魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒

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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す

第三十四話 金が無いので依頼をこなす

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 9月26日水曜日。
 日差しで目を覚ました俺はスマホで時間を確認する。
 10時42分。
 帰ってから寝たのが夜の10時過ぎだから12時間以上寝てたのか。我ながら良く寝たな。そう言えば前世でこんなに寝た日は大学生の時までだったな。
 冷蔵庫を開けて昨日買っておいたお茶で喉を潤す。うん、やはり冷たいお茶は最高だ。
 身支度も済ませたことだし、高らかに宣言しよう。

「お金が無い!」
 そうまったくお金が無いのだ。昨日依頼を受けて報酬は貰ったけどそれでもまだ借金が残っている。まさか借金生活を送る羽目になるとはそれも18歳でだ。
 こんな借金生活俺は望んでないぞ!どうしてラノベ主人公みたいに金持ちになれないんだよ!やはりあれか!時代が悪いのか、それとも魔力が無いからか、チート能力が無いからか。いや、その全部だ!全部あの糞女神が悪いんだ!
 大人だって好き勝手に生きたいんだよ!夢だって見るんだよ!それのどこが悪いんだよ!幼稚って言われても俺は好きに生きるって決めたんだ!って俺はさっきから何を言ってるんだ。
 現実逃避から戻ってきた俺はベッドに座って依頼を探す。

「やっぱり良いの無いな」
 愚痴りながらも俺は依頼を探す。
 Dランクの依頼の大半は護衛か輸送ばかりだ。と言うよりもDランク以上の大半がそうだけど。
 それでもフリーで受けられる依頼は極僅か。そのため報酬も獲得ポイントも他に比べて少ない。フリーで動く以上それは仕方が無い。勿論パーティーで依頼を受ける冒険者に比べれば入る量は断然多いがそれでもやはり少ないと感じてしまう。

「仕方が無い。コツコツ依頼をこなして行くか」
 俺はフリーでも受けられる依頼の中から一番報酬とポイントが高い依頼をチョイスする。
 銀をつれて俺は冒険者活動へと向かった。
 受けた依頼はコボルトの討伐である。帝都の北門を出て直ぐのところにある森の中にコボルトが生息しているらしい。
 コボルトと言えば犬が二足歩行で移動するイメージが多いが、それで間違ってはいない。
 全身毛で覆われているため獣人と間違える事も無い。ただコボルトは年4回と発情するためゴブリンやオークの次に繁殖力が強い魔物とされている。普通犬って年に2回じゃなかったか?ま、そこは犬と魔物の違いか。
 またゴブリンやホブゴブリンよりも知能が高いため、軍隊のように統制がとれており、集団を相手にする時は危険度が高い。
 それでもDランクの依頼の中では下位の依頼だ。
 理由としてはDランク冒険者は既に経験もあり油断することが無い。また今回の依頼がコボルト5匹討伐のため低いのだ。これがコボルトの集団、もしくはコボルトの巣破壊となればCランクの依頼になっていただろう。
 電車に乗るお金も惜しむ俺は走って帝都の外へと向かった。ま、いつもそうしてるんだが。だって走った方が速いからな。
 北門を出ると舗装された道路脇を走る。
 帝都の中はハッキリと言って都会だ。だが帝都の外は一変して森。全域が森。まるで山の一部のみを開拓して作り上げたかのような場所だ。
 だけど道はちゃんと舗装されているし、線路だって通っている。きっとこの工事の時は護衛で冒険者たちは大忙しだったろうな。いや、国としてやったのなら軍か?どっちでも良いか。
 走ること15分、道路から森の中へと入った俺はさっそく気配でコボルトを探す。と言っても既に見つけていたんだけどな。
 帝都を出て5分でコボルト10匹が行動しているのを確認している。
 それに気配を感じる限りコボルト以外にもインテンスボア、ゴブリン、バインドラビットなんかも居る。
 東の森と違ってここは魔物の宝庫だな。
 一旦コボルト討伐をやめて俺はスマホで冒険者専用サイトの依頼掲示板を見る。お、あるある。
 俺はその中からDランクのインテンスボア討伐とEランクのゴブリン討伐を同時に受ける。
 依頼を同時に受けて良いのは規定で3つまでと決まっている。だから俺はそれを最大限利用して討伐を再開した。
 最初に狙ったのはコボルトだ。少しでも戦闘音が聞こえたら逃げる可能性も出てくる。一番報酬とポイントが高い獲物をみすみす逃すわけにはいかないからな。
 気配を殺して俺は森の中を駆け抜ける。距離まで残り5メートル。
 それでもコボルトたちは気づいていない。周りに潜んでいる魔物も居ない。これなら行ける!
 俺はそのままコボルトの側面に飛び出すとそのまま指突で1匹を殺し、そのまま流れるような動きで2匹目も殺す。
 ようやく事態を理解したコボルトたちは一旦距離を取ろうとするが、させるわけがない。
 反応が一番遅かったコボルトの頭を指突で貫く。これで3匹目。
 背後から襲ってくるが俺が気づかないわけがない。
 コボルトお手製の槍を体を反らせて躱した俺はハイキックでコボルトの頭を粉砕する。こで4匹目っと。
 さすがに今の攻撃を見て勝てないと判断したのか摺足で下がり逃走を図るが、遅い。そう思ったのなら脱兎の如く逃げないと俺からは逃げられないぞ。はい、5匹目。
 さて残りはってあれ?
 敵を確認しようとしたらいつのまにか銀が全部倒していた。俺の戦いを見て戦いたくなったのか。ま、俺としては討伐出来たのなら問題ないけど。
 俺はコボルトの耳を手刀で切り落としてアイテムボックスにしまう。

「銀、残りは食べて良いぞ」
「ガウッ!」
 そう言うと嬉しそうにコボルトを食べ始める。うん、やはりいつ見ても凄い光景だな。テレビ放送するならモザイク必須だ。

「銀食べ終わったら俺の所に来い。俺はその間にゴブリンとインテンスボアを討伐しておくって聞いちゃいないか」
 久々に大量の生肉を食べられるのが嬉しいのか無我夢中で食べていた。
 それじゃ俺は討伐に向かいに行きますか。
 次に狙ったのはゴブリンだ。距離的にそっちの方が近いのとインテンスボアは食事中で気が付いていなかったからだ。
 ゴブリン5匹を目視出来る距離まで来た俺はそのまま飛び出してコボルト同様に指突で瞬殺する。やはりゴブリンはゴブリン。コボルトよりも反応が悪いし統制も取れちゃいない。僅か数秒で倒す事が出来た。
 耳を回収した俺はインテンスボア目掛けて走りだした。
 距離もそれほど遠くない。と言うか既に目視出来る距離まで来ている。あ、でも警戒しているなゴブリンとの戦闘音が聞こえたのか?ま、関係ないか。
 正面から飛び出した俺はインテンスの鼻先目掛けて0.3%の力で殴る。

「ギャインッ!」
 殴り飛ばされたインテンスボアは突然の衝撃と痛みに混乱したのか足をジタバタとさせていた。それにしても激しい動きだな。流石はインテンスボアって言われるだけの事はある。
 心臓付近を殴り衝撃で心臓を止めた俺はアイテムボックスにしまう。え?銀にあげないのかって。インテンスボアのお肉は高く売れるから今回は我慢して貰うつもりだ。アインが知ったら、何故マスターに謙譲しなかったのか答えなさい。さもないと限りなく苦しめてから殺します。って良いそうだな。

「ガウッ!」
「お、食べ終わったのか」
 それじゃ帰るか。ん?
 帰ろうと思った矢先帝都の方から知った気配を感じる。この気配もしかして。
 小さくなった銀を抱えて気配がする方に向かうと他の冒険者たちの中にカルアが居た。

「あ、ジンさん!」
 歩いてくる俺の姿を見てカルアも気づいたらしい。

「よ、カルア。元気にしてたか?」
「はい!それでジンさんはどうしてここに?」
「依頼を終えて帰るところだ」
「そうだったんですね。あ、私のパーティーメンバーを紹介しますね」
 男性二人にカルアを含めた女性3人の5人パーティーが俺の前に並ぶ。

「彼が私たちのリーダーのDランク冒険者のヴァイスさんです」
「ヴァイス・カデールだ。よろしく」
 身長175前後の短髪男性。背中に担いでいるライフルから見て後衛だな。

「それでこっちの彼が私たちより一ヶ月早く冒険者試験に合格したトキシさんです」
「Fランク冒険者のトキシ・ウーベだ。よろしく」
 身長160後半の赤毛の男性。武器はカルアと同様二丁拳銃のようだ。

「それでこっちの彼女がルナさんです」
「ルナ・リファネスよ。ランクはEよろしくね」
 ベージュの長髪に薄い緑色の瞳。年齢的に24ぐらいだろうか。武器はアサルトライフルか。

「それで最後の彼女がシズさんです」
「シズ・シェテフ。ルナと同じEランク冒険者。好きな食べ物はシチュー。好きな事は読書。因みに年齢はルナより私の方が若い」
 黒髪のセミロングに黒目。武器はサブマシンガンだった。なんだか銃の見本市に来た気分だな。

「何言ってるのよ!違うと言ってもたったの2週間でしょ!」
「2週間でも私の方が若いのは事実よ」
 んでこの2人はなんでいきなり言い争ってるんだ。

「ほら、2人とも喧嘩しない。今は依頼中だろ」
「「すいません」」
 ヴァイスが慣れたように2人の言い争いを止める。さすがはリーダーだな。

「それで貴方の名前は?」
「俺は仁、鬼瓦仁だ。カルアとは冒険者試験で同じ班だったんだ」
「はい。で、一緒に合格しました」
「カルアには聞いていたけど本当に貴方だったのね」
 不気味な笑みを浮かべるルナ。どっかで会ったか?

「ルナ知ってるの?」
「偶然ギルマスが探していた人物が彼だったから調べてみたのよ。そしたら凄い大物だったわ。スヴェルニ王国であった悲劇の騎士事件は皆も知ってると思うけど、その悲劇の騎士が彼なのよ」
『え!?』
 悲劇の騎士事件って呼ばれてるのか。なんだか恥ずかしいな。

「それだけじゃ無いわ。スヴェルニ学園で行われた武闘大会個人戦学園代表選抜で神童と送り人を倒して優勝したのが彼」
「マジか。それはギルマスが欲しがるわけだ」
「そ、なのに他のギルドはその事を知ってか知らずかは知らないけど入社試験で落としたらしいわ。まったく馬鹿よね」
「確かにそれは馬鹿だな。で、どうた?うちのギルドに入らないか?」
 ヴァイスが聞いてくる。と言うか近い。男に接近されて嬉しいのは一部の男性だけだ。

「悪いが俺は自分のギルドを創る事にしたから。悪いがその話は断らせて貰う。アンタ等のギルドマスターにもそう伝えてくれ」
「そうか。って自分のギルドを作るって最低でもDランクにならないと無理だぞ」
「ああ、分かっている。既にEランクだしあと少しだ」
『え!?』
 ん?そんなに驚く事なのか?

「ジンさんもうEランクなんですか!」
「ああ、ほら」
 俺はギルドカードを見せる。

「本当だ。冒険者になって一ヶ月も経ってないのにもうEランクなんて凄いですね」
「別に凄くないだろ。フリーの冒険者だし依頼をこなせば入ってくるポイントはパーティーを組んでいる冒険者たちよりも多いからな」
「それでも早いですよ。私なんてまだFランクですよ!」
「そうだぜ。俺だってもう少しでEランクってところなんだからな」
「そうなのか。ま、確かに俺は同時に依頼を3つ受けたりしてたしな」
「3つって同時に受けられる限度一杯じゃねぇかよ!そんな冒険者なりたての奴がする行動じゃないぜ」
 そんな俺の話に全員が驚きの表情を浮かべていた。そんなに驚く事じゃないだろ。あの気まぐれ島では日常茶飯事どころの話じゃなかったからな。
 一体倒せば別の一体。またそいつを倒せばまた別の一体って感じで戦闘を嗅ぎ付けば化け物たちが襲い掛かってくるんだからな。ま、そのお陰で強くなれたのは確かだけど。

「それでカルアたちはなんの依頼を受けてるんだ?」
「ホブゴブリンの討伐です」
 ホブゴブリンの討伐か。確かにあれはEランクの依頼だし全員が受ける事が出来るな。
 気配で探知してみると確かにホブゴブリンが5匹狩った野生動物を食べていた。

「それならこの先に行ってみな。たぶん居ると思うから」
「確かにお前の実力は認めるが魔力の無いお前がどうやって――」
「分かりました」
「そうか。それじゃ俺は戻って報告しないと行けないから」
「分かりました。また食事でも行きましょうね」
「ああ」
 話を終えた俺はカルアたちと別れて冒険者組合へと向かった。
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