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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第四十三幕 作戦会議とタトゥーは文字
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情報収集のために来ていたのはギルドだ。
先ほどまで代官に呼び出されていた事を知っている者たちも数人居るため、チラチラこちらに視線を向けてくる。
しかしそんな視線など気にする様子も無く千夜たちは集めた情報を整理していた。
大抵の情報は受付嬢や他の冒険者に聞けばある程度欲しい情報は手に入る。が、
「やはり噂程度だと情報があやふやで乏しいな」
「そうね。代官から聞かされた話だとジャイアントオーガが居るらしいけど、廃村の近辺で見たっていう情報はないし、やはり私たちは誘い込む罠なのかしら」
「それもあり得るが、居ないという確証がないからな。こういう時は最悪を想定して行動するべきだろう。結果的に必要なかったとしてもな。本当に居たときに持ってきてなかったでは洒落にならないからな」
「そうね。でも本当に情報不足ね。見た魔物のバラバラだし」
頬杖をつき嘆息する。
「そう嘆くな。こういう事もたまにはある」
そんなエリーゼは慰める千夜。
「それでどうしてますか?」
「ま、必要な物で言えば食料と水ぐらいだろう。こうも魔物が居ないと野宿の時に食料がとれるか分からないからな」
「分かりました。後で買っておきます」
「頼んだ。さて、それじゃ陣形の確認だが――」
そう言って千夜はギルドから借りた廃村内の地図を広げる。
「前衛は俺とエリー。後衛はミーネとクーエ、ウィルも前衛だが俺たちより少し遅れて飛び出せ」
「はい、分かりました」
「ルーザはウィルのバックアップを頼む」
「分かりました」
「ま、これが戦闘開始時の陣形だが、何か起こるか分からないからな。緊急時に備えた陣形はまず二人一組で行動すること。大抵はそれぞれのポジションと同じもの同士で行動するが、場合によっては近い者同士でも構わない。また、伏兵が隠れている場合もあるからな。その場合は後衛の護衛としてウィルとエリーがつけ、俺とルーザが伏兵片付ける」
「分かりました」
「分かったわ。でも、もしも私とミーネたちの距離が離れていたら?」
「その場合は戦闘しつつ接近だな。その間はルーザがエリーの代わりにミーネたちを守れ」
「分かりました」
「それならもう私が戦えば良いんじゃないの」
「確かにそっちの方が効率は良いが戦闘スタイル的にエリーよりエルザの方が伏兵相手の戦いは向いているからな」
「なるほどそういうことね」
エリーゼはロングソード。千夜が作った焔鬼だ。場合によっては両手で持つときもある。しかしエルザは双剣。二つの短剣を自由自在に操るスペシャリスト。スピードもあるため護衛より自ら敵に接近して戦う事に向いている。
「さて、これぐらいで良いだろう。明朝に出発するからな」
千夜の言葉に全員が頷く。
作戦会議も終わりギルドを出ようとしていた時だった。
「ん」
「どうかしたの旦那様?」
「ああ」
椅子から立ち上がったが再び座る千夜。その姿にエリーゼたちも座る。
なにか思い出したような行動だが違う。その理由は、
『どうしたバンシー』
バンシーからの念話通信によるものだった。
『ルイラ村を襲おうとしていた者たちを調べていて分かった事がありましたので、その報告を』
『そうか。話してくれ』
『はい。嘘を言わないよう個別に事情聴取をしたところ。敵の規模は不明』
『不明だと。どういうことだ?』
『どうやら必要な時だけ集まり、それ以外は自由に暮らしているそうです。ただ同じ部隊の者の顔だけは知っている感じです』
『よくそれで統制出来ているな』
『いつでも切捨てられるようにではないかと』
『なるほどな。代わりは幾らでも居ると言う事か。それで』
『各部隊長は週に一度集まりリーダーから指示を受けるようになっているとか』
『週に一度か。次はどこに集まるか聞き出したか?』
『いえ、残念ながら。集合日の前日もしくは前々日に知らせが来るそうで毎回集合場所は違うそうです』
『そうか』
『ただ、ひとつ分かっているのは。秘密組織暗霧の十月のリーダーの名前はフランケンシュタインと呼ばれているそうです』
『フランケンシュタイン……そいつは魔族なのか?』
『いえ、そこまでは分かりません。ただ組織創設時からのメンバーらしく人間かと』
『なるほど……』
(コードネームか。異名だろうな。徹底した秘密主義だな)
『で、他には何が分かった?』
『あとはルイラ村を襲うようこの領地の代官から依頼されたとしか』
『分かった。報告は終わりか?』
『あと、我が君に頼まれ体を隅々調べたところ、背中、胸、脇腹のどこかにタトゥーが見つかりました』
『そうか、それはよくやった』
『ですが……』
『どうした?』
脳内に響くバンシーの声はどこか困惑気味に聞こえた。
『このタトゥー、模様ではなく文字なのです』
『文字だと?』
『はい。ですが私にはこの文字が読めないのです』
『なに?』
その言葉に千夜は思わず聞き返した。
(バンシーを創造するさい。この世界の文字は読めるようにしてある。なのに読めないとなるといったいどんな文字だ)
『分かった。ならお前に渡した封筒にその文字を書き写して送ってくれ。引き続きルイラ村の警護は任せた』
『畏まりました。我が君』
報告が終わり念話を終えた千夜は脱力する。
「旦那様大丈夫?」
「ああ、少し疲れただけだ。どうも分からないことだらけだからな」
「早く帰って寝たほうが良いわ」
「そうだな」
色々不明な事が多く、次から次へと問題が浮上するなか頭の使いすぎで疲れが出てしまった。
(糖分が欲しいな)
甘いものはあまり食べない千夜だが、それでも今は欲しいと感じるほどだ。
「それじゃあ、戻るとしよう」
「ええ」
心配そうな表情を浮かべるエリーゼたちに笑みを浮かべギルドを跡にした。
先ほどまで代官に呼び出されていた事を知っている者たちも数人居るため、チラチラこちらに視線を向けてくる。
しかしそんな視線など気にする様子も無く千夜たちは集めた情報を整理していた。
大抵の情報は受付嬢や他の冒険者に聞けばある程度欲しい情報は手に入る。が、
「やはり噂程度だと情報があやふやで乏しいな」
「そうね。代官から聞かされた話だとジャイアントオーガが居るらしいけど、廃村の近辺で見たっていう情報はないし、やはり私たちは誘い込む罠なのかしら」
「それもあり得るが、居ないという確証がないからな。こういう時は最悪を想定して行動するべきだろう。結果的に必要なかったとしてもな。本当に居たときに持ってきてなかったでは洒落にならないからな」
「そうね。でも本当に情報不足ね。見た魔物のバラバラだし」
頬杖をつき嘆息する。
「そう嘆くな。こういう事もたまにはある」
そんなエリーゼは慰める千夜。
「それでどうしてますか?」
「ま、必要な物で言えば食料と水ぐらいだろう。こうも魔物が居ないと野宿の時に食料がとれるか分からないからな」
「分かりました。後で買っておきます」
「頼んだ。さて、それじゃ陣形の確認だが――」
そう言って千夜はギルドから借りた廃村内の地図を広げる。
「前衛は俺とエリー。後衛はミーネとクーエ、ウィルも前衛だが俺たちより少し遅れて飛び出せ」
「はい、分かりました」
「ルーザはウィルのバックアップを頼む」
「分かりました」
「ま、これが戦闘開始時の陣形だが、何か起こるか分からないからな。緊急時に備えた陣形はまず二人一組で行動すること。大抵はそれぞれのポジションと同じもの同士で行動するが、場合によっては近い者同士でも構わない。また、伏兵が隠れている場合もあるからな。その場合は後衛の護衛としてウィルとエリーがつけ、俺とルーザが伏兵片付ける」
「分かりました」
「分かったわ。でも、もしも私とミーネたちの距離が離れていたら?」
「その場合は戦闘しつつ接近だな。その間はルーザがエリーの代わりにミーネたちを守れ」
「分かりました」
「それならもう私が戦えば良いんじゃないの」
「確かにそっちの方が効率は良いが戦闘スタイル的にエリーよりエルザの方が伏兵相手の戦いは向いているからな」
「なるほどそういうことね」
エリーゼはロングソード。千夜が作った焔鬼だ。場合によっては両手で持つときもある。しかしエルザは双剣。二つの短剣を自由自在に操るスペシャリスト。スピードもあるため護衛より自ら敵に接近して戦う事に向いている。
「さて、これぐらいで良いだろう。明朝に出発するからな」
千夜の言葉に全員が頷く。
作戦会議も終わりギルドを出ようとしていた時だった。
「ん」
「どうかしたの旦那様?」
「ああ」
椅子から立ち上がったが再び座る千夜。その姿にエリーゼたちも座る。
なにか思い出したような行動だが違う。その理由は、
『どうしたバンシー』
バンシーからの念話通信によるものだった。
『ルイラ村を襲おうとしていた者たちを調べていて分かった事がありましたので、その報告を』
『そうか。話してくれ』
『はい。嘘を言わないよう個別に事情聴取をしたところ。敵の規模は不明』
『不明だと。どういうことだ?』
『どうやら必要な時だけ集まり、それ以外は自由に暮らしているそうです。ただ同じ部隊の者の顔だけは知っている感じです』
『よくそれで統制出来ているな』
『いつでも切捨てられるようにではないかと』
『なるほどな。代わりは幾らでも居ると言う事か。それで』
『各部隊長は週に一度集まりリーダーから指示を受けるようになっているとか』
『週に一度か。次はどこに集まるか聞き出したか?』
『いえ、残念ながら。集合日の前日もしくは前々日に知らせが来るそうで毎回集合場所は違うそうです』
『そうか』
『ただ、ひとつ分かっているのは。秘密組織暗霧の十月のリーダーの名前はフランケンシュタインと呼ばれているそうです』
『フランケンシュタイン……そいつは魔族なのか?』
『いえ、そこまでは分かりません。ただ組織創設時からのメンバーらしく人間かと』
『なるほど……』
(コードネームか。異名だろうな。徹底した秘密主義だな)
『で、他には何が分かった?』
『あとはルイラ村を襲うようこの領地の代官から依頼されたとしか』
『分かった。報告は終わりか?』
『あと、我が君に頼まれ体を隅々調べたところ、背中、胸、脇腹のどこかにタトゥーが見つかりました』
『そうか、それはよくやった』
『ですが……』
『どうした?』
脳内に響くバンシーの声はどこか困惑気味に聞こえた。
『このタトゥー、模様ではなく文字なのです』
『文字だと?』
『はい。ですが私にはこの文字が読めないのです』
『なに?』
その言葉に千夜は思わず聞き返した。
(バンシーを創造するさい。この世界の文字は読めるようにしてある。なのに読めないとなるといったいどんな文字だ)
『分かった。ならお前に渡した封筒にその文字を書き写して送ってくれ。引き続きルイラ村の警護は任せた』
『畏まりました。我が君』
報告が終わり念話を終えた千夜は脱力する。
「旦那様大丈夫?」
「ああ、少し疲れただけだ。どうも分からないことだらけだからな」
「早く帰って寝たほうが良いわ」
「そうだな」
色々不明な事が多く、次から次へと問題が浮上するなか頭の使いすぎで疲れが出てしまった。
(糖分が欲しいな)
甘いものはあまり食べない千夜だが、それでも今は欲しいと感じるほどだ。
「それじゃあ、戻るとしよう」
「ええ」
心配そうな表情を浮かべるエリーゼたちに笑みを浮かべギルドを跡にした。
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