タカラジェンヌへの軌跡

赤井ちひろ

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17 夢の宝塚大劇場

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  待ちに待った遠足!
 小田原からだとひかりで名古屋まで、そこからのぞみに乗り換える。 

 高1から高3まで全クラで9クラスしかない。別に小さいわけじゃなく、普通科がない特殊スタイルをとる、音楽学校の学校みたいな位置付け。

 新幹線を、貸しきって行く位には裕福な家柄の子が多いのが特徴。
 新幹線は子ネズミの巣窟みたいにわちゃわちゃと盛り上がっていた。
「ねーねーウノしよー」
「お菓子食べる――?ポッキーゲーム?」
 4号車から遊びに来ていた相川 菜月あいかわ なつきが頭上から見下ろしながらさくらに声を掛ける。
「ん?さくらなにみてるの?」
さくらは表紙を皆に見せて言ったひとりぼっちのパンフレット」
「えーどこで買ったの?」
「キャトルレーブ東京店だよ、どうしても先に欲しくて買っちゃったー。メイさん最高だよ!ラブです」

「えっメイさん?」
 さつきと盛り上がっている。
「私今推しいるー」 
 声楽科の菜月は演劇科のさくらと仲がいい。
「なになに、菜月、誰推し?」
天満あまみさん、今年の新人だよ」


「首席で卒業した方だよね。カッコ良すぎて、すでに人外レベルだよ。身長171って公式に書いてあるー」
「愛称は?」
「ゆりちゃん」
 菜月が教えてくれた。
 
 タカラジェンヌは皆、愛称がついている。
 菜月は天満あまみさんが中学演劇コンクールに出てるときからの追っかけ。
 中演コンクールは私も出た。ちなみに助演女優賞も拾わせていただきました。私と菜月が仲いいのもその頃から。
 演目は【レ・ミゼラブル】私がやったのはコゼットの友達。
 天満さんがそのときやったのは【風と共に去りぬ】のレッド・バトラー。ちなみにその時スカーレットをやったのが同時天満さんの2期下だった菜月。
 
 でも菜月は宝塚へは追いかけないという。彼女は声楽の道を選んだ。でも天満あまみさんが宝塚をやめたあと……必ず一緒に舞台に立つ日がくるという。

「いや私は音楽学校受けないよ」
 菜月が綺麗な声でいった。

 何オクターブ出るんだろうって位高いソプラノがでる菜月は、私の憧れだった。
「どこ受けるの?」
「東京音大?」
 横からすみれがいった。
 いやーと笑う。
「教えてよ」
 私は真面目に聞いたんだ。
 別に茶化してるわけじゃない。
 夢は語ると叶わないとか、口にしたらホントになるとか色々あるけど、
「夢は口にしたら、私は叶うと思ってる。言霊っていうじゃん!私は音楽学校に入って男役になる!」

 ざわついた。

 皆気がついていた。気がついていて、知らないふりをした。

 さくらはこの半年で30センチ伸びた。今まだのびている。すでに160は越えた。あと最低8センチ欲しい。
「私は宝塚に入る!」
 
 ならさくら、約束しよう。どんなに山があっても必ず越えるって!
「 私は私の道をいく。そしていつか必ずユリ先輩と一緒に舞台にあがる!私が受験するのは、ジュリアードだよ」
 

 「みんなで夢をかなえよう」



 

 
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