魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒

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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す

第八十六話 フリーダムメンバー、訓練所で過ごす。

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 11月5日月曜日。
 グリードが作った朝食を食べた俺は一旦寝室に戻り、ギルドマスターとしての仕事を行う。
 ギルドマスターの仕事は何気に忙しい。
 ギルド経費の整理。収入からジャンルごとに分けて出費を整理して精算するのだ。
 他のギルドだったら月給制にしているのであれば、それに関してもしなければならないが、俺は依頼達成すれば直ぐに支払うようにしているので問題ない。
 ま、うちの場合個人で依頼を受ける事が大半なので達成報酬の一割がちゃんとギルド口座に振り込まれているか確認する必要はあるけど。
 他にも保険や年金などの支払いがあるが、それは完全に個人任せにしているので問題ない。面倒ごとはお断りと言う奴だ。
 それが終われば次はメールのチェックだ。
 ギルドを設立の際にギルド専用のメールアドレスを冒険者組合に登録している。そうすることで依頼人が冒険者組合に指名依頼をしたいと言えば、そのギルドに冒険者組合がギルドにメールで連絡するのだ。もちろんその依頼を受けるかどうかはギルド側に決定権があるわけだが、大抵のギルドは指名依頼を断ることはしない。その理由は報酬が通常の依頼よりも良いからだ!
 それに依頼主が満足すれば、また依頼してくれる可能性があるからだ。ま、顧客をゲットするチャンスと言うことなのだ。

「指名依頼は……無しと」
 冒険者組合からはお得な依頼が出ているなどの情報メールは届いているが指名依頼はなかった。
 ま、ギルド設立して一ヶ月も経ってないんだから当たり前か。
 因みに俺たちのギルドランクはDだ。
 たった一ヶ月で!って思うかもしれないが、レイノーツ学園での功績とギルドメンバー個人の依頼達成率+依頼ランクでそうなっているのだ。つまり影光の力が大きいと言う訳だ。
 あとは月に一回の報告書を冒険者組合に提出すれば終わりだ。
 初めてって事もあり1時間も掛かってしまったが、どうにか報告書を書き上げた俺はメールで冒険者組合に送った。
 久々に真面目にパソコンで仕事をしたら疲れたな。

「グリードになにか美味しい飲み物でも作ってもらうか」
 グリードは料理だけでなく飲み物まで拘るタイプだ。今朝の朝食に付いてきた飲み物はリンゴ、パイナップル、バナナ、トマトのミックスジュースだ。
 どうしてフルーツの中にトマトが?って最初は思ったが、飲んでみたらこれがまた美味しかった。
 グリードは体を酷使する職業なので健康的な朝食にしてみました。って言っていた。あの巨体でそんな優しい事を考えてくれるなんて涙が出そうだぜ。ま、俺は称号のお陰で一切病気はしない体になってるけど。
 業務用エレベーターに乗って3階にあるリビングに向かうと誰も居なかった。

「全員、依頼を受けにでも行ったのか?」
 そう思いながらスマホを開くと影光からメールが届いていた。

「地下の訓練場で全員で訓練するから、雑務が終わったら来ると良い、か」
 なるほど。だから誰も居なかったのか。
 さてどうしたものか。正直訓練なんて面倒で嫌だ。そう言えば前に瞬脚を教えて貰う約束をしていたな。
 技を覚えればまた強くなれる。
 技は1つ覚えれば武器を1つ身に付けた事になる。それが俺の持論だ。
 武器を持てない俺にとって技は武器を手にする唯一の手段。なら迷う理由はない。
 さっそく俺はエレベーターに乗って地下の訓練場に向かった。
 エレベーターのドアが開くととてつもない轟音が耳に届いてくる。崩落とかしないよな。
 そんな不安を感じながら訓練所の扉を開くとヘレンはアインに魔力操作を教わり、グリードは影光と模擬戦をしていた。

「やってるな~」
 壁に凭れて観戦する。
 グリードが両手持ちのウォーハンマーで影光の攻撃を防いでいた。
 初めてグリードの武器を見たが、予想以上に大きいな。
 影光の身長よりも遥かに長いウォーハンマーを軽々と持って使いこなしている。伊達に小さい時から父親にしごかれてはいないようだな。
 だが、やっぱりあれじゃ駄目だな。
 さっきから影光ばかりが攻撃している。反撃したとしても攻撃に相手を倒すと言う気持ちが乗っていない。あれじゃ当るものも当たらない。それどころか、当たりそうな攻撃だと、自らブレーキを掛けている。意識的にしているのか、それとも無意識なのかは分からないが、あれじゃ一緒に冒険者活動するのは無理だな。
 観戦していると影光は一旦距離を取った。何か仕掛けるのかと思ったが、刀を鞘に納めた。どうやら止めるようだな。きっと俺が来た事に気配で気づいたんだろう。

「よし、休憩にしよう」
「は、はい!」
 影光はそう言うと俺の元へやって来た。

「どうだ?」
「駄目だな。確かに鎚術の熟練度は高い。拙者の攻撃も防げている。だが、攻撃どころか、反撃しよともしてこない。隙を作ってもわざと見逃している節がある気がする」
「そうか」
 影光の言葉に俺は頭を掻く。ステータス的には即戦力だ。だがやっぱりメンタル面の問題は早々に解決しないか。
 丁度そこにアインもやって来る。

「ヘレンの方はどうだ?」
「見所がありますね。頭は良くありませんが感覚的に理解はしているのでしょう。所謂天才肌と言う奴です」
「グリードとは対照的だな」
「そうですね」
 地べたに座って休憩するヘレンとグリードに視線を向けながら俺たちは会話を続ける。
 俺はその時ある事に気が付いた。

「なあ」
「なんですか?」
「なんだ?」
「俺たちのギルドってバランス悪くないか?」
「今頃気づいたのですか?」
「今更何を言ってるんだ?」
 あれ?もしかして気がついてたの?
 だったらもっと早く教えてくれても良かったと思うんだが。
 影光は侍だから前衛。ヘレンは双剣使いだから前衛。グリードはウォーハンマーを使う重戦士だからどうみても前衛。アインは銃全般使えるからオールラウンダータイプだけど、今は後衛に定着している。で、俺は拳で戦うから前衛。
 5人中4人が前衛ってどうみてもバランス悪いよな。ギルドの部屋の数を考えるならあと2人は後衛じゃないと拙い。最低でもあと1人は居ないとバランスが悪すぎる。ま、最悪3階にあるリビングの隣の空き部屋に誰かを住まわせる事が可能だからあと3人までなら大丈夫だけど。それでも2人は欲しい。

「どうしたものか。影光、知合いにフリーの冒険者で中距離~遠距離主体で戦う冒険者とか居ないか?」
「悪いが居ない。拙者はあまり人付き合いが得意な方ではないからな」
「だろうな」
「そうでしょうね」
「何故2人同時に納得するのだ!」
 影光の知り合いで居ないとなると、他には誰が居たかな。俺の知り合いに遠距離タイプの奴は居るが、全員ギルドに入ってるし、アインにそう言った友達が居るわけがないし、ヘレンも微妙だし、グリードは居たとしてもランクが低そうだから即戦力になる可能性は低いな。

「それに仁、別に即戦力じゃなくても構わないのではないのか?」
「どう言う事だ?」
「どうせグリードに期限付きの試練を与えたのだ。それをクリア出来るまでは時間がある。なら将来性のある奴でも構わないと拙者は思うんだが」
「なるほど。俺たちで鍛え上げようって言うわけか」
「そう言うわけだ」
 確かにそれは言えている。即戦力になる奴が見つかるかも分からないなら将来性のある奴も含めて探したほうが見つかる可能性は高い。

「だが、どうやって見つけるんだ?」
「普通に冒険者組合に頼んで求人を出せば良い話だと思いますよ」
「それもそうか」
 なら、明日にでもミキかアイーシャに頼んで求人を出して貰うか。

「だが、そうなると試験する必要があるがいつにする?出来ればお前たちにも試験官の1人として立ち会って欲しいんだが」
「そうだな……来週の火曜日はどうだ?一週間もあればそこそこ集まると思うぞ」
「ま、確かにカゲミツさんが所属するギルドですからね。フリーの冒険者の中には一緒にと考える人たちが居てもおかしくはありませんね」
 仲間を求人の広告に使うのは申し訳ないが、それで良い人材が集まるなら仕方がないか。
 3人で会話をしているとヘレンとグリードが気になったのか近づいてきた。

「何の話をしているのだ?」
「新しい仲間を募集するって話だ」
「え!?も、もしかして僕は解雇クビなんでしょうか?」
「違う違う。このギルドは1つのパーティーだけのギルドにする予定なんだ。ま、その理由としてはこの建物の部屋の数が少ないってのが理由なんだが」
「確かに他のギルドだと、高ランクの冒険者だけでのパーティー、初心者パーティーと複数ありますもんね」
「よく知ってるな」
「ぼ、僕、色々なギルドを転々としては解雇クビになってましたから……」
「そ、そうか……」
 グリードの過去は知らなかったとは言え、そんな事があったとは。
 と言うか。フリーダム以外でギルドに所属していた事があるのってグリードだけなんだよな。
 アインは最近まで眠っていたし、ヘレンは魔眼のせいで雇って貰えるギルドが無かった。影光は最近までフリーの冒険者だった。俺は冒険者になって少しした時にはギルドを立ち上げる事しか考えてなかったからな。誘われても断ってたし。

「で、改めてフリーダムのギルドメンバーの戦闘スタイルを見た時、どうみてもアンバランスだと思ってな」
「た、確かに後衛がアインさんだけと言うのは……」
「そう言う事だ。で、そこで後衛タイプの冒険者を2人ほど募集しようと思ってる。勿論即戦力になる奴が居てくれるとありがたいわけだが」
「拙者としては治癒魔法が使える者が居てくれると助かる」
「あ、確かにな。それだと高ランクの魔物を相手にしたとしても安心だな」
「あ、あの……」
 そんな俺たちの会話にグリードが恐る恐る手を挙げた。

「なんだ?」
「今の会話を聞くかぎりドラゴンとかのSランク以上の魔物と戦うように聞こえるんですけど」
『当然』
 グリードの質問に俺、影光、アイン、ヘレンが同時に返事をする。
 まったくグリードの奴はなに当たり前の事を聞いてるんだ?

「そ、そんなドラゴンですよ!S-の飛龍からSSSの古代龍エンシェントドラゴンまで存在する、あのドラゴンですよ!それと戦うって言うんですか!?」
 別にそこまで慌てるような事じゃないだろ。ただ空飛ぶ蜥蜴だぞ。気まぐれ島にいた連中に比べたら足元にも及ばない奴等だ。

「水龍なら拙者1人で倒した事があるぞ」
「私は昔に地龍を一撃で倒した事があります」
「俺も今年の3月に炎龍を倒したぞ」
「私も飛龍なら倒した事があるのだ!」
「………」
 そんな俺たちの会話を聞いていたのかグリードは黙り込んでいた。

「どうかしたのか?」
「い、いえ。あまりにも皆さんが別次元の存在だったので」
「何を言ってるんだ。お主にもその資質には十分にあるのだぞ」
「え?」
 影光の言葉に驚いた表情を浮かべるグリード。
 もしかして気づいていないのか?

「影光の言うとおりだ。グリード、お前は即戦力になるだけの力はもうあるんだ。つまり龍種を倒すだけの力があるって事だ。だから落ち込むことは無いんだぞ」
「は、はい!」
 嬉しそうに返事をするグリード。グリードは優しい。だがメンタル面が弱い。だからこそ自分に自信が持てないでいる。そこをどうにかしてやればグリードは戦えるし、もっと強くなれる。

「では、グリード君。次は私が相手してあげましょう。遠距離タイプとの戦い方を覚えてください」
「わ、分かりました」
「では、拙者が横からアドバイスを出すとしよう」
 そう言うとアインとグリード、影光が訓練所の中央へ向かうのだった。
 ヘレンはまだ疲れているのか俺の横で地面に座りながら銀を撫でていた。
 そんなヘレンに視線を向けた時、ふと気になることがあり、聞いてみた。

「さっき飛龍を倒したって言っていたが、どうやって倒したんだ?」
「魔眼を使ったのだ。だけど正直この力はあまり使いたくないのだ……」
 ヘレンの実力を考えるなら1人で飛龍に勝てるかどうかって感じだと思っていたが、魔眼を使ったのか。それなら勝てたのも道理だ。
 だがヘレンはあんまりその力を使いたくないようだな。
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