260 / 351
第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第二十四幕 キラー・アトランとスキル取得
しおりを挟む
次の日、ウラエウスは魔王ベルヘルムからの命により人間たちが住まう『オルデン大陸』に向かうため、岸に来ていた。
「確かこのあたりにあった筈だ。お、あったあった」
岸に上げられていた屋根のある小船を見つけ海に浮かべると、懐から貝殻で作られた笛を鳴らす。
小鳥の泣き声のような音を発したそれは荒れ狂う海の音によって直ぐにかき消される。
しかし数分後、突如海の一部が盛り上がるとそこから体長40メートルはある一匹の魔物が出現した。
鋭利な刃物ような鱗に覆われた姿はまるで鮫であり、その体格と模様は鯱を髣髴とさせる。
「アトすまないがまたオルデン大陸まで頼む」
『キュィン!』
凶暴そうな見た目とは裏腹に可愛い鳴き声で返事をするアトと名づけられた、その魔物の本当の名前は海鮫喰い。荒れ狂う海に住まう凶暴な魔物たちの仲でも上位に君臨する魔物で通称狩人とも呼ばれている魔物だ。
小船の先端に取り付けた紐の片方をアトの背びれに取り付ける。
人間たちが航海不可能とされている海を渡りオルデン大陸に侵攻できるのは魔族が海に住まう魔物たちを飼いならしているからである。勿論その事を人間たちは知らない。
「それじゃあ頼む」
『キュィン!』
アトに引っ張られながらウラエウスはオルデン大陸へと向かう。
******************************
次の日から千夜たちは目立つように、と言うよりも暴れるように幾つもの依頼をこなしていった。
一日に複数依頼を受けるときはパーティーを二つにわけてこなしていた。ウィルが居るパーティーはBランクの依頼をメインにこなす一方で、もう片方はAランクをメインにSランクの依頼をこなす日々が2週間ほど続いた頃には回りから憧れの存在として周知されていた。
そんな千夜たちはランク上昇の話が持ちかけられるのは当たり前だが、ウィルがAランクになるまではSには上がらないと宣言した。勿論その事にウィルは申し訳なさそうにしていたが、目的の為に行っているだけと千夜に言われウィルから負担が軽減された。それでも完全に消える事はないからこそ、訓練所や宿屋の裏庭での稽古は日々苛烈さを増していった。
しかしそのお陰もあってかウィルのステータスレベルは180まで上がり、スキルレベルにいたっては平均80と子供では異常と言わざるえない状態となっていた。
それでも満足していないのは周りに居る千夜たちの影響なのか、血筋なのかは定かではない。
「よし、今日の朝稽古はこの辺で良いだろう」
「はぁ……はぁ……はぁはぁ……あぁ、ありがとう……ございました……」
大量の汗を流しフラフラになりながらもウィルは地面に座ろうとしない。これはウィルの意地であった。
「ほら、ウィル水だ。一気に飲むなよ。お腹を壊す」
「ありがとうございます」
千夜から受け取った水筒を受け取ると水を口に含む。しかし直ぐには飲み込まず口の中で温度を上げてから喉を潤す。これは一週間前に千夜から教えて貰った事を実際に行っているのだ。ウィルはとても優しく、素直な子だ。だが負けず嫌いでもあるからこそ朝からでも過酷な稽古を行っている。
水を飲み息を整えたウィルは前から気になっていた事を千夜に訊ねてみる。
「あのお父様」
「ん、なんだ?」
水を飲んでいた千夜はウィルに視線を向けながら喉を潤す。
「どうしてお父様はそんなにスキルを持っているのですか?」
「どうしてだと思う?」
「色々と経験したからでしょうか?」
「大まかに言えばその通りだ。それじゃウィル、スキルってどうやって手に入れるか知っているか?」
「はい。学園でも学びました。その分野のスキルを手に入れるにはその分野の事をすれば良いんですよね。例えば剣術スキルなら見よう見まねで剣術をしてみたり、調理スキルなら料理を作ってみたり」
「その通りだ。勿論そのスキルを手に入れるのには個人差がある。早い者も居れば時間が掛かる者も居る」
「はい」
「しかしスキルには他の方法で手に入れる方法もある」
「知っています。スキル継承巻物ですよね。古代の遺産で数も少なくとても貴重な物だと聞いています!」
「そ、その通りだ」
(まさかスクロールが古代の遺産になっているとは。見せるにも見せられなくなってしまった)
懐から取り出そうとしていた手をゆっくりと戻す。
「だがスキルには他にも取得方法がある」
「そうなんですか?」
「ああ。俺たちは規定スキルと呼んでいた」
「規定スキルですか?」
「そうだ。決められた内容の事をこなせば誰にだって取得可能なスキルの事だ。これに個人差はない。誰にだって取得可能なスキルの事だ」
「そんなスキルがあるんですね」
「そうだ。例えば浄化スキル。生まれつき持っている者たまにいたり、スクロールなどで取得する者いるが浄化スキルは誰にだって手に入れる事が可能だ」
「そうだってんですね。他には何があるんですか?」
「そうだな……無効スキルだな」
「無効スキルですか?」
「そうだ。状態異常無効スキルや各属性、火、水などの属性無効スキルだ。これはとある魔物と戦闘して勝利しないと取得出来ないスキルだ」
(あれは大変だった。一回倒してようやく一つの属性が無効に出来るものだからな。何回挑んだことやら)
思い出に浸っているとエリーゼがやってきた。
「旦那様、ウィル朝食の時間よ」
「そうか。ウィル行くとしよう」
「はい!」
砂埃を手で軽く払い落としたウィルと共に食堂へと向かう。
「確かこのあたりにあった筈だ。お、あったあった」
岸に上げられていた屋根のある小船を見つけ海に浮かべると、懐から貝殻で作られた笛を鳴らす。
小鳥の泣き声のような音を発したそれは荒れ狂う海の音によって直ぐにかき消される。
しかし数分後、突如海の一部が盛り上がるとそこから体長40メートルはある一匹の魔物が出現した。
鋭利な刃物ような鱗に覆われた姿はまるで鮫であり、その体格と模様は鯱を髣髴とさせる。
「アトすまないがまたオルデン大陸まで頼む」
『キュィン!』
凶暴そうな見た目とは裏腹に可愛い鳴き声で返事をするアトと名づけられた、その魔物の本当の名前は海鮫喰い。荒れ狂う海に住まう凶暴な魔物たちの仲でも上位に君臨する魔物で通称狩人とも呼ばれている魔物だ。
小船の先端に取り付けた紐の片方をアトの背びれに取り付ける。
人間たちが航海不可能とされている海を渡りオルデン大陸に侵攻できるのは魔族が海に住まう魔物たちを飼いならしているからである。勿論その事を人間たちは知らない。
「それじゃあ頼む」
『キュィン!』
アトに引っ張られながらウラエウスはオルデン大陸へと向かう。
******************************
次の日から千夜たちは目立つように、と言うよりも暴れるように幾つもの依頼をこなしていった。
一日に複数依頼を受けるときはパーティーを二つにわけてこなしていた。ウィルが居るパーティーはBランクの依頼をメインにこなす一方で、もう片方はAランクをメインにSランクの依頼をこなす日々が2週間ほど続いた頃には回りから憧れの存在として周知されていた。
そんな千夜たちはランク上昇の話が持ちかけられるのは当たり前だが、ウィルがAランクになるまではSには上がらないと宣言した。勿論その事にウィルは申し訳なさそうにしていたが、目的の為に行っているだけと千夜に言われウィルから負担が軽減された。それでも完全に消える事はないからこそ、訓練所や宿屋の裏庭での稽古は日々苛烈さを増していった。
しかしそのお陰もあってかウィルのステータスレベルは180まで上がり、スキルレベルにいたっては平均80と子供では異常と言わざるえない状態となっていた。
それでも満足していないのは周りに居る千夜たちの影響なのか、血筋なのかは定かではない。
「よし、今日の朝稽古はこの辺で良いだろう」
「はぁ……はぁ……はぁはぁ……あぁ、ありがとう……ございました……」
大量の汗を流しフラフラになりながらもウィルは地面に座ろうとしない。これはウィルの意地であった。
「ほら、ウィル水だ。一気に飲むなよ。お腹を壊す」
「ありがとうございます」
千夜から受け取った水筒を受け取ると水を口に含む。しかし直ぐには飲み込まず口の中で温度を上げてから喉を潤す。これは一週間前に千夜から教えて貰った事を実際に行っているのだ。ウィルはとても優しく、素直な子だ。だが負けず嫌いでもあるからこそ朝からでも過酷な稽古を行っている。
水を飲み息を整えたウィルは前から気になっていた事を千夜に訊ねてみる。
「あのお父様」
「ん、なんだ?」
水を飲んでいた千夜はウィルに視線を向けながら喉を潤す。
「どうしてお父様はそんなにスキルを持っているのですか?」
「どうしてだと思う?」
「色々と経験したからでしょうか?」
「大まかに言えばその通りだ。それじゃウィル、スキルってどうやって手に入れるか知っているか?」
「はい。学園でも学びました。その分野のスキルを手に入れるにはその分野の事をすれば良いんですよね。例えば剣術スキルなら見よう見まねで剣術をしてみたり、調理スキルなら料理を作ってみたり」
「その通りだ。勿論そのスキルを手に入れるのには個人差がある。早い者も居れば時間が掛かる者も居る」
「はい」
「しかしスキルには他の方法で手に入れる方法もある」
「知っています。スキル継承巻物ですよね。古代の遺産で数も少なくとても貴重な物だと聞いています!」
「そ、その通りだ」
(まさかスクロールが古代の遺産になっているとは。見せるにも見せられなくなってしまった)
懐から取り出そうとしていた手をゆっくりと戻す。
「だがスキルには他にも取得方法がある」
「そうなんですか?」
「ああ。俺たちは規定スキルと呼んでいた」
「規定スキルですか?」
「そうだ。決められた内容の事をこなせば誰にだって取得可能なスキルの事だ。これに個人差はない。誰にだって取得可能なスキルの事だ」
「そんなスキルがあるんですね」
「そうだ。例えば浄化スキル。生まれつき持っている者たまにいたり、スクロールなどで取得する者いるが浄化スキルは誰にだって手に入れる事が可能だ」
「そうだってんですね。他には何があるんですか?」
「そうだな……無効スキルだな」
「無効スキルですか?」
「そうだ。状態異常無効スキルや各属性、火、水などの属性無効スキルだ。これはとある魔物と戦闘して勝利しないと取得出来ないスキルだ」
(あれは大変だった。一回倒してようやく一つの属性が無効に出来るものだからな。何回挑んだことやら)
思い出に浸っているとエリーゼがやってきた。
「旦那様、ウィル朝食の時間よ」
「そうか。ウィル行くとしよう」
「はい!」
砂埃を手で軽く払い落としたウィルと共に食堂へと向かう。
10
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。