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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。
第二十一幕 飛矢と殲滅せよ!
しおりを挟む今直ぐにでも戦いたい、殺したい、破壊したい、蹂躙したいと言わんばかりの雰囲気を醸し出す魔族軍が息を荒くして目の前の敵を品定めするように見つめる。
それとは対極的にライラ率いる三日月の剣騎は真剣な面持ちで魔賊軍を睨み付ける。
一人一人考えること、思うことは十人十色だろう。しかし戦場ではそれは何の役にもたたない。もしも有るとすれば自信に繋がるか、枷となるかだろう。
何時始まってもおかしくはない雰囲気が漂う中一人の少年だけは魔族と変わらぬ思い、感情を宿し、嗤っていた。
本人すら気づかない深遠に眠る己の本能が自然と表に出ていることに。
「殲滅せよ!」
ライラの怒声が、雄たけびが、戦闘開始の合図が出された。
「「「「「「おおおおおぉぉぉ!!!」」」」」」
それに応えるように第一部隊も雄たけびをあげて魔賊軍に突撃を開始した。
「「「「グガアアアアアァァァ!!!」」」」
「「「「ギイィィィィィ!!!」」」」
「「「「ブオオオオォォォ!!!」」」」
反抗するように魔賊軍も雄たけびを上げ、突撃する。
相手目掛けて突っ込む。その恐怖に少しでも怯んだ数が多い方が流れを失うのは目に見えていた。普通ならば異業種である魔族の姿に不気味に感じ怯んでしまう。
まして三日月の剣騎士は和也を含め千人弱。それに比べ魔賊軍はおよそ1万に達すると言ってもおかしくはない規模だ。これはもう討伐ではなく戦争である。
そんな戦争において戦力が十分の一であり、戦わなければならない時はあらゆる策を持って対処するのが定石である。しかしライラたちは真正面から敵と激突した。これは誰が見ても愚作としか言えないだろう。
個人の強さが同等ならば。
最初に流れを手にしたのは三日月の剣騎だった。
飛矢の如く的を貫くように魔賊軍の中央を突き破り突破していく。
その原因とも言える功労者は三人の力が大きいからである。
一人は勿論、ハイヒューマンのライラ。もう一人はライラの補佐兼第一部隊副隊長のラケム。そしてもう一人は先日入隊したばかりの和也たちによるものだった。
騎馬の上からにも拘わらず両側の敵の急所を的確に攻撃するライラ。
横から攻撃してこようとする敵を即座に排除するラケムと和也。この三人の力は第一部隊の中でもずば抜けていた。そのおかげもあって、追従する部下達の士気は高まり、敵陣に風穴を空けるのであった。
「怯むな! 流れは我等にある! このまま侵略者どもを完膚無きまでに殲滅せよ!」
「「「「「「おおおおおぉぉぉ!!!」」」」」」
さらに士気を高めるためライラは白銀に輝く聖剣を天に掲げ雄たけびを上げる。この時点で既に魔族軍の2割は倒していた。そんな圧倒的な力を持つ三日月の剣騎の姿に和也は内心驚きを隠せずにいた。
(これは脅威だな。最初は愚策だと思っていた真正面からの突撃でまさかここまでするとは)
戦いは始まったばかり。しかし一度の攻撃で敵軍の2割を削り落とす力は脅威と言わざる終えなかった。しかし和也は忘れている。この結果は自分の力も含まれていることを。
一旦距離をとり、再び隊列が崩れ始めた魔族軍に突撃しようと試みる。が、
「二度……同ジ、手ヲ喰ラウモノカ!」
滑舌が上手く働かない2メートル50を優に超える魔族が振り下ろした己より遥かに巨大な斧によって二度目の突撃は失敗に終わるのであった。
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