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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す
第八十四話 新しい仲間は冒険者兼料理長
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新しい仲間は欲しい。だが、強くなる事への欲求。向上心と言っても良い。確かに口では強くなりたいと言っているが、それが行動で示されていない。その証拠に5年も経って未だEランクなのがその証拠だ。
どう言う風に育ったのかは分からないが、向上心の無い奴は俺たちのギルドでは生きていけないだろう。なんせ、一番低いランクでもBランクなのだから。
ま、念のためにステータスだけは確認しておくか。
「グリード、悪いがステータスを見せてもらっても良いか?」
「は、はい!」
大きな手で操作するグリードのスマホはまるでミニチュアのように見えてしまう。タブレットで丁度良い感じだな。
「ど、どうぞ」
震えた両手の上に置かれたスマホを受け取る。別にそこまで怯えなくても良いと思うぞ。
だってこれじゃ、脅して財布を奪っているようにしか見えないからな。
そんな事を思いながら俺はスマホに表示されたグリードのステータスに視線を落とす。影光たちも気になったのか後ろから覗き込む。
─────────────────────
グリード・クレムリン
種族 クウォータージャイアント
職業 冒険者(重戦士)
レベル 296
MP 285000
力 47900
体力 27800
器用 12600
敏捷性 9400
スキル
体術Ⅵ
槌術Ⅷ
耐熱Ⅴ
耐寒Ⅳ
危機察知Ⅶ
物理攻撃耐性Ⅵ
魔法攻撃耐性Ⅳ
状態異常耐性Ⅳ
魔力操作Ⅳ
採取Ⅴ
調理Ⅸ
解体Ⅶ
属性
土 無
─────────────────────
「戦いが苦手なわりには随分とレベルが高いな」
「あ、それは、小さい時に父に鍛えられたので」
「なるほど。それでか」
「レベルだけ見ればうちに入る事は出来るのではないか?」
「及第点と言ったところですがね」
影光の言っている事は間違っていない。偶然とは言えフリーダムの仲間になった連中のステータスは常人の遥か上を行く。才能の塊と言っても良い。
だが今、俺が欲している仲間は即戦力になれる奴だ。
そうなるとメンバーに入れる基準値がどうしても高くなってしまった。
グリードのレベルは確かに高い。普通の冒険者より上を行く。しかしフリーダムの即戦力と言う意味でならアインの言う通り、ギリギリの及第点だ。
「仁、どうするのだ?」
「どうするって言われてもな」
「ステータスだけ見るなら及第点なのだろ?」
「ああ。スキルの熟練度もそこそこ高い。きっと小さい時から父親にしごかれていたんだろ。それでも冒険者になって5年も経つのに未だEランクってのがな」
「ま、仁が言いたいことも分からんでもないな」
「私も同じ意見なのだ。誰もが最初はGランクからスタートなのだ。だから最初ランクが低いのは仕方がないのだ。だけど5年も経って未だEランクなのはどうみても戦いを避けているようにしか感じられないのだ」
「強くなりたいわりには、行動されていませんね」
「そ、それは……」
みんなの言う通りだ。強くなりたいなら1つでも多く討伐の依頼を受ければ良い。なのにそれをしていないのは意志が弱い証拠だ。
そんな奴を仲間に入れたところで俺たちにギルドにメリットがあるとは思えない。
「グリード悪いが………ん?」
「仁、どうかしたのか?」
俺はグリードのステータスのある部分に目が引かれた。
料理Ⅸ。
スキル欄の中で熟練度が一番高い。
熟練度をMAXにするのはそう簡単なものじゃない。辛い鍛錬が必要だ。勿論才能で熟練度の進み具合は変わってくるけど。
それでもMAX手前のⅨまでしていると言う事はそこら辺の料理人より上手と言うことじゃないのか?
少し試してみるか。
「グリード」
「は、はい!」
「そこのキッチンで俺たちに料理を出してみろ」
「え?」
俺の言葉にグリードは目を丸くする。
影光たちも意外なと言わんばかりの表情を浮かべていた。
「お、おい仁。何を言っているんだ?」
「そうです。貴方はやはり馬鹿ですね」
「お前等は黙っていろ。グリード。そこのキッチンで料理を俺たちに振舞ってみろ」
「で、ですが。材料は?」
「それに関しては安心しろ。材料はこの通りある」
俺はそう言ってアイテムボックスから食材を取り出した。
「調理器具は前の住人が置いていって古いのしかないが、洗えば使えるはずだ。水道もガスも使えるから安心しろ」
「よく分かりませんが、料理を作れば良いんですね」
「ああ」
怪訝な顔のまま材料を持ってキッチンに向かったグリード。さて俺たちは出来上がるのを待つだけだ。
それにしてもヌイシャ連邦国で色々と土産を買っておいて良かった。料理に使えそうな物って言ったら肉だけだけど。あとは前に買っておいた野菜類だ。アイテムボックス内は時間の流れがないから腐ることはないから安心だ。
ソファーで寛いでいると影光が不思議そうな顔で話しかけてきた。
「仁、何を考えいるんだ?確かにグリードの調理の熟練度は高かった。だがそれは仲間に加える話とは別のはずだ」
「それに関してはグリードの料理を食べてからだ」
俺の言葉に嘆息した影光は何も言い返す事は無かった。
40分ほどしてとても良い匂いがリビングに充満する。ああ、なんて素晴らしい匂いなんだ。食欲を刺激される。
どうやらそれは俺だけでなく影光、ヘレン、アインまでもが同じだったようだ。銀に至っては涎を垂れ流していた。
「お待たせしました」
お皿に盛り付けられた数種類の料理がテーブルに並べられる。
「ミートローフ、ポテトサラダ、サバの塩焼き、マグロ、鯛、エピスフィッシュの刺身盛り合わせ、ケンタウロスの厚切りステーキです。お米かパンがあれば主食も用意できたんですが、無かったので……」
「気にするな」
この世界は何故かは分からないが地球の食材もある。って今はどうでも良いか。
こんな美味しそうな料理を目の前にして俺が黙っていられるわけがないからな!
「それでは頂こうではないか、諸君!」
俺の言葉に全員が箸、フォークを構える。勿論俺は手だ。
『いただきます!』
全員の食事の言葉が重なると同時にそれぞれ興味は引いた料理に手が伸びた。
そしてそれを一口食べる。
「あ、あの……どうでしょうか?」
グリードがオドロオドロと質問してくるが、そんな事はどうでも良い。
全員がグリードに視線を向けて、言い放った。
『合格!』
「え?」
「美味い!これほど美味い料理は初めてだ!」
「このサバの塩焼きも素晴らしい塩梅だ!」
「ミートローフ、最高なのだ!」
「貴方の料理は素晴らしい。レグウェス帝国でも十分通用するレベルです」
「ガウッ!」
それぞれが感想を述べるが正直この料理を堪能したいので耳に入ってこない。
ああ、美味い!この厚切りステーキ最高だ!こっちの刺身もポテトサラダもこれほど美味しいとはイザベラの家の料理長や皇妃様たちの上を行っている。まさかこれほどの逸材が我がギルドに来てくれるとはありがたい!
「グリード、何してるんだ。お前も一緒に食べようぜ!」
「あ、え?……良いんですか?」
「当たり前だろ」
「それに大勢で食べたほうが美味しいと言うものだ」
「一緒に食べるのだ!」
「貴方が作った料理です。貴方が食べないでどうするのですか?」
「ガウッ!」
そんな俺たちの言葉にグリードは固まってしまう。別に固まるような事じゃないだろうに。
「ほら、早く座れ」
「は、はい!」
こうして全員でグリードの作ったご飯を堪能するのだった。マジで美味い!
食事を終えた俺たちは満足げな笑みを浮かべていた。
「あ~、もう入らないぜ」
「お酒がこれほど美味いと感じたのは久々だったのぉ」
なんて呟く俺たち。
そこに洗い物を終えたグリードが戻ってくる。
「あ、あの、それで僕はフリーダムに入れて貰えるんでしょうか?」
「ああ、そうだ。これからは我がフリーダムの調理係としてよろしくな」
「え?それってつまり料理人として雇うって事ですか?」
急にグリードの顔に影が落ちた。
何か勘違いしているようだな。
「そう言う意味じゃない。お前はフリーダムの冒険者兼料理長って事だ。所謂役職ってやつだ」
「あ、そう言うことだったんですね」
「因みに俺は冒険者兼ギルドマスターで、影光は冒険者兼戦闘訓練顧問。アインは冒険者兼掃除長兼魔法訓練顧問。ヘレンは冒険者兼味見役兼魔法訓練副顧問。ま、最後のはまだ先の話だ。で、銀が癒し係総監督。で、グリードが、冒険者兼料理長」
「な、なるほど」
どうやら理解してくれたようだな。え?そんな役職があったのかって。勿論今考えたからな。
それに影光たちだって嫌がってないし大丈夫だろ。
「そう言えばギルマス、先日の報酬まだ貰ってないんだが」
「なら明日、グリードのギルド登録に連れて行くからその時に振り込んでおく」
色々とドタバタしていてすっかり忘れていた。って今日帰国したばかりなんだから報酬を振り込めるわけないだろ!
「あ、あの!」
「なんだ?」
「つまりは一緒に依頼をこなせるって事ですよね!」
なにやら考え込んでいたと思えば、そう言うことだ。
だが、
「悪いがそれは無理だ」
「え?」
そんな俺の言葉に絶望的な顔になる。ま、無理もないか。
「ど、どうしてですか!?」
「理由は幾つかある。1つはお前のランクだ。俺たちのランクはそれぞれ、俺とアインがB。ヘレンがA。影光がSだ。つまりAランクの依頼ならお前抜きで受ける事が出来る。しかしお前はEランクだ。最低でもDランクまで上げて貰わないと一緒に依頼をこなす事は無理だ。別にお前のランク合わせてDランクの依頼を受けても構わないが、Dランクの依頼を2人以上で受けるのは少人数のフリーダムとしては効率が悪いんだ。だから最低でもあとDランクに昇級して貰わないと困る」
「………」
「もう1つはお前の実力を知らない事だ」
「で、でも!ステータスを見た時は及第点だって!」
「確かにそうは言った。即戦力と言う意味でお前のステータスはギリギリの及第点だったからな。だがあらゆる状況下でそのステータス通りの実力が出せるとは限らない。だからまずお前の実力を見ないことには背中を預ける事は出来ない」
「そ、それはそうですが……」
「そして何より一番の理由はその弱腰な所だ」
「え?」
「別に威張り散らせって言ってる訳じゃない。普段の日常ならなんの問題も無い。だが戦場でそんな弱腰で居られるのは一緒に戦う身としては足手まといでしかない。と言うか俺たちが危険な目に合う可能性の方が高くなる事は目に見えている。俺はギルドマスターとしてそれは避けなければならない」
「そ、そんな………」
そんな俺の言葉に衝撃を受けたのか下を向いていた。ま、ハッキリと言ったからな。無理もないか。だがこの場にもう少しオブラートに包んで話せ。って言う奴は誰一人としていない。
俺たちは冒険者だ。特に討伐系の依頼をする俺たちフリーダムのメンバーは戦場がどう言った場所なのか身を以って体験している。だからこそハッキリと言わなければならない時があるって事を知っているのだ。
「だけどそれは、現状はって事だ。グリード強くなりたいんだろ?俺たちと一緒に依頼を受けたいんだろ?」
「は、はい!」
「だったらお前に試練を与える!」
「し、試練ですか?」
「そうだ!」
まっすぐと俺を見るグリード。
一度で良いか言ってみたかったんだよな。この台詞。それとアイン。小さな声でアホがアホな事を言っているって言うな。
「今年の31日までにAランク。最低でもBランクにまで昇格しろ!そうすればお前は俺たちと一緒に依頼を受ける事を認めてやる!」
「は、はい!頑張ります!」
「よし!」
こうしてグリードの試練が始まったのであった。
ま、俺としては良いこと尽くめだけどな。昇級するために幾つもの依頼達成しなければならない。そうなればギルド口座に依頼報酬の一割が入ることになる。ランクが低いから報酬も少ないが塵も積もれば山となるだ。
俺が別のことをしている間に勝手にお金が入る。なんて素晴らしいんだ!ギルドを設立して正解だったな。アハハハッ!
「クズ虫がゲスな事を想像してますね」
「ナ、ナンノコトダ?」
どう言う風に育ったのかは分からないが、向上心の無い奴は俺たちのギルドでは生きていけないだろう。なんせ、一番低いランクでもBランクなのだから。
ま、念のためにステータスだけは確認しておくか。
「グリード、悪いがステータスを見せてもらっても良いか?」
「は、はい!」
大きな手で操作するグリードのスマホはまるでミニチュアのように見えてしまう。タブレットで丁度良い感じだな。
「ど、どうぞ」
震えた両手の上に置かれたスマホを受け取る。別にそこまで怯えなくても良いと思うぞ。
だってこれじゃ、脅して財布を奪っているようにしか見えないからな。
そんな事を思いながら俺はスマホに表示されたグリードのステータスに視線を落とす。影光たちも気になったのか後ろから覗き込む。
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グリード・クレムリン
種族 クウォータージャイアント
職業 冒険者(重戦士)
レベル 296
MP 285000
力 47900
体力 27800
器用 12600
敏捷性 9400
スキル
体術Ⅵ
槌術Ⅷ
耐熱Ⅴ
耐寒Ⅳ
危機察知Ⅶ
物理攻撃耐性Ⅵ
魔法攻撃耐性Ⅳ
状態異常耐性Ⅳ
魔力操作Ⅳ
採取Ⅴ
調理Ⅸ
解体Ⅶ
属性
土 無
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「戦いが苦手なわりには随分とレベルが高いな」
「あ、それは、小さい時に父に鍛えられたので」
「なるほど。それでか」
「レベルだけ見ればうちに入る事は出来るのではないか?」
「及第点と言ったところですがね」
影光の言っている事は間違っていない。偶然とは言えフリーダムの仲間になった連中のステータスは常人の遥か上を行く。才能の塊と言っても良い。
だが今、俺が欲している仲間は即戦力になれる奴だ。
そうなるとメンバーに入れる基準値がどうしても高くなってしまった。
グリードのレベルは確かに高い。普通の冒険者より上を行く。しかしフリーダムの即戦力と言う意味でならアインの言う通り、ギリギリの及第点だ。
「仁、どうするのだ?」
「どうするって言われてもな」
「ステータスだけ見るなら及第点なのだろ?」
「ああ。スキルの熟練度もそこそこ高い。きっと小さい時から父親にしごかれていたんだろ。それでも冒険者になって5年も経つのに未だEランクってのがな」
「ま、仁が言いたいことも分からんでもないな」
「私も同じ意見なのだ。誰もが最初はGランクからスタートなのだ。だから最初ランクが低いのは仕方がないのだ。だけど5年も経って未だEランクなのはどうみても戦いを避けているようにしか感じられないのだ」
「強くなりたいわりには、行動されていませんね」
「そ、それは……」
みんなの言う通りだ。強くなりたいなら1つでも多く討伐の依頼を受ければ良い。なのにそれをしていないのは意志が弱い証拠だ。
そんな奴を仲間に入れたところで俺たちにギルドにメリットがあるとは思えない。
「グリード悪いが………ん?」
「仁、どうかしたのか?」
俺はグリードのステータスのある部分に目が引かれた。
料理Ⅸ。
スキル欄の中で熟練度が一番高い。
熟練度をMAXにするのはそう簡単なものじゃない。辛い鍛錬が必要だ。勿論才能で熟練度の進み具合は変わってくるけど。
それでもMAX手前のⅨまでしていると言う事はそこら辺の料理人より上手と言うことじゃないのか?
少し試してみるか。
「グリード」
「は、はい!」
「そこのキッチンで俺たちに料理を出してみろ」
「え?」
俺の言葉にグリードは目を丸くする。
影光たちも意外なと言わんばかりの表情を浮かべていた。
「お、おい仁。何を言っているんだ?」
「そうです。貴方はやはり馬鹿ですね」
「お前等は黙っていろ。グリード。そこのキッチンで料理を俺たちに振舞ってみろ」
「で、ですが。材料は?」
「それに関しては安心しろ。材料はこの通りある」
俺はそう言ってアイテムボックスから食材を取り出した。
「調理器具は前の住人が置いていって古いのしかないが、洗えば使えるはずだ。水道もガスも使えるから安心しろ」
「よく分かりませんが、料理を作れば良いんですね」
「ああ」
怪訝な顔のまま材料を持ってキッチンに向かったグリード。さて俺たちは出来上がるのを待つだけだ。
それにしてもヌイシャ連邦国で色々と土産を買っておいて良かった。料理に使えそうな物って言ったら肉だけだけど。あとは前に買っておいた野菜類だ。アイテムボックス内は時間の流れがないから腐ることはないから安心だ。
ソファーで寛いでいると影光が不思議そうな顔で話しかけてきた。
「仁、何を考えいるんだ?確かにグリードの調理の熟練度は高かった。だがそれは仲間に加える話とは別のはずだ」
「それに関してはグリードの料理を食べてからだ」
俺の言葉に嘆息した影光は何も言い返す事は無かった。
40分ほどしてとても良い匂いがリビングに充満する。ああ、なんて素晴らしい匂いなんだ。食欲を刺激される。
どうやらそれは俺だけでなく影光、ヘレン、アインまでもが同じだったようだ。銀に至っては涎を垂れ流していた。
「お待たせしました」
お皿に盛り付けられた数種類の料理がテーブルに並べられる。
「ミートローフ、ポテトサラダ、サバの塩焼き、マグロ、鯛、エピスフィッシュの刺身盛り合わせ、ケンタウロスの厚切りステーキです。お米かパンがあれば主食も用意できたんですが、無かったので……」
「気にするな」
この世界は何故かは分からないが地球の食材もある。って今はどうでも良いか。
こんな美味しそうな料理を目の前にして俺が黙っていられるわけがないからな!
「それでは頂こうではないか、諸君!」
俺の言葉に全員が箸、フォークを構える。勿論俺は手だ。
『いただきます!』
全員の食事の言葉が重なると同時にそれぞれ興味は引いた料理に手が伸びた。
そしてそれを一口食べる。
「あ、あの……どうでしょうか?」
グリードがオドロオドロと質問してくるが、そんな事はどうでも良い。
全員がグリードに視線を向けて、言い放った。
『合格!』
「え?」
「美味い!これほど美味い料理は初めてだ!」
「このサバの塩焼きも素晴らしい塩梅だ!」
「ミートローフ、最高なのだ!」
「貴方の料理は素晴らしい。レグウェス帝国でも十分通用するレベルです」
「ガウッ!」
それぞれが感想を述べるが正直この料理を堪能したいので耳に入ってこない。
ああ、美味い!この厚切りステーキ最高だ!こっちの刺身もポテトサラダもこれほど美味しいとはイザベラの家の料理長や皇妃様たちの上を行っている。まさかこれほどの逸材が我がギルドに来てくれるとはありがたい!
「グリード、何してるんだ。お前も一緒に食べようぜ!」
「あ、え?……良いんですか?」
「当たり前だろ」
「それに大勢で食べたほうが美味しいと言うものだ」
「一緒に食べるのだ!」
「貴方が作った料理です。貴方が食べないでどうするのですか?」
「ガウッ!」
そんな俺たちの言葉にグリードは固まってしまう。別に固まるような事じゃないだろうに。
「ほら、早く座れ」
「は、はい!」
こうして全員でグリードの作ったご飯を堪能するのだった。マジで美味い!
食事を終えた俺たちは満足げな笑みを浮かべていた。
「あ~、もう入らないぜ」
「お酒がこれほど美味いと感じたのは久々だったのぉ」
なんて呟く俺たち。
そこに洗い物を終えたグリードが戻ってくる。
「あ、あの、それで僕はフリーダムに入れて貰えるんでしょうか?」
「ああ、そうだ。これからは我がフリーダムの調理係としてよろしくな」
「え?それってつまり料理人として雇うって事ですか?」
急にグリードの顔に影が落ちた。
何か勘違いしているようだな。
「そう言う意味じゃない。お前はフリーダムの冒険者兼料理長って事だ。所謂役職ってやつだ」
「あ、そう言うことだったんですね」
「因みに俺は冒険者兼ギルドマスターで、影光は冒険者兼戦闘訓練顧問。アインは冒険者兼掃除長兼魔法訓練顧問。ヘレンは冒険者兼味見役兼魔法訓練副顧問。ま、最後のはまだ先の話だ。で、銀が癒し係総監督。で、グリードが、冒険者兼料理長」
「な、なるほど」
どうやら理解してくれたようだな。え?そんな役職があったのかって。勿論今考えたからな。
それに影光たちだって嫌がってないし大丈夫だろ。
「そう言えばギルマス、先日の報酬まだ貰ってないんだが」
「なら明日、グリードのギルド登録に連れて行くからその時に振り込んでおく」
色々とドタバタしていてすっかり忘れていた。って今日帰国したばかりなんだから報酬を振り込めるわけないだろ!
「あ、あの!」
「なんだ?」
「つまりは一緒に依頼をこなせるって事ですよね!」
なにやら考え込んでいたと思えば、そう言うことだ。
だが、
「悪いがそれは無理だ」
「え?」
そんな俺の言葉に絶望的な顔になる。ま、無理もないか。
「ど、どうしてですか!?」
「理由は幾つかある。1つはお前のランクだ。俺たちのランクはそれぞれ、俺とアインがB。ヘレンがA。影光がSだ。つまりAランクの依頼ならお前抜きで受ける事が出来る。しかしお前はEランクだ。最低でもDランクまで上げて貰わないと一緒に依頼をこなす事は無理だ。別にお前のランク合わせてDランクの依頼を受けても構わないが、Dランクの依頼を2人以上で受けるのは少人数のフリーダムとしては効率が悪いんだ。だから最低でもあとDランクに昇級して貰わないと困る」
「………」
「もう1つはお前の実力を知らない事だ」
「で、でも!ステータスを見た時は及第点だって!」
「確かにそうは言った。即戦力と言う意味でお前のステータスはギリギリの及第点だったからな。だがあらゆる状況下でそのステータス通りの実力が出せるとは限らない。だからまずお前の実力を見ないことには背中を預ける事は出来ない」
「そ、それはそうですが……」
「そして何より一番の理由はその弱腰な所だ」
「え?」
「別に威張り散らせって言ってる訳じゃない。普段の日常ならなんの問題も無い。だが戦場でそんな弱腰で居られるのは一緒に戦う身としては足手まといでしかない。と言うか俺たちが危険な目に合う可能性の方が高くなる事は目に見えている。俺はギルドマスターとしてそれは避けなければならない」
「そ、そんな………」
そんな俺の言葉に衝撃を受けたのか下を向いていた。ま、ハッキリと言ったからな。無理もないか。だがこの場にもう少しオブラートに包んで話せ。って言う奴は誰一人としていない。
俺たちは冒険者だ。特に討伐系の依頼をする俺たちフリーダムのメンバーは戦場がどう言った場所なのか身を以って体験している。だからこそハッキリと言わなければならない時があるって事を知っているのだ。
「だけどそれは、現状はって事だ。グリード強くなりたいんだろ?俺たちと一緒に依頼を受けたいんだろ?」
「は、はい!」
「だったらお前に試練を与える!」
「し、試練ですか?」
「そうだ!」
まっすぐと俺を見るグリード。
一度で良いか言ってみたかったんだよな。この台詞。それとアイン。小さな声でアホがアホな事を言っているって言うな。
「今年の31日までにAランク。最低でもBランクにまで昇格しろ!そうすればお前は俺たちと一緒に依頼を受ける事を認めてやる!」
「は、はい!頑張ります!」
「よし!」
こうしてグリードの試練が始まったのであった。
ま、俺としては良いこと尽くめだけどな。昇級するために幾つもの依頼達成しなければならない。そうなればギルド口座に依頼報酬の一割が入ることになる。ランクが低いから報酬も少ないが塵も積もれば山となるだ。
俺が別のことをしている間に勝手にお金が入る。なんて素晴らしいんだ!ギルドを設立して正解だったな。アハハハッ!
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「ナ、ナンノコトダ?」
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タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
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楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
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そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
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