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サロモンのストーカー……いえ、サロモンを尋ねて来た女の子の名はキャサリン・ゴールドストーンというそうだ。
ゆるく波打った薄紅色の髪に、きらめくサンストーンのようなオレンジ色の瞳が可愛い15歳の女の子。
ちなみに私が18歳でサロモンが17歳なので、私たちより少し年下だ。
キャサリンの聖獣は白く長い毛を持つ少し大きめな猫。名前はポヨ。
そんなキャサリンはサロモンに一目惚れをしたらしい。
サロモンもお母様似で中性的な顔をしているものね。姉の贔屓目もあるかもしれないけれど、綺麗な顔だと思う。
……だからまぁ、一目惚れをするのは分からなくもない、かもしれない。ただ、まさかそれで家まで押しかけてくるとは。
恋する乙女の行動力をなめてはいけない、ということだろうか。
そして、そんな主に似たのかポヨもどうやら一目惚れをしたらしい。まさかのモルンに。
さっきまで私になでられていたモルンだったが、不審者が去ったあたりでベッドに戻っていったのだ。
モルンのその様子を、じっと真ん丸の目で見ていたポヨは、モルンがベッドに寝そべったところでキャサリンの側を離れてモルンの脇腹にそっと寄り添った。
モルンの背に飛び乗ったネポスから、ちくりと小さなキックが入ったけれど、ポヨはそんなことお構いなし。
ゴロゴロと爆音で喉を鳴らしながらモルンに貼り付いている。それはもうぺったりと。
モルンのほうは我関せずといった様子で、ポヨを一瞥することもない。
なんとも不思議な光景だけれど、揉め事が起こるわけではないのでそっとしておいてもいい……のかな?
傍から見ていたらとてもかわいいし。
「皆さまはデザーウッド王国出身ですのね。……デザーウッド」
押しかけて来たキャサリンをさくっと追い返すのもなんだか悪い気がするし、ということで我々と彼女を含めた五人でティータイムとなった。
本日のお菓子はイヴォン特製のストロベリータルトである。とても美味しい。
「四人ともデザーウッド出身。俺とリゼット姉さんは完全に国を捨てて出てきたんだけどね」
「あら、そうなのですか?」
「そう。ちょっと色々あって」
「……と、いうことは、皆さま平民ということ」
「そういうことになるね。ゴールドストーンってことは、キャサリンは公爵令嬢かな」
「あ、ええ、まあ」
一人で押しかけて来ていい人じゃなかったのでは? まさかの公爵令嬢。
「ではキャサリン様とお呼びしたほうがいいのでしょうか?」
私がそう問いかけると、彼女はとても寂しそうな顔をした。
「いいえ……いいえ、わたくしのことはキャサリンと呼んでくださって構いませんわ」
そういうわけにはいかないのでは? 公爵令嬢なのに。
「だって、わたくしは皆さまと同じ、冒険者ですもの!」
「公爵令嬢が? 冒険者? 大丈夫?」
サロモンが矢継ぎ早に質問を飛ばした。
「現状は公爵令嬢ですわ。しかし近いうちに家を追い出されるでしょう」
「追い出される?」
首を傾げる我々四人を見たキャサリンは、深く頷いて見せる。
「わたくし、婚約者がいるのですけれど、その婚約者に恋人がいますの。婚約者はその恋人と結婚するために、婚約者とその取り巻きたちとで共謀し、わたくしに濡れ衣を着せて公爵家を没落に追い込もうと画策しているのですわ」
「とんでもない話が出てきたわね」
思わず口を挟んでしまった。
「わたくし、家族が大切ですの」
「……え、だから」
「だから、婚約者と取り巻きが面倒なことを起こす前にぐっちゃぐちゃにしてやるつもりで冒険者になったのですわ!」
とんでもないじゃじゃ馬かもしれない。
「……でも、本当はわたくしも、家も国も全て捨てたほうが、家族のためになったのかもしれないとは、思っていて……だから、お二人の勇気が羨ましいですわ」
「いやいや、俺たちは大切な家族である母親を病気で失って、さらに父親を憎んで捨てたんだから。大切な家族を守るために行動したキャサリンの勇気も大したもんだと思うよ」
サロモンが微笑みながらそう言うと、キャサリンの頬が薔薇色に染まった。完全に落ちた顔をしている。恋に落ちている。サロモンったら罪作りな男だこと。
「でも、冒険者になっただけで、ぐっちゃぐちゃになるのかしら?」
ふと私が首を傾げると、頬を薔薇色に染めてぼんやりしていたキャサリンが我に返った。
「わたくしの婚約者は侯爵家の男なのですが、そちらの侯爵家は職を持つ女は嫁にしないというしきたりがあるのですわ。ですから私が冒険者登録をした時点で結婚相手にふさわしくなくなる。現に彼のお母様である侯爵夫人が婚約解消の話を進めようとしているところですわ」
「じゃあ、丸く収まりそうなのかしら?」
「婚約の話さえなくなれば濡れ衣を着せられることもないでしょうし、大丈夫だと思いますわ。それにこのことは王子殿下にも話を通して……」
キャサリンが動きを止めた。
そしてサロモン、私、イヴォン、ティーモを見回して、己の胸の前でぱちんと手を叩く。
「思い出しましたわ! さっき外で見た不審者! あれは確か、デザーウッド王国の王族ですわ!」
「デザーウッドの王族?」
「どこかで見た顔だとは思っていましたの! そうですわ、きっとそう。数年前近隣諸国の交流会で見た……デザーウッド王国の、王子、弟のほう……第二王子殿下ですわ!」
やっと思い出せたらしいキャサリンのスッキリした顔とは裏腹に、我々四人は完全に青ざめてしまった。
なぜよりによって第二王子がこの国に!?
「俺たち、その第二王子から逃げてきたみたいなもんなのに!」
「ええ!?」
ゆるく波打った薄紅色の髪に、きらめくサンストーンのようなオレンジ色の瞳が可愛い15歳の女の子。
ちなみに私が18歳でサロモンが17歳なので、私たちより少し年下だ。
キャサリンの聖獣は白く長い毛を持つ少し大きめな猫。名前はポヨ。
そんなキャサリンはサロモンに一目惚れをしたらしい。
サロモンもお母様似で中性的な顔をしているものね。姉の贔屓目もあるかもしれないけれど、綺麗な顔だと思う。
……だからまぁ、一目惚れをするのは分からなくもない、かもしれない。ただ、まさかそれで家まで押しかけてくるとは。
恋する乙女の行動力をなめてはいけない、ということだろうか。
そして、そんな主に似たのかポヨもどうやら一目惚れをしたらしい。まさかのモルンに。
さっきまで私になでられていたモルンだったが、不審者が去ったあたりでベッドに戻っていったのだ。
モルンのその様子を、じっと真ん丸の目で見ていたポヨは、モルンがベッドに寝そべったところでキャサリンの側を離れてモルンの脇腹にそっと寄り添った。
モルンの背に飛び乗ったネポスから、ちくりと小さなキックが入ったけれど、ポヨはそんなことお構いなし。
ゴロゴロと爆音で喉を鳴らしながらモルンに貼り付いている。それはもうぺったりと。
モルンのほうは我関せずといった様子で、ポヨを一瞥することもない。
なんとも不思議な光景だけれど、揉め事が起こるわけではないのでそっとしておいてもいい……のかな?
傍から見ていたらとてもかわいいし。
「皆さまはデザーウッド王国出身ですのね。……デザーウッド」
押しかけて来たキャサリンをさくっと追い返すのもなんだか悪い気がするし、ということで我々と彼女を含めた五人でティータイムとなった。
本日のお菓子はイヴォン特製のストロベリータルトである。とても美味しい。
「四人ともデザーウッド出身。俺とリゼット姉さんは完全に国を捨てて出てきたんだけどね」
「あら、そうなのですか?」
「そう。ちょっと色々あって」
「……と、いうことは、皆さま平民ということ」
「そういうことになるね。ゴールドストーンってことは、キャサリンは公爵令嬢かな」
「あ、ええ、まあ」
一人で押しかけて来ていい人じゃなかったのでは? まさかの公爵令嬢。
「ではキャサリン様とお呼びしたほうがいいのでしょうか?」
私がそう問いかけると、彼女はとても寂しそうな顔をした。
「いいえ……いいえ、わたくしのことはキャサリンと呼んでくださって構いませんわ」
そういうわけにはいかないのでは? 公爵令嬢なのに。
「だって、わたくしは皆さまと同じ、冒険者ですもの!」
「公爵令嬢が? 冒険者? 大丈夫?」
サロモンが矢継ぎ早に質問を飛ばした。
「現状は公爵令嬢ですわ。しかし近いうちに家を追い出されるでしょう」
「追い出される?」
首を傾げる我々四人を見たキャサリンは、深く頷いて見せる。
「わたくし、婚約者がいるのですけれど、その婚約者に恋人がいますの。婚約者はその恋人と結婚するために、婚約者とその取り巻きたちとで共謀し、わたくしに濡れ衣を着せて公爵家を没落に追い込もうと画策しているのですわ」
「とんでもない話が出てきたわね」
思わず口を挟んでしまった。
「わたくし、家族が大切ですの」
「……え、だから」
「だから、婚約者と取り巻きが面倒なことを起こす前にぐっちゃぐちゃにしてやるつもりで冒険者になったのですわ!」
とんでもないじゃじゃ馬かもしれない。
「……でも、本当はわたくしも、家も国も全て捨てたほうが、家族のためになったのかもしれないとは、思っていて……だから、お二人の勇気が羨ましいですわ」
「いやいや、俺たちは大切な家族である母親を病気で失って、さらに父親を憎んで捨てたんだから。大切な家族を守るために行動したキャサリンの勇気も大したもんだと思うよ」
サロモンが微笑みながらそう言うと、キャサリンの頬が薔薇色に染まった。完全に落ちた顔をしている。恋に落ちている。サロモンったら罪作りな男だこと。
「でも、冒険者になっただけで、ぐっちゃぐちゃになるのかしら?」
ふと私が首を傾げると、頬を薔薇色に染めてぼんやりしていたキャサリンが我に返った。
「わたくしの婚約者は侯爵家の男なのですが、そちらの侯爵家は職を持つ女は嫁にしないというしきたりがあるのですわ。ですから私が冒険者登録をした時点で結婚相手にふさわしくなくなる。現に彼のお母様である侯爵夫人が婚約解消の話を進めようとしているところですわ」
「じゃあ、丸く収まりそうなのかしら?」
「婚約の話さえなくなれば濡れ衣を着せられることもないでしょうし、大丈夫だと思いますわ。それにこのことは王子殿下にも話を通して……」
キャサリンが動きを止めた。
そしてサロモン、私、イヴォン、ティーモを見回して、己の胸の前でぱちんと手を叩く。
「思い出しましたわ! さっき外で見た不審者! あれは確か、デザーウッド王国の王族ですわ!」
「デザーウッドの王族?」
「どこかで見た顔だとは思っていましたの! そうですわ、きっとそう。数年前近隣諸国の交流会で見た……デザーウッド王国の、王子、弟のほう……第二王子殿下ですわ!」
やっと思い出せたらしいキャサリンのスッキリした顔とは裏腹に、我々四人は完全に青ざめてしまった。
なぜよりによって第二王子がこの国に!?
「俺たち、その第二王子から逃げてきたみたいなもんなのに!」
「ええ!?」
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