異世界✕兄妹✕姉妹

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多貴の若返り作戦

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8・多貴の若返り作戦


 夜もかなり進行しているという頃合いにて、多貴、エリス、ホリーの3人はとあるデッカイ研究所とやらにたどり着いた。明日の朝でもいいんじゃないの? とエリスは言っていたが、こういう事は早くやりましょう! とノリノリのホリーが押した。ゆえに多貴は本日という日付中に若返るとなった。

「ここ?」

 ホテルから乗ってきたタクシーを下りた多貴、数歩進んだら立ち止まって眼前の建物を見た。それはポニー技術団の有する建物、その名もポニーラボラトリー。研究好きなオタクは夜行性が多いとの事で、24時間稼働しているとの事。

「3人一緒で」

 先頭に立つエリスが神々しいカードを警備員みたいな女に見せた。すると何ら問題なく通れるどころか、警備員がうやうやしく頭を下げたりする。

「エリスはポニーのお姉ちゃんだからさ、無礼とか粗末に扱うとか許されないわけよ。そんな事がバレたらポニーが火山のごとく激怒する」

 そんな風にホリーは説明してくれた。そして3人が中に進むと、20代の中盤くらいであろう女子が一人登場。上に白衣をまとい超バリバリの理系です! ってオーラを惜しげもなく発散している。

「これはエリスさま、お越しいただいて恐縮でございます」

 ペコリと頭を下げる様が浮かべば、エリスがますますまぶしい存在と多貴の目に映るのだった。ポニー技術団はポニーが自分の妄想を具現化するため、そして女に活躍の場を与えるための一つとして設立したモノ。常人の想像がまったく及ばないほどのお金を注入し、技術系の人間にとっては夢のよう場所としている。ただしポニー自身だけでなく、ポニーに関係する人間に無礼があってはならないときびしく命じられていた。

「で、エリスさま、今日はどのような御用で」

 そう質問されたエリス、すぐ近くにいた多貴の腕を掴んでひっぱり、自分の横に立たせてから伝えた。

「この彼を若返らせて欲しい」

「これはこれは……」

 白衣女子は多貴を見て一瞬だが露骨に驚いた。エリスといっしょにいるホリーに関しては問題ないものの、男の方はあまりにも異質にしか見えなかった。エレガントって感じがない。代わりに不健康で習得した堕落感が一杯。22歳とかいう割にはすで先のくらい肥満がチラついている。

「多貴、あなたが絶頂だったと思うのは15歳くらいだったっけ?」

「そう……だったかな、ハハ……」

「それならこの彼を15歳の頃まで若返らせて欲しい」

 エリスはそう言いながら上品なバッグから王家専用ブラックカードを取り出す。これを出されて拒む事は不可能。しかし逆に言うなら王家だからタダという風にはしなかった。それはポニーの考えによる。

 ポニー曰く、金は天下の回りもの。金に不足するのも哀しいが、金に溺れるのもクズ。だからいかな人間も金の所有と使用には全責任を持ち、その上で経済活動に参加せねばならないとしていた。

「一応念のために言っておきたいのですが……」

 白衣女子はエリスのカードを受けったら、ものすごい金がかかりますよ? とひとまずは確認をする。

「かまわないわ」

 具体的にいくら持っているかは言うわけないものの、宇宙旅行以上のおそろしい金額とか言われても全然へっちゃらってくらいは持っていた。それはエリスだけでなくホリーも同じ。

「では、少々お待ちを」

 料金先払いなので、女はすぐそこにある機械にカードを通す。これもポニーによる命令だった。後払いにすると食い逃げみたいな踏み倒しが起こるかもしれない。特にこう言った超絶な金を必要とする物事を、庶民がさっくり悪用しては笑い話になるということで、何がなんでも先払い。その代わり金をもらったら責任ある仕事をする。

「ありがとうございました。カードをお返しいたします」

 うやうやしくカードを返す女。これでポニー技術団はすごい金を自力で稼いだ事になる。それは自分たちの責任で好きに使えばいいとポニーから言われていた。だからさらなる発展をしてもよし、ローマのように堕落して崩壊しても良しとされている。

「ではこちらに」

 女はゆっくり歩いて3人をお目当ての空間に案内した。すると円形のワンマンステージみたいな場所があり、多貴はそこの真ん中に立つよう指示される。

「エリスさま、今のところ永久に若返らせることはできないのですが、それはご承知くださいますか?」

「2,3ヶ月くらいでしょう? それでもかまわないわ」

「では、多貴とやら深呼吸して楽に立って」

 女がステージの近くで何やら機械を操作する。すると不安でドキドキしている多貴の上からとても大きいカプセルみたいなモノが降りてくる。

―ドーンー

 多貴が上からすっぽりとドデカいカプセルに包まれた。そして今度はステージ全体がウワーンと音を立てまぶしく光りだす。

「な、なに……」

 カプセル内にいる多貴はまぶしいって事以外にの理由でもおどろく。足元がぐらつく。いや地面とかいうがグニャーっとやわらかく曲がっていくように感じる。だからまぶしい中でまっすぐ立っていられない感じに持っていかれる。

「う、うわぁ……」

 多貴の視界が大きく歪む。いやちがう、歪んだ世界を見ているのではなく、歪んだ空間を自分の体が泳いでいるというべき。

(あぅ……)

 ズキン! と頭痛が一つ発生。引っ張られる、どこぞに自分が持っていかれる。それは何かと手を結ぶような感じがあって、不安の中にも少量の希望があるようだった。そして多貴の体は奇妙な感覚に包まれた。

(な、なんだこれ)

 多貴の目が回る。足が地面より離れたましいごと回転するように感じる。遠いどこかへ流されていくような感じがする。そうして何やらユラユラするって思った時、何かがパン! っと弾けたようだった。

(ん?)

 おちついていく……あらゆる感覚が穏やかになっていく。そして目が潰れるかと思うほどだったまぶしさも輝度を下げていく。そして気がつくと多貴は自分の両足で立っていて、ゆっくり左右の目を開く。

「お、おぉ!」

 カプセル内の多貴を目にしたホリーが両手を合わせはしゃぐ

「あらあら、これはこれは」

 エリスはちょっと顔を赤くしてカプセル内の多貴へ目をやる。

「どうやら無事に成功したようです」

 白衣の女はそう言ってマシーン操作。多貴を閉じ込めていたドデカいカプセルを情報へと移動させていく。

「ん? ん? ん?」

 多貴はまず自分の両手平を見つめる。べつに傷があるわけでもなければ、不愉快な印がついているってわけでもない。されど何かが妙だって言いたくなる。次に多貴は自分の服がおかしくなった事に気づく。

「あ、あれ?」

 服がみっともなくダボっていた。サイズの合わない服を着た格好悪さを誇るみたいな感じで恥ずかしくなる。

 しかし服がおかしくなったではなく、自分の体が変化したのだとわかった。見た感じでは腕が細い。でもそれでいて中身がスカスカって感じはまったくなく、むしろ湧き上がるような力に自ら興奮しそうになる。

「多貴ってけっこうイケメン的にかわいい少年だったんだね。若返ってもブサイクだと思ってたけど全然ちがうじゃん」

 けっこうひどい表現を交えてホメるホリーが歩み寄ってきた。その顔は中学生くらいの女子が特定の男子をチヤホヤする色合いそのもの。

「え、少年?」

 ズボンがズレそうになるので抑えながら多貴はどういう事と思い、ふっとエリスと目を合わせた。

「くす、けっこうステキね」

 ホリーよりはクールに思えるエリスまで男子に胸をくすぐられちゃったみたいな表情を作ったではないか。

「え、ぼくって今どうなっているわけ?」

 知りたい、自分の姿を見たい! と多貴が言いかけると、それはお任せあれ! という風に白衣女子がスタンドミラーを持ってくる。そして多貴の前にドン! と置いたら、とくとご覧あれ! なんて言う。

「あぅ!」

 多貴は前例のない衝撃に2.3秒ほど意識が飛んだ。いったいお前は誰だ! と思った次の瞬間、忘れていた過去がすごいスピードで蘇る。ふつうでは絶対に経験出来ないスペシャルもスペシャルな現実。

「以前の多貴ってけっこうイケてるよ。これお姉ちゃんの好みかもしれない」

 ホリーは新生多貴の真横に立ち、なかなかステキだよ! というセリフをくり返す。でも多貴は若返った自分を見て、たしかに沸騰するような勢いはあると思いながらも、ある疑問をエリスに投げかけた。

「いくら若返っても……体力が無制限にあるように思えても、剣術とかやったことがない。そんなぼくが短期間でマスターするなんてムリだよ」

 多貴の顔には責任を背負いたくないって意思が浮かんでいた。でもエリスは少年の多貴を見て顔を赤くしながら、多貴がその気になってくれたらだいじょうぶだよなんて返す。そしてその理由を時間の歪みだと説明する。

 若返った多貴のたましいは歪んだ時空とリンクしている。それが解除されるまでの間は、時間の経ち方というか感じ方が変化するのだとエリスは言う。

「変わるってどういう風に?」

「ふつうの人より3倍くらい長く感じる、あるいは遅くなる。だからわたしたちの24時間というのが、多貴にとっては8時間みたいな話かな」

「そんな……長すぎるよ」

「うん、だけど多貴……仕向けたわたしが言うのもなんだけど、通常より3倍の時間があればすごい短期間で成長できる。ふつうなら1年ってところが3ヶ月ちょいで出来る」

 エリスはここでちょっと言葉をつまらせた。それは胸の内にある自覚のせい。多貴には妹の詩貴を取り戻すという目的があるのだけど、エリスがポニーに勝つって話をかぶせようとしている。つまり多貴に代理戦争をさせようとしている。そんな自分をあざといと胸を痛めながらも、多貴によろしくとお願いする自分がイヤらしいと恥ずかしがりながらお願いしている。

「多貴、だいじょうぶ! わたしが指導する。こう見えてもわたしつよいんだよ。ポニーとかお姉ちゃんには少し劣るけど、並外れた実力くらいは持ってる。だからもしかすれば、多貴は短期間でわたしを超えられるかもしれない」

 ホリーはここでタイミングよく2人の間に入った。これは若返った多貴を指導してみたいって興奮にプラスして、エリスがあざとい女って話にならないよう気配りしてのことだった。

「それにさ多貴、つよくなったらお姉ちゃんにホレられるかもよ?」

 すっかりキブンノリノリなホリーは18金のスマホをエリスに渡し、多貴といっしょの姿を撮ってくださいとお願いしたりする。どうやらその画像を姉のエリーに送り、ただいまこんな展開です! と報告つもりらしい。

「ちょ、こんなはずかしい格好で写真なんか撮られたくない」

 多貴はダボダボの情けない格好を撮られたくないとイヤがる。でもホリーはエリスに写真を撮ってもらったら、それを添付したメールの作成に取り掛かる。

「多貴、わたしこんな風に書こうと思う」

「どんな風に書くと?」

「2ヶ月もあれば最強の戦士が誕生するだろう。その時はいかにエリーやポニーでも油断はできない! と」

「そんなこと書かれたら困る」

「っていうか、もう書いて送っちゃった!」

「くぅ……」

 こうして多貴はダボダボになった衣服を捨て、べつの格好になるため更衣室に案内される。そして明日から早速ホリーの特訓を受けねばならなくなった。いやそれだけならまだしも、エリーやホリーを驚かせるくらい強くなることを義務付けられてしまった。
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