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vs秘密結社クロノス
72話 身に覚えのない恨み
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「やあやあ、救護班が来たよー。コアがぶっ壊れた人とかいないよねー」
シルは壁を破壊してグレーと大男の前に現れた。彼は戦闘不能者を魔法で浮かべ持ち帰ろうとする。それは、黒装束の大男が持ち帰ろうとしたアスズも例外では無かった。
「おい!それは俺の戦利品だ。殺り合う気か?」
大男は触手でアスズを引き戻し、残る三本をシルへと向けた。
彼にとってアスズは死闘を終えて手に入れた良質な素体。それを奪われるとなれば彼も黙いることは出来ない。となれば、待っているのは闘争のみである。
「待って待って、何で争ってるか知らないけど、僕は第三勢力の中立だから!えっとね、実は僕の立場って微妙なんだよね~。学園では前に暴れたし、そっちから見れば学園側。分かるでしょ」
「あ”?それで、どっちの勢力にも喜ばれる。供物を準備中ってわけか」
「そう、当ったり~。だから、預けてみない?君の手駒に運ばせるにしても不安があるでしょ?ちなみに、目標、死傷者0!」
「ククク、アホか?お前は信じてもらえると思ってんのか!?少なくても俺は赤の他人に人間に金を預ける奴は見た事ねぇ。それに、なんだそのおめでたい夢物語は」
大男は触手を一本伸ばし、シルの浮かべたオペレーターの一人を突き刺す。そして、それをシルに向けた。
彼は今貫かれた場所以外にも複数の穴が空いており、頭と体が切り離されている。見開いた目の瞳孔は開いたままで手遅れと言う言葉が相応しい状態であった。
「…ッ!やめて!」
シルは慌てて触手から彼を引き抜いた。彼はそのオペレーターを近くに引き寄せ傷穴を確認する。
「ふぅ、よかったー。七割ってところかな?」
「おい!なんだその態度は!?」
大男は顔を顰める。シルの言葉の意味を理解できなかったのだ。だが、それだけなら食ってかかる気にはならなかった。彼はシルに底知れないものを感じていた。
目の前のマネキンは人の死を目の前に安堵している。全く問題にしていないのだ。
「態度?どう言うこと?」
「じゃあ、アレだ。七割ってのは何だ?」
何の割合だか検討もつかない。思い当たるのは損傷具合であるが、それも目算で一割も無い。
「何の?何のって。再現度だよ記憶の」
「お前まさk…!」
その瞬間、男の顔半分が消し飛んだ。
「…は?」
何をされた!?俺の感知をすり抜けた!?どうやっ…いや、そんなの関係ねぇ!コイツはここで殺す!
彼は元々、漁夫の利を狙う算段であった。しかし、今の攻撃を受けた事でシルは異常さを知り作戦を切り替えた。
攻撃を感知できなかったことは対して珍しくは無い。それくらいはよくあることだ。ただ、問題はマナの質である。精密機械が如き歪みの無さまるで底が知れない。
コイツがいる限り世界を取ることは出来ない。彼はそう確信した。自身の持つ全てを用いてシルの討伐を決行する。しかし、
「う…!」
男は消滅した。何も出来ず、一切のかけらも残さず。
早々に切ろうとした切り札も日の目を見ることは無かった。
「そうそう、言い忘れてたけどドルトンの手駒、君は駆除する」
シルは地面に残った小さな焦げを見つめ、済ました顔をしながら執拗に白い光をぶつけた。
床に穴が開きかけた頃。
「彼は?」
グレーが焦げた床を眺める。不思議なことに彼女は焦る様子がない。味方が手も足も出ず消滅したのに落ち着いている。
「ん?あのクズ?消えたよ文字通り」
「強かった?」
「あれ?そこそこ強いはずだよ。たぶん。ただ僕が強すぎるだけ。あっ、そうそう、この二人は僕のパパとママ、手を出しちゃダメだよ。あのクズみたいなっちゃうからね」
シルはグレーに近づき手元に男女の写真を写し出す。そして、床を指差した。
「あの人、結構いい人ですよ。悪役みたいな態度してても優しい根っこが見え隠れしてる。なんか髪を整えてくれるし」
「彼はね、僕の親を害したの。訳はそれだけ」
「あなたはシル?」
彼女は小さい体でシルを見上げた。
「え?いきなり?ていうか君もか。もしかして、学園ってそこまですごく無い?」
シルの存在を外部の人間に知られている。それは、情報統制がうまくいっていない証拠だ。しかも、基本的にどんな情報でも自由に手に入れることのできる学園内でも表向き隠蔽するほど危険な情報をである。
「シル?」
「そうだけど?」
「死んで!」
「ホワイ!?」
シルはグレーからの急な敵意に不意をつかれてしまった。彼女の精神魔法をまともに受ける。だが、何も起こらなかった。
「あれ?死ね!死になさい!自殺しろ!…何で!?」
グレーが手のひらをシルに向けて何度も叫ぶ。魔法を掛けて命令を繰り返した。しかし、何度やろうとも結果は変わらなかった。
「……」
シルは白い光で棒のような剣を形成してグレーの首を刈った。敵意を向けられたので取り敢えず、と言う感覚である。罪悪感などはない。
ガギン!
「…え!?」
剣が折れた。彼女を傷つけることなくポッキリと。これは全くの予想外である。
本気では無いと言え殺す気で放った一撃だ。確実に首を刎ねたと思っていた。それに、見るからに素人の彼女に出来ることは無いと考えていた。
あれ?おかしくない?
シルは彼女を注視する。
今朝に自分の元を訪れた他の四人であれば隠蔽性の高い黒装束の上からでも思い返すだけで大体のことは感じ取ることができた。なのにどうしてか、彼女の正体が全く分からない。
格下だと思ってよく見て無かったけど、なんか不気味…
「お互い、有効打ないみたいだし、お互い無干渉で…ッ!」
彼は背後に不穏な気配を感じ距離を取る。それは、壁にめり込まんばかりの勢いであった。
しかし、気配を感じた。は適当ではない。正しくはその場だけ何も感じ取れなかったのである。
今の何!?不可視の攻撃!?室内じゃ無かったら危なかった。いや…
「……」
透明で、無音、感知に引っかからず、意思を飛ばさない。されど確実に奴は存在する。正体は全く見えてこないが、知能の高い生物であることは確かである。
現に奴はグレーとシルの間に立っている。
人…かな?
シルは自身の感知能力を補正しアップグレードする。そのおかげで、奴の輪郭を知覚し始めた。
シルエットは青年のようである。全身タイツにフルフェイスのヘルムを身につけている。だが、グレーのような底知れなさは感じない。
「不可視のの攻撃…厄介だけど。感知出来る。大したことないね」
白い光で全身を武装する。手や肘に刃を生やし、背中には後光のような盾を浮かべた。
君は殺す。僕はまだ君が人だと分かってないよ。だから、安心して来るばいい。剣を突き刺してやる!
シルは生まれて初めて明確な殺意を持った。彼は今まで命の危機に瀕したことがなかった。自然公園での一件でもあるいみ死にはしない事を確信していた。
しかし、今回の敵は違う。シルを敵と見定めて暗殺者のように命を狙う。油断すると狩られかねないほどの能力を持つ。それと、勘ではあるが恨みのようなものを感じる。
シルは攻撃に透明人間の攻撃にカウンターを合わせる。予定だった。
シルの胸に黒いヒビが入る。ヒビは強度関係なく広がり奧の核を傷つけた。
「…ッ!」
読まれた!?いや、それどころじゃない!
空間に作られたヒビから逃れるべく、全力で飛び退く。
シルは理解を遥かに超える現象に恐怖を感じる。敵は正体不明どころではない。異常である。
奴は演技を見抜きカウンターにカウンターを合わせたのみならず、世界に干渉する魔法を扱う。さらに偶然ではなく明確な意志を持って急所を的確に突いてきた。
この瞬間から、彼は逃げて生き延びることに全ての力を注いだ。しかし、
………もしかして、僕の取扱説明書でも出回っている?
シルは愕然とする。透明人間は追撃を仕掛けることなく、出入り口となる穴の前に立ち塞がった。
さらに、驚愕し立ち止まった瞬間に壁の穴が修復された。しかも、元の壁よりも強硬度である。
「僕に勝つつもり?身の程を弁えてる?」
シルは大量に水を生成した。
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「おい!それは俺の戦利品だ。殺り合う気か?」
大男は触手でアスズを引き戻し、残る三本をシルへと向けた。
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大男は触手を一本伸ばし、シルの浮かべたオペレーターの一人を突き刺す。そして、それをシルに向けた。
彼は今貫かれた場所以外にも複数の穴が空いており、頭と体が切り離されている。見開いた目の瞳孔は開いたままで手遅れと言う言葉が相応しい状態であった。
「…ッ!やめて!」
シルは慌てて触手から彼を引き抜いた。彼はそのオペレーターを近くに引き寄せ傷穴を確認する。
「ふぅ、よかったー。七割ってところかな?」
「おい!なんだその態度は!?」
大男は顔を顰める。シルの言葉の意味を理解できなかったのだ。だが、それだけなら食ってかかる気にはならなかった。彼はシルに底知れないものを感じていた。
目の前のマネキンは人の死を目の前に安堵している。全く問題にしていないのだ。
「態度?どう言うこと?」
「じゃあ、アレだ。七割ってのは何だ?」
何の割合だか検討もつかない。思い当たるのは損傷具合であるが、それも目算で一割も無い。
「何の?何のって。再現度だよ記憶の」
「お前まさk…!」
その瞬間、男の顔半分が消し飛んだ。
「…は?」
何をされた!?俺の感知をすり抜けた!?どうやっ…いや、そんなの関係ねぇ!コイツはここで殺す!
彼は元々、漁夫の利を狙う算段であった。しかし、今の攻撃を受けた事でシルは異常さを知り作戦を切り替えた。
攻撃を感知できなかったことは対して珍しくは無い。それくらいはよくあることだ。ただ、問題はマナの質である。精密機械が如き歪みの無さまるで底が知れない。
コイツがいる限り世界を取ることは出来ない。彼はそう確信した。自身の持つ全てを用いてシルの討伐を決行する。しかし、
「う…!」
男は消滅した。何も出来ず、一切のかけらも残さず。
早々に切ろうとした切り札も日の目を見ることは無かった。
「そうそう、言い忘れてたけどドルトンの手駒、君は駆除する」
シルは地面に残った小さな焦げを見つめ、済ました顔をしながら執拗に白い光をぶつけた。
床に穴が開きかけた頃。
「彼は?」
グレーが焦げた床を眺める。不思議なことに彼女は焦る様子がない。味方が手も足も出ず消滅したのに落ち着いている。
「ん?あのクズ?消えたよ文字通り」
「強かった?」
「あれ?そこそこ強いはずだよ。たぶん。ただ僕が強すぎるだけ。あっ、そうそう、この二人は僕のパパとママ、手を出しちゃダメだよ。あのクズみたいなっちゃうからね」
シルはグレーに近づき手元に男女の写真を写し出す。そして、床を指差した。
「あの人、結構いい人ですよ。悪役みたいな態度してても優しい根っこが見え隠れしてる。なんか髪を整えてくれるし」
「彼はね、僕の親を害したの。訳はそれだけ」
「あなたはシル?」
彼女は小さい体でシルを見上げた。
「え?いきなり?ていうか君もか。もしかして、学園ってそこまですごく無い?」
シルの存在を外部の人間に知られている。それは、情報統制がうまくいっていない証拠だ。しかも、基本的にどんな情報でも自由に手に入れることのできる学園内でも表向き隠蔽するほど危険な情報をである。
「シル?」
「そうだけど?」
「死んで!」
「ホワイ!?」
シルはグレーからの急な敵意に不意をつかれてしまった。彼女の精神魔法をまともに受ける。だが、何も起こらなかった。
「あれ?死ね!死になさい!自殺しろ!…何で!?」
グレーが手のひらをシルに向けて何度も叫ぶ。魔法を掛けて命令を繰り返した。しかし、何度やろうとも結果は変わらなかった。
「……」
シルは白い光で棒のような剣を形成してグレーの首を刈った。敵意を向けられたので取り敢えず、と言う感覚である。罪悪感などはない。
ガギン!
「…え!?」
剣が折れた。彼女を傷つけることなくポッキリと。これは全くの予想外である。
本気では無いと言え殺す気で放った一撃だ。確実に首を刎ねたと思っていた。それに、見るからに素人の彼女に出来ることは無いと考えていた。
あれ?おかしくない?
シルは彼女を注視する。
今朝に自分の元を訪れた他の四人であれば隠蔽性の高い黒装束の上からでも思い返すだけで大体のことは感じ取ることができた。なのにどうしてか、彼女の正体が全く分からない。
格下だと思ってよく見て無かったけど、なんか不気味…
「お互い、有効打ないみたいだし、お互い無干渉で…ッ!」
彼は背後に不穏な気配を感じ距離を取る。それは、壁にめり込まんばかりの勢いであった。
しかし、気配を感じた。は適当ではない。正しくはその場だけ何も感じ取れなかったのである。
今の何!?不可視の攻撃!?室内じゃ無かったら危なかった。いや…
「……」
透明で、無音、感知に引っかからず、意思を飛ばさない。されど確実に奴は存在する。正体は全く見えてこないが、知能の高い生物であることは確かである。
現に奴はグレーとシルの間に立っている。
人…かな?
シルは自身の感知能力を補正しアップグレードする。そのおかげで、奴の輪郭を知覚し始めた。
シルエットは青年のようである。全身タイツにフルフェイスのヘルムを身につけている。だが、グレーのような底知れなさは感じない。
「不可視のの攻撃…厄介だけど。感知出来る。大したことないね」
白い光で全身を武装する。手や肘に刃を生やし、背中には後光のような盾を浮かべた。
君は殺す。僕はまだ君が人だと分かってないよ。だから、安心して来るばいい。剣を突き刺してやる!
シルは生まれて初めて明確な殺意を持った。彼は今まで命の危機に瀕したことがなかった。自然公園での一件でもあるいみ死にはしない事を確信していた。
しかし、今回の敵は違う。シルを敵と見定めて暗殺者のように命を狙う。油断すると狩られかねないほどの能力を持つ。それと、勘ではあるが恨みのようなものを感じる。
シルは攻撃に透明人間の攻撃にカウンターを合わせる。予定だった。
シルの胸に黒いヒビが入る。ヒビは強度関係なく広がり奧の核を傷つけた。
「…ッ!」
読まれた!?いや、それどころじゃない!
空間に作られたヒビから逃れるべく、全力で飛び退く。
シルは理解を遥かに超える現象に恐怖を感じる。敵は正体不明どころではない。異常である。
奴は演技を見抜きカウンターにカウンターを合わせたのみならず、世界に干渉する魔法を扱う。さらに偶然ではなく明確な意志を持って急所を的確に突いてきた。
この瞬間から、彼は逃げて生き延びることに全ての力を注いだ。しかし、
………もしかして、僕の取扱説明書でも出回っている?
シルは愕然とする。透明人間は追撃を仕掛けることなく、出入り口となる穴の前に立ち塞がった。
さらに、驚愕し立ち止まった瞬間に壁の穴が修復された。しかも、元の壁よりも強硬度である。
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