魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒

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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す

第二十話 ジョセフィーヌを探せ!

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 ジンさんがギルドを後にして数分。未だにギルドマスターであるカルメさんは放心状態だった。いったいどうしたんだろう。

「あ、あのカルメさん?」
「っ!あ、あの男は!?」
「ジ、ジンさんですか?ジンさんなら帰りましたけど」
「なんだと!?」
「ひぃうっ!」
「す、すまない。別にカルアが悪いわけじゃない」
 急に慌てたり怒ったり、いったいどうしたんだろう。

「カルアさん、そんなに慌ててどうしたんですか?」
「これを見てみろ」
 渡されたのは先ほどジンさんが打ち抜いた的。

「あれ?穴が一つしかありませんよ」
 私はさっきジンさんが撃っている時少し離れていたため射撃結果は見ていない。だからどうして穴が一つだけなのか分からない。ちゃんとど真ん中を撃ち抜いてるし射撃制度は良い筈だから、それ以外は外したってことは無いはずだし。

「すべて同じ場所を撃ちぬいているのさ」
「え!それは本当ですか!」
「ああ。それも寸分たがわず。すべて同じ軌道で撃たれている。これだけの威力と射撃精度を持ちながら接近戦が得意と言うのは本当か?」
「はい。冒険者試験でも接近戦で戦ってましたよ」
「奴はいったい何者なんだ……」
「私には分かりませんが、この国に来る前はスヴェルニ王国で問題を起こしたと耳にしましたが」
「スヴェルニ王国だな!」
 私のそんな事を聞いてカルメさんはスマホで調べ始める。

「なっ!」
 すると一瞬にしてカルメさんは驚愕の表情を浮かべていた。いったいなにが、

「まさかこんな実績の持ち主だったとは……」
「あ、あの見せて貰っても構わないですか?」
「ああ」
 見せて貰った内容に私は驚きを隠せなかった。
 そこにはスヴェルニ王国第三王子を殴り飛ばし国外追放処分と書かれているだけでなく、こうも書かれていた。第78回スヴェルニ王国武闘大会、スヴェルニ学園個人戦学園代表選抜成績。優勝オニガワラ・ジン。戦績11勝0敗。

「え、これって本当なんですか!?」
「事実だろう。なんせ2位にあのルーベンハイト家のご令嬢の名前があるんだからな」
「ルーベンハイト家のご令嬢って六属性持ちセクスタプルで神童と謳われている!?」
「そうだ。次代の英雄とも言われている存在だ」
「そんな人をジンさんは倒して優勝したんんですね……」
「どうやら私はとんでもない新人を逃してしまったらしい」
 そんなカルメさんの言葉が私の心にまで響く。つまりはジンさんが試験を受けると言っていれば落ちていたのは私と言う事。悔しい。こんなに悔しいと思ったことは無い。いつの日かジンさんよりも上だと認めさせたい。そんな闘争心の炎が燃え上がる。

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 9月15日土曜日。
 あれから一週間が過ぎた。未だ残暑が残る日中を出歩くのは地味にきつい。あの気まぐれ島で住んでいたとは言え、この暑さは流石に厳しいものがる。
 まるで今の俺を叱咤しているかのようだ。

「ま、無理もないか。全て試験に落ちているんだからな」
 木陰のベンチに座りながら天を仰ぐ。
 この一週間で受けたギルド入社試験は16。その8割が履歴書を見ただけで追い返される始末だ。冒険者になれた実力があれば大丈夫かと思ったが、まさか全て運が良かっただけだ。で切り捨てられるとは思わなかったぞ。まさかここまで魔力量+魔法属性の数=実力が根付いているとは思わなかった。
 で、残りの2割は実力は認めても王族を殴るような危険人物を雇い入れるわけにはいかないか。ま、確かにそうだよな。どれだけ実力があってもまた似たような事件を起こされる危険性を持った奴を雇い入れるメリットは無いよな。俺も似たような事をしないと断言できないわけだし。

「ギン、どうすれば良いと思う?」
「クゥ?」
 そうだよな。分からないよな。
 目ぼしいギルドには応募出したけど落ちたし、ランクは落ちるけど一か八かで応募すれば電話で不合格を言い渡されるしな。そんなに魔力が無いことが駄目なのかね。

「仕方ない。別の方法にするか」
 実績と言える実績が無い今の俺がどこのギルドを受けても駄目なら、実績を作れば良いだけの話だ。なら依頼を受けて少しでも実績とランクを積み重ねれば良い。
 と、言う事で俺はさっそく冒険者専用サイトで依頼を探す。勿論ランクはGランクのサイトだ。
 冒険者は自分のランクより一つ上のランクまでなら依頼を受けることが出来るが、それはFランクからだ。教育期間の間であるGランクの時はGランクの依頼しか受けられない。

「それにしても依頼内容が酷いな」
 部屋の掃除、子供の小守、資料整理の手伝い。ペットの犬探し。果てには宿題の代筆ってのまである。
 それに依頼報酬の金額が平均4000RK。やっぱりGランクともなると低いな。ま、自給ではなく完全に歩合制だから直ぐに終われば1時間で4000RK稼げる事になるわけだが。さて、どれにするか。

「やっぱり、ペットの犬探しだな。他のは一時間で終わりそうにない。ま、ペット探しも見つからなければ一日で終わる事はないけど」
 俺はすぐさま依頼を引き受ける。するとすぐさま組合から依頼主の住所が送信されてきた。

「さて、銀依頼主の所に行くぞ」
「ガウッ!」
 俺と銀は急いで依頼主の家に向かった。
 冒険者の活動内容の工程を簡単に説明するならこうだ。
 依頼を探す→依頼を引き受ける→依頼主に会う→依頼開始→依頼主にペットを届ける→依頼達成の報告を組合に報告→お金が組合から口座に送金される。
 ここまでが冒険者活動の流れだ。
 依頼内容によっては依頼主ではなく組合本部、または組合支部に依頼内容を直に報告しに行く場合がある。大抵は魔物討伐が殆どだ。生憎と魔物を倒せば自動でカウントされるようなハイテクマシンはこの世にはないため魔物の耳や尻尾を本部か支部に届けないといけないのだ。
 依頼主の家に向かうとこれまた太った女性が出てきた。てか香水臭っ!指輪にネックレスいったいどこのマダムだよ。銀もあまりの臭さに俺の服の中に逃げ込んでるし。

「貴方が依頼を受けてくれた冒険者ですわね」
「そうです」
 こう言うマダムにはタメ口は禁止だ。グチグチと話が長くなるだけだからな。

「でもGランク冒険者ですわよね」
「はい、冒険者になったばかりですので」
「どうしてそんな新人冒険者が依頼を受けますのよ!これは一大事ですのよ!普通Sランク冒険者が受ける依頼ですわ!」
 まさにお金持ちの奥様だな。依頼のランクは組合が依頼内容を見て決めるため、依頼主が決めることは出来ない。それにしても金持ちの癖に依頼達成時の報酬が5000RKってケチ過ぎるだろ。

「まあ、良いですわ。それよりも早く大切なジョセフィーヌちゃんを探し出してきて!」
「分かりました。それでは犬の写真など持ち物があれば見せて頂きたいのですが?」
「それもそうね。これよ」
 写真に写っていた犬はこれまた立派なドーベルマン。この見た目で名前がジョセフィーヌって。このマダムの頭は大丈夫か?普通付けるとしても小型犬だと思うんだが。

「で、こっちがジョセフィーヌちゃんが愛用していたおもちゃよ」
 そこにはボロボロになった人形が出てきた。呪いの人形じゃあるまいな。

「写真が見たいのは分けるけど、この人形まで要るのかしら?まさか盗むつもりじゃないわよね!」
 誰がそんなボロボロの人形を欲しがるかよ。

「いえ、ジョセフィーヌちゃんを探すのに必要なのだけですので、直ぐに終わればお返しします」
「そう。なら良いわ」
 渡された人形を銀に嗅がせる。

「どうだ、見つかりそうか?」
「ガウッ!」
 バッチリと言ってきた。やはり銀は優秀だな。

「ねぇ、その子犬銀色で可愛いわね。私に頂けないかしら?」
 はぁっ!何言ってるんだこのババァは。

「申し訳ありませんが、私の大切な家族ですので」
「そう、残念だわ」
 良かった。何気に聞き分けが良いマダムみたいだ。

「こちらの人形はお返しします」
「あら、もう良いの?」
「はい。では、これから探してきますので」
「早く見つけてきて頂戴ね!」
「分かりました。では」
 俺と銀は急いでジョセフィーヌを探す。断じて香水の臭いが臭すぎてあの場から逃げたかったわけじゃない。紳士の俺がそんな失礼な事をするわけがないじゃないか。ハッハッハッ!
 大型犬の大きさに変貌した銀の鼻をたよりにジョセフィーヌを探す。

「見つかったか?」
「ガウッ!」
 この先にいる。って言いたいらしい。早いな。流石は銀だ。それにしても結構離れた場所に居たんだな。
 マダムの家から約500メートルも離れた場所に居るとはそれだけあの臭いに耐えられなかったと言う訳か。ま、それが理由とは限らないけど。

「居た!」
 路地を曲がると写真と一致するドーベルマンのジョセフィーヌがそこにいた。
 ふふっ。案外早く見つかったな。
 と、思った瞬間に逃走する。クソッ!俺の服に付いたマダムの香水で気がついたのか?

「こら、逃げるな!」
 逃走するも所詮犬こっろだ。地獄島ヘル・アイランドで5年間住んでいた俺と神狼の銀から逃げられるわけがない。ましてや道は行き止まり。
 これでも逃げられるならお前こそがこの世で最も最強の犬だ。

「さぁ、逃げれるものなら逃げてみろ」
「ガルルルゥ」
 パタン。
 あれ?何故か急にジョセフィーヌが倒れてしまった。うん、気絶しているだけみたいだが。急にどうして倒れたんだ?ま、捕まえるのは楽だしさっさと戻るか。

「ジョセフィーヌちゃん!」
「キャンキャン、キャン!」
 やはり香水が臭くて逃げ出したのか。抱きしめるマダムの腕の中から逃げ出そうとしている。それにしてもこのマダム凄い力だな。ドーベルマンを持ち上げた状態で抱きしめてるし。

「まさかこんなに早く連れ戻してくれるとは思って無かったわ!また頼みたいことがあったら指名させて貰うわ!」
「有難う御座います。それでは依頼達成の報告を組合にしていただいても宜しいでしょうか?」
「ええ、今するわ」
 ペット探しだけではないが、依頼主に直接依頼物を届ける場合は依頼主から組合側に依頼達成の報告をして貰う決まりになっている。
 すると俺のスマホが振動する。
 確認すると「依頼達成を確認。報酬を振り込みました」と書かれていた。

「では、俺はこれで」
「ええ、何かあったらまた宜しくお願いするわね!」
 こうして俺たちは依頼を達成した。頑張れよ、ジョセフィーヌ。地獄の毎日だろうがいつか平穏な日はきっと来るはずだから。
 それにしてもまさかここまで呆気なく依頼を達成出来るとは思わなかった。これならFランクに上げるのも楽勝じゃないか?
 俺は急いで依頼を探す。勿論探す内容はペット探しだ。
 で、結局俺たちは片っ端から依頼をこなし一日だけで6件のペットを探し出した。そのお陰で見事俺はFランクに昇格した。ハハハッ!どうだ凄いだろ!って誰に言ってるんだ?てか、6件も受ける必要は無かったんだが、あまりにも楽勝過ぎて調子に乗ってしまった。ま、そのお陰でたった一日で26500RKも稼いでしまった。この依頼マジ楽勝じゃね。だけど毎日依頼を受けるのは面倒だから。絶対にランクを上げて炎龍でもまた倒して一気にビップになってやるぜ。で、あとはニート生活だ!
 その日の夜は稼いだお金で肉を食べた。焼肉店の個室で俺と銀は馬鹿みたいに肉を食べた。個室なので周りの目も気にすることがないので、手で食べる。え、焼いた肉を手で取るのは熱くないのかって?熱いが気にするほどじゃない。あの島に居た時に比べれば蚊に刺された程度だしな。
 で、結局食べ過ぎて報酬分では足らなくなった。良かったボルキュス陛下からお金を貰っていて。てかあの人も対外だよな。口座を見たら金額が8000万RKになってたんだから。車や賄賂のお金を戻して貰ったとしても5000万RKも報酬でくれるなんて流石は皇帝だよな。


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現在の鬼瓦人総資産。
残高8267万4250RK
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