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4冷血魔神、雨情摩利
しおりを挟む「実技テスト受けなかったの?」
更衣室で浴衣から制服に着替えながらさくらはあんずに声をかけた。
ギロッと睨む取り巻きの1人が、私たちの間に割り込んできた。
「あんず様を末端なんかと一緒にしないでくれないかしら」
「末端?」
「あんたのこと」
いや……確かに末端なんだけど……何と無くこいつに言われるのは違う気がする。
「とりあえず失礼だから」
取り巻きAこと蒼井もも、完全なるあんずフリーク。
「大体どうやって先生に取り入ったの?色仕掛け?」
「イヤイヤこんなちびに色気なんかないでしょー」
出た出たあんずフリークB芹沢椿。
「やめなって。こんなとこでイジメ?」
ちらりと見た目は冷ややかで、関係ないけど……とばかりに通り過ぎて行った。
自分の頭の蠅も負えないのかという冷たーい眼差し、一匹狼はさすがだな。でも私だって追えるよ蠅!
「うるさ……」
言い争いが起きそうなタイミングで、綺麗に響くポーンポーンという手の鳴る音。
一斉に視線が動くと超短いタイトスカートをはいた摩利ちゃんだった。
「ちょっとー何してしてんのよぉ、ヤナにおいスンナァ―」
ヤバイ、ドS摩利ちゃん登場だよ。
一気に整列する私たちはもはや子ネズミと化していた。
摩利ちゃんこと雨情摩利。男!タイトスカートはいていても……れっきとした男だ。
語尾を伸ばす独特の話し方をするこの男、超絶やばいやつ。
性格冷血無比。
関係超ドライ。
恐らくこの私立桜城下高校の先生の中でもトップを争う変わり種。
宝塚音楽学校を目指す私たちにとっては、神のごときお人、バレエ教諭である。
「で何があった?桜華 ぁ。学校内でいざこざはご法度だよなぁー」
「申し訳ございません」
あんずは頭を下げた。
それに追随する様に皆が頭をさげる。
「君たちが退学処分でも僕には関係ないけどねぇー」
「あんず様は悪くなく……」
「あんず・さ・ま?」
「何、桜華 様とか言われてんのぉ?ウケんだけどぉー。なら今度僕の代わりに先生やってよぉ、あんず・さ・ま」
ケラケラ笑い出して止まらない。しかも凄い事を言い出した。
「冗談はやめてください。雨情先生の代わりなど勤まる訳がないじゃないですか」
「ふーん、そ。なあ桜華、去年音楽学校受けなかったぁ?」
「受けました!」
「なんでこんなとこにインのぉ?」
AもBも泣きそうになっている。
「落ちたからです!」
「そう、落ちたの!僕のバレエスクールでもバレエの実力じゃ群を抜いてる。でも落ちた。そんな単純な話じゃない。タッパも容姿も申し分ない。でも落ちた」
「そんな落ちた落ちた言わないでください……」
椿は必死にかばう。
「馬鹿かお前ら、現実をみろ。受験は四回しかチャンスはない。南條みたいに身長が足らなくたって、等しく回数は減っていくんだ。お前もんなとこで喧嘩してねーで身長伸ばせ!」
流石男、怒鳴るとめちゃくちゃ恐い。
「取り巻きなんか作ってる余裕あんのかねぇー」
私達は何も言えず拳を握った。
「次の授業俺のバレエだよねー。言いつけるの止めてやる代わりにお前ら全員授業中バーに捕まってずっと足上げててね。バランスのためにこまめに左右変えていいからぁ」
「ちょっと待って……」
ざわざわとする中で凛とした声が響いた。
「かしこまりました!」
あんずだった。
こういうとこが首席たる所以。私も遅れること5秒!
「かしこまりました!」
返事をした。
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