魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒

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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す

第二十一話 依頼、ゴブリン討伐!

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 9月16日日曜日。
 俺は現在皇宮に来ていた。またしてもシャルロットに呼ばれたわけじゃない。今度は何故かボルキュス陛下から呼び出されたのだ。こっちだってビックリだよ。朝起きたらイオが扉の前に居て、いきなり「陛下がお呼びです」だもんな。てか、なんで俺が寝泊りしてる場所が分かったのか聞きたいところだが、帝国に不可能は無いってことなんだろう。まったく恐ろしい国のトップと知り合いになったものだ。
 で、招かれた場所はプライベートフロアではなく初めて会った時にも使った応接室だった。それにしても流石は皇宮滞りなく清掃されている。

「それで、俺を呼び出した理由はなんだ?」
 向こうが普段通りに話してくれと言われてるからな。俺はいつも通りに話すぞ。え、時と場所を選んだほうが良い?そんな事知った事じゃない。一度OKを貰ったらタメ口だ。最初はちゃんと敬語だったんだからまだ常識的だ。

「なに、少し心配になってな」
「心配?」
 シャルロットを助けてくれた恩人ではあるが、現皇帝が一介の冒険者に過ぎない俺を心配だと。

「どうやら未だにギルドに入れていないらしいではないか」
 いきなり言われたくない事を言ってくる。ま、事実だから仕方が無いけど。

「どうも思いのほか、魔力が無い事が試験に響いているみたいなんでね。それに王族を殴った事もそれなりにな」
「なるほどのぉ」
 王族を殴ったことに関して反省はしていない。あの島で5年間も住んでいれば階級なんて何の意味も無いって事は身を持って教えられるからな。
 だけどここまで魔力量+魔法属性の数=実力ってのが浸透しているとは思わなかった。それも根強く。

「我の方で推薦状を書いても良いが」
「いや、それはやめておく」
「フッ、ジンならそう言うと思っていたぞ」
 本当は今すぐにでも土下座して欲しいぐらいだよ!でも一度断ってしまったんだ。頼めるわけがないだろ!クソッ!一週間前の俺を殴り殺してやりたいぜ。

「なら、別の方法を教えてやるとしようか」
「別の方法?」
「そうだ。何を手にしたくても手に入らないのなら自分で作ってしまえば良いと思わないか?」
 確かにそれはそうだろ。椅子が欲しいと思ってもどこにも売ってないのなら自分で作れば良いだけだしな。

「それってつまり自分でギルドを立ち上げるって事か?」
「その通りだ」
 なるほど……確かにボルキュス陛下の言う通りだ。どこのギルドにも入れないのなら自分で作れば良い。それに自分がそのギルドのトップなんだから上から色々と言われる心配も無いな。
 なんで俺は今までこの方法を思いつかなかったんだ!

「さて、ここからが問題だ。ギルドを作るには幾つかの冒険者組合の規定をクリアしなければギルドとして認めて貰えない」
「で、その規定ってのは?」
 ――1つ目、ギルド創設者の冒険者ランクが最低でもDランクであること。
 ――2つ目、ギルドの拠点となる建物を保有している。または1フロアを持っていること。
 ――3つ目、ギルド創設には創設者を含め最低でも冒険者が3人以上必要であること。
 ――4つ目、組合が決めた規定資金を持っている事。ただしギルド創設者の自己資金のみとする。
 ――5つ目、ギルド名を決めておくこと。
 ズルッ!

「どうかしたのかい?」
「いや、なんでもない」
 1~4までは真面目だったのに5だけ適当な気がする。

「さて、ここまでで分からない事はあるかね?」
「いや、大丈夫だ」
 つまりギルドを設立するのがいつになるか分からないが、冒険者として依頼をこなしながら仲間探しをしたら良いわけだな。お金に関してはハロルドのおっさんとボルキュス陛下から貰ったお金があるから大丈夫だろ。

「教えてくれてありがとうな」
「なに、気にしなくていい」
 後々面倒ごとに巻き込まれそうな予感がしないでもないが、今はギルドを作ることに専念しよう。
 皇宮を後にした俺は片っ端から電話する。電話するのは一緒に冒険者試験を受けた連中だ。カルアは既に合格しているから無しとして他の奴らなら大丈夫だろう。
 で、電話してみるも見事に駄目だった。全滅だ。まさか俺以外全員が既にギルドに入っているなんて。この世は不公平すぎるだろ。
 カイは護衛専門ギルド。ライは魔物と犯罪者討伐専門ギルド、ジュディーは犯罪者討伐専門ギルド。ミレイユは魔物討伐専門ギルド。ゴルバスは収集ギルドに入ったらしい。
 俺はこれからどうすれば……いや、諦めずに何とかしなければ。

「ま、仲間が居たところで俺のランクがFのままじゃギルドは作れないからな。今は依頼でもこなして頑張るか」
 Eランクの依頼から俺はゴブリン討伐依頼を受けることにした。
 帝都から車で一日掛かる距離にある村にゴブリンが出現したらしい。依頼内容はゴブリンの討伐と出来ればゴブリンの巣の破壊。巣を破壊した場合は別に報酬を出すそうだ。
 電車に乗って帝都の外までやって来た俺は銀の背中に乗って村に向かう。こう言う依頼のことも考えて車も欲しいな。それと車の整備とかが得意な冒険者も欲しい。後は銃器に得意な仲間も欲しいな。そうすれば効率も上がるだろう。後は料理が上手な冒険者だな。無駄に外食で出費は控えるべきだろうからな。お、なんだかギルドマスターらしい考えじゃないか。もっと頑張らないとな。
 銀に乗っているのが俺と言う事もありあっという間に目的地の村に到着した。普通に車なら一日は掛かる距離らしいが、銀なら3時間で到着だ。
 それにしても帝都から一日ほど離れた距離でこれほどまでに発展の差があるものかね。
 目の前のびれた光景に俺は驚きを隠せない。いやね、あの気まぐれ島に比べればそれなりに発展してるよ。ま、あの島は鄙びれたじゃなくて完全にジャングルだったけど。それでも帝都とは大違いの町……いや、村と言うべきか。
 ちょうどスーパーかどこに向かっている20代後半の女性を見つけた俺は小さくなった銀を抱えて話しかけてみる。

「ちょっと良いか?」
「な、何か?」
 警戒した表情で問い返してくる。
 ま、この村の大きさじゃ殆どの住人とは顔見知りの筈だ。そんな村にいきなり見知らぬ男性が話しかけてきたら誰だって警戒はするだろう。無理もない反応。いや、前世の日本に比べて遥かに治安が良いとは言えないこの世界で考えれば正しい反応と言えるだろうな。

「ゴブリンの討伐に来たんだが、依頼者がどこに居るか知らないか?」
「っ!そ、それなら私の祖父です!」
 俺の言葉に目を見開いた女性は驚きながらも嬉しそうに返事を返して来る。それにしても依頼主の親類に最初に会えたのは僥倖だ。

「それは良かった。話を聞きたいんだが」
「分かりました!」
 慌てた様子で案内された一軒の家。
 築40年は行ってそうなその家は帝都ではありえないだろう。
 中に入ると白髪頭の老人が出てきた。

「貴方が依頼者だな」
「そうです。わざわざこんな田舎の依頼を引き受けてくださり有難う御座います」
 杖を手にしている様子はないが、中腰状態の老人は冒険者が来てくれた事がその声音から伝わって来る。

「気にしないでくれ」
 やはり今も昔の田舎の依頼を受けようと思う冒険者は少ないみたいだな。ま、距離もあるし何より平均報酬より下回っていた金額だからな。ま、俺は楽そうな依頼を受けたわけだけど。

「それで冒険者の方は貴方お一人ですか?」
 俺の周囲に何度か視線を向けた老人が問うてくる。

「そうだが、問題でも?」
「い、いえ!なんでもないです!」
 だからこそ俺が1人でやって来た事に落胆の表情を一瞬見せるが、俺の問い掛けに誤魔化すようにして返事をする老人。
 ま、今の時代1人で依頼をこなすような冒険者は居ないだろうし、心配なんだろう。
 それに人数が多いほど依頼の達成率や速度だって上がる。それぐらい冒険者じゃない一般市民だって知っている事だ。だからこそ俺はその程度で不機嫌になる事はない。むしろ俺が来てくれてラッキーと思って貰おうじゃないか。

「それより依頼の内容を確認したい。ゴブリンが出たみたいだが、凡その数とゴブリンを見た場所を教えて貰いたい」
「見たのは孫のキリネですので孫からお話します」
 そう言って喋りだしたのはさっき話しかけた女性だった。まさかこの女性が第一発見者だったとは。

「私が見かけたゴブリンの数は3体で、場所はここから東の森です。ちょうど山菜を収穫した帰りに見かけたので時間帯は午後だったかと」
 その時間帯から考えて見回りか、斥候だな。依頼が出てまだ二日しか経ってないから警戒しているのかそれとも本当に見回りだったのかもしれない。となると近くに巣がある可能性があるな。ま、はぐれゴブリンと言う可能性も無いことも無いが。

「分かった。今から調べてみる。早ければ今日中に終わるだろ」
「え!?今日中にですか!」
 俺の言葉に驚きを隠せないキリネと祖父。ま、普通は考えられない事だ。この2人の反応はとても正しい。
 普通は敵の数や巣を確認したのち、作戦を考えてから討伐を開始するのが普通だ。
 だが、生憎と俺はソロで活動しているし、探索は気配感知があるから普通の冒険者よりも早く見つける事が出来るだろう。なにかあったとしても銀も居るから高確率でイレギュラーな出来事が起こる事はないだろう。

「ああ」
 俺は席を立つとその目撃した森へと向かった。
 緑が生い茂る森の中は気温が数度低いように感じる。いや、実際にそうなのかもしれない。

「さて、ここら辺で良いか」
 そこそこ森の奥に来た俺は気配を探る。幾つもの気配を感じるがその殆どが野ウサギや猪の野生動物だったが、一つだけ違った。
 見つけた。
 数は報告通り3体。一緒になって行動しているな。動きからしてやはり見回りだろう。
 それにそれなりに統制された動き。もしかしたら奴らのボスはゴブリンメイジの可能性もある。だけどもしもあの見回りのゴブリンが近くに村があることはしれば仲間に報告して数日以内に夜にでも襲うだろう。どうにかそれだけは防げそうだが。
 俺は気づかれないように醜い顔に緑色の肌を持つゴブリンが目視出来る距離まで近づく。さあ、早くお前らの巣まで案内してくれ。
 今すぐ殺しても良いが、そうなると巣を探すのが面倒なので。こいつらに案内して貰う。
 なかなか戻らないゴブリンどもに苛立ちを覚えたがどうにか1時間ほどして目的の巣に戻っていった。
 巣はそこそこ大きな洞窟。ではなくまさかの遺跡だ。
 俺は念のために冒険者専用サイトに乗っている遺跡に関する情報を調べるがここには乗っていなかった。やはり未発見の遺跡か。まさかこんな場所にあるなんて思わなかったな。
 お、そんな事思っている間にも奴らが中に入る。
 これで後は外で見張りをしている2匹のゴブリンだけとなった。気配から察するに他に見回りに出ているゴブリンは居ないだろう。
 なら、さっそく討伐開始と行くか。
 俺はパチンコ玉を弾いて2匹のゴブリンの頭を撃ち抜いて即死させる。

「銀、大型犬になってくれ」
「ガウッ!」
 一瞬にして大型犬まで大きくなった銀。本来の姿に戻してやりたいが、さすがにそれだと入らないので大型犬になってもらう。
 目を瞑って数分。
 よし!

「行くぞ!」
「ガウッ!」
 暗闇の遺跡の中を進んでいく。先ほど目を瞑っていたおかげで暗いところでもある程度は見えるし、気配で大抵の居場所は突き止めてある。本当なら懐中電灯や松明でも使いたいところだが、生憎と持てないのでこれで戦うしかない。
 よし、1匹目!
 通路の角を曲がってきたゴブリンを指突で殺した俺は先に進む。え?気持ち悪くないのかって。あの島での戦いは気持ち悪い生き物を殺す忍耐力を鍛える場所でもあったからな。この程度ではなんとも思わないのさ。
 その後も気配と足音を殺して俺は次々と殺していく。
 銀も爪でゴブリンの喉を掻き切って殺していた。あれなら声も出せないだろうから問題ないな。
 これで21匹目!
 いったい何匹居るんだと思いたくなるほど沢山いるな。よく今まで気づかれなかったな。いや、こんな田舎の依頼を受けようとも思わない冒険者たち。そしてその依頼主である田舎の住人ですら気づかないんだ。これだけ増えてもおかしくはないか。ん?
 どうやらこの奥は広くなっているらしくその中に15匹のゴブリンの気配を感じる。それに1匹だけ気配の大きさが違うな。やはりゴブリンメイジも居るみたいだ。ま、一番胸糞悪いのはゴブリン以外に輪姦されっている女が6名もいることだ。いったいどこから攫って来たのかしらないが、やはり気分の良いものじゃない。
 溢れ出そうになる殺気を抑え、広場入り口までやってきた俺と銀は一斉に広場の中のゴブリンを殺しまわった。
 快楽に下卑た笑みを浮かべながら腰を振るゴブリンどもの頭を殴って粉砕していく。

「ナッ、ナンダ!」
 ゴブリンメイジが突然死んでいくゴブリンたちの姿に驚くがもう遅い。
 今の俺は怒りを覚えた狩人だ。遊びも同情も存在しない。ただ目の前の敵を殺す殺戮人間だ。
 今思えば戦い。いや、狩りは1分も満たない時間で終わっていた。
 狩り終えた俺は攫われた女性を洞窟の外に運び出す。よく見ると人間、獣人と種族も様々。なにより痩せ細っている女性も居れば、お腹が膨れている女性も2人ほどいた。

「銀、周りに人が居ないか見ててくれ」
「ガウッ」
 そう頼むと膨れている女の腹を手刀で切り裂いた。頼むから痛みによるショック死だけはしないでくれよ。

「あああああああああああぁぁぁ!」
 いきなりの激痛に目を覚ました女性は自分が何をされているのが最初は理解できなかったが直ぐに理解する。

「な、なんで……死にたくない!」
「安心しろ、死なせるものかよ!」
 腹からゴブリンの赤ん坊を取り出した俺はアイテムボックスからお手製の水袋を取り出し切った腹に掛ける。すると一瞬にして傷口は塞がり元の状態に戻った。

「え?いったい何が起こったの?」
 先ほどまで腹を裂かれていた女性は急に痛みが無くなり、お腹に視線を向けるが塞がった状態にまるで最初から何もなかったかのような出来事に女性は困惑していた。

「この水を傷口に掛ければ直ぐに治る不思議な水だ。だから安心しろ」
「それって伝説の……」
 伝説?なんだそれ。
 ま、今はそんなことよりもう1人の女性だ。
 もう1人のお腹を切ろうと振り返った見ると女性が叫んだせいで全員が目を覚ましていたらしく最初は逃げようとしていたが、取り出したゴブリンの赤子を殺して説明するとどうにか覚悟を決めてくれたようだった。
 で、二度目という事もあって手慣れた動きで俺はゴブリンの赤子を取り出し水で傷口を塞いだ。
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