モンスターコア

ざっくん

文字の大きさ
69 / 94
何でもありな体育祭!

59話 ガチめに理不尽な進化を遂げた”レイ”

しおりを挟む
 今一人の男が、クラスの人物になりすました擬態者の後を静かにおっていた。
 彼の名はイドラ。自信に溢れた頭の良い馬鹿である。それは、周知され彼も自覚するところではあるが治す気は無い。

 見つけた…

 彼は擬態者が建物の影に入って行くのを見た。そして、相手の仕草から直感的にそこが目的地である事を確信した。

 物陰から奥を確認すると二人の男子生徒が密談をしていた。

「エース、…に気づい……居たか?」

「………」

「…、さすが…が警戒するだけ……。今の……おこう」

「……」

 イドラは口の動きで会話を読み取ろうとする。しかし、練度が低く断片的にしか読み取ることが出来ない。擬態者にいたっては背を向けていて口元を見ることができない。
 ならばやる事は一つ

「ヒャッハー!俺の大切なクラスメイトは何処だぁ!?」

 ガイスは真っ正面から突撃した。

 数は2!伏兵なし!速攻で潰す!

「んなっ!…ッ!」

 擬態者は気付き振り返る。手頃なナイフを形成して応戦するが、動作が間に合わず糸で縛り上げられた。

「次はお前だ!」

 ガイスは『糸魔法』で生成した硬糸五本でもう一人を襲う。

ガキン!

 しかし、彼の糸は全く同じ攻撃によって相殺された。そして、糸は大きな金属音を響かせ弾き返される。

 弾き返したのは受験時にバトルロワイヤルで2位を取ったシルバである。四角いメガネを掛け、黒い髪をしたいかにもな堅物である。

「(前は糸など使っていなかった。まさか!)おま…貴方は、一度見ただけの私の技を、ふざけるな!?」

 シルバは戦闘中にも関わらず動揺と怒りが込み上げてくる。
 

「やっぱ、お前か!だが、所詮は二番手、俺の敵じゃねえぜ!」

 イドラは糸を使い再び攻撃を仕掛ける。

「お前!今、わたしではなく、武器いとで判断したな!どれだけ、私を惨めにする気だ!?」

 シルバは糸を大きく張り面で攻撃を仕掛ける。両手の指に繋がれた十本の糸を格子状にクロスし前方に押し上げる。

「はっ、だから二番なんだぜ」

 イドラは糸を五本だけ壁に突き刺し攻撃を防いだ。

「身体魔法(拡張型)と糸魔法、あと生成魔法で本体フィンガーアーマーと五分割された糸巻きボビン。実質二つの魔法でこれほどの汎用性と射程、感謝する。俺はまた一歩最強に近づいた。」

 彼はニヤリと笑った。

「もう勝った気でいるのか?」

 シルバは糸を手元に戻し体勢を立て直す。

「そうだ、もう勝った。使えば分かるこの技は補助型だ。圧倒的に攻撃力が足りない。使えてもカウンターが限度だ。で、さっきやった様に俺は片手で糸による攻撃それを防げる。さぁ、空いた片手で何が出来る!」

 イドラは得意げに語り、左手を振り下す。すると彼の手から炎氷えんひょうのナイフが発射された。

「…ッ!」

 シルバは咄嗟に糸で防御しする。そして、片手をポケットに入れた。

 何かする気だ?が、その前に倒す!

 イドラがナイフを二つ放つ。そして、それはシルバの両肩に刺った。

 すぐ治る程度の傷とは言え、やりすぎた?…ッ!

 彼が戦闘の惨状を確認している時、強烈な悪寒がした。自身の直感が”すぐに逃げろ”と危険信号を発する。

「お前!何をした!」

 彼はシルバの胸ぐらを掴み問いただした。

「貴方は私のことを”二番”と言いましたね。そうですとも私は二番です、クラスで。世の中には居るんですよ。本当の理不尽が。貴方の焦る顔が見れてスカッとしましたよ」

 彼はニヤリと笑い、ポケットからカードを取り出す。

 クソッ!何をした!?言い振りからして援軍だろうが、なんかヤベェ…コイツらは諦める。

 しかし、イドラがそうこう悩んでいる間に直感が発する”逃げろ”の信号が“迎撃準備“へと変わっていた。

「…クッ!」

 彼は武器を生成させながらその場で素早くニ回転する。
 一度目は短いナイフ、二度目は簡素な片手剣が無数に生成され遠心力と『射出魔法』で壁や地面に突き刺さった。

「……」

 彼は両手持ちのフランベルジュを形成した。そして、後ろに振り向き上を見上げた。
 そこには、昆虫の様な四枚羽と赤く大きな複眼を持つ少女の姿があった。そして、彼女の手に弓と矢が握られていた。

「あれっ?僕なんかやっちゃった?バレる要素あった?」

 少女は不思議そうに尋ねる。

「俺が凄いだけだ。気にする事はねぇぜ!」

 イドラは壁に向かって走った。

 手の届かない上空から一方的に射撃。確かに理不尽だ。だが、地の利はこっち側だ。剣を足場に…先手必勝!

「僕…、ちょ…待っ…!」

 少女は慌てた様子で上昇する。そして、彼女は近づいて来るイドラに向けて弓を引く。

 対して、イドラは矢を躱しながら壁を伝いに少女に迫る。

 ここまで、追い詰められるのは初めてか?すごい焦りようだぜ?

「…ッ!?」

 イドラは空中で体を捩り何かの攻撃を躱した。彼の体は敵による攻撃をし反射的に動いたのである。しかし、当の本人は自身の行動に理解が追いつかなかった。

 体が勝手に…!?どうしてだ?何かされ…ッ!

 彼の思考が途中で止まった。見えない力で捕らえられ体が空中に固定されたのである。

「……!」

 彼は振り解こうと力一杯に踠く。しかし、いくら力もうと指一本動かせなかったのである。

 やられた!この感覚は、固定…いや、念力か。まんまと誘い出されたわけだ。何人隠れていたんだ?

「伏兵など居ませんよ!」

 シルバが立ち上がり静止するイドラの背に向かって声をかけた。

 この状況でブラフか?何の意味がある?

 イドラは彼の言葉を信じなかった。

「その魔法が複数の人間が試行したものと考えているのでしょう。私も初めは不正を疑いました。彼女の眼は複眼です。ハハ、顔が見れないのが残念です」

 シルバは満足そうに壁に体を預けた。

「名乗り会おうよ。僕はレイ。これ、戦闘の前にやる事にしてたんだけど。君がせっかちでさ、こんなふうになっちゃった。でも、これはこれで心に来るものがあるよ。支配してる感じで(やっぱり後に戻そうかな?)」

 レイはイドラに近づくと舐め回す様に彼の周囲を飛ぶ。

 そうか、複眼と魔眼の組み合わせ…確かに、これは理不尽出ぜ。攻略のしがいがある。あと、口動かせねぇ

 イドラは名乗る事が出来なかった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...