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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す
第九十七話 遺跡探索 ⑤
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なら、遠慮なく何度も攻撃させて貰うぜ!
しかし俺が動く前に敵の蜥蜴が反撃してきた。
大木ほどの太さがある尻尾を振り回し攻撃してきたのだ。どうにか躱すが、風圧だけで吹き飛ばされそうだ。
それにしてもなんて硬い鱗なんだ。炎龍でも一撃で貫通する威力で殴ったのに少し動くだけって。
見た目はただの蜥蜴だ。なのに龍よりも強いってなんなんだ。
「仁、どうするんだ。これじゃ近づくのも一苦労だぞ」
「そんな事言われても困る。暗くて視界も悪い状態なんだぞ。連携しようにも上手く行く保障がない」
そうだ。暗いなら明るくすれば良いだけじゃないないのか?
「アイン、照明弾はないのか!」
「そんな物ありません」
やっぱりアインが持っているのは攻撃できる武器だけか。
「ジンの旦那。私なら魔法でコイツを照らせるぜ」
「本当か!?」
「ああ。だけどこれほどの大きさになると流石に全てを照らすことは出来ないし、照らしている間は銃に魔力を送り込めなくなるから、攻撃力が半減しちまうけどな」
同時操作は出来ないって事か。アインなら出来るだろうがアリサはまだそれが出来ないのか。だが、これだけ暗いと攻撃するのにも一苦労だ。
戦力は落ちるが仕方が無い。
「アリサは敵の攻撃が当たらない場所まで後退して、蜥蜴と骨野郎を照らしてくれ。アリサの近くに居る奴はアリサを護りつつ攻撃だ」
『了解!』
俺の言い放った指示に全員が行動を開始する。
まずアリサが下がり、頭上目掛けて拳銃を構える。気配で感じてるだけだから確かな事は言えないが、魔法拳銃だろう。
普段は使わない事を考えてそこまで魔力量に自信が無いんだろうが、仕方が無い。今は出来るだけ早く敵を殺すだけだ。
「行くぜ!」
アリサがやる気に満ちた声音で叫ぶと蜥蜴と骨野郎の頭上から胴体の一部だけを照らしだす。
さっきまで暗い場所に目が慣れていたから直ぐに直視することは出来ないが、直ぐに慣れた俺はさっそく指示を飛ばす。
「影光とヘレンは攻撃が通りそうな場所を狙って攻撃。グリードは一番近い足をウォーハンマーで攻撃。それ以外の奴らは援護射撃だ!」
俺の指示が言い終わると全員が行動を開始した。
影光は尾の付根、ヘレンは腹部、グリードは左後足をウォーハンマーで攻撃する。
しかし巨大な蜥蜴は不愉快に感じた程度のうねり声を漏らすだけで、大ダメージが与えられたような表情を一切見せない。
「くっ、なんて硬い鱗なんだ!」
「全然攻撃が通らないのだ」
一旦攻撃を止めて距離を取る2人。
あの2人の攻撃でも駄目だとなると、作戦を見直さないとな。
こんな時、ゲームやラノベの主人公なら相手のステータスが見れたりするんだろうけど。やっぱり現実はそう上手く行かないな。
だけどやはり少しでもあの蜥蜴に関する情報が欲しいな。
俺はフリーダムの中で一番物知りなアインに聞いてみることにした。
「アイン、あの蜥蜴を倒す方法を知らないか?」
「生憎と私のデータベースにもこの蜥蜴と合致する魔物は存在しません」
やはり駄目か。
「ですが、どうやらあの蜥蜴は上に乗っているスケルトンライダーから硬化魔法、強化魔法などの支援魔法を受けているようです」
「なるほど。道理で硬いわけだ」
なら、最初の狙いは上のスケルトンライダーだな。アイツをなんとかすれば蜥蜴は直ぐにでも倒せるだろう。
「クレイヴ、アイン、お前たちであのスケルトンを倒せないか?」
「俺は無理。俺の武器じゃ威力が弱すぎる」
「対戦車ライフルを使えばなんとかなるでしょうが、それでも体の一部を破壊する事が出来るかどうかですね」
「お前の魔力でも無理なのか」
「いえ、魔力を注ぎ込めば倒せるでしょうが、撃つ前に銃の方が壊れる可能性が高いです」
「な、なるほどな」
本人の潜在能力のせいで武器が壊れる危険性があるか。なに、そのスーパー超人は。そんなの漫画やアニメの中で良いだろうに。
となると後衛組の2人には無理って事か。
前衛の奴らも今の戦闘で手一杯だろうし。仕方が無いここは俺が行くしかないか。
「全員はそのまま攻撃を続行してくれ。その間に俺がなんとかしてみる」
「了解だ」
「任せるのだ!」
「が、頑張ってみます!」
「さっさとして下さい。でないと誤って貴方を撃ち殺してしまうかもしれませんからね」
「俺がバックアップする」
「悪いなジンの旦那。私は照らすので精一杯なんだ」
ああ、知ってるよ。だからアリサは魔法に集中していてくれればそれで良い。
全員が一斉に攻撃を再開して数秒、俺は7%まで力を解放すると地面を陥没させるほど強く地面を蹴って蜥蜴の上に乗るスケルトンライダー目掛けて走る。
しかしそれは敵も予想していたらしく、蜥蜴が前足で攻撃してくる。
まさか俺たちの会話の内容が理解できるのか?
ありえない。事も無いか。あの島の中央に居る奴らなんて平然と言葉喋っていたし、人間でも無いのに狡猾な事とか思いついたりしてたからな。それに銀だって俺の言葉が理解できるみたいだしな。
それがあの島に居る化物連中だけと決め付けるのは浅はかだ。
俺はその事をあの島で過ごして思い知ったからな。
だからこそ、お前の攻撃を躱すなんてのは楽勝なんだよ。
少ない動作で躱した俺は地面を蹴ってジャンプした。
そしてスケルトンライダーの前に立つ。
「よ、倒される準備は出来てるか?」
挑発してみたが、なんの言葉も返ってこない。ま、当然と言えば当然だけど。
なら俺は遠慮なく攻撃させて貰うぜ!
蜥蜴の背中を蹴ってスケルトンライダー目掛けて拳を振るう。
「カハッ!」
しかし俺の拳が奴に届くことは無く、逆に奴の蹴りを受けてしまう。
正直何をされたのかまったく分からなかった。ただ蹴られたと言う実感だけが、衝撃と痛みの後にやって来ただけだ。
「て、てめぇ、なにしやがった……」
口元から垂れ落ちる血を袖で拭いながら俺はスケルトンライダーを睨みつける。
クソ、生きてる人間じゃねぇから気配も感じない。気配で相手の強さを測る俺にとって気配の無い相手は未知数そのものだ。
アインは魔力で動くサイボーグだし、気配が無いから実力が測れないが何度も戦いを見ていたらある程度の強さは分かる。
しかし初めての戦闘相手。ましてや遠距離タイプ、近距離タイプ、武器の種類、体術の種類などがまったく未知数のこの相手は、正直俺にとっては不気味な相手でしかない。
だからと言って負ける気はしない。
気配や魔力で感じる取れるからとかじゃない。これまでの戦闘で培った経験が言っているのだ。
コイツはあの気まぐれ島の化物連中の足元にも及ばないってな。
つまりは7%の開放でも勝てるって事だ。ただ俺が油断しただけの事。
なら油断せずに行けば良いだけの話って事だ。
「行くぜ、骨野郎!」
俺は再び奴に接近する。
たが直ぐには攻撃しない。攻撃の素振りをするだけで止めておく。
そして相手の行動、戦闘スタイルを見極める。
奴は俺が近づくと軽く下がって俺の顔目掛けて足を蹴り上げてきた。
やはり足主体の戦闘スタイルか!
俺は奴の攻撃を躱し、振り上げた足を掴む。
その瞬間、俺の右手に痛みが走り、奴の足は粉々に砕け散った。
投げるつもりでいた俺にとっては予想外の出来事に一瞬驚いたが、直ぐに理解した。
俺は武器は持てない。
それはあの糞女神から与えられた称号のせいでだ。
つまり、奴の足は武器として捉えられているって事だ。
普通の人間と握手をしたとしても呪いが発動することはない。
だが奴には発動した。それはつまり奴自信が武器として指定されているからだろう。
その理由は分からないが、俺にとって武器と指定されている何かを体中に纏っているんだろう。
それで考えられるのは魔力だ。
一切喋ろうともしない。気配も感じない。だが生物のように動く存在。
下の階層で襲ってきた甲冑を操っていた魔蟲どうように、この骨野郎もまた魔力で動いているに違いない。
なら、対処は普通に倒すよりも簡単だ。
俺は直ぐに倒し方を変更し、骨野郎に接近する。
片脚を失い、立つ事が出来なくなった骨野郎は重力に逆らえず倒れようとしている。
俺がその隙を見逃す筈が無い。
倒れ行く骨野郎の頭蓋に触れ、掴もうとした瞬間、左手に激痛が走り思わず顔を歪ませた。
ったく骨野郎の癖にどんだけの魔力を保有してんだよ。
だがその甲斐あって骨野郎の頭は砕け散った。
そして残された体は糸を切られた人形のように倒れ動かなくなった。
「皆さん、蜥蜴に掛けられた魔法が消えました。今が好機です!」
次の瞬間にはアインがそう叫んでいた。
俺はそれを聞いて本当に骨野郎が死んだんだと思った。いや、もう死んでるんだけどね。
支援魔法を失った蜥蜴は士気が上がった俺たちに敵うはずもなく、全員の一斉攻撃でこの世を去った。
そして俺たちはどれだけあの骨野郎の支援魔法が凄かったのか思い知らされた。
だってさっきまで全然通らなかった影光の一撃が、支援魔法が無くなった後はバターでも切るように滑らかに一刀両断されてたんだからな。
「終わったのだ!」
嬉しそうに叫ぶヘレン。あぁ、疲れた。
思いのほか強くて驚かされたぜ。
結果だけ言えば、凄かったのは骨野郎の支援魔法であってそれ以外は大した事はなかった。ま、骨野郎の一撃は俺が油断したのが原因だけど。
「それで仁、これからどうするんだ?」
「この蜥蜴と骨野郎をアイテムボックスに入れて持って帰る。これでどうにか依頼終了にして貰おうと思っている」
「上手く行けば良いがの」
頼むから不安を煽るような事を言わないで貰いたい。
「アリサ、大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だぜ。ま、帰ったら大量の酒が飲みたいけどな」
「お、それは拙者も同じ気持ちだ」
「酒を飲むことは俺も賛成だけど加減してくれよ。食費の大半が酒代ってのは困るからな」
実はここだけの話。先月の食費の5割が酒代と言う驚異的数字なのだ。
その後俺たちは蜥蜴と骨野郎をアイテムボックスに収納した。
「さぁて帰るぞ」
こうして俺たちは遺跡をあとにした。
戦闘の後で疲れていると言うのに憂鬱な気分になるほどの長い階段を上りきった俺たちはその達成感を身を投じる暇さえ与える事無く目の前の光景に驚かされていた。
「砂嵐がなくなっている」
「こ、これはどういう事なのだ?」
「拙者は幻でも見ておるのか?」
それぞれが言葉にするほど混乱していた。俺もまだ冷静さを取り戻せないほどだ。
そんな俺たちにスタムが駆け寄って来た。
「ジ、ジン!」
「スタム、これはどういうことだ?」
「僕にも分からないよ!ただ君たちを待っているといきなり砂嵐が消えたんだ。まるで役目を終えたかのように」
「役目を終えた?」
あの遺跡の最深部にあったのはあの鏡だ。
そして侵入者を待ち構えていたのが大量の蠍と甲冑。で、あの蜥蜴と骨野郎は逃げ帰ってきた奴らを始末する役目だったとしたら、全てが頷ける。
誰1人としてこの遺跡から逃がしはしない。情報の1つも外には漏らさない。そんな強い意志を感じる。
そこまでしてあの鏡を隠しておきたかったて事なんだろう。そしてあの鏡が壊されたことで砂嵐は止んだ。
ならなんであの蜥蜴と骨野郎は動いていたんだ?動力が別って事なのか?
それとも砂嵐もあの骨野郎が魔法で操作していたって事なのか?
終わったことを考えていても答えなんか出ない俺は考えるのは呆気なく止めた。だって疲れるしな。
「それにしても全員無事で出てくるなんて凄いんだね」
「最後は少し手間取ったが、無事に倒せたぜ」
「特別に編成された軍人たちですら1人しか帰還できなかった遺跡を少し手間取っただけって。君たちは凄いんだね」
「まぁな。実力だけなら最強だからな。俺の仲間は」
そんな俺の言葉に嬉しそうに笑みを浮かべたり、当然だと言わんばかりの自信あり気な笑みを浮かべたりと、笑みの種類にも様々だった。
「それよりも早く村まで連れて行ってくれ。俺たち疲れてるんだ」
「分かったよ」
俺たちはこうして遺跡を後にした。
しかし俺が動く前に敵の蜥蜴が反撃してきた。
大木ほどの太さがある尻尾を振り回し攻撃してきたのだ。どうにか躱すが、風圧だけで吹き飛ばされそうだ。
それにしてもなんて硬い鱗なんだ。炎龍でも一撃で貫通する威力で殴ったのに少し動くだけって。
見た目はただの蜥蜴だ。なのに龍よりも強いってなんなんだ。
「仁、どうするんだ。これじゃ近づくのも一苦労だぞ」
「そんな事言われても困る。暗くて視界も悪い状態なんだぞ。連携しようにも上手く行く保障がない」
そうだ。暗いなら明るくすれば良いだけじゃないないのか?
「アイン、照明弾はないのか!」
「そんな物ありません」
やっぱりアインが持っているのは攻撃できる武器だけか。
「ジンの旦那。私なら魔法でコイツを照らせるぜ」
「本当か!?」
「ああ。だけどこれほどの大きさになると流石に全てを照らすことは出来ないし、照らしている間は銃に魔力を送り込めなくなるから、攻撃力が半減しちまうけどな」
同時操作は出来ないって事か。アインなら出来るだろうがアリサはまだそれが出来ないのか。だが、これだけ暗いと攻撃するのにも一苦労だ。
戦力は落ちるが仕方が無い。
「アリサは敵の攻撃が当たらない場所まで後退して、蜥蜴と骨野郎を照らしてくれ。アリサの近くに居る奴はアリサを護りつつ攻撃だ」
『了解!』
俺の言い放った指示に全員が行動を開始する。
まずアリサが下がり、頭上目掛けて拳銃を構える。気配で感じてるだけだから確かな事は言えないが、魔法拳銃だろう。
普段は使わない事を考えてそこまで魔力量に自信が無いんだろうが、仕方が無い。今は出来るだけ早く敵を殺すだけだ。
「行くぜ!」
アリサがやる気に満ちた声音で叫ぶと蜥蜴と骨野郎の頭上から胴体の一部だけを照らしだす。
さっきまで暗い場所に目が慣れていたから直ぐに直視することは出来ないが、直ぐに慣れた俺はさっそく指示を飛ばす。
「影光とヘレンは攻撃が通りそうな場所を狙って攻撃。グリードは一番近い足をウォーハンマーで攻撃。それ以外の奴らは援護射撃だ!」
俺の指示が言い終わると全員が行動を開始した。
影光は尾の付根、ヘレンは腹部、グリードは左後足をウォーハンマーで攻撃する。
しかし巨大な蜥蜴は不愉快に感じた程度のうねり声を漏らすだけで、大ダメージが与えられたような表情を一切見せない。
「くっ、なんて硬い鱗なんだ!」
「全然攻撃が通らないのだ」
一旦攻撃を止めて距離を取る2人。
あの2人の攻撃でも駄目だとなると、作戦を見直さないとな。
こんな時、ゲームやラノベの主人公なら相手のステータスが見れたりするんだろうけど。やっぱり現実はそう上手く行かないな。
だけどやはり少しでもあの蜥蜴に関する情報が欲しいな。
俺はフリーダムの中で一番物知りなアインに聞いてみることにした。
「アイン、あの蜥蜴を倒す方法を知らないか?」
「生憎と私のデータベースにもこの蜥蜴と合致する魔物は存在しません」
やはり駄目か。
「ですが、どうやらあの蜥蜴は上に乗っているスケルトンライダーから硬化魔法、強化魔法などの支援魔法を受けているようです」
「なるほど。道理で硬いわけだ」
なら、最初の狙いは上のスケルトンライダーだな。アイツをなんとかすれば蜥蜴は直ぐにでも倒せるだろう。
「クレイヴ、アイン、お前たちであのスケルトンを倒せないか?」
「俺は無理。俺の武器じゃ威力が弱すぎる」
「対戦車ライフルを使えばなんとかなるでしょうが、それでも体の一部を破壊する事が出来るかどうかですね」
「お前の魔力でも無理なのか」
「いえ、魔力を注ぎ込めば倒せるでしょうが、撃つ前に銃の方が壊れる可能性が高いです」
「な、なるほどな」
本人の潜在能力のせいで武器が壊れる危険性があるか。なに、そのスーパー超人は。そんなの漫画やアニメの中で良いだろうに。
となると後衛組の2人には無理って事か。
前衛の奴らも今の戦闘で手一杯だろうし。仕方が無いここは俺が行くしかないか。
「全員はそのまま攻撃を続行してくれ。その間に俺がなんとかしてみる」
「了解だ」
「任せるのだ!」
「が、頑張ってみます!」
「さっさとして下さい。でないと誤って貴方を撃ち殺してしまうかもしれませんからね」
「俺がバックアップする」
「悪いなジンの旦那。私は照らすので精一杯なんだ」
ああ、知ってるよ。だからアリサは魔法に集中していてくれればそれで良い。
全員が一斉に攻撃を再開して数秒、俺は7%まで力を解放すると地面を陥没させるほど強く地面を蹴って蜥蜴の上に乗るスケルトンライダー目掛けて走る。
しかしそれは敵も予想していたらしく、蜥蜴が前足で攻撃してくる。
まさか俺たちの会話の内容が理解できるのか?
ありえない。事も無いか。あの島の中央に居る奴らなんて平然と言葉喋っていたし、人間でも無いのに狡猾な事とか思いついたりしてたからな。それに銀だって俺の言葉が理解できるみたいだしな。
それがあの島に居る化物連中だけと決め付けるのは浅はかだ。
俺はその事をあの島で過ごして思い知ったからな。
だからこそ、お前の攻撃を躱すなんてのは楽勝なんだよ。
少ない動作で躱した俺は地面を蹴ってジャンプした。
そしてスケルトンライダーの前に立つ。
「よ、倒される準備は出来てるか?」
挑発してみたが、なんの言葉も返ってこない。ま、当然と言えば当然だけど。
なら俺は遠慮なく攻撃させて貰うぜ!
蜥蜴の背中を蹴ってスケルトンライダー目掛けて拳を振るう。
「カハッ!」
しかし俺の拳が奴に届くことは無く、逆に奴の蹴りを受けてしまう。
正直何をされたのかまったく分からなかった。ただ蹴られたと言う実感だけが、衝撃と痛みの後にやって来ただけだ。
「て、てめぇ、なにしやがった……」
口元から垂れ落ちる血を袖で拭いながら俺はスケルトンライダーを睨みつける。
クソ、生きてる人間じゃねぇから気配も感じない。気配で相手の強さを測る俺にとって気配の無い相手は未知数そのものだ。
アインは魔力で動くサイボーグだし、気配が無いから実力が測れないが何度も戦いを見ていたらある程度の強さは分かる。
しかし初めての戦闘相手。ましてや遠距離タイプ、近距離タイプ、武器の種類、体術の種類などがまったく未知数のこの相手は、正直俺にとっては不気味な相手でしかない。
だからと言って負ける気はしない。
気配や魔力で感じる取れるからとかじゃない。これまでの戦闘で培った経験が言っているのだ。
コイツはあの気まぐれ島の化物連中の足元にも及ばないってな。
つまりは7%の開放でも勝てるって事だ。ただ俺が油断しただけの事。
なら油断せずに行けば良いだけの話って事だ。
「行くぜ、骨野郎!」
俺は再び奴に接近する。
たが直ぐには攻撃しない。攻撃の素振りをするだけで止めておく。
そして相手の行動、戦闘スタイルを見極める。
奴は俺が近づくと軽く下がって俺の顔目掛けて足を蹴り上げてきた。
やはり足主体の戦闘スタイルか!
俺は奴の攻撃を躱し、振り上げた足を掴む。
その瞬間、俺の右手に痛みが走り、奴の足は粉々に砕け散った。
投げるつもりでいた俺にとっては予想外の出来事に一瞬驚いたが、直ぐに理解した。
俺は武器は持てない。
それはあの糞女神から与えられた称号のせいでだ。
つまり、奴の足は武器として捉えられているって事だ。
普通の人間と握手をしたとしても呪いが発動することはない。
だが奴には発動した。それはつまり奴自信が武器として指定されているからだろう。
その理由は分からないが、俺にとって武器と指定されている何かを体中に纏っているんだろう。
それで考えられるのは魔力だ。
一切喋ろうともしない。気配も感じない。だが生物のように動く存在。
下の階層で襲ってきた甲冑を操っていた魔蟲どうように、この骨野郎もまた魔力で動いているに違いない。
なら、対処は普通に倒すよりも簡単だ。
俺は直ぐに倒し方を変更し、骨野郎に接近する。
片脚を失い、立つ事が出来なくなった骨野郎は重力に逆らえず倒れようとしている。
俺がその隙を見逃す筈が無い。
倒れ行く骨野郎の頭蓋に触れ、掴もうとした瞬間、左手に激痛が走り思わず顔を歪ませた。
ったく骨野郎の癖にどんだけの魔力を保有してんだよ。
だがその甲斐あって骨野郎の頭は砕け散った。
そして残された体は糸を切られた人形のように倒れ動かなくなった。
「皆さん、蜥蜴に掛けられた魔法が消えました。今が好機です!」
次の瞬間にはアインがそう叫んでいた。
俺はそれを聞いて本当に骨野郎が死んだんだと思った。いや、もう死んでるんだけどね。
支援魔法を失った蜥蜴は士気が上がった俺たちに敵うはずもなく、全員の一斉攻撃でこの世を去った。
そして俺たちはどれだけあの骨野郎の支援魔法が凄かったのか思い知らされた。
だってさっきまで全然通らなかった影光の一撃が、支援魔法が無くなった後はバターでも切るように滑らかに一刀両断されてたんだからな。
「終わったのだ!」
嬉しそうに叫ぶヘレン。あぁ、疲れた。
思いのほか強くて驚かされたぜ。
結果だけ言えば、凄かったのは骨野郎の支援魔法であってそれ以外は大した事はなかった。ま、骨野郎の一撃は俺が油断したのが原因だけど。
「それで仁、これからどうするんだ?」
「この蜥蜴と骨野郎をアイテムボックスに入れて持って帰る。これでどうにか依頼終了にして貰おうと思っている」
「上手く行けば良いがの」
頼むから不安を煽るような事を言わないで貰いたい。
「アリサ、大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だぜ。ま、帰ったら大量の酒が飲みたいけどな」
「お、それは拙者も同じ気持ちだ」
「酒を飲むことは俺も賛成だけど加減してくれよ。食費の大半が酒代ってのは困るからな」
実はここだけの話。先月の食費の5割が酒代と言う驚異的数字なのだ。
その後俺たちは蜥蜴と骨野郎をアイテムボックスに収納した。
「さぁて帰るぞ」
こうして俺たちは遺跡をあとにした。
戦闘の後で疲れていると言うのに憂鬱な気分になるほどの長い階段を上りきった俺たちはその達成感を身を投じる暇さえ与える事無く目の前の光景に驚かされていた。
「砂嵐がなくなっている」
「こ、これはどういう事なのだ?」
「拙者は幻でも見ておるのか?」
それぞれが言葉にするほど混乱していた。俺もまだ冷静さを取り戻せないほどだ。
そんな俺たちにスタムが駆け寄って来た。
「ジ、ジン!」
「スタム、これはどういうことだ?」
「僕にも分からないよ!ただ君たちを待っているといきなり砂嵐が消えたんだ。まるで役目を終えたかのように」
「役目を終えた?」
あの遺跡の最深部にあったのはあの鏡だ。
そして侵入者を待ち構えていたのが大量の蠍と甲冑。で、あの蜥蜴と骨野郎は逃げ帰ってきた奴らを始末する役目だったとしたら、全てが頷ける。
誰1人としてこの遺跡から逃がしはしない。情報の1つも外には漏らさない。そんな強い意志を感じる。
そこまでしてあの鏡を隠しておきたかったて事なんだろう。そしてあの鏡が壊されたことで砂嵐は止んだ。
ならなんであの蜥蜴と骨野郎は動いていたんだ?動力が別って事なのか?
それとも砂嵐もあの骨野郎が魔法で操作していたって事なのか?
終わったことを考えていても答えなんか出ない俺は考えるのは呆気なく止めた。だって疲れるしな。
「それにしても全員無事で出てくるなんて凄いんだね」
「最後は少し手間取ったが、無事に倒せたぜ」
「特別に編成された軍人たちですら1人しか帰還できなかった遺跡を少し手間取っただけって。君たちは凄いんだね」
「まぁな。実力だけなら最強だからな。俺の仲間は」
そんな俺の言葉に嬉しそうに笑みを浮かべたり、当然だと言わんばかりの自信あり気な笑みを浮かべたりと、笑みの種類にも様々だった。
「それよりも早く村まで連れて行ってくれ。俺たち疲れてるんだ」
「分かったよ」
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ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
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