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喪失
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やはり彼女の頭のネジは数本外れているようだ。ここまでごく当たり前のように話されると自分の方が異常なのではとすら思えてくる。
「どーいうことですか?」
理解できる自信はないが、本人に聞く以外に出来ることはない。
「そのまんまの意味だよ」
雫は相変わらずニコニコしている。
本当にこの笑顔の奥で何を考えているのか想像が出来ない。
いや、自分が相変わらず、人の気持ちが分からないだけなのかもしれないが。
そういう意味では目の前のこの奇天烈な美女と自分は何ら変わりないのかもしれない。
「いや、それが意味分からないって話をしてるんだよ。初めて会った奴に俺にはキミの記憶しかないんだ!って言われて『あ、そーなんだー、運命的だね!』とはならないだろ?」
「そーかなー?」
「いやなんないだろ。何でハテナ浮かべられるの!?」
終始、雫のペースな気がした。
普段変わった人に出会った時は、絶対キャラを作っていると勘繰るところなのだが、この子からはその感じがない。相当本性を隠すのが上手いのかもしれないが。
だからこそ、ペースが掴めない。これが誰かの意図から出来た状況ではないから。
雫の地の性格によって生み出されているから、どこか異常な空気になってしまっている。
雫は自分とは真反対なタイプのようだ。そして、だからこそ苦手なタイプに思える。
良くも悪くも子供のままのようだから。
学生時代のことが、ちらりと頭を過ぎる。
いや、今はそんなことを気にしていても仕方ない。
目の前の美女からなんとかして避難することの方が重要だ。
「まさかとは思うけど、記憶喪失とかで、俺以外の記憶がないって言いたいの?」
「だから、そう言ってるじゃん」
「記憶喪失なんて、すぐに信じられるわけないだろ。てか今も宇宙人の存在並みに信じてないし」
「え、そーなの!?良かった!かなり信じてくれたんだね!」
「何でそーなんの?」
会話のキャッチボールにならない。何でこうも、この子は暴投を投げるんだ。
「第一、俺はキミとは接点を持った事がない。キミが仮に記憶喪失だとしても、俺を知ることは絶対に無いはずなんだよ」
「そーなのかなー?」
「だから何でハテナ浮かべられるの?」
「でも、わたしは陽太のことしか知らないよ?」
「いやだから、それがありえないって言ってんの」
何で分かんないんだよ。
「何の事情あるのか知らないけど、そんな見え透いた嘘言われて関わってこられても迷惑なんで、とりあえず帰っても良いかな?」
気が付けば、辺りは暗くなり始めていた。
これ以上、ここに長居している訳にはいかない。
「え、帰っちゃうの?」
雫が笑顔を引っ込めて、寂しそうにポツリと言う。
なんとなく申し訳ない気持ちになる。
いやでも、こんな得体の知れない子と一緒にいる訳にはいかない。
雫に背中を向けようとしたそのとき、雫が急に目を輝かせ、パンッと手を叩いた。
「あ、そーいうことか!家で話そうってことだね!」
「いや違うけど!?」
何その都合のいい解釈!
自分の心情とは裏腹に、雫はウキウキとした表情を浮かべている。
「家近いの?うわー、陽太の家とか久々だ!あ、でも今は一人暮らしなのか。わたしお邪魔しても大丈夫?」
「いやダメだよ。てか一言も家に来いなんて言ってないからね」
「え、違うの?ちょっとー、期待するようなこと言うとかズルいよ陽太」
「いやお前が勝手に勘違いしたんだけどね!?」
自分があたふたしているのを見て、雫はアハハと腹を抱えて笑っている。
その姿は、どことなくアイツと似ていた、
まさかな.....
仮に雫が本当に記憶喪失だとして、本当に俺のことしか覚えていないのだとしたら、こうやって普通に話せることも夢見ていたのかもしれない。
そんなどうでも良いことを、ふと思った。
わざとらしくため息を吐く。
「しょーがない。ご飯くらい食べるか?」
「え、良いの!?」
「いや俺ん家でじゃないからな。もう暗くなってきてるし、どっかファミレスとかで話だけ聞くよ」
「さっすが陽太!いいカッコするの上手だね!」
「うっさい!」
こうして、ついさっき会っただけの変人極まりない美女とご飯に行くことになった。
このときの自分は知らなかった。
この得体の知れない女の子との出会いが、自分が心の奥底にしまったパンドラの箱を開くことになることに。
「どーいうことですか?」
理解できる自信はないが、本人に聞く以外に出来ることはない。
「そのまんまの意味だよ」
雫は相変わらずニコニコしている。
本当にこの笑顔の奥で何を考えているのか想像が出来ない。
いや、自分が相変わらず、人の気持ちが分からないだけなのかもしれないが。
そういう意味では目の前のこの奇天烈な美女と自分は何ら変わりないのかもしれない。
「いや、それが意味分からないって話をしてるんだよ。初めて会った奴に俺にはキミの記憶しかないんだ!って言われて『あ、そーなんだー、運命的だね!』とはならないだろ?」
「そーかなー?」
「いやなんないだろ。何でハテナ浮かべられるの!?」
終始、雫のペースな気がした。
普段変わった人に出会った時は、絶対キャラを作っていると勘繰るところなのだが、この子からはその感じがない。相当本性を隠すのが上手いのかもしれないが。
だからこそ、ペースが掴めない。これが誰かの意図から出来た状況ではないから。
雫の地の性格によって生み出されているから、どこか異常な空気になってしまっている。
雫は自分とは真反対なタイプのようだ。そして、だからこそ苦手なタイプに思える。
良くも悪くも子供のままのようだから。
学生時代のことが、ちらりと頭を過ぎる。
いや、今はそんなことを気にしていても仕方ない。
目の前の美女からなんとかして避難することの方が重要だ。
「まさかとは思うけど、記憶喪失とかで、俺以外の記憶がないって言いたいの?」
「だから、そう言ってるじゃん」
「記憶喪失なんて、すぐに信じられるわけないだろ。てか今も宇宙人の存在並みに信じてないし」
「え、そーなの!?良かった!かなり信じてくれたんだね!」
「何でそーなんの?」
会話のキャッチボールにならない。何でこうも、この子は暴投を投げるんだ。
「第一、俺はキミとは接点を持った事がない。キミが仮に記憶喪失だとしても、俺を知ることは絶対に無いはずなんだよ」
「そーなのかなー?」
「だから何でハテナ浮かべられるの?」
「でも、わたしは陽太のことしか知らないよ?」
「いやだから、それがありえないって言ってんの」
何で分かんないんだよ。
「何の事情あるのか知らないけど、そんな見え透いた嘘言われて関わってこられても迷惑なんで、とりあえず帰っても良いかな?」
気が付けば、辺りは暗くなり始めていた。
これ以上、ここに長居している訳にはいかない。
「え、帰っちゃうの?」
雫が笑顔を引っ込めて、寂しそうにポツリと言う。
なんとなく申し訳ない気持ちになる。
いやでも、こんな得体の知れない子と一緒にいる訳にはいかない。
雫に背中を向けようとしたそのとき、雫が急に目を輝かせ、パンッと手を叩いた。
「あ、そーいうことか!家で話そうってことだね!」
「いや違うけど!?」
何その都合のいい解釈!
自分の心情とは裏腹に、雫はウキウキとした表情を浮かべている。
「家近いの?うわー、陽太の家とか久々だ!あ、でも今は一人暮らしなのか。わたしお邪魔しても大丈夫?」
「いやダメだよ。てか一言も家に来いなんて言ってないからね」
「え、違うの?ちょっとー、期待するようなこと言うとかズルいよ陽太」
「いやお前が勝手に勘違いしたんだけどね!?」
自分があたふたしているのを見て、雫はアハハと腹を抱えて笑っている。
その姿は、どことなくアイツと似ていた、
まさかな.....
仮に雫が本当に記憶喪失だとして、本当に俺のことしか覚えていないのだとしたら、こうやって普通に話せることも夢見ていたのかもしれない。
そんなどうでも良いことを、ふと思った。
わざとらしくため息を吐く。
「しょーがない。ご飯くらい食べるか?」
「え、良いの!?」
「いや俺ん家でじゃないからな。もう暗くなってきてるし、どっかファミレスとかで話だけ聞くよ」
「さっすが陽太!いいカッコするの上手だね!」
「うっさい!」
こうして、ついさっき会っただけの変人極まりない美女とご飯に行くことになった。
このときの自分は知らなかった。
この得体の知れない女の子との出会いが、自分が心の奥底にしまったパンドラの箱を開くことになることに。
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