1 / 19
1 レンレ村のトトセ
しおりを挟む
僕はトトセ。レンレという村に住んでる。
「おはようタタンさん」
「おはようトトセ。今日も一人で薬草摘みかい」
「うん! 僕も薬草をちゃんと覚えたからね。母さんにゆっくりしてもらいたいし」
最近やっと色んな薬草が見て分かるようになったんだよね。前は母さんが無理をして薬草摘みをしていたけれど、時々熱を出したりして大変だったんだ。
今まで母さんが僕を苦労して育ててくれたから、これからは僕が母さんを守りたいんだ。僕が物心つく前に居なくなったっていう、父さんの分まで。父さん、いつか帰って来てくれるかなぁ。
「そうかい。トトセも立派に働けるようになったんだねぇ。しっかり頑張りな。あっ、痛み止めの薬草を見つけたら摘んできてくれないかい。うちのジジイが腰を痛めててねぇ……」
「はいはい。見つけたら摘んでくるよ。お駄賃よろしくね」
近所に住んでるタタンおばあさんは、僕のお得意様になってくれてる。お駄賃は野菜とか美味しい手料理とか、たまに銅貨だったりもして、タタンさんが色んな物で払ってくれるから、いつもとても助かってる。
頼まれ事がなくてもおすそ分けだとか、作り過ぎたとかでも食べ物を持って来てくれるから、貰い過ぎている気もするけれど。
「気を付けて行っておいでよ」
「はーい! 行ってくるね!」
タタンさんに見送られながら、僕は大きな籠をしっかり背中に背負い直して森へ向かっていく。
「いたっ!」
突然、こつんと後ろ頭を小突かれて振り返ると、弓矢を背負った背の高い男の子が立っていた。
「お前、また薬草摘みかよ」
隣の家に住むレンドだ。
僕よりも体が大きくて腕も太くてずっと年上に見えるれけれど、これでも同い年。レンドの家は両親も兄弟もみんな狩人で、「俺のとこは、お前んとこと違って毎日たっぷり肉が食べられるんだぞ。羨ましいだろ」って、前に自慢してた。だから体が大きいのかな。
「うん、そうだよ。タタンさんに痛み止めも頼まれたし、母さんの熱冷ましも欲しいから」
「ふん。タタンの婆なんかに使われてんなよ。あの婆、ろくに金も払わないんだろ」
「駄目だよ婆なんて言ったら……。ちゃんとお駄賃くれるもん」
「ばっかだな。痛み止めを行商人から買うと幾らすると思ってんだよ」
「あれは偉い薬師さんが作ってるのだから高いのに決まってるでしょ。僕はばかじゃないもの。そのくらい知っているよ」
そこら辺に生えている草をむしるだけだから、高いお金なんて逆にいらない。軽く潰して痛いとこにペタッと貼るだけ。簡単だけどその分、薬師さんのより効きが悪いみたいだし。
それに、タタンさんは僕と母さんのことを、自分の娘と孫みたいにかわいがってくれるんだよ。悪く言われると気分が悪い。
「ちっ、トトセのくせに生意気だな」
「いっ!」
レンドはちょっと怒った顔をして、僕のおでこを指ではじいてきた。
「もう、レンドの方がばかだよ! ばかばか!」
「はあっ? この野郎、俺がせっかく親切で言ってやってんのに!」
「ちっとも親切じゃないから!」
相手にしていると日が暮れる。
レンドが「ほんとに生意気だなお前」って、またおでこを弾こうとするから、ぶんぶんと籠を振り回してやった。
「うわっ! おい、あぶねぇな!」
本気で振り回したのに、ひらっと体を捻って避けられた。おでこを弾かれずに済んだから十分だよね。当たらなかったのは悔しいけど。
「痛いことするからだよ。もう僕は行くからね」
「ふん。さっさと行けよ」
レンドはむすっとした顔をしてそっぽをむいた。
「レンドが意地悪しなければ、もうとっくに森に行けてたよ。レンドは狩りに行くんでしょ? 日が暮れると危ないんだから早く行かないと。気を付けてね」
体の大きいレンドは、僕よりも早く大人と同じように狩りの仕事を始めてる。やっと薬草摘みができるようになった僕とは大違いだ。でも、まだ子供なんだよね。僕にこんな風に意地悪するとことか。
「うるせぇな。かあちゃんかよ……。お前に言われなくても気を付ける。いい獲物が獲れても分けてやらねぇからな」
大きな獲物が獲れると、みんなに配ってくれることもあるんだよね。村のまとめ役をしてるレンドのお父さん……ファズさんはやさしくてかっこいいのに、何でこんなのが生まれるんだろうね。不思議だね。
「いらないよ。じゃあねレンド。無理しないでね」
「ほんとにうるせぇな」
そっぽを向いたまんまのレンドをほっといて、僕は森まで続く道を駆け足で進んだ。狩場と薬草摘みの場所は違うから、もう今日は意地悪されないんじゃないかな。
何が気に入らないのか知らないけれど、レンドは僕によく意地悪をする。さっきみたいに頭を小突かれたり、嫌なことを言われたり……ほとんど毎日だよ。もうなんなの。
僕の事、嫌いなのかな?
だったら構わなければいいのにね。レンドってよく分からない子なんだよ。
「おはようタタンさん」
「おはようトトセ。今日も一人で薬草摘みかい」
「うん! 僕も薬草をちゃんと覚えたからね。母さんにゆっくりしてもらいたいし」
最近やっと色んな薬草が見て分かるようになったんだよね。前は母さんが無理をして薬草摘みをしていたけれど、時々熱を出したりして大変だったんだ。
今まで母さんが僕を苦労して育ててくれたから、これからは僕が母さんを守りたいんだ。僕が物心つく前に居なくなったっていう、父さんの分まで。父さん、いつか帰って来てくれるかなぁ。
「そうかい。トトセも立派に働けるようになったんだねぇ。しっかり頑張りな。あっ、痛み止めの薬草を見つけたら摘んできてくれないかい。うちのジジイが腰を痛めててねぇ……」
「はいはい。見つけたら摘んでくるよ。お駄賃よろしくね」
近所に住んでるタタンおばあさんは、僕のお得意様になってくれてる。お駄賃は野菜とか美味しい手料理とか、たまに銅貨だったりもして、タタンさんが色んな物で払ってくれるから、いつもとても助かってる。
頼まれ事がなくてもおすそ分けだとか、作り過ぎたとかでも食べ物を持って来てくれるから、貰い過ぎている気もするけれど。
「気を付けて行っておいでよ」
「はーい! 行ってくるね!」
タタンさんに見送られながら、僕は大きな籠をしっかり背中に背負い直して森へ向かっていく。
「いたっ!」
突然、こつんと後ろ頭を小突かれて振り返ると、弓矢を背負った背の高い男の子が立っていた。
「お前、また薬草摘みかよ」
隣の家に住むレンドだ。
僕よりも体が大きくて腕も太くてずっと年上に見えるれけれど、これでも同い年。レンドの家は両親も兄弟もみんな狩人で、「俺のとこは、お前んとこと違って毎日たっぷり肉が食べられるんだぞ。羨ましいだろ」って、前に自慢してた。だから体が大きいのかな。
「うん、そうだよ。タタンさんに痛み止めも頼まれたし、母さんの熱冷ましも欲しいから」
「ふん。タタンの婆なんかに使われてんなよ。あの婆、ろくに金も払わないんだろ」
「駄目だよ婆なんて言ったら……。ちゃんとお駄賃くれるもん」
「ばっかだな。痛み止めを行商人から買うと幾らすると思ってんだよ」
「あれは偉い薬師さんが作ってるのだから高いのに決まってるでしょ。僕はばかじゃないもの。そのくらい知っているよ」
そこら辺に生えている草をむしるだけだから、高いお金なんて逆にいらない。軽く潰して痛いとこにペタッと貼るだけ。簡単だけどその分、薬師さんのより効きが悪いみたいだし。
それに、タタンさんは僕と母さんのことを、自分の娘と孫みたいにかわいがってくれるんだよ。悪く言われると気分が悪い。
「ちっ、トトセのくせに生意気だな」
「いっ!」
レンドはちょっと怒った顔をして、僕のおでこを指ではじいてきた。
「もう、レンドの方がばかだよ! ばかばか!」
「はあっ? この野郎、俺がせっかく親切で言ってやってんのに!」
「ちっとも親切じゃないから!」
相手にしていると日が暮れる。
レンドが「ほんとに生意気だなお前」って、またおでこを弾こうとするから、ぶんぶんと籠を振り回してやった。
「うわっ! おい、あぶねぇな!」
本気で振り回したのに、ひらっと体を捻って避けられた。おでこを弾かれずに済んだから十分だよね。当たらなかったのは悔しいけど。
「痛いことするからだよ。もう僕は行くからね」
「ふん。さっさと行けよ」
レンドはむすっとした顔をしてそっぽをむいた。
「レンドが意地悪しなければ、もうとっくに森に行けてたよ。レンドは狩りに行くんでしょ? 日が暮れると危ないんだから早く行かないと。気を付けてね」
体の大きいレンドは、僕よりも早く大人と同じように狩りの仕事を始めてる。やっと薬草摘みができるようになった僕とは大違いだ。でも、まだ子供なんだよね。僕にこんな風に意地悪するとことか。
「うるせぇな。かあちゃんかよ……。お前に言われなくても気を付ける。いい獲物が獲れても分けてやらねぇからな」
大きな獲物が獲れると、みんなに配ってくれることもあるんだよね。村のまとめ役をしてるレンドのお父さん……ファズさんはやさしくてかっこいいのに、何でこんなのが生まれるんだろうね。不思議だね。
「いらないよ。じゃあねレンド。無理しないでね」
「ほんとにうるせぇな」
そっぽを向いたまんまのレンドをほっといて、僕は森まで続く道を駆け足で進んだ。狩場と薬草摘みの場所は違うから、もう今日は意地悪されないんじゃないかな。
何が気に入らないのか知らないけれど、レンドは僕によく意地悪をする。さっきみたいに頭を小突かれたり、嫌なことを言われたり……ほとんど毎日だよ。もうなんなの。
僕の事、嫌いなのかな?
だったら構わなければいいのにね。レンドってよく分からない子なんだよ。
32
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
【8話完結】ざまぁされて廃嫡されたバカ王子とは俺のことです。
キノア9g
BL
廃嫡され全てを失った元王子。地道に生きたいのにハイスペ幼馴染が逃がしてくれません。
あらすじ
「第二王子カイル、お前を廃嫡する」
傲慢な振る舞いを理由に、王位継承権も婚約者も失い、国外追放されたカイル。
絶望の最中、彼に蘇ったのは「ブラック企業で使い潰された前世の記憶」だった。
「もう二度と、他人任せにはしない」
前世の反省を活かし、隣国の冒険者ギルドで雑用係(清掃員)として地道にやり直そうとするカイル。しかし、そんな彼を追いかけてきたのは、隣国の貴族であり幼馴染のレオナードだった。
「君がどんな立場になろうと、僕にとっては君は君だ」
落ちぶれたカイルに変わらぬ愛を注ぎ、元婚約者の悪意ある噂からも守り抜くレオナード。
すべてを失った元バカ王子が、社畜根性と幼馴染の溺愛によって幸せを掴むまでの、再起と愛の物語。
全8話。
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
『偽物の番』だと捨てられた不憫な第三王子、隣国の冷徹皇帝に拾われて真実の愛を教え込まれる
レイ
BL
「出来損ない」と捨てられた場所は、私の居場所ではありませんでした。
ラングリス王国の第三王子・フィオーレは、王族の証である『聖種の紋様』が現れなかったことで「偽物の番」と罵られ、雪降る国境へと追放される。
死を覚悟した彼の前に現れたのは、隣国アイゼン帝国の「冷徹皇帝」ヴォルフラムだった。
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる