116 / 274
第二章 魔力無し転生者は仲間を探す
第三十四話 金が無いので依頼をこなす
しおりを挟む
9月26日水曜日。
日差しで目を覚ました俺はスマホで時間を確認する。
10時42分。
帰ってから寝たのが夜の10時過ぎだから12時間以上寝てたのか。我ながら良く寝たな。そう言えば前世でこんなに寝た日は大学生の時までだったな。
冷蔵庫を開けて昨日買っておいたお茶で喉を潤す。うん、やはり冷たいお茶は最高だ。
身支度も済ませたことだし、高らかに宣言しよう。
「お金が無い!」
そうまったくお金が無いのだ。昨日依頼を受けて報酬は貰ったけどそれでもまだ借金が残っている。まさか借金生活を送る羽目になるとはそれも18歳でだ。
こんな借金生活俺は望んでないぞ!どうしてラノベ主人公みたいに金持ちになれないんだよ!やはりあれか!時代が悪いのか、それとも魔力が無いからか、チート能力が無いからか。いや、その全部だ!全部あの糞女神が悪いんだ!
大人だって好き勝手に生きたいんだよ!夢だって見るんだよ!それのどこが悪いんだよ!幼稚って言われても俺は好きに生きるって決めたんだ!って俺はさっきから何を言ってるんだ。
現実逃避から戻ってきた俺はベッドに座って依頼を探す。
「やっぱり良いの無いな」
愚痴りながらも俺は依頼を探す。
Dランクの依頼の大半は護衛か輸送ばかりだ。と言うよりもDランク以上の大半がそうだけど。
それでもフリーで受けられる依頼は極僅か。そのため報酬も獲得ポイントも他に比べて少ない。フリーで動く以上それは仕方が無い。勿論パーティーで依頼を受ける冒険者に比べれば入る量は断然多いがそれでもやはり少ないと感じてしまう。
「仕方が無い。コツコツ依頼をこなして行くか」
俺はフリーでも受けられる依頼の中から一番報酬とポイントが高い依頼をチョイスする。
銀をつれて俺は冒険者活動へと向かった。
受けた依頼はコボルトの討伐である。帝都の北門を出て直ぐのところにある森の中にコボルトが生息しているらしい。
コボルトと言えば犬が二足歩行で移動するイメージが多いが、それで間違ってはいない。
全身毛で覆われているため獣人と間違える事も無い。ただコボルトは年4回と発情するためゴブリンやオークの次に繁殖力が強い魔物とされている。普通犬って年に2回じゃなかったか?ま、そこは犬と魔物の違いか。
またゴブリンやホブゴブリンよりも知能が高いため、軍隊のように統制がとれており、集団を相手にする時は危険度が高い。
それでもDランクの依頼の中では下位の依頼だ。
理由としてはDランク冒険者は既に経験もあり油断することが無い。また今回の依頼がコボルト5匹討伐のため低いのだ。これがコボルトの集団、もしくはコボルトの巣破壊となればCランクの依頼になっていただろう。
電車に乗るお金も惜しむ俺は走って帝都の外へと向かった。ま、いつもそうしてるんだが。だって走った方が速いからな。
北門を出ると舗装された道路脇を走る。
帝都の中はハッキリと言って都会だ。だが帝都の外は一変して森。全域が森。まるで山の一部のみを開拓して作り上げたかのような場所だ。
だけど道はちゃんと舗装されているし、線路だって通っている。きっとこの工事の時は護衛で冒険者たちは大忙しだったろうな。いや、国としてやったのなら軍か?どっちでも良いか。
走ること15分、道路から森の中へと入った俺はさっそく気配でコボルトを探す。と言っても既に見つけていたんだけどな。
帝都を出て5分でコボルト10匹が行動しているのを確認している。
それに気配を感じる限りコボルト以外にもインテンスボア、ゴブリン、バインドラビットなんかも居る。
東の森と違ってここは魔物の宝庫だな。
一旦コボルト討伐をやめて俺はスマホで冒険者専用サイトの依頼掲示板を見る。お、あるある。
俺はその中からDランクのインテンスボア討伐とEランクのゴブリン討伐を同時に受ける。
依頼を同時に受けて良いのは規定で3つまでと決まっている。だから俺はそれを最大限利用して討伐を再開した。
最初に狙ったのはコボルトだ。少しでも戦闘音が聞こえたら逃げる可能性も出てくる。一番報酬とポイントが高い獲物をみすみす逃すわけにはいかないからな。
気配を殺して俺は森の中を駆け抜ける。距離まで残り5メートル。
それでもコボルトたちは気づいていない。周りに潜んでいる魔物も居ない。これなら行ける!
俺はそのままコボルトの側面に飛び出すとそのまま指突で1匹を殺し、そのまま流れるような動きで2匹目も殺す。
ようやく事態を理解したコボルトたちは一旦距離を取ろうとするが、させるわけがない。
反応が一番遅かったコボルトの頭を指突で貫く。これで3匹目。
背後から襲ってくるが俺が気づかないわけがない。
コボルトお手製の槍を体を反らせて躱した俺はハイキックでコボルトの頭を粉砕する。こで4匹目っと。
さすがに今の攻撃を見て勝てないと判断したのか摺足で下がり逃走を図るが、遅い。そう思ったのなら脱兎の如く逃げないと俺からは逃げられないぞ。はい、5匹目。
さて残りはってあれ?
敵を確認しようとしたらいつのまにか銀が全部倒していた。俺の戦いを見て戦いたくなったのか。ま、俺としては討伐出来たのなら問題ないけど。
俺はコボルトの耳を手刀で切り落としてアイテムボックスにしまう。
「銀、残りは食べて良いぞ」
「ガウッ!」
そう言うと嬉しそうにコボルトを食べ始める。うん、やはりいつ見ても凄い光景だな。テレビ放送するならモザイク必須だ。
「銀食べ終わったら俺の所に来い。俺はその間にゴブリンとインテンスボアを討伐しておくって聞いちゃいないか」
久々に大量の生肉を食べられるのが嬉しいのか無我夢中で食べていた。
それじゃ俺は討伐に向かいに行きますか。
次に狙ったのはゴブリンだ。距離的にそっちの方が近いのとインテンスボアは食事中で気が付いていなかったからだ。
ゴブリン5匹を目視出来る距離まで来た俺はそのまま飛び出してコボルト同様に指突で瞬殺する。やはりゴブリンはゴブリン。コボルトよりも反応が悪いし統制も取れちゃいない。僅か数秒で倒す事が出来た。
耳を回収した俺はインテンスボア目掛けて走りだした。
距離もそれほど遠くない。と言うか既に目視出来る距離まで来ている。あ、でも警戒しているなゴブリンとの戦闘音が聞こえたのか?ま、関係ないか。
正面から飛び出した俺はインテンスの鼻先目掛けて0.3%の力で殴る。
「ギャインッ!」
殴り飛ばされたインテンスボアは突然の衝撃と痛みに混乱したのか足をジタバタとさせていた。それにしても激しい動きだな。流石はインテンスボアって言われるだけの事はある。
心臓付近を殴り衝撃で心臓を止めた俺はアイテムボックスにしまう。え?銀にあげないのかって。インテンスボアのお肉は高く売れるから今回は我慢して貰うつもりだ。アインが知ったら、何故マスターに謙譲しなかったのか答えなさい。さもないと限りなく苦しめてから殺します。って良いそうだな。
「ガウッ!」
「お、食べ終わったのか」
それじゃ帰るか。ん?
帰ろうと思った矢先帝都の方から知った気配を感じる。この気配もしかして。
小さくなった銀を抱えて気配がする方に向かうと他の冒険者たちの中にカルアが居た。
「あ、ジンさん!」
歩いてくる俺の姿を見てカルアも気づいたらしい。
「よ、カルア。元気にしてたか?」
「はい!それでジンさんはどうしてここに?」
「依頼を終えて帰るところだ」
「そうだったんですね。あ、私のパーティーメンバーを紹介しますね」
男性二人にカルアを含めた女性3人の5人パーティーが俺の前に並ぶ。
「彼が私たちのリーダーのDランク冒険者のヴァイスさんです」
「ヴァイス・カデールだ。よろしく」
身長175前後の短髪男性。背中に担いでいるライフルから見て後衛だな。
「それでこっちの彼が私たちより一ヶ月早く冒険者試験に合格したトキシさんです」
「Fランク冒険者のトキシ・ウーベだ。よろしく」
身長160後半の赤毛の男性。武器はカルアと同様二丁拳銃のようだ。
「それでこっちの彼女がルナさんです」
「ルナ・リファネスよ。ランクはEよろしくね」
ベージュの長髪に薄い緑色の瞳。年齢的に24ぐらいだろうか。武器はアサルトライフルか。
「それで最後の彼女がシズさんです」
「シズ・シェテフ。ルナと同じEランク冒険者。好きな食べ物はシチュー。好きな事は読書。因みに年齢はルナより私の方が若い」
黒髪のセミロングに黒目。武器はサブマシンガンだった。なんだか銃の見本市に来た気分だな。
「何言ってるのよ!違うと言ってもたったの2週間でしょ!」
「2週間でも私の方が若いのは事実よ」
んでこの2人はなんでいきなり言い争ってるんだ。
「ほら、2人とも喧嘩しない。今は依頼中だろ」
「「すいません」」
ヴァイスが慣れたように2人の言い争いを止める。さすがはリーダーだな。
「それで貴方の名前は?」
「俺は仁、鬼瓦仁だ。カルアとは冒険者試験で同じ班だったんだ」
「はい。で、一緒に合格しました」
「カルアには聞いていたけど本当に貴方だったのね」
不気味な笑みを浮かべるルナ。どっかで会ったか?
「ルナ知ってるの?」
「偶然ギルマスが探していた人物が彼だったから調べてみたのよ。そしたら凄い大物だったわ。スヴェルニ王国であった悲劇の騎士事件は皆も知ってると思うけど、その悲劇の騎士が彼なのよ」
『え!?』
悲劇の騎士事件って呼ばれてるのか。なんだか恥ずかしいな。
「それだけじゃ無いわ。スヴェルニ学園で行われた武闘大会個人戦学園代表選抜で神童と送り人を倒して優勝したのが彼」
「マジか。それはギルマスが欲しがるわけだ」
「そ、なのに他のギルドはその事を知ってか知らずかは知らないけど入社試験で落としたらしいわ。まったく馬鹿よね」
「確かにそれは馬鹿だな。で、どうた?うちのギルドに入らないか?」
ヴァイスが聞いてくる。と言うか近い。男に接近されて嬉しいのは一部の男性だけだ。
「悪いが俺は自分のギルドを創る事にしたから。悪いがその話は断らせて貰う。アンタ等のギルドマスターにもそう伝えてくれ」
「そうか。って自分のギルドを作るって最低でもDランクにならないと無理だぞ」
「ああ、分かっている。既にEランクだしあと少しだ」
『え!?』
ん?そんなに驚く事なのか?
「ジンさんもうEランクなんですか!」
「ああ、ほら」
俺はギルドカードを見せる。
「本当だ。冒険者になって一ヶ月も経ってないのにもうEランクなんて凄いですね」
「別に凄くないだろ。フリーの冒険者だし依頼をこなせば入ってくるポイントはパーティーを組んでいる冒険者たちよりも多いからな」
「それでも早いですよ。私なんてまだFランクですよ!」
「そうだぜ。俺だってもう少しでEランクってところなんだからな」
「そうなのか。ま、確かに俺は同時に依頼を3つ受けたりしてたしな」
「3つって同時に受けられる限度一杯じゃねぇかよ!そんな冒険者なりたての奴がする行動じゃないぜ」
そんな俺の話に全員が驚きの表情を浮かべていた。そんなに驚く事じゃないだろ。あの気まぐれ島では日常茶飯事どころの話じゃなかったからな。
一体倒せば別の一体。またそいつを倒せばまた別の一体って感じで戦闘を嗅ぎ付けば化け物たちが襲い掛かってくるんだからな。ま、そのお陰で強くなれたのは確かだけど。
「それでカルアたちはなんの依頼を受けてるんだ?」
「ホブゴブリンの討伐です」
ホブゴブリンの討伐か。確かにあれはEランクの依頼だし全員が受ける事が出来るな。
気配で探知してみると確かにホブゴブリンが5匹狩った野生動物を食べていた。
「それならこの先に行ってみな。たぶん居ると思うから」
「確かにお前の実力は認めるが魔力の無いお前がどうやって――」
「分かりました」
「そうか。それじゃ俺は戻って報告しないと行けないから」
「分かりました。また食事でも行きましょうね」
「ああ」
話を終えた俺はカルアたちと別れて冒険者組合へと向かった。
日差しで目を覚ました俺はスマホで時間を確認する。
10時42分。
帰ってから寝たのが夜の10時過ぎだから12時間以上寝てたのか。我ながら良く寝たな。そう言えば前世でこんなに寝た日は大学生の時までだったな。
冷蔵庫を開けて昨日買っておいたお茶で喉を潤す。うん、やはり冷たいお茶は最高だ。
身支度も済ませたことだし、高らかに宣言しよう。
「お金が無い!」
そうまったくお金が無いのだ。昨日依頼を受けて報酬は貰ったけどそれでもまだ借金が残っている。まさか借金生活を送る羽目になるとはそれも18歳でだ。
こんな借金生活俺は望んでないぞ!どうしてラノベ主人公みたいに金持ちになれないんだよ!やはりあれか!時代が悪いのか、それとも魔力が無いからか、チート能力が無いからか。いや、その全部だ!全部あの糞女神が悪いんだ!
大人だって好き勝手に生きたいんだよ!夢だって見るんだよ!それのどこが悪いんだよ!幼稚って言われても俺は好きに生きるって決めたんだ!って俺はさっきから何を言ってるんだ。
現実逃避から戻ってきた俺はベッドに座って依頼を探す。
「やっぱり良いの無いな」
愚痴りながらも俺は依頼を探す。
Dランクの依頼の大半は護衛か輸送ばかりだ。と言うよりもDランク以上の大半がそうだけど。
それでもフリーで受けられる依頼は極僅か。そのため報酬も獲得ポイントも他に比べて少ない。フリーで動く以上それは仕方が無い。勿論パーティーで依頼を受ける冒険者に比べれば入る量は断然多いがそれでもやはり少ないと感じてしまう。
「仕方が無い。コツコツ依頼をこなして行くか」
俺はフリーでも受けられる依頼の中から一番報酬とポイントが高い依頼をチョイスする。
銀をつれて俺は冒険者活動へと向かった。
受けた依頼はコボルトの討伐である。帝都の北門を出て直ぐのところにある森の中にコボルトが生息しているらしい。
コボルトと言えば犬が二足歩行で移動するイメージが多いが、それで間違ってはいない。
全身毛で覆われているため獣人と間違える事も無い。ただコボルトは年4回と発情するためゴブリンやオークの次に繁殖力が強い魔物とされている。普通犬って年に2回じゃなかったか?ま、そこは犬と魔物の違いか。
またゴブリンやホブゴブリンよりも知能が高いため、軍隊のように統制がとれており、集団を相手にする時は危険度が高い。
それでもDランクの依頼の中では下位の依頼だ。
理由としてはDランク冒険者は既に経験もあり油断することが無い。また今回の依頼がコボルト5匹討伐のため低いのだ。これがコボルトの集団、もしくはコボルトの巣破壊となればCランクの依頼になっていただろう。
電車に乗るお金も惜しむ俺は走って帝都の外へと向かった。ま、いつもそうしてるんだが。だって走った方が速いからな。
北門を出ると舗装された道路脇を走る。
帝都の中はハッキリと言って都会だ。だが帝都の外は一変して森。全域が森。まるで山の一部のみを開拓して作り上げたかのような場所だ。
だけど道はちゃんと舗装されているし、線路だって通っている。きっとこの工事の時は護衛で冒険者たちは大忙しだったろうな。いや、国としてやったのなら軍か?どっちでも良いか。
走ること15分、道路から森の中へと入った俺はさっそく気配でコボルトを探す。と言っても既に見つけていたんだけどな。
帝都を出て5分でコボルト10匹が行動しているのを確認している。
それに気配を感じる限りコボルト以外にもインテンスボア、ゴブリン、バインドラビットなんかも居る。
東の森と違ってここは魔物の宝庫だな。
一旦コボルト討伐をやめて俺はスマホで冒険者専用サイトの依頼掲示板を見る。お、あるある。
俺はその中からDランクのインテンスボア討伐とEランクのゴブリン討伐を同時に受ける。
依頼を同時に受けて良いのは規定で3つまでと決まっている。だから俺はそれを最大限利用して討伐を再開した。
最初に狙ったのはコボルトだ。少しでも戦闘音が聞こえたら逃げる可能性も出てくる。一番報酬とポイントが高い獲物をみすみす逃すわけにはいかないからな。
気配を殺して俺は森の中を駆け抜ける。距離まで残り5メートル。
それでもコボルトたちは気づいていない。周りに潜んでいる魔物も居ない。これなら行ける!
俺はそのままコボルトの側面に飛び出すとそのまま指突で1匹を殺し、そのまま流れるような動きで2匹目も殺す。
ようやく事態を理解したコボルトたちは一旦距離を取ろうとするが、させるわけがない。
反応が一番遅かったコボルトの頭を指突で貫く。これで3匹目。
背後から襲ってくるが俺が気づかないわけがない。
コボルトお手製の槍を体を反らせて躱した俺はハイキックでコボルトの頭を粉砕する。こで4匹目っと。
さすがに今の攻撃を見て勝てないと判断したのか摺足で下がり逃走を図るが、遅い。そう思ったのなら脱兎の如く逃げないと俺からは逃げられないぞ。はい、5匹目。
さて残りはってあれ?
敵を確認しようとしたらいつのまにか銀が全部倒していた。俺の戦いを見て戦いたくなったのか。ま、俺としては討伐出来たのなら問題ないけど。
俺はコボルトの耳を手刀で切り落としてアイテムボックスにしまう。
「銀、残りは食べて良いぞ」
「ガウッ!」
そう言うと嬉しそうにコボルトを食べ始める。うん、やはりいつ見ても凄い光景だな。テレビ放送するならモザイク必須だ。
「銀食べ終わったら俺の所に来い。俺はその間にゴブリンとインテンスボアを討伐しておくって聞いちゃいないか」
久々に大量の生肉を食べられるのが嬉しいのか無我夢中で食べていた。
それじゃ俺は討伐に向かいに行きますか。
次に狙ったのはゴブリンだ。距離的にそっちの方が近いのとインテンスボアは食事中で気が付いていなかったからだ。
ゴブリン5匹を目視出来る距離まで来た俺はそのまま飛び出してコボルト同様に指突で瞬殺する。やはりゴブリンはゴブリン。コボルトよりも反応が悪いし統制も取れちゃいない。僅か数秒で倒す事が出来た。
耳を回収した俺はインテンスボア目掛けて走りだした。
距離もそれほど遠くない。と言うか既に目視出来る距離まで来ている。あ、でも警戒しているなゴブリンとの戦闘音が聞こえたのか?ま、関係ないか。
正面から飛び出した俺はインテンスの鼻先目掛けて0.3%の力で殴る。
「ギャインッ!」
殴り飛ばされたインテンスボアは突然の衝撃と痛みに混乱したのか足をジタバタとさせていた。それにしても激しい動きだな。流石はインテンスボアって言われるだけの事はある。
心臓付近を殴り衝撃で心臓を止めた俺はアイテムボックスにしまう。え?銀にあげないのかって。インテンスボアのお肉は高く売れるから今回は我慢して貰うつもりだ。アインが知ったら、何故マスターに謙譲しなかったのか答えなさい。さもないと限りなく苦しめてから殺します。って良いそうだな。
「ガウッ!」
「お、食べ終わったのか」
それじゃ帰るか。ん?
帰ろうと思った矢先帝都の方から知った気配を感じる。この気配もしかして。
小さくなった銀を抱えて気配がする方に向かうと他の冒険者たちの中にカルアが居た。
「あ、ジンさん!」
歩いてくる俺の姿を見てカルアも気づいたらしい。
「よ、カルア。元気にしてたか?」
「はい!それでジンさんはどうしてここに?」
「依頼を終えて帰るところだ」
「そうだったんですね。あ、私のパーティーメンバーを紹介しますね」
男性二人にカルアを含めた女性3人の5人パーティーが俺の前に並ぶ。
「彼が私たちのリーダーのDランク冒険者のヴァイスさんです」
「ヴァイス・カデールだ。よろしく」
身長175前後の短髪男性。背中に担いでいるライフルから見て後衛だな。
「それでこっちの彼が私たちより一ヶ月早く冒険者試験に合格したトキシさんです」
「Fランク冒険者のトキシ・ウーベだ。よろしく」
身長160後半の赤毛の男性。武器はカルアと同様二丁拳銃のようだ。
「それでこっちの彼女がルナさんです」
「ルナ・リファネスよ。ランクはEよろしくね」
ベージュの長髪に薄い緑色の瞳。年齢的に24ぐらいだろうか。武器はアサルトライフルか。
「それで最後の彼女がシズさんです」
「シズ・シェテフ。ルナと同じEランク冒険者。好きな食べ物はシチュー。好きな事は読書。因みに年齢はルナより私の方が若い」
黒髪のセミロングに黒目。武器はサブマシンガンだった。なんだか銃の見本市に来た気分だな。
「何言ってるのよ!違うと言ってもたったの2週間でしょ!」
「2週間でも私の方が若いのは事実よ」
んでこの2人はなんでいきなり言い争ってるんだ。
「ほら、2人とも喧嘩しない。今は依頼中だろ」
「「すいません」」
ヴァイスが慣れたように2人の言い争いを止める。さすがはリーダーだな。
「それで貴方の名前は?」
「俺は仁、鬼瓦仁だ。カルアとは冒険者試験で同じ班だったんだ」
「はい。で、一緒に合格しました」
「カルアには聞いていたけど本当に貴方だったのね」
不気味な笑みを浮かべるルナ。どっかで会ったか?
「ルナ知ってるの?」
「偶然ギルマスが探していた人物が彼だったから調べてみたのよ。そしたら凄い大物だったわ。スヴェルニ王国であった悲劇の騎士事件は皆も知ってると思うけど、その悲劇の騎士が彼なのよ」
『え!?』
悲劇の騎士事件って呼ばれてるのか。なんだか恥ずかしいな。
「それだけじゃ無いわ。スヴェルニ学園で行われた武闘大会個人戦学園代表選抜で神童と送り人を倒して優勝したのが彼」
「マジか。それはギルマスが欲しがるわけだ」
「そ、なのに他のギルドはその事を知ってか知らずかは知らないけど入社試験で落としたらしいわ。まったく馬鹿よね」
「確かにそれは馬鹿だな。で、どうた?うちのギルドに入らないか?」
ヴァイスが聞いてくる。と言うか近い。男に接近されて嬉しいのは一部の男性だけだ。
「悪いが俺は自分のギルドを創る事にしたから。悪いがその話は断らせて貰う。アンタ等のギルドマスターにもそう伝えてくれ」
「そうか。って自分のギルドを作るって最低でもDランクにならないと無理だぞ」
「ああ、分かっている。既にEランクだしあと少しだ」
『え!?』
ん?そんなに驚く事なのか?
「ジンさんもうEランクなんですか!」
「ああ、ほら」
俺はギルドカードを見せる。
「本当だ。冒険者になって一ヶ月も経ってないのにもうEランクなんて凄いですね」
「別に凄くないだろ。フリーの冒険者だし依頼をこなせば入ってくるポイントはパーティーを組んでいる冒険者たちよりも多いからな」
「それでも早いですよ。私なんてまだFランクですよ!」
「そうだぜ。俺だってもう少しでEランクってところなんだからな」
「そうなのか。ま、確かに俺は同時に依頼を3つ受けたりしてたしな」
「3つって同時に受けられる限度一杯じゃねぇかよ!そんな冒険者なりたての奴がする行動じゃないぜ」
そんな俺の話に全員が驚きの表情を浮かべていた。そんなに驚く事じゃないだろ。あの気まぐれ島では日常茶飯事どころの話じゃなかったからな。
一体倒せば別の一体。またそいつを倒せばまた別の一体って感じで戦闘を嗅ぎ付けば化け物たちが襲い掛かってくるんだからな。ま、そのお陰で強くなれたのは確かだけど。
「それでカルアたちはなんの依頼を受けてるんだ?」
「ホブゴブリンの討伐です」
ホブゴブリンの討伐か。確かにあれはEランクの依頼だし全員が受ける事が出来るな。
気配で探知してみると確かにホブゴブリンが5匹狩った野生動物を食べていた。
「それならこの先に行ってみな。たぶん居ると思うから」
「確かにお前の実力は認めるが魔力の無いお前がどうやって――」
「分かりました」
「そうか。それじゃ俺は戻って報告しないと行けないから」
「分かりました。また食事でも行きましょうね」
「ああ」
話を終えた俺はカルアたちと別れて冒険者組合へと向かった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる