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本編
28 もう何でもいいですから! 泣かないで下さいうわあああ!
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――超魔術師様から、重ための告白をされた俺。
カムロさんが俺に騎士団へ戻って欲しくないって思っているのは、嫌というほど分かってる。きゅっと抱き締められて、「私と終身雇用契約しませんか」なんて言われたし。あのときのカムロさんはちょっと震えがくるくらい、ブチ飛んでて怖かった。
今さらといえば、今さらなんだよなぁそれ。
俺がカムロさんの立場だったら、きっと同じこと思うんじゃないかな。あんなに言い募ってたくらいだから……、それが相手にとって酷いことでもだ。人間って、そんなに正しい考えばかり出来るもんじゃない。
俺が俺の立場から考えると、えぇ! それはどうなんですか魔術師様! ってなりはするけど。
でも、どうしてかな。なんか、こう、胸の奥がむずむずしている。カムロさんがそういう間違ったことを願ってまで、俺がここに居て欲しいって思ってくれてるのが、おかしな話だけど嬉しい。なんでだろうな?
「ハス君にとってはとても、辛いことだったんですよね」
「そう、ですね。確かに辛かったですよ。はは……」
涙鼻水お化けな姿を晒してしまった恥ずかしさがぶり返して、ちょっと苦笑いしてしまった。度々夢に見てうなされて、証言したら酷いガチ泣きまでしたんだから、そりゃあもう、辛いことだったのは確かだ。でも、そういう弱い部分をカムロさんには見せていなかった。
最初のあの、酒場での愚痴くらいだな。
お屋敷で暮らすうちに、家族みたいに身近な人だと思うようになったけど、それでも違うんだ。あくまでも、この人は雇い主で、他人で、俺が心底、寄り掛かっていい人じゃない。居心地よくすごしてもらいたいし、美味しい物を食べさせてあげたいっていつも思ってたけど、それとこれとは違うんだから。
俺は、どこかで線を引いて、一歩下がった位置に立っていた。
辛くても、辛いですなんて言えるワケないじゃないか。こんなに世話になって甘やかしてくれるこの人に……、余計な心配なんて、させたくなかったし。雇用主にそんなこと言う家政夫なんて、ダメだろう。それこそクビにされたって文句なんか言えない行為だと思う。
「――それなのに私は、貴方を困らせてしまいました」
紫の瞳をうるっとさせて、カムロさんが唇を噛み締めた。えっちょっとまってくださいよ、泣くの? ここで泣くんですか? あやすの大変だから泣かないで下さいよ? 機嫌を取るためにおやつをあげたいけど、さすがにもう夜遅いし!
……って! そうか! 午後のカムロさんが大人しかったのは、これが理由か! 午前中の騒動が落ち着いて、午後になって書斎に戻ってから冷静に考え始めちゃったんだろうなぁ……。
「今になってやっと……、私は、貴方にとって非常に酷いことを望んでいたと気付きました。あまりにも愚かでした。こんな私が王国筆頭魔術師だなんて、いい笑い種になりますね」
それ、笑ったらダメなヤツだと思う!
ソファーから半分飛び上がる勢いで慌てて「いやいやいやいや! 誰がそんな恐ろしいことするんですか! しませんよっ!」って言うと、「こんな人間だと知れば、きっとそうなります」なんて返されて、激痛に耐えてるみたいに苦しそうな顔をした。
そんなカムロさんを見ていると、俺まで苦しくなるからやめて欲しい!
ニコニコ無邪気だったり、ツンツンしてる方がいい。たまにブチ飛んだことしてくるけど、それはそれ。この人にはそんな顔をして欲しくない。何か元気付けられる言葉を掛けたいけど、下手に言うと暴発しそうだ。どうしたもんかな。
「自分勝手でごめんなさい……。こんな人間、軽蔑しますよね」
ああっ! うだうだ考えてるうちに、カムロさんに「ごめんなさい」って言われてしまったぞ! あああああもう! そんな雨に打たれてびしょ濡れになった子犬みたいなしょんぼりあわれな顔をしないでくれえぇ!
「え、いや、あの、ご、ごめんなさい、って、い、いや、そんなこと」
何をどう言っていいか分からないけど、とにかくそんなのいいですってば! 上手く言葉に出来なくてめちゃくちゃ動揺した俺は、思わずカムロさんの頭をなでなでしてしまった。
俺のなでなでに驚いて、カムロさんが小さく「あっ」と、声を上げて瞬きした瞬間――長い睫毛から涙の雫が散ったのを、見てしまった! うわああ、そんなとこまで綺麗とか詐欺だ! っていうか、泣く寸前だったのかっ!
「なっ、泣かないで下さいよ! ああもう、なんで泣くんですか!」
「泣きたくて泣いてる訳じゃ、ありませんっ……」
カムロさんの泣き濡れ顔は超絶儚げすぎて、こっちが悪くないのに嵐みたいな勢いで罪悪感を煽りまくってくれた。卑小な家政夫は吹き飛ばされそうですよ! マジで勘弁してください! 泣いただけで被害甚大であります!
――もう何でもいいですから! 泣かないで下さいうわあああ!
カムロさんが俺に騎士団へ戻って欲しくないって思っているのは、嫌というほど分かってる。きゅっと抱き締められて、「私と終身雇用契約しませんか」なんて言われたし。あのときのカムロさんはちょっと震えがくるくらい、ブチ飛んでて怖かった。
今さらといえば、今さらなんだよなぁそれ。
俺がカムロさんの立場だったら、きっと同じこと思うんじゃないかな。あんなに言い募ってたくらいだから……、それが相手にとって酷いことでもだ。人間って、そんなに正しい考えばかり出来るもんじゃない。
俺が俺の立場から考えると、えぇ! それはどうなんですか魔術師様! ってなりはするけど。
でも、どうしてかな。なんか、こう、胸の奥がむずむずしている。カムロさんがそういう間違ったことを願ってまで、俺がここに居て欲しいって思ってくれてるのが、おかしな話だけど嬉しい。なんでだろうな?
「ハス君にとってはとても、辛いことだったんですよね」
「そう、ですね。確かに辛かったですよ。はは……」
涙鼻水お化けな姿を晒してしまった恥ずかしさがぶり返して、ちょっと苦笑いしてしまった。度々夢に見てうなされて、証言したら酷いガチ泣きまでしたんだから、そりゃあもう、辛いことだったのは確かだ。でも、そういう弱い部分をカムロさんには見せていなかった。
最初のあの、酒場での愚痴くらいだな。
お屋敷で暮らすうちに、家族みたいに身近な人だと思うようになったけど、それでも違うんだ。あくまでも、この人は雇い主で、他人で、俺が心底、寄り掛かっていい人じゃない。居心地よくすごしてもらいたいし、美味しい物を食べさせてあげたいっていつも思ってたけど、それとこれとは違うんだから。
俺は、どこかで線を引いて、一歩下がった位置に立っていた。
辛くても、辛いですなんて言えるワケないじゃないか。こんなに世話になって甘やかしてくれるこの人に……、余計な心配なんて、させたくなかったし。雇用主にそんなこと言う家政夫なんて、ダメだろう。それこそクビにされたって文句なんか言えない行為だと思う。
「――それなのに私は、貴方を困らせてしまいました」
紫の瞳をうるっとさせて、カムロさんが唇を噛み締めた。えっちょっとまってくださいよ、泣くの? ここで泣くんですか? あやすの大変だから泣かないで下さいよ? 機嫌を取るためにおやつをあげたいけど、さすがにもう夜遅いし!
……って! そうか! 午後のカムロさんが大人しかったのは、これが理由か! 午前中の騒動が落ち着いて、午後になって書斎に戻ってから冷静に考え始めちゃったんだろうなぁ……。
「今になってやっと……、私は、貴方にとって非常に酷いことを望んでいたと気付きました。あまりにも愚かでした。こんな私が王国筆頭魔術師だなんて、いい笑い種になりますね」
それ、笑ったらダメなヤツだと思う!
ソファーから半分飛び上がる勢いで慌てて「いやいやいやいや! 誰がそんな恐ろしいことするんですか! しませんよっ!」って言うと、「こんな人間だと知れば、きっとそうなります」なんて返されて、激痛に耐えてるみたいに苦しそうな顔をした。
そんなカムロさんを見ていると、俺まで苦しくなるからやめて欲しい!
ニコニコ無邪気だったり、ツンツンしてる方がいい。たまにブチ飛んだことしてくるけど、それはそれ。この人にはそんな顔をして欲しくない。何か元気付けられる言葉を掛けたいけど、下手に言うと暴発しそうだ。どうしたもんかな。
「自分勝手でごめんなさい……。こんな人間、軽蔑しますよね」
ああっ! うだうだ考えてるうちに、カムロさんに「ごめんなさい」って言われてしまったぞ! あああああもう! そんな雨に打たれてびしょ濡れになった子犬みたいなしょんぼりあわれな顔をしないでくれえぇ!
「え、いや、あの、ご、ごめんなさい、って、い、いや、そんなこと」
何をどう言っていいか分からないけど、とにかくそんなのいいですってば! 上手く言葉に出来なくてめちゃくちゃ動揺した俺は、思わずカムロさんの頭をなでなでしてしまった。
俺のなでなでに驚いて、カムロさんが小さく「あっ」と、声を上げて瞬きした瞬間――長い睫毛から涙の雫が散ったのを、見てしまった! うわああ、そんなとこまで綺麗とか詐欺だ! っていうか、泣く寸前だったのかっ!
「なっ、泣かないで下さいよ! ああもう、なんで泣くんですか!」
「泣きたくて泣いてる訳じゃ、ありませんっ……」
カムロさんの泣き濡れ顔は超絶儚げすぎて、こっちが悪くないのに嵐みたいな勢いで罪悪感を煽りまくってくれた。卑小な家政夫は吹き飛ばされそうですよ! マジで勘弁してください! 泣いただけで被害甚大であります!
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