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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第百四幕 事実と真実
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海賊の船長が寝床にしている港へと移動した先には数十人の海賊が待ち構えていた。
「まさか出迎えてくれるとはな」
「てめぇらはいったい何者だ!」
一番後ろから怒鳴り声をあげて聞いてくる。
「俺たちはお前等に襲われた商会に護衛依頼を受けた冒険者だ」
「冒険者だと。だが分からねぇな。どうして依頼を受けた冒険者がここにいるんだ?」
「そんなの簡単だ。一度海賊たちを全滅させたところでまた襲われるのならその元凶を潰したほうが今後は楽に仕事が出来るようになるだろ?」
「はっ、確かにな。それで俺様の許まで来たってわけか」
「ま、お前には別の件で聞きたいことがあるしな」
「別の件?」
千夜の呟きに近くにいたアイーシャが疑問符を浮かべるが、今はそんな事を考えている場合じゃないと頭を切り替える。
「ん?お前らはたしかタイチが侍らせていた女ども。そういやタイチはどうしたんだ?もしかしてその男に乗り換えたのか?」
「そんなわけないでしょ!それにタイチは……」
「呪われて暴走したから俺が殺した」
「おいおいマジかよ!こりゃあ傑作だ!あの正義感ぶった偽善者野郎が暴走して殺されたなんてな!ま、偽善者らしい最後だな!」
腹を抱えて爆笑する男にアイーシャたちは今に襲い掛かりそうなほど怒りを露にしていた。
しかし千夜はそんな関係なく、答えを知っていながら確認のためにと質問した。
「一つ聞きたい。どうして海賊であるお前がタイチの事を知っている。その様子からして他人ってわけじゃなさそうだが?」
「当たり前だろ。俺は奴の正義感を利用して強奪行為をしてたんだからな」
「「「なっ!」」」
船長の言葉にアイーシャたちは驚きを隠せなかった。
「現実を知らないガキを利用するのは楽勝だったぜ。ちょっと優しく接して嘘の情報を教えてやれば猪突猛進でその場所を襲うんだからよ。まさか本人も正義のつもりでやっていることが犯罪だとは思ってもいなかったようだけどよ。ま、その事を知ることなくあの世に行けたんだ。きっと本望だろうさ」
(やはりそうか。奴のステータスにあった海賊という称号。どうしてこんな奴がとは思っていたがまさか騙されていたとはな。現実を知らない奴の典型的なミスだ。ま、奴隷として売られなかっただけましか)
「そう言えばお前たちも元々は奴隷だったよな。そこをアイツに助けられたんだったよな」
「………」
(なるほど。だから奴の事を崇拝ぎみに信頼していたのか)
「奴からはお前たちを扱っていた奴隷商人は悪徳商人って聞いていたかもしれないが、それは違う。あの奴隷商人は正当な方法で奴隷を買い。それを販売してたんだよ。奴隷に対しても優しく接することで有名だったからな。それを知らずにあのガキはその男と護衛を殺してお前たちを助けた。いや、強奪したんだよ。その事を知ったとき俺は笑いながら大量に酒を飲んだものさ!」
男の口から吐かれる言葉はアイーシャたちには怒りしか与えなかった。
その事に千夜は危機感を覚えた。
(冷静な判断力を捨てるなよ。もしもここで奴に突っ走れば間違いなく面倒なことになる)
少しでも冷静な判断力を持っていることを祈りながら千夜は刀に手を伸ばす。
「それにしてもお前はあんまり驚かないな。知り合って間もないからか?」
「いや、会った時から奴が犯罪行為をしていたことは知っていた」
「「「え?」」」
千夜から呟かれた言葉にアイーシャたちの思考は一時停止する。
「へぇ……何故だ?」
千夜の言葉に一瞬にして船長が纏う空気が変わる。
「俺は解析スキルを持っているからな。これまで襲われた状況から考えて全員のステータスを見せてもらった。予想通りお前の手下たちが数人潜り込んでいた。勿論全員始末させて貰ったがな」
「なるほど通りで連絡が無かったわけだ。ならタイチが暴走したのもお前の仕業か」
(アイーシャたちの怒りを俺に向ける気か)
「いや、あれは偶然だ。ま、楽に殺す理由が出来たことには感謝しているけどな」
「あははは、お前も相当冷徹な奴だな」
「俺が受けた依頼は海賊たちからあの船を守ることだ。だったら海賊の手下を野放しにする理由はない。ま、タイチ自身がその事に気づいてなくても犯罪行為をしたことには変わりはないからな」
「確かにその通りだ。誰かに騙されていたとしても犯罪は犯罪だ。少し罪が軽くなるだけで奴が犯罪をしたことには変わりないからな。ま、奴の場合は犯罪行為のしすぎだからな。騙されていたとしても死刑には変わりなかっただろうさ」
「だろうな」
「どうして!どうして!助けてくれなかったの!」
千夜と船長の会話にアイーシャが突如割り込んでくる。
「知っていたのなら助けることも出来たはずよね!なのにどうして助けてくれなかったのよ!」
「まともに人の話を聞かないお前たちに何を言ったところで、俺の話を信用したか?」
「そ、それは……」
「もしも俺のステータスに解析スキルがあることを教えてお前たちが信じてくれたとしても、正義感の強いあの男がその事を受け入れて生きていけるとは思わなかったしな。どうせ誰も居ないところで自殺していただろうさ」
「ははは、確かにそれはありえるな。無駄な正義感に押しつぶされて現実から逃げる。あの男がやりそうなことだ。それを考えるならお前がやったことはせめてもの情けなのか?」
「そんなんじゃないさ。目の前に敵がいたら殺す。当たり前のことだ」
「ほんとお前面白いな!どうだ俺の仲間にならないか?お前の力も認めてるんだ。すぐにでも幹部に入れてやるよ」
手を差し伸べる男。
「海賊か。それも悪くはないかもな」
前世で読んだ漫画を思い出しながら吐かれた言葉。その事にアイーシャたちは剣に手を伸ばす。
「だが生憎と俺は誰かの下につくつもりはないし、今の生活も気に入っているからな。丁重に断らせて貰う」
「つまりそれは今すぐこの場で殺しても良いってことだよな?」
「お前等全員を地獄に叩き落とすってことだ!」
こうして幹部数名と海賊たち100人弱対冒険者6人の戦闘が始まった。
==================================
どうも月見酒です。
更新が遅れてすいません。
第二巻が7月24日に発売されます。
表紙は登場人物紹介の方にありますので、見たい方はそちらで見てください。
エルザのステータスやプロフィールもあります。
次の更新がいつになるかは分かりませんが、今後ともよろしくお願いします。
それと、「中身がおっさんの異世界放浪録~なぜ、こうなる!!~」などの他の小説もありますので気になる方は読んでみて下さい。
「まさか出迎えてくれるとはな」
「てめぇらはいったい何者だ!」
一番後ろから怒鳴り声をあげて聞いてくる。
「俺たちはお前等に襲われた商会に護衛依頼を受けた冒険者だ」
「冒険者だと。だが分からねぇな。どうして依頼を受けた冒険者がここにいるんだ?」
「そんなの簡単だ。一度海賊たちを全滅させたところでまた襲われるのならその元凶を潰したほうが今後は楽に仕事が出来るようになるだろ?」
「はっ、確かにな。それで俺様の許まで来たってわけか」
「ま、お前には別の件で聞きたいことがあるしな」
「別の件?」
千夜の呟きに近くにいたアイーシャが疑問符を浮かべるが、今はそんな事を考えている場合じゃないと頭を切り替える。
「ん?お前らはたしかタイチが侍らせていた女ども。そういやタイチはどうしたんだ?もしかしてその男に乗り換えたのか?」
「そんなわけないでしょ!それにタイチは……」
「呪われて暴走したから俺が殺した」
「おいおいマジかよ!こりゃあ傑作だ!あの正義感ぶった偽善者野郎が暴走して殺されたなんてな!ま、偽善者らしい最後だな!」
腹を抱えて爆笑する男にアイーシャたちは今に襲い掛かりそうなほど怒りを露にしていた。
しかし千夜はそんな関係なく、答えを知っていながら確認のためにと質問した。
「一つ聞きたい。どうして海賊であるお前がタイチの事を知っている。その様子からして他人ってわけじゃなさそうだが?」
「当たり前だろ。俺は奴の正義感を利用して強奪行為をしてたんだからな」
「「「なっ!」」」
船長の言葉にアイーシャたちは驚きを隠せなかった。
「現実を知らないガキを利用するのは楽勝だったぜ。ちょっと優しく接して嘘の情報を教えてやれば猪突猛進でその場所を襲うんだからよ。まさか本人も正義のつもりでやっていることが犯罪だとは思ってもいなかったようだけどよ。ま、その事を知ることなくあの世に行けたんだ。きっと本望だろうさ」
(やはりそうか。奴のステータスにあった海賊という称号。どうしてこんな奴がとは思っていたがまさか騙されていたとはな。現実を知らない奴の典型的なミスだ。ま、奴隷として売られなかっただけましか)
「そう言えばお前たちも元々は奴隷だったよな。そこをアイツに助けられたんだったよな」
「………」
(なるほど。だから奴の事を崇拝ぎみに信頼していたのか)
「奴からはお前たちを扱っていた奴隷商人は悪徳商人って聞いていたかもしれないが、それは違う。あの奴隷商人は正当な方法で奴隷を買い。それを販売してたんだよ。奴隷に対しても優しく接することで有名だったからな。それを知らずにあのガキはその男と護衛を殺してお前たちを助けた。いや、強奪したんだよ。その事を知ったとき俺は笑いながら大量に酒を飲んだものさ!」
男の口から吐かれる言葉はアイーシャたちには怒りしか与えなかった。
その事に千夜は危機感を覚えた。
(冷静な判断力を捨てるなよ。もしもここで奴に突っ走れば間違いなく面倒なことになる)
少しでも冷静な判断力を持っていることを祈りながら千夜は刀に手を伸ばす。
「それにしてもお前はあんまり驚かないな。知り合って間もないからか?」
「いや、会った時から奴が犯罪行為をしていたことは知っていた」
「「「え?」」」
千夜から呟かれた言葉にアイーシャたちの思考は一時停止する。
「へぇ……何故だ?」
千夜の言葉に一瞬にして船長が纏う空気が変わる。
「俺は解析スキルを持っているからな。これまで襲われた状況から考えて全員のステータスを見せてもらった。予想通りお前の手下たちが数人潜り込んでいた。勿論全員始末させて貰ったがな」
「なるほど通りで連絡が無かったわけだ。ならタイチが暴走したのもお前の仕業か」
(アイーシャたちの怒りを俺に向ける気か)
「いや、あれは偶然だ。ま、楽に殺す理由が出来たことには感謝しているけどな」
「あははは、お前も相当冷徹な奴だな」
「俺が受けた依頼は海賊たちからあの船を守ることだ。だったら海賊の手下を野放しにする理由はない。ま、タイチ自身がその事に気づいてなくても犯罪行為をしたことには変わりはないからな」
「確かにその通りだ。誰かに騙されていたとしても犯罪は犯罪だ。少し罪が軽くなるだけで奴が犯罪をしたことには変わりないからな。ま、奴の場合は犯罪行為のしすぎだからな。騙されていたとしても死刑には変わりなかっただろうさ」
「だろうな」
「どうして!どうして!助けてくれなかったの!」
千夜と船長の会話にアイーシャが突如割り込んでくる。
「知っていたのなら助けることも出来たはずよね!なのにどうして助けてくれなかったのよ!」
「まともに人の話を聞かないお前たちに何を言ったところで、俺の話を信用したか?」
「そ、それは……」
「もしも俺のステータスに解析スキルがあることを教えてお前たちが信じてくれたとしても、正義感の強いあの男がその事を受け入れて生きていけるとは思わなかったしな。どうせ誰も居ないところで自殺していただろうさ」
「ははは、確かにそれはありえるな。無駄な正義感に押しつぶされて現実から逃げる。あの男がやりそうなことだ。それを考えるならお前がやったことはせめてもの情けなのか?」
「そんなんじゃないさ。目の前に敵がいたら殺す。当たり前のことだ」
「ほんとお前面白いな!どうだ俺の仲間にならないか?お前の力も認めてるんだ。すぐにでも幹部に入れてやるよ」
手を差し伸べる男。
「海賊か。それも悪くはないかもな」
前世で読んだ漫画を思い出しながら吐かれた言葉。その事にアイーシャたちは剣に手を伸ばす。
「だが生憎と俺は誰かの下につくつもりはないし、今の生活も気に入っているからな。丁重に断らせて貰う」
「つまりそれは今すぐこの場で殺しても良いってことだよな?」
「お前等全員を地獄に叩き落とすってことだ!」
こうして幹部数名と海賊たち100人弱対冒険者6人の戦闘が始まった。
==================================
どうも月見酒です。
更新が遅れてすいません。
第二巻が7月24日に発売されます。
表紙は登場人物紹介の方にありますので、見たい方はそちらで見てください。
エルザのステータスやプロフィールもあります。
次の更新がいつになるかは分かりませんが、今後ともよろしくお願いします。
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