魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒

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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す

第三十五話 借金返済

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 冒険者組合に行くとロットたちがミキと話していた。今日は知り合いによく会うな。

「お、ジンじゃねぇか!」
 そんな言葉にルーチェが即座に目を輝かせ銀に飛びついてくる。

「ギンちゃん!」
 ここまで銀を好きな女性は初めて会った。いや、アインがいるか。

「それでジンは冒険者組合に何しに来たんだ?」
「依頼を達成したから報告に来たんだ」
「なるほどな」
「ロットたちもか?」
「ああ、Cランクのオーク討伐に行ってたんだ」
 オーク。豚が二足歩行する魔物。エロゲーなんかでエルフや女騎士を陵辱する気色悪い生き物だ。
 また繁殖力も強く正確ではないが、ゴブリンよりも繁殖力が強いと言われている。しかしその肉は超絶なほど不味いため冒険者の間では忌み嫌われている魔物の一つだ。特に女性冒険者に嫌われているしな。

「オークなんて見ただけで吐き気がするほどよ」
「あれこそこの世から絶滅して欲しい魔物ナンバー1です」
 なんてルーチェとシェーミが言うほどだ。
 一旦話を切り上げた俺はミキに依頼達成の報告をする。

「それじゃギルドカードを出してください」
「ほい」
「ジン君が受けた依頼はDランク依頼のコボルト5匹討伐とDランクのインテンスボア討伐。それからEランクのゴブリン討伐ね」
「そうだ」
 そんな俺の言葉にロットたちが驚きの声を上げる。

「おいおい、ソロのジンが三つも同時に依頼を受けたのかよ。流石にそれは無理なんじゃ」
「因みにその依頼いつ受けたの?」
「コボルトは10時40分頃でインテンスボアとゴブリンは11時20分ぐらいだったと思う」
「確かにその頃に依頼を受けてますね」
 そんな曖昧な俺の記憶を証拠付けてくれるようにミキが答えてくれる。

「まだ12時過ぎだぞ。そんな短時間で討伐出来るわけがないだろ」
「でもジンなら討伐してきそうですね」
 驚くロットに対してシェーミだけは俺の強さをなんとなく理解しているようだ。

「その通り。ちゃんと討伐してきたぞ。ほら」
 俺はそう言ってゴブリン、コボルトの耳とインテンスボアをアイテムボックスから出す。

「マジかよ……」
「あはは……やっぱりジン君は凄いね……」
 呆けた表情をするロットと頬を吊り上げてぎこちなく笑うルーチェ。別に驚くような事じゃないだろ。

「それじゃ確認しますね」
「頼む」
 そう言ってミキが確認を行う。

「ミキは驚いてないのね」
「ジン君が同時に依頼をその日にこなしてくる事は冒険者になった時からだったからね。流石にもう驚かないわよ」
「それってGランクの時から?」
「ええ、記録を見る限り一日で犬探しや猫探しを複数達成しているわね。ってゴメンねジン君!勝手に個人情報を教えちゃって!」
「別に誰に記録を見られても俺は気にしないから」
「そう、言ってくれて助かるわ」
 胸を撫で下ろすミキは改めて仕事を再開した。
 銃数分後、鑑定が終わったのか男性職員がミキに一枚の紙を渡す。

「確かにコボルト、ゴブリン、インテンスボアの討伐を確認しました。インテンスボアはどうしますか?」
「買い取ってくれ」
「畏まりました。それと合わせて報酬はどうしますか?」
「現金で頼む」
「分かりました。少々お待ちください」
 そう言ってミキがお金の準備をし始めた。

「はい。達成報酬とインテンスボアの買取価格を合わせて50万RKになります」
「どうも」
「50万RKなんてお金初めて見たわ」
「ルーチェたちならこれぐらいのお金普通に貰ってるだろ」
「確かに貰ってるけど。私たちは依頼を受けたとしても平均月に13回程だし。パーティーで依頼を受けてるから山分けだしね。それに今は平均13回だけど、Eランクの時は一ヶ月に8回ほどよ。大抵依頼はギルマスが決めるのが家の決まりだしね。だからEランクの時はそんなに稼げてなかったわ」
 そうだったのか。やっぱり低ランクの時はフリーの方が儲けられるみたいだな。
 その事を考えるならフリーの冒険者で良かったかもな。

「それよりもほら、前に借りたお金返す」
「え!?良いわよそんなの」
「そうだぜ。あれは殆どジンが倒したみたいなものだったし。逆に俺たちが貰ったのがおかしいぐらいだ」
「だけどお前等だって倒したじゃねぇか。その分のお金はキッチリと貰うべきだ。それに俺はお金の貸し借りが嫌いなんだ。だから受け取ってくれ」
「そう言うんなら仕方がねぇな」
「細々とした数字は嫌いだから40万返す。ま、利子にしては少ないだろうけどな」
「まったく、変なところで几帳面だよなお前は」
「面倒な計算が嫌いなんだよ。それに友人との関係を壊すのは金銭のやり取りだからな。それだけは回避したい」
「確かにそれは言えてるな。確かに貸してた40万は返して貰ったぜ」
 こうして俺はちゃんと借金を返すことが出来た。これで肩の荷が降りたぜ。
 でもこれからどうするか。そこまで体は動かしてないからお腹は空いてないし、銀はさっきコボルトを食べたから昼食は要らないだろうし。
 前世と違ってこの世界で趣味があるわけじゃない。いや、作ろうと思えば作れるだろうが、生憎と今は趣味が欲しいほど退屈していない。
 それだけこの世界がスリルと緊張感に満ち溢れているからなのかもしれないが。そんな事をイザベラあたりに言ったら怒られるだろうけどな。
 それでもあの気まぐれ島に5年間生き抜き、あの島の考えや生き方に染まっている俺としては今の生活がなくなるのは少し困る。


「ならまた依頼でも受けるかな」
 そんな俺の独り言にロットたちは驚愕の表情を浮かべていた。

「どうかしたのか?」
「また依頼を受けるのか?」
「ああ、ギルド設立にお金が足りないし、Dランクになってないからな。仲間が集まったのにギルド設立が出来ませんでした。じゃ話にならないからな。今のうちにクリア出来る項目はクリアしておくさ」
『……………』
 そんな俺の言葉にロットたちだけじゃなく、ミキまでもが驚愕の表情を浮かべていた。

「でもジン君はもう三つも依頼を達成しています。それなら今日は休むべきだと私は思いますけど」
 ミキがそんな事を言ってくる。心配してくれてるのなら嬉しいけど。ま、受付嬢としての社交辞令みたいなものだろうけど。

「そこまで動いてもいないから、体力的には問題ないぞ。こんな事言ったら生意気だって言われるかも知れないけど、正直今のランクの討伐じゃ俺も銀も戦った感すらない。だから出来るならもっと上のランクを受けたいが、そんな我侭は言えないからコツコツランクを上げて行くしかないけどな」
「あははは……」
 空笑いをするミキたちを無視して俺は依頼を探す。やっぱりフリーだと良いのがないな。ま、さっきも言ったようにコツコツ依頼をこなして行くしかないか。
 ポイントと報酬が大きいのを3つ受けた俺は早速森へと向かう。

「それじゃ、またな」
「あ、あの!」
 さて、ちゃっちゃと依頼をこなすとしますか。

            ************************

「ジン君、行ってしまったけど大丈夫かな……」
「そう言えばミキは知らなかったわよね」
「え?何が?」
「こないだのレメント鉱石を運ぶ途中で盗賊集団鷹の爪に襲われたことは知ってるわよね?」
「ええ、知ってるよ。その知らせを聞いた時は驚いたし、無事に帰って来てくれて嬉しかったし、なによりあの鷹の爪を倒した事に驚きと嬉しさで舞い上がったわ!」
 ほんと、友達の事になると表情がコロコロ変わるわね。

「噂じゃ私たちが倒したって事になってるけど。実際は違う。鷹の爪の半数とリーダーであるギブスを倒したのはジンなのよ」
「え?」
 ま、信じられないでしょうね。私だって自分の目で見てなかったら信じられなかったわ。でも、実際私たちはこの目で見た。
 刹那の空間を移動し、敵を殴り、殺す。私たちでは到底届くこと無い領域からの攻撃。

「私たち5人でようやく10人を倒した時にはジンは既に戦いを終えていたわ。それどころか情報を引き出すために手加減までしてギブスを気絶させていた」
「で、でもジン君には魔力が無いのよ!」
「そうよ。彼には魔力が無い。そんな彼を周りの人間たちは馬鹿にし、見下し、嘲笑うでしょうね。だけど彼はそんな事は気にもしないでしょうね。なぜなら私たちが想像すら出来ない過酷な人生を送ってきたんだから。そしてそんなオニガワラ・ジンという男と少しでも一緒に居たら、馬鹿にしていた自分が恥ずかしくなるし、彼を見る目が変わるわ。だから私たちはジンの事を馬鹿にはしない。逆に一緒に冒険がしたいとすら思うほどよ」
「ルーチェがそこまで言うなんて……」
「私にそこまで言わせるだけの力と魅力を彼は持ってるのよ」
「惚れた?」
「さぁね。でも私じゃ釣り合わないのは確かよ」
「私はそう思わないけどな」
 ミキはまだジンの凄さは目にしてないから、そんな事が言えるのよ。

「無理無理。だって彼の隣に立つのは余りにも倍率が高すぎるんだもの」
 だから私は彼には恋もしないし、惚れない。
 私はジンと仲の良い冒険者友達であり、彼を応援するファンでいたいもの。

            ************************

「これで最後だな。銀、まだ食べるなよ」
「クウゥ……」
 最後の依頼を達成した俺は証拠となる耳を刈り取る。
 アイアンフォックス、ハードホース、ビックラビットの討伐依頼を受けた俺はハードホースを最後に倒して全ての依頼を達成した。
 ハードホースは思いのほか数が居たから銀が食べても買い取って貰う分には問題ない。
 冒険者組合に戻る頃にはもう黄昏時の時間になっていた。たぶんアインは既に戻ってきているだろうな。早く帰らないと蜂の巣にされかねない。
 鑑定をして貰って無事に達成した俺は報酬を振り込んで貰うと俺と銀はさっさと拠点に戻った。
 拠点に戻ると予想通りアインが戻っていた。

「お疲れって軽機関銃を俺に向けるな!」
「面倒な冒険者試験を受けて帰ってきた私を出迎えもせずにマスターと一緒にお出かけなんて万死に値します」
「依頼を受けてたんだからしかたがないだろ!それに銀も嬉しそうに魔物を食べて強くなったぞ」
「むっ、マスターを強くするためならば仕方がありませんね」
 ふう、どうにか俺の命はこの瞬間にはなくならないようだ。安心はできないけど。

「それよりもあれはどういう事ですか?」
「あれって?」
「ソファやテレビの事です」
「ああ、買ったんだよ。みすぼらしい部屋が随分と良くなっただろ」
「よくそんなお金がありましたね」
「貯めてたからな」
「そんなお金があるならマスターになにか高級食材でも買って来るべきなのでは?」
 拙い……これは予想外の展開だ。

「だけどあんなボロボロのソファよりも新品のソファの方が銀も寛げるだろ。それに喉が渇いたりした時に冷蔵庫があれば冷たいものだって飲める」
「それはそうですね。ですがテレビは必要ないと思いますが?」
「情報を得るためだよ」
「私はどこにでも接続することが出来るので必要ありません。今すぐ帝国が所有するミサイルを貴方の頭に落とした方がよろしいかもしれません」
「やめろ!俺が死ぬだけでなくそれは犯罪だ!銀を犯罪者の仲間にしたいのか」
「むっ、そうですね。では私が殺して差し上げます」
 何故、そうなる!こいつの頭には俺を殺す口実を探す事しかないのか。

「お前だって銀が賢いことは知ってるだろ。だったら何か見たい物があるかもしれないだろ」
「確かに神狼であらせられ、聡明なマスターならありえなくもないですね」
 銀ラブのアインで良かった。普通の奴なら絶対に通用しない良い訳だからな。

「ですが、まだ問題があります」
「なんだ?」
「どうして私の部屋には新しいベッドがないのですか?」
「勝手に入るわけにはいかないからアイテムボックスに入れているだけだ。設置したいなら設置するが?」
「そう言う事なら仕方がありませんね。それでは奴隷。私の部屋に入ることを許可します。今すぐ設置してきなさい」
「誰が奴隷だよ」
「死にたいのですか?」
「わ、分かったよ!」
 まったくこれじゃどっちがこの拠点の主なのか分かったものじゃないな。
 今すぐ横になりたい気持ちを抑えて俺はアインの部屋に新しいベッドを置くのだった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――
ゴブリン +5万RK
コボルト +20万RK
インテンスボア +10万RK
買取価格 +25万RK
借金返済完了 -40万RK
お茶2リットル×5本 -900RK
おにぎり×3個 -360RK
アイアンフォックス +10万RK
ハードホース +15万RK
ビックラビット +10万RK
買取価格 +20万RK

残高88万8740RK
5階建てビル
昇格まで残り27ポイント
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