鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

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その頃、百鬼家では?

ラムは稽古に励む。初級

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 我輩の名前はタイガーである。
 心から忠誠を誓った主が奥方たちと旅行に行かれている。
 一度ワイバーンの件で報告し、後日にギルドマスターに知らせた。
 それから数日。何故か我輩ラムに睨まれていた。

「ど、どうしたのだラムよ」
「む~」
 頬を膨らませ睨みつけるラム。しかし何も話そうとしない。怒っていることは確かなようだが。いったいどうしたのじゃ?

「約束」
「約束? 美味しい物を食べさせる約束なら先日果たしたはずじゃが」
「違う! 他の約束!」
「はて? 他に何を約束したか」
 いかん。本当に思いだせんぞ。

「稽古してくれるって言った!」
「そうじゃったの。しかし。それもしているはずじゃが」
「あれは稽古じゃない!」
 あれも立派な稽古だと思うのだが。薪割りさせたり、買い物の荷物を持たせたり、走らせたり。ほれ、全て稽古じゃろ?

「私はちゃんとした稽古がしたいの!」
「しかしのう。ラムにはまだ早いと思うが」
「したいの!」
 いかん。こうなったラムは頑固じゃからな。しかし前と一緒では機嫌を直すまい。

「分かった。ならちゃんとした稽古をするとしよう」
「やったー!」
 嬉しそうに訓練所に走り去っていくラム。まったく我輩も甘いのう。


 居訓練所へとやってきた我輩たちは中央で対峙していた。

「これから訓練を行う」
「はい!」
 うむ、良い返事じゃ。

「生憎と我輩は剣を扱う事は少ない。なのでラムには体術を教える」
「はい!」
 嬉しそうに返事をするラム。しかし何を教えればよいか。確かに裏の世界に身を投じていた時にも指南したことはあった。しかし指南した者たちは既に技を持っておった。しかしラムは完全な素人。教える事が変わってくるのだ。
 効率や修正とは違い一から作るのではその者の戦い方が変わってくるのだ。

「………よし、まずは受身から教える」
「受身?」
「そうだ。まずは己自身が怪我をしないようにするための方法じゃ」
「殴ったり蹴ったりはしないの?」
「受身が出来るまでは駄目じゃ」
「む~」
「したければ精進あるのみじゃ」
「……分かった!」
「返事ははい! じゃ」
「はい!」
「よし。それじゃ、まず中腰になれ」
「こう?」
「そうじゃ」
 ラムは腰を落とし、姿勢を低くする。

「そのまま、後ろに倒れるのじゃ」
「それじゃ頭打っちゃうよ」
「その通りじゃな。じゃがからそうならないよう、顎を引き、臍を見るのじゃ」
「分かった」
 本当に大丈夫かのう。
 ラムは後ろに倒れる。その際顎を引き、目線を自分の臍に向ける。なかなか上手いのう。

「出来た!」
「良いじゃろう。次に倒れる時は同時に両手を斜めに出して地面を叩いてみよ」
 我輩その場で倒れこみ、斜め45度に両腕を開く。

「遣ってみよ」
「はい!」
 ラムは同じように後ろに倒れる。が

「痛~い」
「やめるか?」
「やめない!」
 根性はあるようじゃの。しかし腕に集中しすぎて顎を引くのを忘れとったのう。

「武術は身体で覚えるもの。近道はない。あるのは反復のみ」
「はい!」
 ラムは何度も何度も繰り返す。強い子じゃ。
 十数分して出来るようになると、次は横に倒れた時の受身を教えた。
 簡単に説明すると右に倒れた時は顎を引き、右腕で地面を叩く。足は右足は伸ばし、左足は軽く曲げる。これは敵に投げられた場合、衝撃を抑えるためのものである。
 また左に倒れた場合は逆になる。左手で地面を叩き、左足を伸ばし、右足を曲げる。勿論顎は引く。
 これを徹底的ラムに教え込む。どんなどんな時でもすぐに受身が出来るようになるまで。しかしそのためには数日は掛かるじゃろう。ま、ラムは若いゆっくり教えていくかのう。
 こうして稽古初日が終了したのであった。
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