鬼神転生記～勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。～

月見酒

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第六章帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第百二十幕ウィルと親として

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　次の日、朝食を終えた千夜は奴隷たちとオールリキュール職員全員を訓練所に集めていた。その数52人。
　少ないように感じるが、一屋敷に集まっていると考えれば多いと言えるだろう。

「さて、お前たちに言っておかないといけない事がある。俺は冒険者の依頼で屋敷を離れる。期間はまだ未定だが出来るだけ早く戻ってくるつもりだ。そこでお前たちの訓練を今日を最後に修了としこれからはオールリキュールの職員見習いとして一ヶ月間みっちり働いて貰う。その間の指示はオールリキュールの先輩方に聞くように。バルノやアスカたちは分からない事はセバスに聞いてくれ。俺の方で出来るだけ今後の予定と対処の仕方をまとめた資料を作っておいたから大丈夫だとは思うが、万が一の時はセバスに聞くように」
「「はい！」」
「で、奴隷たちのお前らは一ヵ月後の結果で奴隷解放するかを決める。俺が居ないからといって手を抜いたりするなよ。ちゃんと先輩たちが見てるからな」
「「「「「は、はい！」」」」」
　震えた声で叫ぶ奴隷たち。その姿にオールリキュールで働く先輩たちは懐かしそうに見ていた。

「さてと、話は以上だ。各自持ち場に戻ってくれ」
　千夜の話が終わると各自オールリキュールに戻る者、訓練を開始するもの酒造場に向かうものと様々だ。中には休みだったのそのまま出かける者も居た。
　屋敷の中に入った千夜はソファーで寛いでいた。正確にはある人物を待っていた。
　一時間ほどしてその人物が遣ってきた。

「お父様、お母様、ただいま戻りました！」
「ウィル！どうしたの！?」
　突然息子が帰ってきた事に驚くエリーゼ。
　先日セバスに頼んでウィルに明日、つまり今日来るように伝えていたのだ。

「お父様に呼ばれ来ました」
「旦那様に？」
「はい」
　ウィルは10歳になり、身長も伸び男らしくなってきていた。

「久しぶりだなウィル」
「はい、お父様。それで僕になんの用でしょうか？」
「ああ、実はな依頼で都市ルーセントに行く事になったんだ」
「そうなんですか！」
「ああ。でだ、ウィルお前も一緒に来ないか？」
「良いんですか！」
「ちょっ！旦那様は何考えてるのよ！ウィルには危険すぎるわ！」
「え、ルーセントが危険なのですか？」
「そ、それは……」
「少し問題を抱えていてな。それを消すために俺たちは明日ルーセントに向かうんだ。将来お前が納める都市でもある。この機に色々と勉強しておくべきだと思ってな。どうだ、行くか？」
「はい、将来のために頑張ります！」
「だ、駄目よ！絶対に駄目！だいたい今でなくでも良いじゃない！」
「お父様、お母様は駄目だと言っていますが……」
「安心しろ。お前の事は俺が絶対に護るから」
「はい！」
「でも、学校はどうするのよ！」
「それに関しては大丈夫です。現在は長期休暇中ですので！」
「でも、外泊は禁止の筈でしょ！」
　魔法騎士学園では、春夏秋冬、それぞれに長期休暇がある。夏と冬はそれぞれの領地に戻っても構わないが、春と秋は寮で暮らさなければならない。現在は春の長期休暇中のため寮で暮らしている。学生たちは街に出かけたり訓練所で自主訓練をしたりとそれぞれ日々を過ごしている。
　勿論冒険者として活動するのも良い。その代わり一日では終わらない依頼は学園に申請書を提出しなくてはならない。

「既に申請書も出して受理されました。友達の皆や先生たちもお父様たちと一緒に冒険者活動が出来る事に羨ましがっていました」
「魔法騎士学園……もう少し厳しくするように皇帝陛下に頼もうかしら……」
「エリーゼ、そう嘆くな。これも社会見学の一環だ」
「で、相変わらず旦那様は短絡的」
「ウィル、お前の冒険者ランクはどれぐらいなんだ？」
「はい。今はCランクです。お父様たちに比べれば足元にも及びませんが……」
　どこか不安げに答えるウィル。そんな彼の頭に手を置く千夜。

「ウィル、そう落ち込むな。10歳でCランクは凄いんだぞ。お前はまだ若い。これから頑張れば良い。それに今日から一緒に行動するんだ。稽古も一緒にしよう」
「はい！」
　先程とは打って変わって満面な笑みを浮かべるウィル。

「それじゃあ、僕は準備しますね」
　そう言ってウィルは屋敷に設けられた自分の寝室に向かった。

「やはり難しいな。落ち込む子供を慰めるのは」
「そうかしら、立派だったわよ」
「そうか。そう言って貰えると嬉しいが、親としては未熟だからな」
「これから頑張れば良いのよ。親としては先輩な私が色々と教えてあげるしね」
「エリーゼに聞くよりもマリンたちに聞いたほうが有益なようがするがな」
「もう何よ、その言いぐさは！」
「ふっ、冗談だ」
　端から見ればおしどり夫婦の会話にしか聞こえない。そのためそんな二人を羨ましそうに見詰める３人の女性が居た事は言うまでもないだろう。

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