タカラジェンヌへの軌跡

12抱き締めたいほど皆が好きで

『抱き締めたいほど皆が好きで、何も言わずにわかりあえる。だから命は愛おし。君の笑顔に心が震え、今なら歌える、君が大切と……無くしたくはない、君がいる限り、森の木たち小さな命素敵な人々、素晴らしい時よ』

　サツキが何やら窓の外を見て、歌を歌っている。

　あっ宝塚だ。

「よっ明日からだよねー。お弁当リクエストしたの？」
　向日葵ひまわりはサツキに声をかけた。
「いや、うち芸術一家だって言ったじゃん。親今海外だから明日はコンビニで買うよ」

「なら私が２つもってくるよ」
「いやいいよ。悪いし」
「コンビニで私のジュースも買っといてよ。それでいいじゃん」
　向日葵ひまわりの勢いに負けたサツキは、しぶしぶ頷いた。

「明日めちゃくちゃ楽しみだよね。芝居さ２回みたくて自由時間チケットとっちゃったよ」
　まじで？
「私も」
　小さな声でサツキはいうと、２人は内緒話をするように額をつけながら、明日がいかに素晴らしい１日かを話をした。

「今日の放課後、雨情バレエスクール受講者はレオタードはいらないからな」
　各クラスを回って回覧してる摩利ちゃんは何やらたくらんでるらしく、明日宝塚を観に行くからとスケジュールを動かして、今日イベント？をやることにしたらしい。
　鬼の摩利ちゃんに可愛いイベントなんかあるはずないのに、つい浮き足立つ辺り、まだまだ子供だ。

　　　　□□□

「はい、これ着てみて！」
　これって……

「宝塚のOGの方からお借りした」
　羽の重さ、噛みしめて明日舞台みようよ。

　摩利ちゃんってほんとにカッコ良すぎだよ。

　皆は順番に衣装をきて、あの憧れの羽をつけた。　 


　朝歌が聞こえたよ。
　なあ、俺も抱き締めたいほど皆が好きさ……。