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第一章・イージスの盾・
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「大切って気がついて良かったな」
涼は言った。
「大切だと気がついた時、大抵それはもう遅すぎるんですよね。貴方達のお陰です。そのお陰でホントに必要なものを失わずに済みました」
小さな景の手をまるごと包むように指を絡め二人は遠く見えなくなるまでずっと手を握っていた。
「ホテルに帰ろう……涼」
「ああ。明日は一日ゆっくりしたいから……今日帰りにメルカートに寄ろう。どろどろのミルクスープは嫌だったよな」
悠の振り切った掌が涼の頬に入る。
「いってー」
「うるさい! 自業自得だろ?」
目がチカチカする涼は頭を振り、お星さまをけちらした。
◆◆
「疲れたな。何か食べるか?」
「いや、ちょっとこのまま涼をすいたい」
「甘えん坊だ」
「散々千景さんばかり甘やかしたんだから、少しくらい我が儘聞いてくれてもいいだろう」
「少しと言わず、一生でもいいぞ」
「適当なこと言って……」
くぼんでいる鎖骨に中指を置いた。ゆっくりとなぞるように指の腹に神経を集中させた。
水滴が溜まるくらい綺麗にくぼんだ美鎖骨。
悠の大好きな涼のパーツ。
涼が気持ちいいから悠が舐めるようになったその行為は、まさに二人の縮図だった。
しかしそれはまさに逆であった。俺が好きだから涼はさせていた。
俺が涼に嫉妬して欲しいから、嫉妬に狂うアイツに愛されたいから、それだけが自分の価値のように思っていたから。
最後の最後……誰でもいいから、中出しさせようとした悠の行為は、すべて自信のなさの裏返しだった。
いつか来る終わりに怯えるように、今だけは烈火のごとく燃える炎に身を任せたい、いつもそんな風に刹那的だった。
それでもあの瞬間は助けに来ると分かっていた。
「自家製モヒート……もう一回してやろうか? 今度はもっとたっぷりと時間をかけて、……なあ? 悠、俺は怒っているんだよ。それも無かった事に出来るとでも思っている訳では無いよな。お前の言葉を借りていうなら、まさに……自業自得……だろ?」
涼は言った。
「大切だと気がついた時、大抵それはもう遅すぎるんですよね。貴方達のお陰です。そのお陰でホントに必要なものを失わずに済みました」
小さな景の手をまるごと包むように指を絡め二人は遠く見えなくなるまでずっと手を握っていた。
「ホテルに帰ろう……涼」
「ああ。明日は一日ゆっくりしたいから……今日帰りにメルカートに寄ろう。どろどろのミルクスープは嫌だったよな」
悠の振り切った掌が涼の頬に入る。
「いってー」
「うるさい! 自業自得だろ?」
目がチカチカする涼は頭を振り、お星さまをけちらした。
◆◆
「疲れたな。何か食べるか?」
「いや、ちょっとこのまま涼をすいたい」
「甘えん坊だ」
「散々千景さんばかり甘やかしたんだから、少しくらい我が儘聞いてくれてもいいだろう」
「少しと言わず、一生でもいいぞ」
「適当なこと言って……」
くぼんでいる鎖骨に中指を置いた。ゆっくりとなぞるように指の腹に神経を集中させた。
水滴が溜まるくらい綺麗にくぼんだ美鎖骨。
悠の大好きな涼のパーツ。
涼が気持ちいいから悠が舐めるようになったその行為は、まさに二人の縮図だった。
しかしそれはまさに逆であった。俺が好きだから涼はさせていた。
俺が涼に嫉妬して欲しいから、嫉妬に狂うアイツに愛されたいから、それだけが自分の価値のように思っていたから。
最後の最後……誰でもいいから、中出しさせようとした悠の行為は、すべて自信のなさの裏返しだった。
いつか来る終わりに怯えるように、今だけは烈火のごとく燃える炎に身を任せたい、いつもそんな風に刹那的だった。
それでもあの瞬間は助けに来ると分かっていた。
「自家製モヒート……もう一回してやろうか? 今度はもっとたっぷりと時間をかけて、……なあ? 悠、俺は怒っているんだよ。それも無かった事に出来るとでも思っている訳では無いよな。お前の言葉を借りていうなら、まさに……自業自得……だろ?」
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