タカラジェンヌへの軌跡

赤井ちひろ

文字の大きさ
30 / 44

30 空を見上げる喜び

しおりを挟む
 合格発表だ
「寝たか?」
 朝からびっくりした!
「なんで摩利ちゃんも、神代先生も……え?伊吹先生もなんで?」
「ちょっとなんであたしだけ摩利ちゃんなわけぇ?いげーん」
 雨情摩利先生、今日はミニスカポリスの日だ。
「気になったんだよ。お前たちほど手のかかったクラスはなかったからな……」
 朝ごはんに降りてきていた桜華も、先生を見つけると珍しく破顔し、走り寄ってきた。
「みんなに連絡をしなくては」
 スマホを立ち上げライングループを開いた。

「早く降りてこい!雨情先生、高倉先生、神代先生が来てくれてるよ。みんなで朝ごはん食べよう」
 ひよこたちが降りてくるのはそりゃあ早かった。
 寝不足の顔がちらほら見える。
「聞いていいかわからないんだが、お前たち自信はあるのか?」

 桜華は言った。
「首席で合格の自信がありますわ」
 摩利ちゃんが私を見た。
「聞かれたよ、娘役なのにハスキーボイスだねって」
 皆、シーンとしている。

「やらないって言った」
「まじか」
 のどぼとけが上下に嚥下した。
「ん?愛と死の輪舞歌ってきたよ」
 さくらの爆弾発言だ。

「はぁ~?」
 どういうことだと神代先生が聞くと、南條より後の番号だったサツキは、凄かったんですよーと、廊下で聞いていていい意味で肩の力抜けて良かったと言っていた。

「やり切ったってことか!」
「これでだめなら来年もう一度受けますよ」


 みんなでおなか一杯になるほど朝ご飯を食べ、涙も笑いも一緒に行こうと、さくらがいうので俺たちは空を見上げに行った。


 合格発表

「キャ――――――――」
 喜ぶ人をうらやむように泣き崩れる人たちがいる。
 私達はゆっくりと歩きながら張り出されている合格者氏名に近寄った。

 023 桜華おうかあんず
 111 佐伯百合さえきゆり
 356 下北しもきたすみれ
 777
 778
 779 高井サツキ
 780
 781
 782
 783
 784
 785
 786
 787……
 


「やった――――――」
「ほらほら、見てよ――」
 いつもはひっそりと野に咲く花のように大人しい百合が皆を呼んだ。
 サツキは叫んだ。
「見てみろよ!あの時お前からパワーをもらった順番を待っていた奴、皆受かってんよ」

「おめでとう!」
 遠くから軽やかに歌うように言った。
「はぁ~?ざけんな!お前他人事じゃねーんだよ」
 雨情先生は大声で叫んだ。
 皆はさくらを見た。
 
 何この緊張感……
 何が起こってんの?

 今年は諦めていた、何があってもみんなの前では泣かないって
 昨日決めた。
 一番好きな歌を先生たちの前で歌うことができた。
 だから……

 

 まさか……

 私は大地をけり走り出していた。途中小石につまずき転びそうになりながら、発表のボードの前に身を乗り出していた。

 777 南條さくら
 
 私の名前があった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
 サツキは拳を高々と掲げた。
「やったなお前ら。今日は好きなもんおごってやんよ」
 

 桜華が手を出す。
「よろしく同期だね」

 知らない人たちがこちらを見ている。
「あの……777番の方ですか?

 

 
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん
青春
「ほんと胸がニセモノで良かったな。貧乳バンザイ!」 「離して洋子! じゃなきゃあのバカの頭をかち割れないっ!」 「お、落ちついてメイちゃんっ!? そんなバットで殴ったら死んじゃう!? オオカミくんが死んじゃうよ!?」 県立森実高校には2人の美の「女神」がいる。 頭脳明晰、容姿端麗、誰に対しても優しい聖女のような性格に、誰もが憧れる生徒会長と、天は二物を与えずという言葉に真正面から喧嘩を売って完膚なきまでに完勝している完全無敵の双子姉妹。 その名も『古羊姉妹』 本来であれば彼女の視界にすら入らないはずの少年Bである大神士狼のようなロマンティックゲス野郎とは、縁もゆかりもない女の子のはずだった。 ――士狼が彼女たちを不審者から助ける、その日までは。 そして『その日』は突然やってきた。 ある日、夜遊びで帰りが遅くなった士狼が急いで家へ帰ろうとすると、古羊姉妹がナイフを持った不審者に襲われている場面に遭遇したのだ。 助け出そうと駆け出すも、古羊姉妹の妹君である『古羊洋子』は助けることに成功したが、姉君であり『古羊芽衣』は不審者に胸元をザックリ斬りつけられてしまう。 何とか不審者を撃退し、急いで応急処置をしようと士狼は芽衣の身体を抱き上げた……その時だった! ――彼女の胸元から冗談みたいにバカデカい胸パッドが転げ落ちたのは。 そう、彼女は嘘で塗り固められた虚乳(きょにゅう)の持ち主だったのだ! 意識を取り戻した芽衣(Aカップ)は【乙女の秘密】を知られたことに発狂し、士狼を亡き者にするべく、その場で士狼に襲い掛かる。 士狼は洋子の協力もあり、何とか逃げることには成功するが翌日、芽衣の策略にハマり生徒会に強制入部させられる事に。 こうして古羊芽衣の無理難題を解決する大神士狼の受難の日々が始まった。 が、この時の古羊姉妹はまだ知らなかったのだ。 彼の蜂蜜のように甘い優しさが自分たち姉妹をどんどん狂わせていくことに。 ※【カクヨム】にて編掲載中。【ネオページ】にて序盤のみお試し掲載中。【Nolaノベル】【Tales】にて完全版を公開中。 イラスト担当:さんさん

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...