鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

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第五章 依頼が無いので、呆気なく新婚旅行に行く事になりました。

第八十五幕 ブラッドワームと先にある強さ

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 次の日、特訓の成果を見るため千夜たちはギルドへとやって来た。
 何時ものように千夜は腕を組んで入る。しかし、いつも以上に気合いのはいった妻たちの姿にギルド職員や冒険者たちは圧倒される思いだった。

「少し、待っててくれ」
「ええ、分かったわ」
 妻たち待機させた千夜は依頼が貼られたボードに向かう。
(……やはり、高ランクの依頼は少ないな)
 限りある依頼の中から査定する。
 今回の依頼の基準はエリーゼたちでは倒せるか分からない相手である。そのため依頼達成時に払われる報酬は一切関係ないのだ。
(そうなると、多分だが俺も何度がサポートする事にはなると思うが。それでも構わない。強い相手でなければ、これ以上の成長は無いからか)
 そう考えて手にした依頼を受付嬢に持っていく。

「すまないがこれを頼む」
「分かりました。っ! あのこれはSSSランクの依頼ですがセンヤ様のみが受けられるのですか?」
 受付嬢の言葉にこの場にいた全員が驚愕表情を浮かべる。それらエリーゼたちも例外ではない。
 これまでエリーゼたちが受けて来た依頼は最高でもSSランクの依頼。それも必ず情報を集め作戦を練り、回復ポーションなど準備万端で行っていた。そしてたまに千夜すら同行する事もあった。
 にも拘わらずいきなりSSSランクの依頼をすることになったエリーゼであった。

「いや、今回はクランとして受ける」
「分かりました。それでは手続きを開始しますので少しお待ち下さい」
 受付嬢は依頼の手続きを行うため一度席を立つ。

「だ、旦那様」
「ん? なんだ?」
「SSSランクっていったい何をするの?」
「討伐だ」
「何を?」
「ブラッドワームだ」
「っな!」
 千夜の言葉に全員が言葉を失う。
 ブラッドワーム。
 通称、血虫の王とも呼ばれる大型の昆虫で、あらゆる生物の血を啜ることで力をつけ、スキルすらコピーする虫だ。
 最悪なのは歯には猛毒があり噛まれた者は数分で死に至らす怪物。
 最初は小さく踏み潰せば死ぬような魔物だが、稀に大型モンスターに取りつき少しずつ力を蓄える奴が居る。そうなればほぼ討伐は不可能とされているのだ。

「今回、討伐するブラッドワームは全長15メートルの奴だ。気を抜いたら噛みつかれて死ぬぞ」
 千夜は忠告する。しかしエリーゼたちは言葉すら返すことが出来ずにいた。

「どうした? ここに残るか? 俺一人でも構わないが、強くなりたければ誰が相手であろうと貪欲に力を求めるものだぞ」
「ええ、分かってるわ」
「そうか。だが、忘れるな。これはお前たちが強くなるための分岐点だ。だが、お前たちを死なせるつもりは無い。危険だと判断したら俺が倒す」
「分かったわ。でも旦那様はサポートだけお願い」
「ああ、分かった」
 恐怖で足が震えるエリーゼたち。しかし先に進まなければ自分達が追い求める強さは得られない。それを理解しているからこそエリーゼたちは己自身を鼓舞するように拳に力を込める。

「依頼の手続きが終わりました。どうか御武運を」
「ありがとう。エリーゼ」
「ええ、分かってるわ。皆、行くわよ」
「「「はい!」」」
 妻たちは先に進むため、討伐へと向かう。
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