【完結】騎士団をクビになった俺、美形魔術師に雇われました。運が良いのか? 悪いのか?

ゆらり

文字の大きさ
34 / 70
本編

31 ちょっと、ぞくっとした。嫌な感じでない方のだ

しおりを挟む
 ――バカバカと連呼する魔術師様に、飛び付かれてしまいましたよ! 

 ぬああぁ! 俺が何を言ったというのですかぁ!

 でっかくて豪華なソファーは、2人で寝転がっても余裕がある。まだちょっと涙目な顔で俺の上に乗っかっているカムロさんが、胸板にすりすりと頬ずりをしてきた。

 ……あれー? また甘えられてるのかなぁ。

 寂しいんだろうけど、どうして俺なんですかってやっぱり思う。地味顔家政夫としては、ちょっと複雑だぞ! 8歳も年上の魔術師様にすりすりされるってのも何だかなぁ……。

「はぁ……」

 何とも言えない気分になって、思わずため息が出た。

「……もしかして、呆れてますか」

 むくりと身を起こして、へにょりと眉根を寄せたカムロさん。あっ、この顔も可愛い。

「いや、そういうんじゃないですけど……。8歳年上の人に甘えられるとは思ってもみなかったんで」
「呆れているじゃありませんか」
「複雑な気分ってだけです」

 なんでこんなクッソ綺麗すぎて怖いくらいの顔なのに、可愛く見えるんですかね! 不思議! それともこれが世に言う、ギャップ萌えというやつでございましょうか。そんな萌えなんて俺、求めてねえよ! うがああ!

「なんとも微妙な言い方をしますね。まあ、いいです。ハス君、こんなふうに私に触れられるのは、嫌ではないですか。拒絶しないですけれど……」 
「うーん、嫌じゃないですね。カムロさん、なんかいい匂いがするし」
「……いい匂いですか」
「はい。匂いも美形ですよねカムロさんって」

 悩みながら話していたら、うっかり思ってたことをそのまま言ってしまいましたよ! お、怒るかなと思ったら、「ぷはっ!」 って、カムロさんが吹いた! こういうときまで美形は崩れないな!

「ふ、ふふふ。匂いも美形ときましたか。ハス君は面白いですね。あははは!」

 何だか知らないけど楽しそうだ。笑いながら、また俺にくっついて肩口に顔を埋めてきた。

 うーん、まだ甘えたモードなのかな。でも、泣いてるよりはいい! 不肖、ハス・ブレッデが、魔術師様を甘やかして進ぜましょう!

 頭をなでなでして、あやすみたいに背中を叩いてあげた。そうしたら、満足そうなため息が聞こえて、「……凄く落ち着きます」なんて、言われた。癒しを得る相手、俺なんかで良いんですかね……。カムロさんがそれでいいなら、何も言うことはないですが。

「……男性も女性も、触られるのが苦手だったんですけど、ハス君は平気です」

 さすがにちょっと重たいけど、俺も全然平気ですよ。カムロさんにくっつかれるの。

 あー、人肌ってあったかい。じんわりと人恋しい気分になってきたぞ。カムロさんをきゅっと抱き締めて、今度は背中を撫でてあげた。うん。なんかこうしてると気持ちいいぞ。クラさんと再会の抱擁をしたときみたいな安心感がある。

「そうなんですか。こんなに甘えん坊なのに、苦手なんですか。カムロさんみたいな超美形なら、選り取り見取りだろうから経験豊富かと思いましたよ。色気凄いし」

 昨日の、あの爆発するような感じの色気は百戦錬磨っぽい。

「それは偏見です。割と幼い頃から、嫌らしい目で見られたり襲われそうになっていたので、生理的にほぼ受け付けないですし、全く信用していませんでしたよ」

 おっふ。壮絶な過去がおありになられましたか。それなのに、選り取り見取りとか言ったり思ったりしてごめんなさいすみません! すんごい偏見でしたああ!

「この屋敷を購入した時もそうでした。しつこく勧められて、試しに雇った使用人の中にそういう者がいました。無断で寝室に入り込もうとしたり、一方的に理想を押し付けられて……とても、窮屈でした。……食事だって、少しも美味しくなくて……。だからクビにしたんですよ。もう、近付いてくる人間は誰も信じられなくなりました」

 うわぁ。人間不信になるよなそれ。以前から襲われかけたりしてるのに、お屋敷でまでそんな目に遭ったらもうクビ一択だな! 無条件で納得するぞ!

「そ、それは、確かに苦手にもなるなぁ。それじゃ、俺だけですか? こんなくっ付いてくるの」

 何気なく聞いてみると、カムロさんが「そうですよ……。貴方だけが、特別です」なんて、内緒話してるみたいに耳元で囁いた。

 とろりと甘くて、とてもいい声で。





 ――ちょっと、ぞくっとした。嫌な感じじゃない方のだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

​転生したら最強辺境伯に拾われました

マンスーン
BL
現代日本人・東堂裕太が目を覚ますと、そこは異世界。クズな婚約者に魔力を限界まで搾取され、ボロボロになって森に捨てられる悲惨な青年・ルカに転生していた。 ​死を覚悟した裕太だったが、そんな彼を拾い上げたのは、帝国最強の武力を誇り「氷の死神」と恐れられる辺境伯・ラーク。

完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?

七角
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。 その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー? 十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。 転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。 どんでん返しからの甘々ハピエンです。

処理中です...