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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。
第十八幕 フレーズと残党狩り
しおりを挟む和也の目線に気づいたジャムたちまでもが頭上を見上げる。
『いや~、真面目な奴しかいないかと思いましたが、そうでも無いようで安心しましたよ~』
表情筋を動かせない筈の蝙蝠が不気味に嗤う。
『これでようやく第二段階に移せますよ~』
第二段階というフレーズに和也は眉間に皺を寄せる。
「ジャム」
「なんだ?」
「部下達にいつも以上に周りの警戒を強化しろ、と伝えろ」
「そんな……分かった」
拒否しようとしたが、未だに蝙蝠から視線を外さない和也の姿にジャムは了承し、即座に部下たちの許に向かった。
「それよりも、あんたは姿を見せないのか? 使い魔の目と耳を借りて傍観しているだけで楽しいのかよ」
『ええ、楽しいですよう~』
「そうかよ。なら、その計画が壊れる様をそこから見ているとことだ。貴族吸血鬼」
『………』
和也の言葉に対して何も返してこない謎の魔族。しかし、蝙蝠の目が鋭くなったのはきっと間違いないだろう。
「ライラ」
「カズヤか。ジャムから報告は受けている。やはりこれは罠だったか」
「気づいていたのか?」
意外だったのか和也は驚きの口調になる。
「当たり前だ。奇襲をかけたとはいえ、魔族共の動きが悪すぎる」
(ライラの評価を上げた方がいいな。でないと今後の調査に差し支えるかもしれないからな)
和也は鋭い視線でライラを見つめる。が、ライラは戦場を眺めていたためその視線には幸い気づいていなかった。
「で、これからどうする」
「迅速に残党を処理したのち、奇襲に備えるつもりだ」
和也の問いに簡素に答える。
「具体的には?」
「それについては残党の処理が終わってから話すつもりだ!」
突如襲ってきた魔族を斬り殺す。
「カズヤも油断するな」
「今のはライラが何とかしてくれると分かっていたからな!」
今度は和也がライラの背後に現れた魔族の顔面に蒼鑓で突き殺す。
「……そのようだな」
(流れるような動きだ。存在進化を果たしていないにも拘わらずこれほどまでの動きをするとは)
まじかで目にした和也の戦闘に内心驚きの念を覚える。
「どうやら、残党狩りは終わったようだぞ」
「あ、ああ、そうみたいだな。悪いがジャムとラケム、他の隊長を呼んで来てくれ」
「分かった」
文句を吐くことなく和也はライラの命令に従いジャムたちを呼びに行く。
そんな彼の後姿を見つめながらライラは思うのだった。
(きっとカズヤならば最強にして最高の剣聖になるかもしれない)
魔族軍と戦う戦場に威風堂々と立つ八人の騎士。その中心には和也、直ぐ横に己自身が立っている姿を想像する。
(何を考えている。剣聖になるための資格がカズヤにあるとは限らない)
妄想を払いのけ、敵が周囲にいないか斥候に行くように部下達に指示をだすのだった。
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