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お仕事を始める
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初めての仕事を引き受けるため、冒険者ギルドのジェイド館にやってきた。
サロモンはお金になる仕事があるから、とどこかへ行ってしまったので、私はティーモとイヴォンと一緒に掲示板を眺めている。
「いろんなお仕事があるのねぇ」
勝手なイメージだけれど、冒険者の仕事といえば人間に危害を加える魔獣を駆除したり、ダンジョンに入って調査をしたり、とにかく危険なものばかりだと思っていた。
しかし、今私たちが見ている掲示板に並んでいるのは薬草の採取や花の採取そして水の採取といったこれといって危険はなさそうなもの。
庭の草むしりなんてものもある。危険どころか平和で仕方ないな。
しかも毒草はないので草食の聖獣が食べてくださっても大丈夫です、と注釈が入ったものまで。これならモルンもお腹いっぱいだしお金ももらえるし一石二鳥かもしれない。
……だがしかし、私とモルンだけならそれを請け負ってもいいけれど、ネポスとアブルは別に草食ではないよなぁ。
「聞いたか? 公爵令嬢のはなし」
どの依頼を請け負うか、と頭を悩ませていたところで、どこからともなく噂話が聞こえてきた。
「聞いた聞いた。前代未聞だよな、公爵令嬢が冒険者だなんて」
おそらくキャサリンのことだろう。
高位貴族が冒険者になるなんて、やっぱりあり得ない話なのだろう。こんなところで噂話になるくらいに。
「公爵夫妻もよく許したよなぁ」
「許したかどうかは分からないだろう。公爵令嬢の独断って可能性だってなくはないはずだし」
私たちは三人で顔を見合わせながら、ちょっと呆れた顔をする。
好き勝手言ってるわねぇ、なんて零しながら。
「公爵令嬢の独断だったとしたら、そのうち勘当されたりしてな」
「あー。じゃああの公爵令嬢が勘当されて、いつか平民に?」
「平民になったとしたら、俺たちがあの美少女と結婚することも可能ってことかぁ」
「わぁ、それめちゃくちゃいいなぁ。見かけたら手を貸すフリでもしてとりあえずお近づきにならねぇとな!」
下卑た笑いで勝手に盛り上がっているが、彼らが見ているのは低ランク帯冒険者向けの掲示板だ。
……まぁ、夢を見るのは自由だけれど、と思っていたところで、ばさりと羽音が聞こえた。
そして次に聞こえたのは――。
『頼むから静かにしてくれ』
というアブルの声だった。
「こらアブル!」
なんとアブルはイヴォンの肩から噂話に興じている奴らの元へと飛んで行き、いつも自分が言われているあの台詞を放ったのだ。
私とティーモは思わず「ぷふっ」と失笑してしまった。いや、我慢しなきゃいけないことは分かってたんだけど突然だったから。
しかし周囲を見てみれば笑っているのは私たちだけではない。
この場にいて、下世話な噂話が聞こえていた人たちは皆ほんのり笑っているようだった。
アブルを見て「あの鳥天才じゃん」と笑っている人もいる。
確かに、絶妙なタイミングで、さらにはイヴォンの呆れた感じの口調で『頼むから静かにしてくれ』だもの。いけない、折角我慢したのに笑ってしまいそうだ。
「なんかすみません」
ほんのちょっぴりの申し訳なさもない、完全なる棒読みの「すみません」を放ったイヴォンがアブルを連れて戻ってくる。
下世話な噂話をしていた人たちは、笑いを我慢している私やティーモ、そしてこの場にいるギャラリーたちの生暖かい視線を浴びながら、草むしりの仕事を請け負ってそそくさとギルドを後にしていた。
去って行く様子を見たところ、彼らの聖獣はヤギ、ヒツジ、シマウマと、見事に草食動物ばかりだったようだ。
「あの、少しよろしいでしょうか」
さて、仕事仕事、と掲示板に視線を移したところで、女性に声を掛けられた。
制服を着ているのでギルド職員だろう。胸元のループタイには緑色の宝石、ジェイドが輝いている。
「はい」
「活動適性区域、水中ですよね」
「ええ、そうですけど」
よく見たら、職員の女性は急いでいるのか少し息が上がっている。
「あの、急ぎの依頼があるんですけどお願いできませんか?」
本当に急いでいるようだ。
「えっと」
「お願いしますっ、水中で活動出来る聖獣を連れてるかたがなかなか捕まらなくて!」
とても困っているようだ。
「あの」
「報酬もランクポイントも倍にしますので!」
「やります」
お金につられて即答してしまったけれども。
「ありがとうございますー!」
「あの、でも私、これが初めての仕事で」
「大丈夫ですよ! 依頼内容は近所の泉での水草の採取ですので!」
職員さんは私の両手をがっしりと掴んで言う。
絶対に逃がさないという強い意思を感じる。
「それでは、三名でこちらの依頼を受けてくださるということでいいですね! こちらに手を翳してくださいね」
仕事が早い。
クリスタルの玉を差し出されたので、そこに手を翳すと冒険者宝石とその玉がリンクして、依頼の受注が完了する。
簡単で助かる。
「よろしくお願いします。お気をつけていってらっしゃい」
というわけで、初めてのお仕事が決まったのである。
「えーっと、ペサレの泉でウンディーネの髪飾りという水草の採取。採取量は多ければ多いほど……だそうよ」
ティーモとイヴォンに依頼内容を見せる。
そして私は視線をモルンのほうに移す。
「モルン、お願い出来る?」
「きゅー」
モルンはそう一言鳴いてから、に、と自慢げに前歯を見せてくれたのだった。ああかわいい。
サロモンはお金になる仕事があるから、とどこかへ行ってしまったので、私はティーモとイヴォンと一緒に掲示板を眺めている。
「いろんなお仕事があるのねぇ」
勝手なイメージだけれど、冒険者の仕事といえば人間に危害を加える魔獣を駆除したり、ダンジョンに入って調査をしたり、とにかく危険なものばかりだと思っていた。
しかし、今私たちが見ている掲示板に並んでいるのは薬草の採取や花の採取そして水の採取といったこれといって危険はなさそうなもの。
庭の草むしりなんてものもある。危険どころか平和で仕方ないな。
しかも毒草はないので草食の聖獣が食べてくださっても大丈夫です、と注釈が入ったものまで。これならモルンもお腹いっぱいだしお金ももらえるし一石二鳥かもしれない。
……だがしかし、私とモルンだけならそれを請け負ってもいいけれど、ネポスとアブルは別に草食ではないよなぁ。
「聞いたか? 公爵令嬢のはなし」
どの依頼を請け負うか、と頭を悩ませていたところで、どこからともなく噂話が聞こえてきた。
「聞いた聞いた。前代未聞だよな、公爵令嬢が冒険者だなんて」
おそらくキャサリンのことだろう。
高位貴族が冒険者になるなんて、やっぱりあり得ない話なのだろう。こんなところで噂話になるくらいに。
「公爵夫妻もよく許したよなぁ」
「許したかどうかは分からないだろう。公爵令嬢の独断って可能性だってなくはないはずだし」
私たちは三人で顔を見合わせながら、ちょっと呆れた顔をする。
好き勝手言ってるわねぇ、なんて零しながら。
「公爵令嬢の独断だったとしたら、そのうち勘当されたりしてな」
「あー。じゃああの公爵令嬢が勘当されて、いつか平民に?」
「平民になったとしたら、俺たちがあの美少女と結婚することも可能ってことかぁ」
「わぁ、それめちゃくちゃいいなぁ。見かけたら手を貸すフリでもしてとりあえずお近づきにならねぇとな!」
下卑た笑いで勝手に盛り上がっているが、彼らが見ているのは低ランク帯冒険者向けの掲示板だ。
……まぁ、夢を見るのは自由だけれど、と思っていたところで、ばさりと羽音が聞こえた。
そして次に聞こえたのは――。
『頼むから静かにしてくれ』
というアブルの声だった。
「こらアブル!」
なんとアブルはイヴォンの肩から噂話に興じている奴らの元へと飛んで行き、いつも自分が言われているあの台詞を放ったのだ。
私とティーモは思わず「ぷふっ」と失笑してしまった。いや、我慢しなきゃいけないことは分かってたんだけど突然だったから。
しかし周囲を見てみれば笑っているのは私たちだけではない。
この場にいて、下世話な噂話が聞こえていた人たちは皆ほんのり笑っているようだった。
アブルを見て「あの鳥天才じゃん」と笑っている人もいる。
確かに、絶妙なタイミングで、さらにはイヴォンの呆れた感じの口調で『頼むから静かにしてくれ』だもの。いけない、折角我慢したのに笑ってしまいそうだ。
「なんかすみません」
ほんのちょっぴりの申し訳なさもない、完全なる棒読みの「すみません」を放ったイヴォンがアブルを連れて戻ってくる。
下世話な噂話をしていた人たちは、笑いを我慢している私やティーモ、そしてこの場にいるギャラリーたちの生暖かい視線を浴びながら、草むしりの仕事を請け負ってそそくさとギルドを後にしていた。
去って行く様子を見たところ、彼らの聖獣はヤギ、ヒツジ、シマウマと、見事に草食動物ばかりだったようだ。
「あの、少しよろしいでしょうか」
さて、仕事仕事、と掲示板に視線を移したところで、女性に声を掛けられた。
制服を着ているのでギルド職員だろう。胸元のループタイには緑色の宝石、ジェイドが輝いている。
「はい」
「活動適性区域、水中ですよね」
「ええ、そうですけど」
よく見たら、職員の女性は急いでいるのか少し息が上がっている。
「あの、急ぎの依頼があるんですけどお願いできませんか?」
本当に急いでいるようだ。
「えっと」
「お願いしますっ、水中で活動出来る聖獣を連れてるかたがなかなか捕まらなくて!」
とても困っているようだ。
「あの」
「報酬もランクポイントも倍にしますので!」
「やります」
お金につられて即答してしまったけれども。
「ありがとうございますー!」
「あの、でも私、これが初めての仕事で」
「大丈夫ですよ! 依頼内容は近所の泉での水草の採取ですので!」
職員さんは私の両手をがっしりと掴んで言う。
絶対に逃がさないという強い意思を感じる。
「それでは、三名でこちらの依頼を受けてくださるということでいいですね! こちらに手を翳してくださいね」
仕事が早い。
クリスタルの玉を差し出されたので、そこに手を翳すと冒険者宝石とその玉がリンクして、依頼の受注が完了する。
簡単で助かる。
「よろしくお願いします。お気をつけていってらっしゃい」
というわけで、初めてのお仕事が決まったのである。
「えーっと、ペサレの泉でウンディーネの髪飾りという水草の採取。採取量は多ければ多いほど……だそうよ」
ティーモとイヴォンに依頼内容を見せる。
そして私は視線をモルンのほうに移す。
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