6 / 14
喪失
しおりを挟む
やはり彼女の頭のネジは数本外れているようだ。ここまでごく当たり前のように話されると自分の方が異常なのではとすら思えてくる。
「どーいうことですか?」
理解できる自信はないが、本人に聞く以外に出来ることはない。
「そのまんまの意味だよ」
雫は相変わらずニコニコしている。
本当にこの笑顔の奥で何を考えているのか想像が出来ない。
いや、自分が相変わらず、人の気持ちが分からないだけなのかもしれないが。
そういう意味では目の前のこの奇天烈な美女と自分は何ら変わりないのかもしれない。
「いや、それが意味分からないって話をしてるんだよ。初めて会った奴に俺にはキミの記憶しかないんだ!って言われて『あ、そーなんだー、運命的だね!』とはならないだろ?」
「そーかなー?」
「いやなんないだろ。何でハテナ浮かべられるの!?」
終始、雫のペースな気がした。
普段変わった人に出会った時は、絶対キャラを作っていると勘繰るところなのだが、この子からはその感じがない。相当本性を隠すのが上手いのかもしれないが。
だからこそ、ペースが掴めない。これが誰かの意図から出来た状況ではないから。
雫の地の性格によって生み出されているから、どこか異常な空気になってしまっている。
雫は自分とは真反対なタイプのようだ。そして、だからこそ苦手なタイプに思える。
良くも悪くも子供のままのようだから。
学生時代のことが、ちらりと頭を過ぎる。
いや、今はそんなことを気にしていても仕方ない。
目の前の美女からなんとかして避難することの方が重要だ。
「まさかとは思うけど、記憶喪失とかで、俺以外の記憶がないって言いたいの?」
「だから、そう言ってるじゃん」
「記憶喪失なんて、すぐに信じられるわけないだろ。てか今も宇宙人の存在並みに信じてないし」
「え、そーなの!?良かった!かなり信じてくれたんだね!」
「何でそーなんの?」
会話のキャッチボールにならない。何でこうも、この子は暴投を投げるんだ。
「第一、俺はキミとは接点を持った事がない。キミが仮に記憶喪失だとしても、俺を知ることは絶対に無いはずなんだよ」
「そーなのかなー?」
「だから何でハテナ浮かべられるの?」
「でも、わたしは陽太のことしか知らないよ?」
「いやだから、それがありえないって言ってんの」
何で分かんないんだよ。
「何の事情あるのか知らないけど、そんな見え透いた嘘言われて関わってこられても迷惑なんで、とりあえず帰っても良いかな?」
気が付けば、辺りは暗くなり始めていた。
これ以上、ここに長居している訳にはいかない。
「え、帰っちゃうの?」
雫が笑顔を引っ込めて、寂しそうにポツリと言う。
なんとなく申し訳ない気持ちになる。
いやでも、こんな得体の知れない子と一緒にいる訳にはいかない。
雫に背中を向けようとしたそのとき、雫が急に目を輝かせ、パンッと手を叩いた。
「あ、そーいうことか!家で話そうってことだね!」
「いや違うけど!?」
何その都合のいい解釈!
自分の心情とは裏腹に、雫はウキウキとした表情を浮かべている。
「家近いの?うわー、陽太の家とか久々だ!あ、でも今は一人暮らしなのか。わたしお邪魔しても大丈夫?」
「いやダメだよ。てか一言も家に来いなんて言ってないからね」
「え、違うの?ちょっとー、期待するようなこと言うとかズルいよ陽太」
「いやお前が勝手に勘違いしたんだけどね!?」
自分があたふたしているのを見て、雫はアハハと腹を抱えて笑っている。
その姿は、どことなくアイツと似ていた、
まさかな.....
仮に雫が本当に記憶喪失だとして、本当に俺のことしか覚えていないのだとしたら、こうやって普通に話せることも夢見ていたのかもしれない。
そんなどうでも良いことを、ふと思った。
わざとらしくため息を吐く。
「しょーがない。ご飯くらい食べるか?」
「え、良いの!?」
「いや俺ん家でじゃないからな。もう暗くなってきてるし、どっかファミレスとかで話だけ聞くよ」
「さっすが陽太!いいカッコするの上手だね!」
「うっさい!」
こうして、ついさっき会っただけの変人極まりない美女とご飯に行くことになった。
このときの自分は知らなかった。
この得体の知れない女の子との出会いが、自分が心の奥底にしまったパンドラの箱を開くことになることに。
「どーいうことですか?」
理解できる自信はないが、本人に聞く以外に出来ることはない。
「そのまんまの意味だよ」
雫は相変わらずニコニコしている。
本当にこの笑顔の奥で何を考えているのか想像が出来ない。
いや、自分が相変わらず、人の気持ちが分からないだけなのかもしれないが。
そういう意味では目の前のこの奇天烈な美女と自分は何ら変わりないのかもしれない。
「いや、それが意味分からないって話をしてるんだよ。初めて会った奴に俺にはキミの記憶しかないんだ!って言われて『あ、そーなんだー、運命的だね!』とはならないだろ?」
「そーかなー?」
「いやなんないだろ。何でハテナ浮かべられるの!?」
終始、雫のペースな気がした。
普段変わった人に出会った時は、絶対キャラを作っていると勘繰るところなのだが、この子からはその感じがない。相当本性を隠すのが上手いのかもしれないが。
だからこそ、ペースが掴めない。これが誰かの意図から出来た状況ではないから。
雫の地の性格によって生み出されているから、どこか異常な空気になってしまっている。
雫は自分とは真反対なタイプのようだ。そして、だからこそ苦手なタイプに思える。
良くも悪くも子供のままのようだから。
学生時代のことが、ちらりと頭を過ぎる。
いや、今はそんなことを気にしていても仕方ない。
目の前の美女からなんとかして避難することの方が重要だ。
「まさかとは思うけど、記憶喪失とかで、俺以外の記憶がないって言いたいの?」
「だから、そう言ってるじゃん」
「記憶喪失なんて、すぐに信じられるわけないだろ。てか今も宇宙人の存在並みに信じてないし」
「え、そーなの!?良かった!かなり信じてくれたんだね!」
「何でそーなんの?」
会話のキャッチボールにならない。何でこうも、この子は暴投を投げるんだ。
「第一、俺はキミとは接点を持った事がない。キミが仮に記憶喪失だとしても、俺を知ることは絶対に無いはずなんだよ」
「そーなのかなー?」
「だから何でハテナ浮かべられるの?」
「でも、わたしは陽太のことしか知らないよ?」
「いやだから、それがありえないって言ってんの」
何で分かんないんだよ。
「何の事情あるのか知らないけど、そんな見え透いた嘘言われて関わってこられても迷惑なんで、とりあえず帰っても良いかな?」
気が付けば、辺りは暗くなり始めていた。
これ以上、ここに長居している訳にはいかない。
「え、帰っちゃうの?」
雫が笑顔を引っ込めて、寂しそうにポツリと言う。
なんとなく申し訳ない気持ちになる。
いやでも、こんな得体の知れない子と一緒にいる訳にはいかない。
雫に背中を向けようとしたそのとき、雫が急に目を輝かせ、パンッと手を叩いた。
「あ、そーいうことか!家で話そうってことだね!」
「いや違うけど!?」
何その都合のいい解釈!
自分の心情とは裏腹に、雫はウキウキとした表情を浮かべている。
「家近いの?うわー、陽太の家とか久々だ!あ、でも今は一人暮らしなのか。わたしお邪魔しても大丈夫?」
「いやダメだよ。てか一言も家に来いなんて言ってないからね」
「え、違うの?ちょっとー、期待するようなこと言うとかズルいよ陽太」
「いやお前が勝手に勘違いしたんだけどね!?」
自分があたふたしているのを見て、雫はアハハと腹を抱えて笑っている。
その姿は、どことなくアイツと似ていた、
まさかな.....
仮に雫が本当に記憶喪失だとして、本当に俺のことしか覚えていないのだとしたら、こうやって普通に話せることも夢見ていたのかもしれない。
そんなどうでも良いことを、ふと思った。
わざとらしくため息を吐く。
「しょーがない。ご飯くらい食べるか?」
「え、良いの!?」
「いや俺ん家でじゃないからな。もう暗くなってきてるし、どっかファミレスとかで話だけ聞くよ」
「さっすが陽太!いいカッコするの上手だね!」
「うっさい!」
こうして、ついさっき会っただけの変人極まりない美女とご飯に行くことになった。
このときの自分は知らなかった。
この得体の知れない女の子との出会いが、自分が心の奥底にしまったパンドラの箱を開くことになることに。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ずっと一緒にいようね
仏白目
恋愛
あるいつもと同じ朝 おれは朝食のパンをかじりながらスマホでニュースの記事に目をとおしてた
「ねえ 生まれ変わっても私と結婚する?」
「ああ もちろんだよ」
「ふふっ 正直に言っていいんだよ?」
「えっ、まぁなぁ 同じ事繰り返すのもなんだし・・
次は別のひとがいいかも お前もそうだろ? なぁ?」
言いながらスマホの画面から視線を妻に向けると
「・・・・・」
失意の顔をした 妻と目が合った
「え・・・?」
「・・・・ 」
*作者ご都合主義の世界観のフィクションです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる