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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第七十二幕 怒りの激情と知らぬが仏
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――しかし。
「どうして何も言わないんだ!」
起きてしまった惨劇に後悔と怒りの激情に駆られ大声を荒立てながら問う。
勿論その相手は千夜だ。
その事は誰もが一瞬にして気づいた。本人である千夜もまた分かっていた。
(まったく面倒な)
内心そんな事を思い思わず嘆息しながら口を開いた。
「別にお前に言いたいことはない」
「嘘だ!」
「なら、何を言えば良いんだ?予想通りだな。か?弱い癖に出しゃばるからこうなる。か?そんな事を言う理由がないだろ。それこそ時間の無駄だ。今することは明日の探索に向けて準備をするだけだ」
「くっ!」
千夜が言うことは正しい。惨劇が起こってしまった以上それに対する今後の対策と準備をするのが普通だ。しかし眉一つ動かすことなく平然としている千夜の姿は他の冒険者から見れば冷徹に見えていた。
「ミーナ」
「はい」
「悪いが、治療の手伝いをしてやってくれ」
「分かりました」
そう言い残した千夜はこの場から立ち去った。そんな千夜にエルザだけ付き添い、エリーゼたちは負傷した冒険者たちの治療を行う。
(まったくあんな事を言いながらも結局治療するのね)
エリーゼはそんな事を思いながらポーションを怪我した冒険者に渡すのだった。
その日の夜、千夜たちはいつも通り話し合いの場に来ていた。
しかし、今回の話し合いはこれまでの話し合いとは違い完全にお通夜ムードからのスタートだった。その理由は誰もが知っている。
そんななかベノワが口を開く。
「それでは明日の探索の日程を発表します。昨日の話し合いでも出た通り、明日からは探索にはセンさんに参加して貰います」
ベノワの説明に足して昨日とは違い誰も文句を言う奴はいなかった。
「それでセンさん。どうしますか?」
「どうと言われても正直困るが、人数で言えば少数の方が好ましい」
「ですが、それは――」
「それは分かっている。だから幾つかの班に分ける」
「班ですか?」
「そうだ。全員が一箇所に集まって行動すれば待ち構えている怪物たちの格好の的だ。だから五人一組を五つ作り、行動する。班と班の距離感覚は約4メートル離れて行動する」
「だけどそれだとどこかが狙われる可能性だってあるだろ」
バレルの言葉に他の冒険者たちが頷く。
「確かにそうだが、あんな狭い場所で全員が密集していたらまともに反撃は出来ないだろ」
「それもそうか」
「それに全ての班に俺の仲間を一人ずつリーダーとしておく。ウィルは俺と行動だ」
「大丈夫なのか?」
今度は別の冒険者が心配で質問してくる。
「安心しろ。ウィル以外は俺を含めて全員がAランク冒険者だ」
その言葉に全員が感嘆の声を漏らす。
「だからもしも戦闘が開始したら俺の仲間の指示に従うこと。いいな?」
凄みのある雰囲気に全員が頷く。
「それじゃ、今から班分けをする」
こうして千夜の司会進行のもと明日の探索会議が順調に進んだ。
「最後に何処かが戦闘を開始した場合、それを見かけたら必ず他の班にも叫んで伝えること。連携が全員で帰還するために一番必要なことだからな」
その言葉に全員が頷く。
「それでは明日の探索に関する話し合いも終わったことですし、これでお開きにしましょう」
ベノワのその一言で話し合いは終了した。
「セン」
「どうしたバレル」
部屋に戻ろうとしていた千夜にバレルが話しかけてきた。
「俺が三班で良かったのか?五班でも良かったんだぞ」
二階層に入る順番は一班から順番に入っていくため五班が最後なのだ。因みに五班のリーダーはエルザだ。一番背後から狙われる危険性があるため月夜の酒鬼メンバーの中で最も実力のあるエルザを千夜は選んだのだ。で、接近戦が一番苦手なミレーネが中央とになったが、これには別の理由がある。
ミレーネの愛用の武器は弓だ。つまり遠距離攻撃を最も得意とするミレーネを真ん中にすることで先方後方のどちらから戦闘を開始したとしてもすぐに弓による援護射撃を可能にするためでもある。しかし、ミレーネが襲われた場合のために冒険者のなかでも実力のあるバレルをミレーネの護衛につけたのだ。
「いや、バレルにはミーネを護って貰いたい。知っての通りミーネは弓だからな。もしも襲われた時は助けてやってくれ」
「そこまで考えているとはな。あの小僧に最初から勝ち目は無かったってことだな」
「やめてくれ。もしも聞かれてて恨まれたらどうする」
「ハハッ、その時は倒しちまえばいいだろ」
「まったく呑気な事を言ってくれるな」
「それだけ俺はお前の実力を買ってると思ってくれ」
「ああ、そうするよ」
バレルはそう言って自分の小屋に戻っていった。
「さて、俺たちも戻るか」
「そうね。でも、あの男よりどう考えてもミレーネの方が接近戦も強いと思うわよ」
「確かにそうだが、念には念をってやつだな」
「つまり保険代わりってことでしょ」
「そうだ」
「可哀想に」
「ま、知らぬが仏ってことだ」
苦笑いを浮かべるエリーゼたちと共に部屋に戻る千夜であった。
「どうして何も言わないんだ!」
起きてしまった惨劇に後悔と怒りの激情に駆られ大声を荒立てながら問う。
勿論その相手は千夜だ。
その事は誰もが一瞬にして気づいた。本人である千夜もまた分かっていた。
(まったく面倒な)
内心そんな事を思い思わず嘆息しながら口を開いた。
「別にお前に言いたいことはない」
「嘘だ!」
「なら、何を言えば良いんだ?予想通りだな。か?弱い癖に出しゃばるからこうなる。か?そんな事を言う理由がないだろ。それこそ時間の無駄だ。今することは明日の探索に向けて準備をするだけだ」
「くっ!」
千夜が言うことは正しい。惨劇が起こってしまった以上それに対する今後の対策と準備をするのが普通だ。しかし眉一つ動かすことなく平然としている千夜の姿は他の冒険者から見れば冷徹に見えていた。
「ミーナ」
「はい」
「悪いが、治療の手伝いをしてやってくれ」
「分かりました」
そう言い残した千夜はこの場から立ち去った。そんな千夜にエルザだけ付き添い、エリーゼたちは負傷した冒険者たちの治療を行う。
(まったくあんな事を言いながらも結局治療するのね)
エリーゼはそんな事を思いながらポーションを怪我した冒険者に渡すのだった。
その日の夜、千夜たちはいつも通り話し合いの場に来ていた。
しかし、今回の話し合いはこれまでの話し合いとは違い完全にお通夜ムードからのスタートだった。その理由は誰もが知っている。
そんななかベノワが口を開く。
「それでは明日の探索の日程を発表します。昨日の話し合いでも出た通り、明日からは探索にはセンさんに参加して貰います」
ベノワの説明に足して昨日とは違い誰も文句を言う奴はいなかった。
「それでセンさん。どうしますか?」
「どうと言われても正直困るが、人数で言えば少数の方が好ましい」
「ですが、それは――」
「それは分かっている。だから幾つかの班に分ける」
「班ですか?」
「そうだ。全員が一箇所に集まって行動すれば待ち構えている怪物たちの格好の的だ。だから五人一組を五つ作り、行動する。班と班の距離感覚は約4メートル離れて行動する」
「だけどそれだとどこかが狙われる可能性だってあるだろ」
バレルの言葉に他の冒険者たちが頷く。
「確かにそうだが、あんな狭い場所で全員が密集していたらまともに反撃は出来ないだろ」
「それもそうか」
「それに全ての班に俺の仲間を一人ずつリーダーとしておく。ウィルは俺と行動だ」
「大丈夫なのか?」
今度は別の冒険者が心配で質問してくる。
「安心しろ。ウィル以外は俺を含めて全員がAランク冒険者だ」
その言葉に全員が感嘆の声を漏らす。
「だからもしも戦闘が開始したら俺の仲間の指示に従うこと。いいな?」
凄みのある雰囲気に全員が頷く。
「それじゃ、今から班分けをする」
こうして千夜の司会進行のもと明日の探索会議が順調に進んだ。
「最後に何処かが戦闘を開始した場合、それを見かけたら必ず他の班にも叫んで伝えること。連携が全員で帰還するために一番必要なことだからな」
その言葉に全員が頷く。
「それでは明日の探索に関する話し合いも終わったことですし、これでお開きにしましょう」
ベノワのその一言で話し合いは終了した。
「セン」
「どうしたバレル」
部屋に戻ろうとしていた千夜にバレルが話しかけてきた。
「俺が三班で良かったのか?五班でも良かったんだぞ」
二階層に入る順番は一班から順番に入っていくため五班が最後なのだ。因みに五班のリーダーはエルザだ。一番背後から狙われる危険性があるため月夜の酒鬼メンバーの中で最も実力のあるエルザを千夜は選んだのだ。で、接近戦が一番苦手なミレーネが中央とになったが、これには別の理由がある。
ミレーネの愛用の武器は弓だ。つまり遠距離攻撃を最も得意とするミレーネを真ん中にすることで先方後方のどちらから戦闘を開始したとしてもすぐに弓による援護射撃を可能にするためでもある。しかし、ミレーネが襲われた場合のために冒険者のなかでも実力のあるバレルをミレーネの護衛につけたのだ。
「いや、バレルにはミーネを護って貰いたい。知っての通りミーネは弓だからな。もしも襲われた時は助けてやってくれ」
「そこまで考えているとはな。あの小僧に最初から勝ち目は無かったってことだな」
「やめてくれ。もしも聞かれてて恨まれたらどうする」
「ハハッ、その時は倒しちまえばいいだろ」
「まったく呑気な事を言ってくれるな」
「それだけ俺はお前の実力を買ってると思ってくれ」
「ああ、そうするよ」
バレルはそう言って自分の小屋に戻っていった。
「さて、俺たちも戻るか」
「そうね。でも、あの男よりどう考えてもミレーネの方が接近戦も強いと思うわよ」
「確かにそうだが、念には念をってやつだな」
「つまり保険代わりってことでしょ」
「そうだ」
「可哀想に」
「ま、知らぬが仏ってことだ」
苦笑いを浮かべるエリーゼたちと共に部屋に戻る千夜であった。
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