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第一章 魔力無し転生者は冒険者を目指す
第五十九話 実力向上
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「最初の議題は二学期に行われる大会でどこまで行けるのか。を話し合いたいと思います」
なんかラフな会議だな。こう堅苦しいのをイメージしていたが全然違った。だからと言って遊んだりしてるわけじゃないけど。
となりの席同士の者で真剣に話し合う声が聞こえてくる。
「まずは個人戦だけど、まず私の意見を言わせて貰えば優勝は間違いないと思っています。上手く行けば優勝、準優勝、3位と全てを勝ち取ることも可能だと私は考えています」
その言葉に会議内がどめよく。
「確かにイザベラ様の力を持ってすれば確実とまでは言わないにしても無理ではないでしょう。しかしそれはあまりにも自信過剰なのでは?」
「いえ、それぐらいの自信と意気込みという事なのでは?」
「なるほど……」
現在この場には俺、イザベラ、オスカーの個人戦代表者と五芒星、失われた王冠、正義の剣、緋色の幸せ、夏の雲の団体戦代表チーム全員と顧問のエレイン先生。合計27名がこの場で話しあう。
「確かに意気込みでもありますが、優勝は事実だと思っています」
「しかし……」
「イザベラ様でもそれはさすがに……」
たぶん俺では無理だと思っているんだろうな。ま、無理も無い。魔力が生きていくうえで必要であり、戦闘では絶対的力を持つ。それがない人間に3位までに入れるって言われても誰も信じないだろう。
「俺もイザベラ様と同じ考えだ。このメンバーなら個人戦を独占することは夢ではない」
「オスカー君まで何を言うの。確かにその男はオスカー君やイザベラ様を倒した。その力はここに居る誰もが認めているわ」
あれ、認めているんだ。以外だ。いや、そうでもないのか?ここにいる奴等は全員あの決闘に参加していなかった連中だ。それを考えれば力を認めてくれていると言う事なんだろう。たぶん。
「でも他の学園や学校の代表だって甘くみて良い相手じゃない。北地区にあるロウト冒険者学校で最強と言われている破壊の剛拳の異名を持つ、バンス・ブライ。東地区にあるスヴェルニ第二学園には錬金術師の異名を持つ、クレオ・プロモ・ハーパー。南地区にあるスヴェルニ軍事学校には蹂躙の異名を持つ、バルド・フォン・ホスマン。南西にあるファルリス女学院には幻術使いの異名を持つ、ツチミカド・レンカ。など意識しないといけない相手です」
ツチミカド・レンカ、か。どう考えても迷い人か送り人だよな。
「それでもイザベラ様は上位三つを獲得できると考えておられるのですか」
「ええ」
その言葉に呆れや困惑の表情が見える。さすがのイザベラでも無理か。
「なあ、イザベラ」
「何かしら?」
「名前が出てきた奴等ってイザベラやオスカーとどっちが強いんだ?」
「今、名前が出てきた人なら全員一度闘って勝っているわよ。私は」
このチートめ。どれだけ強いんだよお前は。
「俺はバンスとしか闘ったことがないが、余裕で勝ったぞ」
「なら、余裕だな」
「貴様!優勝したからって調子に乗るな!」
軍務科の一人が大きな声で怒鳴り散らしてくる。
「そうよ。貴方に何が出来るのよ!」
「なら聞くが、2000人相手にお前等は勝てるのか?」
「そ、それは……」
「つまりここにいる誰よりも俺は強い。その事を忘れてもらっては困るな」
「だからと言って相手との相性だってあるのよ。特に幻術使いのツチミカド・レンカは貴方とは相性が最悪でしょうね」
異名からしてそうだろうな。
だけどこのまま話したって進まないだろうな。
「イザベラ」
「何かしら?」
「少し力を表に出してもいいか?」
「物を破壊するのは無しよ」
「分かってるって。少し見せるだけだって」
「それなら構わないけど。どれぐらい出す気なの?」
「そうだな……5%ってところか?」
「「なっ!」」
俺の言葉にイザベラとロイドが驚く。ま、無理も無いか炎龍を殺したときの倍以上だからな。なにも知らない奴等は首を傾げているが。
「そんなに力を出したら気絶じゃすまないわよ!」
「お前は馬鹿なのか!」
酷い言われようだな。
「だけど身を持って知ってもらうにはこれぐらいじゃないと駄目だろ」
「……分かったわ。全員強く意識を持ちなさい。でないと後悔するわよ」
イザベラの忠告に何人が言う通りに行動したかは分からないが関係ない。俺の力を手っ取り早く知ってもらうにはこれしかないからだ。
軽く目を瞑って力をコントロールする。これぐらいなだな。
「ふっ」
力の波動を放つ。
『っ!』
いったい何を感じたのかは俺には分からない。ただ俺の経験談で良いのなら絶望と強烈な死の予感だ。
何十倍にも体が重く感じ、息苦しくなる。それが圧倒的力を持った奴と相対した時の感想だ。
ま、その結果。俺、エレイン先生、イザベラ、ロイド、オスカー以外全員が気絶した。中には失禁までしている者もいたが見なかったことにしよう。女性には優しくしないとな。
急遽アヴァ先生を呼んで全員を起こしてもらった。着替えないといけない生徒もいたため、会議は一時間後に再開した。俺はその間イザベラに説教される羽目になった。ま、当たり前か。
ようやく会議が再開したが先ほどまでとは会議室の空気が一変していた。
先ほどまでは、ひりつくほどでは無かったにしろ真剣な空気が漂っていたが、今では俺に対する怯えと恐怖が充満していた。予想以上の効果。
「でも、これで俺の実力は理解して貰えたか?」
「え、ええ。貴方に対してはこれ以上言うことはないわ」
「その通りだ。むしろなぜ今までその実力を隠していたのか理解に苦しむほどだ」
「理由は幾つかあるが、利用されるのは好きじゃないし、目立つもの嫌いだ。ま、既に目立っているけど気にするほどじゃないからな。ま、一番の理由は違うが」
『一番の理由?』
全員の声が重なる。そんなに気になるのか?ま、当然といえば当然か。これだけの力があれば名声も名誉も保障されたようなものだ。ま、興味ないけど。
「だって本気出したら相手を殺してしまうだろ?」
『っ!』
俺の言葉に全員の体が震える。どうしたんだ?
「なに同じ学園の生徒を脅してるのよ!」
「あいたっ!」
イザベラに叩かれてしまった。
「別にそんなつもりで言ったんじゃねぇよ。事実を言っただけだ!」
「言い方ってモノがあるでしょ!」
「なら、なんて言うんだよ!本気を出すと相手をご臨終にしてしまいます。か?」
「丁寧語に直しても意味が同じじゃない!」
だからなんて言えば良いんだよ。頭が良いんだから教えてくれよ!
「これがイザベラ様を倒した男……」
「なんだか拍子抜けなような……」
「いや、イザベラ様だから出来るんじゃないのか?」
なんだか変なことで相談しているような。
「みんなも驚いたとは思うけど、ジンはこの力で誰かを支配しようとか、暴力で従わせようとかする人じゃないわ。みんなもフレンドリーに話しかければ直ぐになかよくなれるわよ。私もそうだったしね」
「いつでも話しかけてきてくれて平気だぞ。特に美味いご飯を出すお店や可愛い女の子がいるお店とか教えてくれるととても嬉しい」
「自己紹介で自分の欲望を頼んでるのよ!」
「痛たっ!」
だからそう何度も叩くなよな。
「一応聞くけど個人戦で上位三つを狙うことは難しいと思うかしら?」
イザベラの質問に反対するものはいなかった。ま、結果オーライと言ってもいいだろう。
「次に団体戦だけど、決勝トーナメントまでは全員が残れるように各自で実力向上をするしかないでしょうね。ま、個人戦でも言えることだけど」
「学園代表選抜の時とは違って同じ学校、学園であれば代表者同士で訓練することが認められていますが、流石に一ヶ月そこらで強くなるのは限度があります」
「誰か、圧倒的に強い人と闘って慣れておけば……平気なんでしょう……けど」
「ん?」
なぜか全員の視線が俺に向けられているんだが。
「ねぇ、ジン」
「嫌だ」
「まだ何も言ってないでしょうが!」
「いや、分かってるけど。この流れは面倒な流れだと俺の勘が警鐘を鳴らしてるんだよ」
「なんで面倒なことで警鐘がなるのよ……ま、それはおいといて。ジンはここにいる全員と闘ったとして二学期の大会に支障が出るってことがあるかしら?」
「全員ってのはどんな形式での闘いだ?一チームずつか?それとも全員同時に相手したとしてか?」
(本当は一チームって言いたいけど、ここは厳しいほうで言ったほうが良いでしょうね)
「全員同時に闘ってよ」
「余裕」
ピキッ!
うん?なんだか纏う空気が変わったような気がする。ま、良いけど。
「加減次第では負けるだろうが、僅かな力を出しただけで大半が気絶するよう奴等なら余裕だな」
それに相手殺さないようにしないといけないしな。
「でしょうね。分かってはいたけど」
(それでも腹が立つわね。皮肉でも意地悪でも無いって分かってるから余計に腹が立つ!)
なんだかイザベラの様子もおかしいような。
「なら終業式までの間の一週間。私たちの相手してくれないかしら?」
「断る」
「なんでよ!」
「面倒だから!」
せっかく武闘大会も終わったのに授業が終わったあとでどうして自主訓練をしなければならないんだ。部屋でゴロゴロしたいんだ。綺麗なお姉さんたちとイチャイチャしたいんだ。
「同じ学園の生徒ですよね。仲間ですよね?」
名前は知らないがそんな事を言ってくる。
「確かにその通りだ。だがなんでもかんでも他人頼りと言うのはどうなんだ?」
「うっ」
ハッハッハッ、屁理屈で俺に勝てると思うなよ。社会の荒波に十数年浸かっていたんだからな!
「確かに先輩の言うとおりだ。最初から他人頼りと言うのはよくない」
「オスカー君まで」
「だが、どうやら先輩は一対一では俺たちに勝てても、複数相手には勝つ自信がないらしい。ま、学園最強としては見栄を張りたいから、さっきはあんなことを言ったんだろうが。悪かったな無理な頼みをしてビビリ先輩」
(なんて、分かりやすい挑発なの)
(馬鹿な奴だが、流石に乗らないだろう)
(ここまで分かりやすい挑発初めて聞きました)
「上等だ!やってやろうじゃねぇか!後悔するんじゃねぇぞ、クソ後輩が!」
((((乗った!))))
誰がビビルかよ。あの地獄のような島で五年間くらしてきた俺をなめるなよ!
「これで、一週間の短期特訓は決まったわね」
「待った」
「ジン、何かしら?まさか今になって断るとか言わないわよね?」
「言わねぇよ。そうじゃなくてだな。実はその短期特訓に参加させて欲しい奴等がいるんだ。我侭だってことは分かってはいるが、俺のせいで団体戦を棄権することになったからな」
「ジュリアス君たちのことね。私は別に構わないわよ」
「だが、我侭を許してしまえば他の生徒たちも参加したがるんじゃないか?」
「特例ってことで許しましょ。私たちがジンに特訓を頼み込んだわけだし」
「イザベラ様がそういうなら」
見た目に反しては真面目な奴だな。あの筋骨隆々男は。
「それじゃ、訓練は明日の午前9時から。場所はメールで送信するということで」
「明日から!」
「あたりまえでしょ。時間もないんだし」
「いや、明日は休日なんだし体を休めた方が良いと思うんだが」
「却下」
せっかくの休みがまた訓練で潰れてしまった。どうして、こうなったんだ!
こうして団体戦個人戦の話し合いが終了した。対策と言うより実力向上を目的とした話し合いだった気もするが。いや、それも対策の一つか?ま、どちらでも良いか。
会議室を出て寮に戻ろうとした時、イザベラが話しかけてきた。
「ジン、悪いわね」
「そう思うんなら、休日は特訓無しにしてくれれば良かったのに」
「やるなら徹底的にが私のモットーなの。知ってるでしょ?」
「ああ、身をもって味わったから知ってるよ」
地獄のような試験勉強でな。
「なにか、失礼なこと考えなかった?」
「ベツニ」
相変わらず鋭いな。
「悪いけど、明日からお願いね」
「ああ」
さて、ジュリアスたちにメールで知らせておかないとな。
なんかラフな会議だな。こう堅苦しいのをイメージしていたが全然違った。だからと言って遊んだりしてるわけじゃないけど。
となりの席同士の者で真剣に話し合う声が聞こえてくる。
「まずは個人戦だけど、まず私の意見を言わせて貰えば優勝は間違いないと思っています。上手く行けば優勝、準優勝、3位と全てを勝ち取ることも可能だと私は考えています」
その言葉に会議内がどめよく。
「確かにイザベラ様の力を持ってすれば確実とまでは言わないにしても無理ではないでしょう。しかしそれはあまりにも自信過剰なのでは?」
「いえ、それぐらいの自信と意気込みという事なのでは?」
「なるほど……」
現在この場には俺、イザベラ、オスカーの個人戦代表者と五芒星、失われた王冠、正義の剣、緋色の幸せ、夏の雲の団体戦代表チーム全員と顧問のエレイン先生。合計27名がこの場で話しあう。
「確かに意気込みでもありますが、優勝は事実だと思っています」
「しかし……」
「イザベラ様でもそれはさすがに……」
たぶん俺では無理だと思っているんだろうな。ま、無理も無い。魔力が生きていくうえで必要であり、戦闘では絶対的力を持つ。それがない人間に3位までに入れるって言われても誰も信じないだろう。
「俺もイザベラ様と同じ考えだ。このメンバーなら個人戦を独占することは夢ではない」
「オスカー君まで何を言うの。確かにその男はオスカー君やイザベラ様を倒した。その力はここに居る誰もが認めているわ」
あれ、認めているんだ。以外だ。いや、そうでもないのか?ここにいる奴等は全員あの決闘に参加していなかった連中だ。それを考えれば力を認めてくれていると言う事なんだろう。たぶん。
「でも他の学園や学校の代表だって甘くみて良い相手じゃない。北地区にあるロウト冒険者学校で最強と言われている破壊の剛拳の異名を持つ、バンス・ブライ。東地区にあるスヴェルニ第二学園には錬金術師の異名を持つ、クレオ・プロモ・ハーパー。南地区にあるスヴェルニ軍事学校には蹂躙の異名を持つ、バルド・フォン・ホスマン。南西にあるファルリス女学院には幻術使いの異名を持つ、ツチミカド・レンカ。など意識しないといけない相手です」
ツチミカド・レンカ、か。どう考えても迷い人か送り人だよな。
「それでもイザベラ様は上位三つを獲得できると考えておられるのですか」
「ええ」
その言葉に呆れや困惑の表情が見える。さすがのイザベラでも無理か。
「なあ、イザベラ」
「何かしら?」
「名前が出てきた奴等ってイザベラやオスカーとどっちが強いんだ?」
「今、名前が出てきた人なら全員一度闘って勝っているわよ。私は」
このチートめ。どれだけ強いんだよお前は。
「俺はバンスとしか闘ったことがないが、余裕で勝ったぞ」
「なら、余裕だな」
「貴様!優勝したからって調子に乗るな!」
軍務科の一人が大きな声で怒鳴り散らしてくる。
「そうよ。貴方に何が出来るのよ!」
「なら聞くが、2000人相手にお前等は勝てるのか?」
「そ、それは……」
「つまりここにいる誰よりも俺は強い。その事を忘れてもらっては困るな」
「だからと言って相手との相性だってあるのよ。特に幻術使いのツチミカド・レンカは貴方とは相性が最悪でしょうね」
異名からしてそうだろうな。
だけどこのまま話したって進まないだろうな。
「イザベラ」
「何かしら?」
「少し力を表に出してもいいか?」
「物を破壊するのは無しよ」
「分かってるって。少し見せるだけだって」
「それなら構わないけど。どれぐらい出す気なの?」
「そうだな……5%ってところか?」
「「なっ!」」
俺の言葉にイザベラとロイドが驚く。ま、無理も無いか炎龍を殺したときの倍以上だからな。なにも知らない奴等は首を傾げているが。
「そんなに力を出したら気絶じゃすまないわよ!」
「お前は馬鹿なのか!」
酷い言われようだな。
「だけど身を持って知ってもらうにはこれぐらいじゃないと駄目だろ」
「……分かったわ。全員強く意識を持ちなさい。でないと後悔するわよ」
イザベラの忠告に何人が言う通りに行動したかは分からないが関係ない。俺の力を手っ取り早く知ってもらうにはこれしかないからだ。
軽く目を瞑って力をコントロールする。これぐらいなだな。
「ふっ」
力の波動を放つ。
『っ!』
いったい何を感じたのかは俺には分からない。ただ俺の経験談で良いのなら絶望と強烈な死の予感だ。
何十倍にも体が重く感じ、息苦しくなる。それが圧倒的力を持った奴と相対した時の感想だ。
ま、その結果。俺、エレイン先生、イザベラ、ロイド、オスカー以外全員が気絶した。中には失禁までしている者もいたが見なかったことにしよう。女性には優しくしないとな。
急遽アヴァ先生を呼んで全員を起こしてもらった。着替えないといけない生徒もいたため、会議は一時間後に再開した。俺はその間イザベラに説教される羽目になった。ま、当たり前か。
ようやく会議が再開したが先ほどまでとは会議室の空気が一変していた。
先ほどまでは、ひりつくほどでは無かったにしろ真剣な空気が漂っていたが、今では俺に対する怯えと恐怖が充満していた。予想以上の効果。
「でも、これで俺の実力は理解して貰えたか?」
「え、ええ。貴方に対してはこれ以上言うことはないわ」
「その通りだ。むしろなぜ今までその実力を隠していたのか理解に苦しむほどだ」
「理由は幾つかあるが、利用されるのは好きじゃないし、目立つもの嫌いだ。ま、既に目立っているけど気にするほどじゃないからな。ま、一番の理由は違うが」
『一番の理由?』
全員の声が重なる。そんなに気になるのか?ま、当然といえば当然か。これだけの力があれば名声も名誉も保障されたようなものだ。ま、興味ないけど。
「だって本気出したら相手を殺してしまうだろ?」
『っ!』
俺の言葉に全員の体が震える。どうしたんだ?
「なに同じ学園の生徒を脅してるのよ!」
「あいたっ!」
イザベラに叩かれてしまった。
「別にそんなつもりで言ったんじゃねぇよ。事実を言っただけだ!」
「言い方ってモノがあるでしょ!」
「なら、なんて言うんだよ!本気を出すと相手をご臨終にしてしまいます。か?」
「丁寧語に直しても意味が同じじゃない!」
だからなんて言えば良いんだよ。頭が良いんだから教えてくれよ!
「これがイザベラ様を倒した男……」
「なんだか拍子抜けなような……」
「いや、イザベラ様だから出来るんじゃないのか?」
なんだか変なことで相談しているような。
「みんなも驚いたとは思うけど、ジンはこの力で誰かを支配しようとか、暴力で従わせようとかする人じゃないわ。みんなもフレンドリーに話しかければ直ぐになかよくなれるわよ。私もそうだったしね」
「いつでも話しかけてきてくれて平気だぞ。特に美味いご飯を出すお店や可愛い女の子がいるお店とか教えてくれるととても嬉しい」
「自己紹介で自分の欲望を頼んでるのよ!」
「痛たっ!」
だからそう何度も叩くなよな。
「一応聞くけど個人戦で上位三つを狙うことは難しいと思うかしら?」
イザベラの質問に反対するものはいなかった。ま、結果オーライと言ってもいいだろう。
「次に団体戦だけど、決勝トーナメントまでは全員が残れるように各自で実力向上をするしかないでしょうね。ま、個人戦でも言えることだけど」
「学園代表選抜の時とは違って同じ学校、学園であれば代表者同士で訓練することが認められていますが、流石に一ヶ月そこらで強くなるのは限度があります」
「誰か、圧倒的に強い人と闘って慣れておけば……平気なんでしょう……けど」
「ん?」
なぜか全員の視線が俺に向けられているんだが。
「ねぇ、ジン」
「嫌だ」
「まだ何も言ってないでしょうが!」
「いや、分かってるけど。この流れは面倒な流れだと俺の勘が警鐘を鳴らしてるんだよ」
「なんで面倒なことで警鐘がなるのよ……ま、それはおいといて。ジンはここにいる全員と闘ったとして二学期の大会に支障が出るってことがあるかしら?」
「全員ってのはどんな形式での闘いだ?一チームずつか?それとも全員同時に相手したとしてか?」
(本当は一チームって言いたいけど、ここは厳しいほうで言ったほうが良いでしょうね)
「全員同時に闘ってよ」
「余裕」
ピキッ!
うん?なんだか纏う空気が変わったような気がする。ま、良いけど。
「加減次第では負けるだろうが、僅かな力を出しただけで大半が気絶するよう奴等なら余裕だな」
それに相手殺さないようにしないといけないしな。
「でしょうね。分かってはいたけど」
(それでも腹が立つわね。皮肉でも意地悪でも無いって分かってるから余計に腹が立つ!)
なんだかイザベラの様子もおかしいような。
「なら終業式までの間の一週間。私たちの相手してくれないかしら?」
「断る」
「なんでよ!」
「面倒だから!」
せっかく武闘大会も終わったのに授業が終わったあとでどうして自主訓練をしなければならないんだ。部屋でゴロゴロしたいんだ。綺麗なお姉さんたちとイチャイチャしたいんだ。
「同じ学園の生徒ですよね。仲間ですよね?」
名前は知らないがそんな事を言ってくる。
「確かにその通りだ。だがなんでもかんでも他人頼りと言うのはどうなんだ?」
「うっ」
ハッハッハッ、屁理屈で俺に勝てると思うなよ。社会の荒波に十数年浸かっていたんだからな!
「確かに先輩の言うとおりだ。最初から他人頼りと言うのはよくない」
「オスカー君まで」
「だが、どうやら先輩は一対一では俺たちに勝てても、複数相手には勝つ自信がないらしい。ま、学園最強としては見栄を張りたいから、さっきはあんなことを言ったんだろうが。悪かったな無理な頼みをしてビビリ先輩」
(なんて、分かりやすい挑発なの)
(馬鹿な奴だが、流石に乗らないだろう)
(ここまで分かりやすい挑発初めて聞きました)
「上等だ!やってやろうじゃねぇか!後悔するんじゃねぇぞ、クソ後輩が!」
((((乗った!))))
誰がビビルかよ。あの地獄のような島で五年間くらしてきた俺をなめるなよ!
「これで、一週間の短期特訓は決まったわね」
「待った」
「ジン、何かしら?まさか今になって断るとか言わないわよね?」
「言わねぇよ。そうじゃなくてだな。実はその短期特訓に参加させて欲しい奴等がいるんだ。我侭だってことは分かってはいるが、俺のせいで団体戦を棄権することになったからな」
「ジュリアス君たちのことね。私は別に構わないわよ」
「だが、我侭を許してしまえば他の生徒たちも参加したがるんじゃないか?」
「特例ってことで許しましょ。私たちがジンに特訓を頼み込んだわけだし」
「イザベラ様がそういうなら」
見た目に反しては真面目な奴だな。あの筋骨隆々男は。
「それじゃ、訓練は明日の午前9時から。場所はメールで送信するということで」
「明日から!」
「あたりまえでしょ。時間もないんだし」
「いや、明日は休日なんだし体を休めた方が良いと思うんだが」
「却下」
せっかくの休みがまた訓練で潰れてしまった。どうして、こうなったんだ!
こうして団体戦個人戦の話し合いが終了した。対策と言うより実力向上を目的とした話し合いだった気もするが。いや、それも対策の一つか?ま、どちらでも良いか。
会議室を出て寮に戻ろうとした時、イザベラが話しかけてきた。
「ジン、悪いわね」
「そう思うんなら、休日は特訓無しにしてくれれば良かったのに」
「やるなら徹底的にが私のモットーなの。知ってるでしょ?」
「ああ、身をもって味わったから知ってるよ」
地獄のような試験勉強でな。
「なにか、失礼なこと考えなかった?」
「ベツニ」
相変わらず鋭いな。
「悪いけど、明日からお願いね」
「ああ」
さて、ジュリアスたちにメールで知らせておかないとな。
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そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
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