鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

文字の大きさ
71 / 351
第五章 依頼が無いので、呆気なく新婚旅行に行く事になりました。

第九十四幕 平等に手に入れられると入りきらない

しおりを挟む

 走ること1時間で王都に到着した千夜たちは王都に入る人々の列に並んでいた。

「凄いわね。半分の力しか出してい無かったのに前よりも遥かに速いんだもの」
「ほんとですね」
「でも、少し心配ですね」
「あら、エルザなにが心配の?」
「ギルドに報告する時がです。出発した時とは見た目が変わっていますから」
「「「あ」」」
「大丈夫だろ。どうしてと聞かれたら、分からないと答えておけば問題ない」
「存在進化の事は言わないの?」
「ああ。存在進化の事をしれば強さを求める連中が増えるからな」
「でも、そうなれば魔物が減って良いと思うわよ」
「忘れたのか? 経験値は魔物だけでなく人を殺しても手に入る。ましてや楽して稼ぎたい連中にとっては一石二鳥だ」
「確かにそうね」
 レベル250に達すれば、その先にある強力な力が手に入る。それが存在進化だ。エリーゼたちのように誰かを守りたいという者が手にすればまだ平気だが、闇ギルドなどで働く連中が手に入れれば国が滅ぶ可能性だって出てくるのだ。
 その力が誰にだって平等に手に入れられる事が出来るとしてもだ。

「次は俺たちの番だぞ」
 前が進んだことにより順番がやって来た。


 知名度のお陰かいまだ注目の視線を浴びながらギルドへとやって来た千夜たち。

「あ、センヤ様お帰りなさい」
「ああ、戻ったぞ」
「それで……後ろの方たちは? エリーゼ様は分かるんですが」
「何を言っている、ミレーネとクロエにエルザだぞ」
「え! そうなんですか! すいません、前見たときとは随分と姿が違っていたので」
「別に平気ですよ。私たちも驚いたので」
「我もそうだった」
「あれは驚かない方がおかしいです」
 三人が今朝の出来事を楽しそうに話す。

「それではブラッドワーム討伐を確認しますのでギルドカードの提示して下さい」
「分かったわ」
 そう言ってエリーゼがギルドカードをアリスに渡すとそれに続くようにミレーネたちもまたギルドカードを渡す。

「あ、えっとセンヤ様は?」
「ん? 俺は参加してないぞ」
「え! つまりは」
「ああ。ブラッドワームを倒したのはエリーゼ達だ」
 その言葉にギルド内は驚きの歓声に包まれる。

「それは凄いですね! あ、すいません。つい興奮してしまって」
「別に良いのよ。私たちだって倒したときは嬉しかったしね」
「そう言って頂けると幸いです。それでは確認させていただきます」
 アリスは一人一人のカードの記録を調べていく。

「あの、1つよろしいですか?」
「なに?」
「確かにブラッドワームの討伐はされています。ですが、他にも沢山倒されているようなのですが」
「ああ、それね。ブラッドワームを討伐する前に遭遇してね」
「ですが、この数は尋常ではないのですが?」
「気にしないで良いわ」
「……分かりました。申し訳ありませんがブラッドワーム以外のモンスターは討伐依頼ではないので報酬は出ません。しかし、素材として買い取ることは可能です。どうなされますか?」
「なら、買い取って頂戴。ブラッドワームもあるから、流石にここでは出せないけど」
「分かりました。それでは裏の素材場に行って下さい。その間にカードの更新を行っておきますので」
「分かったわ」
 アリスの指示に従い裏手に向かう。そこには幾つもの倉庫がたちならんでいた。

「あ、『月夜の酒鬼』の方々ですか?」
「ええ、そうよ」
「アリスから窺っています。鑑定士のハイネと言います。よろしく」
「私はエリーゼ。で、彼女たちがミレーネとクロエにエルザよ。そして彼がこのクランリーダーのだ……センヤよ」
「これはご丁寧に。それではこちらに討伐したモンスターお願いします。あれ、倒されたモンスターを乗せた荷馬車が見当たらないようですが?」
「それなら大丈夫だ」
 そう言って倉庫の中心へと進む千夜。そして、

 ドサッ。

 倒されたモンスターの山がそこにはあった。しかし、ブラッドワームはやはりその大きさから目立つ。

「こ、これ全て貴方たちが?」
「ああ、そうだ。ま、ブラッドワームは妻達が倒したんだがな」
 目の前のモンスターの山。ハイネは呆然と立ち尽くす。

「それにしてもやはり、倉庫に入りきらなかったな」
「それは仕方がないわ」
 倒した大量のモンスターは入ったがブラッドワームは4割が倉庫の外に出ていた。

「そ、それでは鑑定させて頂きます。見たところ綺麗な常態で残っているので期待して良いかと思います」
「そうか。それで、どれぐらい時間がかかる?」
「流石に一人では無理なので、今から全員で取り掛かりますが、早くても2時間はかかるかと」
「そうか」
「なら、私のところでお茶でもしていくといいよ」
 突然、背後からかけられた声。そこにはここのギルドマスターを勤めているサシャだった。

「良いのか?」
「ええ、良いよ。それに話も聞きたいしね」
「分かった」
 そう言って千夜たちはサシャと共にギルドマスターの部屋へと向かうのだった。
しおりを挟む
感想 694

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。