツヤじゃ、じゃがあんなツヤを男ひとりの射精で得られるとは思えん」

「じゃぁ、誰じゃ、村のどの娘っ子が助平と愛し合っとるいうんじゃ」

「そげな気配を感じる女子がおるとは思えんがのぉ……」

「ハッ! まさか……」

「なんじゃ、どうしたんじゃ」

「まさか……助平はボーインと愛し合っとるんじゃ……」

「なに、ボーインじゃと!」

 その瞬間、場に不穏な空気が流れた。なぜならここにいる若者たちというのは、常日頃ボーインのふっくら豊かな乳のふくらみ具合にドキドキしておった。可能なら一度甘えてみたいが、そのためにはボーインと心を通わせねばならん。じゃがそれをやると、とりわけボーインを嫌っている村の女たちからはげしい怒りを向けられる事は避けられん。それがゆえ若者たちは助平がボーインと愛し合っておると考えたら、ヘビのような嫉妬を抱かずにおられんようになる。

 ただ、ボーインと助平の大きさはあまりに違いすぎるため、愛し合うと言ってもどうやって? と不思議な気もする。そこで次の日、まだ明るい真っ昼間のことじゃ、若者たちは助平がいなくなったら、揃ってボーインがいる場所に向かっていた。

「ん、ちょっと待て」

 若者たちは足を止めた。するととてもかわいくやさしい女子の声が聞こえてきた。それは歌っているように聞こえるが、たのしいから歌うというよりは、何かに寄り添い包み込んでやるために自然と出る専用の歌声みたいに聞こえた。

「ボーインの声か?」

「あんなにかわいくて……やさしい声じゃったのか?」

「なんじゃ……聞くだけで……こっちの胸がドキドキさせられてしまうのぉ」

 若者たちは足音を立てないよう注意しながら、ゆっくり声の方へと進んでいった。そして足を止めたとき、全員がすごい光景を見た。

「助平は甘えん坊じゃ……でも……そんなにオラの乳がキモチいいと喜んでくれるなら、オラ、いつまででも助平に寄り添ってやるでな」

 そんなやさしい声を出しているボーインは全裸で、肩を下に横になっておる。そしてそのおどろくほど豊満でやわらかそうな乳房の重なりに向かって、これまた全裸の助平が抱きつき、まるで赤子のように甘えまくっておる。

「ボーインの乳じゃ……すごい豊満じゃぁ」

「ボーインの乳はあんなに豊かでやわらかそう……じゃったのか」

「助平のやつ……キモチよさそうじゃのぉ……うらやましいのぉ……」

 若者たちは離れ隠れたところかボーインの乳を見つめるが、どうしてもそれに甘える助平に感情移入してしまう。それが若い性欲を勢いづかせる。

「い、いかん、オラ……我慢できん……」

「お、オラもじゃ……ボーインのあの乳を見て何もせんとかありえん!」

「お、オラも……オラもボーインの乳に甘えてみたいのぉ、甘えてみたいのぉ……」

 若者たちは揃い揃って恥じ入ることなくそこで取り出したペニスを扱き始めるのじゃった。初めて見る衝撃が強すぎるゆえ、若者たちが射精に達するはすぐのこと。

「あんんぐんぅ……」

 偶然とはいえ若者たちは揃って同時に射精した。するとどうじゃ、勢いよく飛び出した白い液体が空中でぶつかり合いひとつの大きな水たまりとなり、べシャッと音を立てて地面に落ちた。そして若者たちのペニスはまるで発泡後の鉄砲みたいに熱いのじゃった。

 ところが! 若者たちが満たされたペニスを戻していくとき、まったくもって信じられん光景が飛び出した。

「ボーイン、おら……ボーインが好きじゃ、大好きじゃ!」

 そう言うた助平がボーインの温もり内に入った。そして仰向けのボーインが身悶えしながら、女という声を出す。

「おい、いまの見たけ?」

「ボーインの温もりに入りよった」

「信じられんことじゃ」

 射精して落ち着きを手に入れてしまった若者たちは、女として体いっぱいに感じて声を出すってボーインを冷静に見つめる。じゃがもし射精していなかったら、いったいどうなっていたかまったくもってわからん。

「あんぅ!!」

 ボーインが突き当たって全裸の体をビクン! とさせる。そしてキモチよさそうにブルブル鳥肌を無数に起こしながら、震える両足を立てて左右に広げる。するとボーイン自身というところから、全身をヌルヌルにさせた助平が出てくる。

「助平……」

 ボーインは上がってきた助平を谷間に置くと、少しばかりくぅっと豊満なふくらみを寄せてゆさぶったりした。そして助平は甘えん坊じゃなと言って可愛く笑う。おらが甘えん坊なのはボーインのせいじゃぁと助平がうれしそうに言い返すと、2人はもうただひたすらの幸せにしか見えん。

「おのれ……助平め!」

 若者たちにはげしい嫉妬と怒りが込み上げた。もっとも行動力に乏しくおとなしく地味な見た目という助平が、大胆な行動に出て豊満な幸せを手に入れている、そう思ったら若者たちはどうしてもあの2人を許せんとなるのじゃった。

「なに、助平がボーインに?」

 若者たちから話を聞かされた村の女たちは、たちまち鬼の形相で怒り始める。それを煽るように若者たちは言い続けた。

「助平はボーインの、あの豊満な乳って妖術に狂わされとるんじゃ」

「あのままでは助平は……助平はボーインに殺されてしまうんじゃ」

「かわいそうな助平……オラたちでは助けてやれんのじゃ……」

 すると怒り狂った女たちが一同に集結。全員が白いはちまきをし、手に手に矢を持って立ち上がったのじゃった。

「ボーインを殺せ!」

 村中の女たちが決起した。それは陽も落ちて薄暗くなっておるときじゃったから、女たちが持つたいまつの明かりが不気味に揺らめくのじゃった。

「なんじゃ、いったい何事じゃ?」

 ボーインはやってきた数多くの女たちを前にして少し怯えた。

「ボーイン! よくも純粋な助平を手に掛けたな!」

 言われたボーインはおどろいた。手にかけたなどとんでもない、自分と助平は愛し合っているのだと反論した。

「なーにが愛し合っているだ……じゃ!」

「乳が豊かじゃからって調子に乗り腐りおって」

「そうじゃそうじゃ、その乳で助平を貶める腹なんじゃろ!」

「魔物め……ボーイン、これは警告じゃ! いますぐこの村から出ていくんじゃ、ずっとずっと遠いところへひとりで行くんじゃ、一度も後を振り返らず今すぐ立ち去れば命だけは助けてやる」

 そう言った大勢の女たちはボーインに向かって矢をかまえた。その数の多さはもはや異様であり、まるで戦みたいじゃった。

「お、オラ……なんも悪いことしとらん。オラ、ほんとうに助平が好きなんじゃ、ただ助平とキモチを重ねたいだけなんじゃ」

「なーにがキモチを重ねたいじゃ! 可愛い子ぶった事を抜かしおって。どうせその豊満な乳で助平を弄んだだけじゃろ!」

「ちがう、オラそんな事しねぇだ。オラはほんとうに助平が好きで、心から愛し合いたい、そして誰にも迷惑をかけず幸せになりたいだけなんじゃ!」

「バカこくでねぇ、ボーイン……おまえの存在自体が人を不幸にするんじゃ!」

 今にも無数みたいな矢がボーインに向かって放たれようとしたそのとき、大声で叫びながらひとりの男が走ってきた。

「やめろぉ、やめてくれぇ」

 息を切らしながらかけてきた男、それはボーインと愛し合い幸せになりたいと願う助平じゃった。ボーインの前に立つと、おそろしい形相の女たちと向かい合い両腕を横に広げた。

「ボーインがいったい何をした言うんじゃ、ボーインは何もしとらん。そしてオラは、自分の意志でボーインに惚れたんじゃ、ボーインのやさしさに惚れたは自分の素直な心なんじゃ、それの何がいけないというんじゃ!」

 いま、ボーインは自分より小さな男が自分を守りたいと命を張って叫んだその姿に、両目からゆっくりと涙をこぼすのじゃった。

「助平、しっかりせんか! おまえはボーインに取り憑かれておるんじゃ」

「バカ言うでね、ボーインは魔物なんかでねぇ!」

「まだわからんか助平! ボーインはその豊満な乳でおまえという純真な男をたぶらかしておるだけなんじゃ。戻ってこい、今ならおまえの事はすべて不問じゃ。そして他の、もっといい女子をおまえに紹介してやるで、目を覚まして戻ってくるんじゃ!」

「イヤじゃ、オラ……ボーイン以外の女子なんかいらん!」

「この……分からず屋め、すっかり腑抜けおってからに!」

 女たちの向ける大量の矢はボーインではなく助平に向けられた。そして10数えるまでに退かなかったら、一斉射撃で殺すという通達が出た。

「助平、お願いじゃ、逃げるんじゃ、逃げるんじゃよ」

「バカ言うでねぇ、ボーイン……オラ、オラ……ほんとうにボーインが好きなんじゃ。なのになんで、オラがボーインを見捨てて自分だけ逃げられるんじゃ。ボーイン、オラは……オラはボーインの事が何より……」

 その時じゃった、助平がボーインに大事なことを言おうとしたまさにそのとき、ひゅん! っと鋭い音がひとつ発生し、助平の声が裏返ってしもうた。

「ぎゃぴ!」
 
 それは横から風の速度で放たれた一本の矢じゃ、想いを語ろうとしていた助平の右耳から入って左へしっかり貫通してしもうたのじゃ。

「助平?」

 ボーインがドキッとしたとき、大量の矢が助平に向かって一斉に放たれた。雨、雨、大雨、そんな感じで矢が正面から飛んでいく。

 一本はズブっと刺さって助平の左目を潰した。つぎにボーインへの想いを語らせまいとばかりに、ズブ! っと喉の真ん中にぶっ刺さる。

 刺さる、刺さる、いたるところに矢が刺さる。頭に顔面に胴体に下半身と、もはや助平の体は矢の語りになっておる。しかもすべての矢にはきつい毒が塗られておるのじゃった。

「ぁ……」

 ボーインが体をかがめ、手を伸ばそうとしても……間に合わんかった。ボーインへの想いを伝えたいとした助平は、最後の大事な一言を発することができずバッタリと倒れ死んでしもうた! それを見てショックで一瞬声が出せんようになったボーインに女たちは言うのじゃった。

「見ろ! おまえのせいで助平は死んでしもうた!」

「ボーイン、おまえじゃ、おまえが助平を殺したんじゃ!」

 女たちはそう言ってボーインを追い詰めようとした。じゃが、このときばかりは……これまで理不尽なイヤがらせに耐えてきたボーインもガマンなんぞできるはずもなかった。

「くぅ……」

 目の前が見えんほど大量の涙の流しながら、ボーインはグワッと勢いよく両手を上げると、それをそのまま振り下ろした。するとその手の平がひとりの女を脳天に直撃となり、女の両目は勢いよく外に飛び出してしまう。

「なんでじゃ……なんでおまんらはそんなにイジワルなんじゃ、なんでいつも人のキモチを傷つけることばかりするんじゃ。おまえの方こそ魔物じゃ、おまんらの方こそ鬼じゃ!」

 ボーインの深い悲しみははげしい怒りに変わった。

「おまんらが助平を殺したんじゃろうが!」

 ボーインの右足が前にいた女を踏み潰す。するとギュピ! っと歪んだ声が発生したつぎ、周辺にグチャグチャの内臓が飛び散る。

「オラが……助平が……おまんらにいったい何をした言うんじゃ!」

 愛する助平を殺されたボーインの怒りはもう収まらん。つよくにぎった右手を下にストレートとして下ろすと、直撃した女の体が血しぶきと共に砕け散る。

「ボーインが狂いよった!」

「見ろ、化け物が本性を現しおった、ボーインこそ鬼じゃ、人殺しじゃ!」

 女たちは後退していく。じゃが、それが女たちの策略じゃった。二段構えを敷いておった女たちは、大量の矢軍団にいまこそボーインに向かって放てと命令した。

「あんぅ!」

 想像を絶する大量の矢がボーインに向かって飛んでいき刺さる、刺さる、刺さる。その豊かな胸に刺さる。助平と愛し合ったボーイン自身という場所にぶっ刺さる。両腕をクロスさせ必死に耐えようとするが、そうすると頭にブスブス無限のごとく刺さっていく。

「助平……助平……」

 いま、死を覚悟したボーインは最後に……愛する助平に向かって言いたいと思った。

「助平……オラは、オラは……ずっと助平の事が……」

 顔を上げ大きな声で言い切ろうとしたとき、大量の矢がボーインの顔面とノドに突き刺さり、言葉を遮ってしもうた。

「ぶ……ぅ……」

 口から大量の血を吐きながら、片目を潰されもう片方から涙を流しながら、最後の一言を放てんかった哀しみを持って……可哀想なボーインは仰向けに倒れてしもうた。じゃが……おそろしい事にこれで話は終わらんかった。興奮している女たちの中からこんな声が出たから収まりが訪れん。

「まだじゃ! ボーインは魔物じゃけぇ、死んでも復活しよるんじゃ!」

「じゃぁどうするんじゃ?」

 そこで村人たちは……ボーインをバラバラにした後、ミソ鍋にして食うてしもうた。それはとても美味だったと記憶されるにいたる。

 じゃが、腹が満たされると人は優しくなる。村人たちはボーインを食ってから、次第に申し訳ないキモチになっていくのじゃった。

「オラたち……やりすぎたのかもしれんのぉ」

「さすがに気の毒な事をしたのかもしれん」

「わしらもう少しボーインにやさしくしてやるべきじゃったんじゃ」

 こうして村人たち、特に女たちはボーインに酷いことをしてしもうたと深く反省し、ボーインに許しを乞うため必死になって祈りを捧げたという。それからじゃった、大柄で豊満な乳房を持った女のことをボインと呼ぶようになったのは。
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