【完結】騎士団をクビになった俺、美形魔術師に雇われました。運が良いのか? 悪いのか?

ゆらり

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本編

26 いつもと違う方向で、ビビらされた! 油断も隙もないな!

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 ――そんなこんなで、恥ずかしくも楽しいランチタイムは終了。

「調査が完了次第、またこちらへ来る」
「はい! 了解しましたっ!」
 
 ぎゅっと俺を抱き締めて頭を撫でてくれた後、クラさんは急ぎ足でお屋敷から去って行った。もう少し休憩していって欲しかったけど、実家の父さん達に連絡を入れないといけないし、捜査もまだたくさん残っているからって。うう、名残惜しすぎる! 

 ……ほんとは、俺も何か手伝いたかった。

 けれど「今は、ディザート殿の屋敷で大人しくしていて欲しい。その方が安全だ」なんて、言われてしまった。えぇー! とは思ったよ。でも、俺ぶっちゃけ被害者だからな。冷静に考えると邪魔だろうなぁ。騎士団の腐れ上層部に面が割れてる人間が、うろちょろしてたら悪目立ちもいいところだ。

 仕方ない。家政夫業を頑張るしかないな!

 ……ってことで、午後からは、お屋敷でのいつもの暮らしに戻った。

 3時のおやつは定番のクッキーだ。しかし! 今日のクッキーは、ひと味違うぞ! 紅色が鮮やかな紅玉苺ジャムを使って焼いた、ルビークッキーだ!

 ざっくりと焼き上がった生地と、酸味があるけど焼くことで甘みが濃厚になったベリーの組み合わせは、病みつきになる味と食感! そしてクッキー生地をへこませて流し入れたベリーの紅色が、ルビーのブローチみたいで高級かつ綺麗な見た目を演出している女子に人気の菓子だぞ。

 ――でもこれ、子どもが集まるお祭りで配ったら、女の子達に「うそ、私のより美味しい……」「なんでこんな綺麗に作れるのよ! 目立ち過ぎよ!」「胃袋掴みたいのに、掴まれたよぉ……」なんて言いながら、微妙に悔しそうな顔をされた。

 あれぇー? 

 そこは「さすがハス君! 素敵!」とか、「今度、作り方教えて!」とかじゃないのかな? 

 ……なんとも言えない雰囲気に終わった、少年の日の思い出の詰まったクッキーだ。

 ちなみに、男子どもは「うめー!」とか言いながらガツガツ食ってた。犬並みの早さだった。お前らはもう少し味わって食うということを覚えろ! 秒で食い尽くすなあぁ!

 まあそんな思い出はさておきだ! ひとつ味見をば!

 ……ぱくり。もぐもぐうまぁー! うんうん。この酸味がいいんだよな! きっとカムロさん喜ぶぞ。冷めた方が味が落ち着くから、綺麗に皿へ並べて冷ましておこう。

 調理場に、焼きたてクッキーの甘くて香ばしい匂いが漂っている。んんー! この匂いの感じ、好きなんだよなぁ。菓子が上手く焼けた達成感もあって、充実した気分だ。

 午前中のブチ飛びかつ珍妙展開と、涙鼻水まみれの証言タイムが全部嘘だったみたいな、穏やかな静かさだ。こういう時間って、必要だよな! カムロさんがブチ飛び言動を自粛してくれたらいいと思う!



 ……うーん、それはそれで物足りないか?



 って、いやいやいやいやいや! 何を考えてんだ俺! ブチ飛んだことをされてしょっちゅうビビってたら、ノミ並みの心臓スモールハートなんていくつあっても足りないぞ! 天に召されるわっ!


 ――そして3時のおやつ時間。

「綺麗なクッキーですね。ハス君の故郷の味ということになりますか」
「はい。馴染みの味ですよ。母さんに教えてもらった菓子です」
「そうですか。程よい酸味で美味しいですね」

 おだやかーに微笑んで、優雅におやつをお召し上がりになられる魔術師様。なんだか別人みたいに静か……っていうか、なんとなく少し落ち込んでいるように見えるんですが。

 いつもの無邪気でニコニコお子様なカムロさんは、どこに行ったんですかぁ! まっ、まさか別人かっ? なんてことはないだろうけど。

 どうなさったんでございますか魔術師様! 何か悪い物でも食べましたか? こっ、これはこれでビビるぞっ! ビビり過ぎて、どうしたんですか? とか、聞けなかった……!





 ――いつもと違う方向で、ビビらされた! 油断も隙もないな!
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