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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す
第九十二話 新しい仲間に乾杯!
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「俺も思う。カゲミツさんは自分より強い人の下でしか働こうとはしない。つまりジンさんはカゲミツさんよりも強いって事になる」
影光が弱い奴の下で働くつもりは無いって言うやつか。あれって有名だったんだな。
「ま、確かに決闘して勝ったけど。俺はそこまで強くはないぞ」
「アハッ!大旦那、冗談キツいぜ。あの世界最強の剣豪相手に決闘で勝ったくせに強くないわけないだろ」
「俺もそう思う」
冒険者としての経験値が俺より多い2人に言われると少しむず痒いが素直に受け取っておくとしよう。
冒険者組合に到着した俺たちはさっそくギルド登録をするためミキの許へ向かった。
「あれ?今日は入社試験の日じゃなかったかしら?」
「ああ。終わったから合格した2人を連れてギルド登録に来たんだ」
「なるほどね」
そう言ってミキは俺の後ろに立つ2人に視線を向けた。
「もしかして新しい仲間ってアリサさんとクレイヴさんなの!?」
2人の姿を見て驚愕の声をあげるミキ。
「そうだが知っているのか?」
「知ってるも何も、フリーの冒険者でも有名な2人よ!」
「そうなのか」
「確かにカゲミツさんに比べれば、劣るけど実力も知名度も上位に入るほどなんだから!」
「確かに受験者の中では目立っていたな」
ま、アリサの場合は実力もそうだが態度の方が勝っていたけど。
そんな事を思いながら俺はミキ2人をギルドに登録して貰う様に伝える。
十数分ほどして登録が終わり、ミキから更新された冒険者免許書が渡された。
「2人とも改めてこれからよろしくな」
「こちらこそ」
「よろしく頼むぜ、ジンの大旦那」
眠たそうな顔のクレイヴと嬉しそうの犬歯を剥き出しにするアリサ。
なんとも対極的な雰囲気の2人だが俺としてはとても心強い。
冒険者組合をあとにした俺たちはギルドに足を向けた。
ギルドに戻るとグリードが大量のご馳走を用意してくれたいた。
俺はそれを見て今から何をするのか直ぐに察した。
「だ、大旦那これはいったい」
どうやらアリサは分かっていないのか少し困惑していた。クレイヴは無表情だけど料理を凝視しているから楽しみなんだろう。
「お前たちの歓迎会だよ」
「歓迎……会」
「おいしそう」
どうやらアリサには歓迎会をする事が意外だったのか未だに困惑していた。クレイヴは早く食べたいようだな。
ま、そんな2人をアインとヘレンが背中を押して席に着かせた。
「それじゃ、新しい仲間を祝して乾杯!」
『乾杯!』
音頭と同時にグラスを打ち付けあう。
グリードの美味しい料理を堪能しながらビールやワイン、焼酎、あとオレンジジュースなど好きな飲み物を飲みながら雑談に花を咲かせる。
種族、年齢、性別、多種多様な者たちが集まる空間。
そんな空間に俺自身が居る事に嬉しく感じた。
ギルドを作って正解だったな。
11月14日水曜日。
朝食を食べるためにリビングに下りると影光たちがグリードの朝食を食べていた。
基本フリーダムは朝食は絶対に食べる事にしている。別に俺が全員にそう指示しているわけじゃないが、ギルド設立時からそうなっている。
だけど絶対に全員集まって食べなければならないと言う訳じゃない。だから今食事をしているのは影光、アインだけだ。
ヘレンは一口お酒を飲んだだけ酔い潰れ、今もソファーで寝ている。
クレイヴはあんまりお酒を飲んではいなかったけど、まぁ寝ているんだろ。昨日も眠い眠いと呟いてたし。
グリードはキッチンでなにやら料理をしている。きっと俺の分を用意してくれてるんだろう。
「それでアリサはどうしたんだ?」
影光たちに問いかけながら俺は席に座る。あ、座る席だけは自然と決まっている。
「ジンさん、どうぞホットドック3つとコーヒーです」
「お、サンキュー」
タイミング良くグリードが俺の前に置く。
ほんと気配り上手だたな。
「朝から良くそれだけ食べれますね」
「それを言うんなら俺より銀に言うべきじゃないのか?」
アインの膝の上に座りながらテーブルに置かれた1キロステーキを美味しそうに被りついていた。
「マスターは成長期ですから。それで全てにおいて成長が止まったどうしようもない人はどうしてそんなに食べているのですか?」
「まるでそんなに食べるなって言っているようだな」
「おや、よく分かりましたね」
驚いた表情を浮かべるアイン。こいつの毒舌も毎日聞いていたら朝のニュース番組のようで朝だと実感するな。ま、苛立つけど。
「それよりもアリサはどうしたんだ?」
そんな俺の質問に答えたのはアインでも影光でもなく、グリードだった。
「アリサさんなら、昨日飲み過ぎたみたいで、寝ていますよ」
「なるほど道理でエレベーターの中が胃酸臭かったわけか」
そこまで臭いわけではなかったか、入る際に思わず顔を軽く顰める程度に臭いが残っていた。
「それでお前らの今日予定は?」
「拙者は適当に依頼を請けるつもりだ」
「私も同様ですが、マスターのレベルアップが目的です」
「それでグリードは?」
「ぼ、僕も討伐系の依頼を請けようかと。余裕がありそうなら複数請けるつもりです」
「そうか、頑張れよ」
「は、はい!」
嬉しそうに返事をするグリード。
さて残るはヘレン、クレイヴ、アリサだが、アリサはまぁ今日は無理だろう。クレイヴは昼になっても起きないようなら叩き起こすとしてヘレンはどうやら今目を覚ましたようだな。
「ぅふぁあ~、皆おはようなのだ」
『おはよう』
目を擦りながら挨拶をするヘレンの姿はまさに子供。だが俺よりも年上だ。
「それでヘレン今日のお前の予定は?」
「朝食を食べたらこの眼の訓練になりそうな依頼を請けるつもりなのだ」
「そうか」
これでちゃんとした予定がないのはクレイヴぐらいだな。
「で、仁はどうするのだ?」
「俺か?俺は1時間ほど訓練所で瞬脚の練習をしてからだな。でクレイヴを叩き起こしてから依頼を請けるつもりだ」
こう考えると何気に忙しいな。と言うか新人を叩き起こすのがギルドマスターの仕事って超ダサい。
「さて拙者は依頼を請けに行って来る」
「頑張れよ。ってそうそう影光」
俺はある事を思い出し、影光を呼び止める。
「なんだ?」
「ようやく人数が揃ったからな。一度全員で陣形の話がしたいんだ。だから悪いが明後日は依頼を受けるのは止めておいてくれ。これはアインたちもだぞ」
「分かった。なら行って来る」
「面倒ですが仕方ありませんね。さ、マスター部屋に戻って歯磨きしましょうね」
食事を終えた銀をつれてアインも出て行く。基本アインは食事をする事は少ない。朝食に降りてくるのは銀のためだ。だからアインはいつも果汁100%のオレンジジュースしか飲まない。
それで魔力が回復するそうだ。まったく便利な体だよな。いや、人間みたいに自然と回復するわけじゃないから不便なのか?ま、良いや。
食事をしている俺にグリードが話しかけてくる。
「陣形の話し合いですか。でも僕はまだDランクですよ?」
「確かにグリードはDランクだが、陣形はなるべく早く全員に覚えてもらいたいからな。緊急時に備えてって言うこともあるし」
「そう言うことなんですね。分かりました、全力で頑張ります!」
「ああ」
「陣形の話し合いってなんかチームって感じがするのだ!楽しみなのだ!」
「嬉しいのは分かるが、早く洗面所に行って顔を洗って来い」
「うん、そうするのだ」
このギルドに子供は居ないはずだがどうしてか子供の世話をしている気分になるな。
食事を終えた俺は訓練所に行って瞬脚の訓練を始める。
影光に瞬脚の方法とコツは教わっている。あとは自分の物に出来るようにするだけだ。
俺はそれから1時間の間休む事無く瞬脚の特訓をした。前世では体を動かすことは苦手だったけどこの世界に来て体を動かす事が好きになった。勿論働くために体を動かすのは嫌いだ。好きなことに体を動かすのが好きなんだ。
シャワーで汗を流し、洗面所に置いていたミネラルウォーターで水分補給をした俺は着替えてクレイヴが寝ている部屋のドアを叩く。
「クレイヴ、まだ寝ているのか起きろ」
しかし反応が無い。どうやら熟睡しているようだな。
「おい、クレイヴいい加減に起きろ!」
今度は強く叩いて起こす。しかし反応がない。
どうやら俺を本気にさせたようだな。
俺はアイテムボックスから一本の鍵を取り出した。
説明しよう!
この鍵はあらゆる扉、正確にはこの建物限定でどんな扉でも解錠することが可能なのだ!ま、ただのマスターキーなわけだが。
俺はそんなマスターキーを差し込んで解錠する。
中に入るとテーブルとベッドだけが置かれているだけだった。って俺が最初に用意した家具だじゃねぇか。
それ以外に変わったところがあるとすればクレイヴが寝ているベッド側の壁に愛用のM14、いやスコープが装着されているからM21狙撃銃に似た魔導狙撃銃が掛けられていた。
男としては銃に興味を引かれるが、どうせ触れないので気にする事無く俺はクレイヴを起こす。
「クレイヴ、いい加減に起きろ」
「………」
ほぉ、これでも起きないか。ならっ!
「っ!」
パチッと目を覚ましたクレイヴは右手に持っていた愛用の魔導拳銃を俺に向けてくる。
「よ、目が覚めたか?」
「殺気で人を起こすのは止めて欲しい」
「なら、さっさと起きろ。入社初日から睡眠を貪るような奴を雇い続ける理由も余裕も無いんだからな」
「分かった」
そう言うとクレイヴは目を覚まして立ち上がる。
「それで他の皆は?」
「とっくに依頼を請けて出て行ったよ」
「皆で依頼を受けるんじゃないのか?」
「全員ランクがバラバラなんだ。それに陣形も連携も決まってないのに依頼を請けるわけにはいかないだろ。それよりもさっさと顔を洗って飯を食べろ。グリードがお前にって作り置きしてくれてるぞ」
「分かった」
そう言うと眠たそうな顔で洗面所に向かった。
さて俺も依頼でも請けるか。
さっそくスマホでお金になりそうな依頼を複数選ぶ。
そのあとクレイヴと一緒にギルドを出た俺は依頼のために帝都の外へと向かった。
因みにクレイヴはAランクの依頼を受けたようだ。え?俺か。俺はCランクの依頼を3つ請けたさ。影光が教えてくれたからな。自分のランクより下のランクなら一人でも受けられるってな。
ま、そのお陰で楽にポイントと報酬が手に入ったぜ。
11月16日金曜日。
一昨日影光たちに話していた通り、俺たちは訓練所で陣形の話し合いを行う。
なんで訓練所かというと一旦その陣形を試してみるためだ。相手はいないけどその位置に立って確認するためだ。
「前衛は俺、影光、グリード、ヘレンで、後衛がアイン、アリサ、クレイヴの3人で決まりだな」
「大まかな指示は仁が出すとして、誰が状況を把握して指示を出すかだな」
「そんなのアインしかいないだろ。後衛だし状況把握に分析、それを的確に指示が出せるとしたらアイン以外居ないだろ」
「当然です」
「ま、的確な判断だな」
俺の言葉に全員が納得するように頷く。案外陣形って楽勝なんだな。いや、偶然にもそう言う人材が集まっただけか。
「よし、一旦それでその場所に立ってみるか」
「どんな風にして並ぶのだ?」
「横一列で良いんじゃないのか?俺とグリードが中心で両端にスピードのあるヘレンと影光って感じで」
「今はそれで良いと拙者も思うぞ」
そんな適当な感じで俺たちは一度立ってみる。
左からヘレン、俺、グリード、影光の順で並ぶ。
「では、私たちはその後ろに左からアリサ、私、クレイヴの順番で立ちましょうか」
「分かったぜアインの姉御」
「分かった」
アインたちは俺たち前衛の間から狙えるようにして立つ。
お、適当に陣形を決めたわりには様になってるんじゃないか。
「なかなか良いのでは無いでしょうか」
「私もそう思うのだ!」
「初めてにしては上出来だと拙者も思うぞ」
「えへ、戦場で試すのが楽しみだぜ」
「そうだね。眠い」
「ぼ、僕が前衛それも中央で大丈夫でしょうか」
各々が感想を述べる。
何気に俺たちに強い絆が出来始めたような気がした。
「さて最後に銀だが、銀はアインか俺の傍で戦って貰う事になるだろう。ま、それは敵の種類によるだろうけどな」
「遊撃手って事か?」
「そうだ」
影光の質問に俺は頷く。
銀は全ての魔法属性が使え、スピードもパワーもあるからな。遊撃手としては最高だ。
─────────────────────
【ギルド残高】
Dランク依頼報酬×6 +18RK
Cランク依頼報酬×27 +162万RK
Bランク依頼報酬×8 +64万RK
Aランク依頼報酬×9 108万RK
ギルド口座残高 379万8750RK
【ギルドランク】
Dランク
【個人残高】
依頼報酬×15 +810万RK
残高1425万8740RK
【冒険者ランク】
Aランク昇格まで残り11ポイント
影光が弱い奴の下で働くつもりは無いって言うやつか。あれって有名だったんだな。
「ま、確かに決闘して勝ったけど。俺はそこまで強くはないぞ」
「アハッ!大旦那、冗談キツいぜ。あの世界最強の剣豪相手に決闘で勝ったくせに強くないわけないだろ」
「俺もそう思う」
冒険者としての経験値が俺より多い2人に言われると少しむず痒いが素直に受け取っておくとしよう。
冒険者組合に到着した俺たちはさっそくギルド登録をするためミキの許へ向かった。
「あれ?今日は入社試験の日じゃなかったかしら?」
「ああ。終わったから合格した2人を連れてギルド登録に来たんだ」
「なるほどね」
そう言ってミキは俺の後ろに立つ2人に視線を向けた。
「もしかして新しい仲間ってアリサさんとクレイヴさんなの!?」
2人の姿を見て驚愕の声をあげるミキ。
「そうだが知っているのか?」
「知ってるも何も、フリーの冒険者でも有名な2人よ!」
「そうなのか」
「確かにカゲミツさんに比べれば、劣るけど実力も知名度も上位に入るほどなんだから!」
「確かに受験者の中では目立っていたな」
ま、アリサの場合は実力もそうだが態度の方が勝っていたけど。
そんな事を思いながら俺はミキ2人をギルドに登録して貰う様に伝える。
十数分ほどして登録が終わり、ミキから更新された冒険者免許書が渡された。
「2人とも改めてこれからよろしくな」
「こちらこそ」
「よろしく頼むぜ、ジンの大旦那」
眠たそうな顔のクレイヴと嬉しそうの犬歯を剥き出しにするアリサ。
なんとも対極的な雰囲気の2人だが俺としてはとても心強い。
冒険者組合をあとにした俺たちはギルドに足を向けた。
ギルドに戻るとグリードが大量のご馳走を用意してくれたいた。
俺はそれを見て今から何をするのか直ぐに察した。
「だ、大旦那これはいったい」
どうやらアリサは分かっていないのか少し困惑していた。クレイヴは無表情だけど料理を凝視しているから楽しみなんだろう。
「お前たちの歓迎会だよ」
「歓迎……会」
「おいしそう」
どうやらアリサには歓迎会をする事が意外だったのか未だに困惑していた。クレイヴは早く食べたいようだな。
ま、そんな2人をアインとヘレンが背中を押して席に着かせた。
「それじゃ、新しい仲間を祝して乾杯!」
『乾杯!』
音頭と同時にグラスを打ち付けあう。
グリードの美味しい料理を堪能しながらビールやワイン、焼酎、あとオレンジジュースなど好きな飲み物を飲みながら雑談に花を咲かせる。
種族、年齢、性別、多種多様な者たちが集まる空間。
そんな空間に俺自身が居る事に嬉しく感じた。
ギルドを作って正解だったな。
11月14日水曜日。
朝食を食べるためにリビングに下りると影光たちがグリードの朝食を食べていた。
基本フリーダムは朝食は絶対に食べる事にしている。別に俺が全員にそう指示しているわけじゃないが、ギルド設立時からそうなっている。
だけど絶対に全員集まって食べなければならないと言う訳じゃない。だから今食事をしているのは影光、アインだけだ。
ヘレンは一口お酒を飲んだだけ酔い潰れ、今もソファーで寝ている。
クレイヴはあんまりお酒を飲んではいなかったけど、まぁ寝ているんだろ。昨日も眠い眠いと呟いてたし。
グリードはキッチンでなにやら料理をしている。きっと俺の分を用意してくれてるんだろう。
「それでアリサはどうしたんだ?」
影光たちに問いかけながら俺は席に座る。あ、座る席だけは自然と決まっている。
「ジンさん、どうぞホットドック3つとコーヒーです」
「お、サンキュー」
タイミング良くグリードが俺の前に置く。
ほんと気配り上手だたな。
「朝から良くそれだけ食べれますね」
「それを言うんなら俺より銀に言うべきじゃないのか?」
アインの膝の上に座りながらテーブルに置かれた1キロステーキを美味しそうに被りついていた。
「マスターは成長期ですから。それで全てにおいて成長が止まったどうしようもない人はどうしてそんなに食べているのですか?」
「まるでそんなに食べるなって言っているようだな」
「おや、よく分かりましたね」
驚いた表情を浮かべるアイン。こいつの毒舌も毎日聞いていたら朝のニュース番組のようで朝だと実感するな。ま、苛立つけど。
「それよりもアリサはどうしたんだ?」
そんな俺の質問に答えたのはアインでも影光でもなく、グリードだった。
「アリサさんなら、昨日飲み過ぎたみたいで、寝ていますよ」
「なるほど道理でエレベーターの中が胃酸臭かったわけか」
そこまで臭いわけではなかったか、入る際に思わず顔を軽く顰める程度に臭いが残っていた。
「それでお前らの今日予定は?」
「拙者は適当に依頼を請けるつもりだ」
「私も同様ですが、マスターのレベルアップが目的です」
「それでグリードは?」
「ぼ、僕も討伐系の依頼を請けようかと。余裕がありそうなら複数請けるつもりです」
「そうか、頑張れよ」
「は、はい!」
嬉しそうに返事をするグリード。
さて残るはヘレン、クレイヴ、アリサだが、アリサはまぁ今日は無理だろう。クレイヴは昼になっても起きないようなら叩き起こすとしてヘレンはどうやら今目を覚ましたようだな。
「ぅふぁあ~、皆おはようなのだ」
『おはよう』
目を擦りながら挨拶をするヘレンの姿はまさに子供。だが俺よりも年上だ。
「それでヘレン今日のお前の予定は?」
「朝食を食べたらこの眼の訓練になりそうな依頼を請けるつもりなのだ」
「そうか」
これでちゃんとした予定がないのはクレイヴぐらいだな。
「で、仁はどうするのだ?」
「俺か?俺は1時間ほど訓練所で瞬脚の練習をしてからだな。でクレイヴを叩き起こしてから依頼を請けるつもりだ」
こう考えると何気に忙しいな。と言うか新人を叩き起こすのがギルドマスターの仕事って超ダサい。
「さて拙者は依頼を請けに行って来る」
「頑張れよ。ってそうそう影光」
俺はある事を思い出し、影光を呼び止める。
「なんだ?」
「ようやく人数が揃ったからな。一度全員で陣形の話がしたいんだ。だから悪いが明後日は依頼を受けるのは止めておいてくれ。これはアインたちもだぞ」
「分かった。なら行って来る」
「面倒ですが仕方ありませんね。さ、マスター部屋に戻って歯磨きしましょうね」
食事を終えた銀をつれてアインも出て行く。基本アインは食事をする事は少ない。朝食に降りてくるのは銀のためだ。だからアインはいつも果汁100%のオレンジジュースしか飲まない。
それで魔力が回復するそうだ。まったく便利な体だよな。いや、人間みたいに自然と回復するわけじゃないから不便なのか?ま、良いや。
食事をしている俺にグリードが話しかけてくる。
「陣形の話し合いですか。でも僕はまだDランクですよ?」
「確かにグリードはDランクだが、陣形はなるべく早く全員に覚えてもらいたいからな。緊急時に備えてって言うこともあるし」
「そう言うことなんですね。分かりました、全力で頑張ります!」
「ああ」
「陣形の話し合いってなんかチームって感じがするのだ!楽しみなのだ!」
「嬉しいのは分かるが、早く洗面所に行って顔を洗って来い」
「うん、そうするのだ」
このギルドに子供は居ないはずだがどうしてか子供の世話をしている気分になるな。
食事を終えた俺は訓練所に行って瞬脚の訓練を始める。
影光に瞬脚の方法とコツは教わっている。あとは自分の物に出来るようにするだけだ。
俺はそれから1時間の間休む事無く瞬脚の特訓をした。前世では体を動かすことは苦手だったけどこの世界に来て体を動かす事が好きになった。勿論働くために体を動かすのは嫌いだ。好きなことに体を動かすのが好きなんだ。
シャワーで汗を流し、洗面所に置いていたミネラルウォーターで水分補給をした俺は着替えてクレイヴが寝ている部屋のドアを叩く。
「クレイヴ、まだ寝ているのか起きろ」
しかし反応が無い。どうやら熟睡しているようだな。
「おい、クレイヴいい加減に起きろ!」
今度は強く叩いて起こす。しかし反応がない。
どうやら俺を本気にさせたようだな。
俺はアイテムボックスから一本の鍵を取り出した。
説明しよう!
この鍵はあらゆる扉、正確にはこの建物限定でどんな扉でも解錠することが可能なのだ!ま、ただのマスターキーなわけだが。
俺はそんなマスターキーを差し込んで解錠する。
中に入るとテーブルとベッドだけが置かれているだけだった。って俺が最初に用意した家具だじゃねぇか。
それ以外に変わったところがあるとすればクレイヴが寝ているベッド側の壁に愛用のM14、いやスコープが装着されているからM21狙撃銃に似た魔導狙撃銃が掛けられていた。
男としては銃に興味を引かれるが、どうせ触れないので気にする事無く俺はクレイヴを起こす。
「クレイヴ、いい加減に起きろ」
「………」
ほぉ、これでも起きないか。ならっ!
「っ!」
パチッと目を覚ましたクレイヴは右手に持っていた愛用の魔導拳銃を俺に向けてくる。
「よ、目が覚めたか?」
「殺気で人を起こすのは止めて欲しい」
「なら、さっさと起きろ。入社初日から睡眠を貪るような奴を雇い続ける理由も余裕も無いんだからな」
「分かった」
そう言うとクレイヴは目を覚まして立ち上がる。
「それで他の皆は?」
「とっくに依頼を請けて出て行ったよ」
「皆で依頼を受けるんじゃないのか?」
「全員ランクがバラバラなんだ。それに陣形も連携も決まってないのに依頼を請けるわけにはいかないだろ。それよりもさっさと顔を洗って飯を食べろ。グリードがお前にって作り置きしてくれてるぞ」
「分かった」
そう言うと眠たそうな顔で洗面所に向かった。
さて俺も依頼でも請けるか。
さっそくスマホでお金になりそうな依頼を複数選ぶ。
そのあとクレイヴと一緒にギルドを出た俺は依頼のために帝都の外へと向かった。
因みにクレイヴはAランクの依頼を受けたようだ。え?俺か。俺はCランクの依頼を3つ請けたさ。影光が教えてくれたからな。自分のランクより下のランクなら一人でも受けられるってな。
ま、そのお陰で楽にポイントと報酬が手に入ったぜ。
11月16日金曜日。
一昨日影光たちに話していた通り、俺たちは訓練所で陣形の話し合いを行う。
なんで訓練所かというと一旦その陣形を試してみるためだ。相手はいないけどその位置に立って確認するためだ。
「前衛は俺、影光、グリード、ヘレンで、後衛がアイン、アリサ、クレイヴの3人で決まりだな」
「大まかな指示は仁が出すとして、誰が状況を把握して指示を出すかだな」
「そんなのアインしかいないだろ。後衛だし状況把握に分析、それを的確に指示が出せるとしたらアイン以外居ないだろ」
「当然です」
「ま、的確な判断だな」
俺の言葉に全員が納得するように頷く。案外陣形って楽勝なんだな。いや、偶然にもそう言う人材が集まっただけか。
「よし、一旦それでその場所に立ってみるか」
「どんな風にして並ぶのだ?」
「横一列で良いんじゃないのか?俺とグリードが中心で両端にスピードのあるヘレンと影光って感じで」
「今はそれで良いと拙者も思うぞ」
そんな適当な感じで俺たちは一度立ってみる。
左からヘレン、俺、グリード、影光の順で並ぶ。
「では、私たちはその後ろに左からアリサ、私、クレイヴの順番で立ちましょうか」
「分かったぜアインの姉御」
「分かった」
アインたちは俺たち前衛の間から狙えるようにして立つ。
お、適当に陣形を決めたわりには様になってるんじゃないか。
「なかなか良いのでは無いでしょうか」
「私もそう思うのだ!」
「初めてにしては上出来だと拙者も思うぞ」
「えへ、戦場で試すのが楽しみだぜ」
「そうだね。眠い」
「ぼ、僕が前衛それも中央で大丈夫でしょうか」
各々が感想を述べる。
何気に俺たちに強い絆が出来始めたような気がした。
「さて最後に銀だが、銀はアインか俺の傍で戦って貰う事になるだろう。ま、それは敵の種類によるだろうけどな」
「遊撃手って事か?」
「そうだ」
影光の質問に俺は頷く。
銀は全ての魔法属性が使え、スピードもパワーもあるからな。遊撃手としては最高だ。
─────────────────────
【ギルド残高】
Dランク依頼報酬×6 +18RK
Cランク依頼報酬×27 +162万RK
Bランク依頼報酬×8 +64万RK
Aランク依頼報酬×9 108万RK
ギルド口座残高 379万8750RK
【ギルドランク】
Dランク
【個人残高】
依頼報酬×15 +810万RK
残高1425万8740RK
【冒険者ランク】
Aランク昇格まで残り11ポイント
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
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