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3 ロンロちゃん
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ロンロちゃんはレンレ村で一番可愛い女の子。
「おはようトトセちゃん!」
いつもニコニコしてて、元気いっぱい。青い花が入った手籠を持って、薬草摘みに出かけようとしていた僕の方に駆けてきた。
「ルルナさんにお花を渡したいんだけど、今日はお邪魔しても大丈夫?」
「大丈夫だよ。最近は熱もあまり出さないし、顔色もよくなったから」
「そう! よかった。それじゃあ、今からお邪魔しにいくわ」
ルルナは僕の母さんの名前だよ。
ロンロちゃんは母さんに刺繍を教えてもらってる。母さんは色んな刺繍が得意だからね。おっとりお淑やかで刺繍の上手な僕の母さんに、憧れてるみたい。
「上手に刺繍ができるようになったら、トトセちゃんにお守り作るね」
「えっ、僕に?」
「いつもルルナさんに刺繍とか教えてもらってお世話になってるでしょ。ルルナさんへのお礼の分といっしょに作ってあげる。かっこいい刺繍にしてあげるから楽しみにしててね」
「う、うん。ありがとう」
僕はお母さんのついでだね。うん、知ってた。
「ルルナさんはどんなのが好きだと思う? やっぱりお花とか?」
「青が好きみたいだから、そのお花みたいな刺繍がいいかも」
お父さんからもらった青い石の付いた首飾りを大事にしてるし、エプロンとか布巾にも青い糸で刺繍してるからね。青はお母さんのお気に入りの色だと思う。
手籠に入っている花を見て、ロンロちゃんがちょっと難しい顔になった。
「うう、花びらがたくさんだから大変そう……」
「そうだねぇ。ちょっと大変そうだね。でも、お母さんはロンロちゃんにお守りもらったらきっと喜ぶよ」
「そうね。頑張らないと……。ルルナさんに喜んでもらって、褒めてもらいたいし」
ぐっと、こぶしを握って気合を入れるロンロちゃんは、なんだかちょっとかっこよかった。きっと先にお母さんの分を頑張るんだよね。この調子だと僕のお守りは、僕が忘れた頃になりそう。
ロンロちゃんとお母さんが仲良しで楽しそうだと、僕も楽しい気分になるよ。こんな風に皆が仲良しだったら平和でいいよね。
「教えてくれてありがとうトトセちゃん。それじゃ、私行くわね。薬草摘み気を付けて」
「うん。いってきます」
元気に駆けていくロンロちゃんに手を振ってお別れしてたら「お前、ロンロとなに話してたんだよ」って、声がして、こつんと頭を小突かれた。
「いたっ! も、もう、なんなの」
またいつもの意地悪レンドだよ。もう、ほんと、なんなの。
「教えろよ」
「なんでレンドに教えなくちゃいけないの」
「うるさいな。言えよ」
なんだかいつもより不機嫌そうだね。ちょっと顔が怖いよ。仕方ないなぁ。教えてあげよう。
「えっとね、ロンロちゃんがお守り作ってくれるって」
「はぁっ?」
「レンドも欲しいの? ロンロちゃん可愛いもんね」
「お前、アイツのこと好きなのか」
「えっ、どうだろう。可愛いし、嫌いじゃないよ」
いつも元気いっぱいで可愛いロンロちゃんが嫌いな人なんているのかな。僕は好きだよ。レンドみたいに意地悪しないし、優しい子だから嫌いになんてなれないよね。
「……ばっかじゃねぇの!」
「えっ?」
「嫁を放り出して居なくなる親父の子のくせに!」
なんでそこで、父さんが出てくるの。
酷いよ。どうして父さんがいなくなったのか知らないけれど、母さんが父さんの事を悪く言ったのを聞いたことがないんだよ。きっとなにか訳があって、今はどこかに出掛けているだけなんだよ。
「お、俺んとこに来いよ。面倒見てやる。ろくでなしの血を引いてるお前なんて、ロンロは好きにならないぞ。お前がいくら頑張ったって、無駄だ。ロンロじゃなくても絶対に嫁なんて来ないんからな」
ちょっぴり顔を赤くしてなにか言ってるけど、意味が分からなくてイラっとしたよ。さっきから父さんの事を悪く言ってばっかり! もう我慢できないよ!
「ばかあああああ!」
自分でもびっくりするくらい大きな声で叫んだ僕は、気付いたら籠でレンドをぶん殴ってた。
「ぐあっ!」
あれっ? 今日は当たったね!
尻もちをついたレンドのほっぺたは、籠の網目の形に赤くなってた。目をまん丸にしてるよ。もしかして、僕の叫び声におどろいたのかな。いつもはこんな大きな声なんて出さないからね。
「ばか! ばか! ほんと、嫌い! レンドなんてもう知らない! 口なんてきいてあげないからああ!」
「いてっ、おま、お、おい、やめろ!」
「うるさいばか! ばかばか!」
尻もちをついたまま起き上がってこないレンドを、何度も籠でボカボカ叩いて、最後には投げつけてやったよ。こんな嫌なことばっかりする子なんて、もう顔も見たくないよ。ぐうっと胸が苦しくなって、涙がどんどん目から出てきちゃった。
「もうヤダ! レンドのバカ!」って叫んで、泣きながら走って逃げた。
「ト、トトセ……」
いつも偉そうな声と違う、なんだか弱々しい声でレンドが僕を呼んだけど、もう知るもんか! 許してなんかあげないよ!
「トトセ、どうしたんだい! 叫び声が聞こえたけど」
あっ、タタンさんだ。テッテさんもいる。そんなに大きな声だったんだね。うるさくしてごめんなさい。
「なんでもないよ!」
「なんでもないから泣いてるんだろ。おばあちゃんに話してごらん」
「ご、ごめんなさい! 今は無理だよ!」
「トトセ、待ちなよ!」
もう! やだやだ!
タタンさんに声を掛けられたら、余計に涙が出てきちゃったよ! お話ししたらもっと泣いちゃうよ! 今はちょっと、話とかしたくないよ! 皆に心配されちゃうから、誰も見ていないところに行かなくちゃ!
気持ちがめちゃくちゃになってた僕は、とにかく一人になりたくて走り続けた。
「おはようトトセちゃん!」
いつもニコニコしてて、元気いっぱい。青い花が入った手籠を持って、薬草摘みに出かけようとしていた僕の方に駆けてきた。
「ルルナさんにお花を渡したいんだけど、今日はお邪魔しても大丈夫?」
「大丈夫だよ。最近は熱もあまり出さないし、顔色もよくなったから」
「そう! よかった。それじゃあ、今からお邪魔しにいくわ」
ルルナは僕の母さんの名前だよ。
ロンロちゃんは母さんに刺繍を教えてもらってる。母さんは色んな刺繍が得意だからね。おっとりお淑やかで刺繍の上手な僕の母さんに、憧れてるみたい。
「上手に刺繍ができるようになったら、トトセちゃんにお守り作るね」
「えっ、僕に?」
「いつもルルナさんに刺繍とか教えてもらってお世話になってるでしょ。ルルナさんへのお礼の分といっしょに作ってあげる。かっこいい刺繍にしてあげるから楽しみにしててね」
「う、うん。ありがとう」
僕はお母さんのついでだね。うん、知ってた。
「ルルナさんはどんなのが好きだと思う? やっぱりお花とか?」
「青が好きみたいだから、そのお花みたいな刺繍がいいかも」
お父さんからもらった青い石の付いた首飾りを大事にしてるし、エプロンとか布巾にも青い糸で刺繍してるからね。青はお母さんのお気に入りの色だと思う。
手籠に入っている花を見て、ロンロちゃんがちょっと難しい顔になった。
「うう、花びらがたくさんだから大変そう……」
「そうだねぇ。ちょっと大変そうだね。でも、お母さんはロンロちゃんにお守りもらったらきっと喜ぶよ」
「そうね。頑張らないと……。ルルナさんに喜んでもらって、褒めてもらいたいし」
ぐっと、こぶしを握って気合を入れるロンロちゃんは、なんだかちょっとかっこよかった。きっと先にお母さんの分を頑張るんだよね。この調子だと僕のお守りは、僕が忘れた頃になりそう。
ロンロちゃんとお母さんが仲良しで楽しそうだと、僕も楽しい気分になるよ。こんな風に皆が仲良しだったら平和でいいよね。
「教えてくれてありがとうトトセちゃん。それじゃ、私行くわね。薬草摘み気を付けて」
「うん。いってきます」
元気に駆けていくロンロちゃんに手を振ってお別れしてたら「お前、ロンロとなに話してたんだよ」って、声がして、こつんと頭を小突かれた。
「いたっ! も、もう、なんなの」
またいつもの意地悪レンドだよ。もう、ほんと、なんなの。
「教えろよ」
「なんでレンドに教えなくちゃいけないの」
「うるさいな。言えよ」
なんだかいつもより不機嫌そうだね。ちょっと顔が怖いよ。仕方ないなぁ。教えてあげよう。
「えっとね、ロンロちゃんがお守り作ってくれるって」
「はぁっ?」
「レンドも欲しいの? ロンロちゃん可愛いもんね」
「お前、アイツのこと好きなのか」
「えっ、どうだろう。可愛いし、嫌いじゃないよ」
いつも元気いっぱいで可愛いロンロちゃんが嫌いな人なんているのかな。僕は好きだよ。レンドみたいに意地悪しないし、優しい子だから嫌いになんてなれないよね。
「……ばっかじゃねぇの!」
「えっ?」
「嫁を放り出して居なくなる親父の子のくせに!」
なんでそこで、父さんが出てくるの。
酷いよ。どうして父さんがいなくなったのか知らないけれど、母さんが父さんの事を悪く言ったのを聞いたことがないんだよ。きっとなにか訳があって、今はどこかに出掛けているだけなんだよ。
「お、俺んとこに来いよ。面倒見てやる。ろくでなしの血を引いてるお前なんて、ロンロは好きにならないぞ。お前がいくら頑張ったって、無駄だ。ロンロじゃなくても絶対に嫁なんて来ないんからな」
ちょっぴり顔を赤くしてなにか言ってるけど、意味が分からなくてイラっとしたよ。さっきから父さんの事を悪く言ってばっかり! もう我慢できないよ!
「ばかあああああ!」
自分でもびっくりするくらい大きな声で叫んだ僕は、気付いたら籠でレンドをぶん殴ってた。
「ぐあっ!」
あれっ? 今日は当たったね!
尻もちをついたレンドのほっぺたは、籠の網目の形に赤くなってた。目をまん丸にしてるよ。もしかして、僕の叫び声におどろいたのかな。いつもはこんな大きな声なんて出さないからね。
「ばか! ばか! ほんと、嫌い! レンドなんてもう知らない! 口なんてきいてあげないからああ!」
「いてっ、おま、お、おい、やめろ!」
「うるさいばか! ばかばか!」
尻もちをついたまま起き上がってこないレンドを、何度も籠でボカボカ叩いて、最後には投げつけてやったよ。こんな嫌なことばっかりする子なんて、もう顔も見たくないよ。ぐうっと胸が苦しくなって、涙がどんどん目から出てきちゃった。
「もうヤダ! レンドのバカ!」って叫んで、泣きながら走って逃げた。
「ト、トトセ……」
いつも偉そうな声と違う、なんだか弱々しい声でレンドが僕を呼んだけど、もう知るもんか! 許してなんかあげないよ!
「トトセ、どうしたんだい! 叫び声が聞こえたけど」
あっ、タタンさんだ。テッテさんもいる。そんなに大きな声だったんだね。うるさくしてごめんなさい。
「なんでもないよ!」
「なんでもないから泣いてるんだろ。おばあちゃんに話してごらん」
「ご、ごめんなさい! 今は無理だよ!」
「トトセ、待ちなよ!」
もう! やだやだ!
タタンさんに声を掛けられたら、余計に涙が出てきちゃったよ! お話ししたらもっと泣いちゃうよ! 今はちょっと、話とかしたくないよ! 皆に心配されちゃうから、誰も見ていないところに行かなくちゃ!
気持ちがめちゃくちゃになってた僕は、とにかく一人になりたくて走り続けた。
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