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5土方歳三の初恋①
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「土方さん。何を呆けているんですか」
「総司か……ちょっと夢を見ていたのだよ」
「夢……ですか?」
「初恋の人の夢だ」
ちょっと聞いてみたい。土方さんの初恋ってどんなの何だろう。
「どんな人ですか?」
「梅子だ」
その瞬間鶯が泣いた。
梅の木にとまっている鶯は本当にきれいな声で鳴く。
「土方さん、本当に梅の花好きですよね。初恋の女性まで梅子さんとかどうなんですか?」
「言い方だよ。総司」
人切り集団とか鬼の副長とか世間じゃいろいろ言われているけれどこの人は本当にかわいい。
「いつの頃ですか」
「18・9の頃だ」
「なら僕は13・4か……」
「総司お前はそのころもう有名だっただろ」
12で某藩の剣術指南役を破り試衛館では群を抜いていたかもなぁ……。
「土方さん18・9っていうと」
僕はいろいろ遡り頭をひねった。
「江戸の呉服屋に奉公にきて年上の女中と深い仲になり、まぁ、妊娠させた頃」
「うわっ 最低発言」
「しょうがないだろ。性欲は有り余るお年頃なんだから、お前みたいに剣術で精神まで鍛えていたわけじゃねーんだ。俺が試衛館に入った時24だったんだぞ」
「そうでしたね」
沖田は何かを思い出すように眉間にしわを寄せる。
「それでなぜ土方さんは結婚していないんですか?」
「逃げたからだよ」
沖田は3歩後ずさり嫌そうな顔をした。
「そういうな。兄に意見されきちんと始末をつけに帰ったさ。ただその後は会っていないから知らないがな」
「で初恋はその人ですか?」
嫌そうににらみつけるこの男……。
「最低発言パート②ですね」
「まだ何にも言ってないだろう」
言わなくてもわかるだろう。そんな顔、違います一択じゃないか。
「俺が親なら決闘を申し込む勢いですよ?」
胡坐をかきながら梅の花を見ていた土方さんは
「初恋は黒船の中だ」
はい?
「ごめんなさい。意味不明なんですが」
「坂本龍馬を知っているか?」
「勿論です」
「では坂本龍馬と俺が初めて会ったのがいつかは知っているか?」
「あったことあるんですか?」
刀に手がかかる。
「総司怖いからやめてくれ」
土方は口笛を鳴らしながらおどけて見せる。
「冗談にしては笑えません。坂本龍馬は尊王攘夷派ですよ?」
「あれは俺がまだ18だった。奉公先からの手伝いで江戸を歩いていた時だ。今じゃない。なれ合ってはおらん。黙って聞け……」 「はいはい」
素振りに飽きたのか縁側に寄ってくる。
「ただの思い出話だ。流して聞けよ……。昔な、転んで泣いていた小さな女の子に寄り添って地面に座り込んだ女がいたんだよ」
「はぁ~またけったいな人ですね」
「俺はその女が好きでな。そいつはいつも同じ飯屋にいたから俺もよくそこで食べていた」
「ストーカーですね」
「うるさい!俺は一度だけその女に薄い茶色いサクサクの食べ物をもらったことがあったんだ」
「サクサク?」
「ビスケット……というのだと教えてもらった。今思えばあれが別れの手紙だったのかもしれん」
「要領を得ませんが……」
「坂本龍馬の女かと思ったさ」
頭はいいはずなのに玉に凄く馬鹿なんじゃないかというような発言をする。
「そんな顔で見るな。その女が初恋なんだ」
「坂本龍馬の浮名はかなりありますよ。坂本龍馬のどの女ですか?」
しかし土方さんは首を横に振った。
「いや、切りかかられそうになった時その人は、」
土方さん今なんて言った?あまりにもびっくりしたもので飲んでいた湯吞をぶちかまし、着物がびしょびしょだ。
「何をしているんだ。汚いな」
貴方に言われたくはないんだよ。
「誰のせいですか……」
「俺のせいか?」
「当然。切りかかられるって誰にですか?」
「覚えていないな。どっかのボンボンだ。ただ内容は覚えている。影を踏んだというのが理由だ」
「男の影を踏んだとかですか?くだらない男だな」
「その女もそう思ったんだよ。で啖呵を切った。」
「はぁ」
お前信じてないのか?
「だって普通それ切られてますよ?近くにいたのが僕なら助けてあげられますけど、当時の土方さんじゃ無理でしょう?」
嫌味な奴だが間違っちゃいない。
「でっ、どうなったんですか?坂本龍馬が助けたんですか?」
「時は嘉永6年だ」
「嘉永6年?……まさかマシュー・ペリー……」
「ああ、そのお友達だな、レイモンドと名乗っていたよ」
当時のことは昨日のことのように覚えている。顔も名前も忘れない。
「つまりあなたは何も出来なかったんですね」
「ああ、そういうことになるな」
「総司か……ちょっと夢を見ていたのだよ」
「夢……ですか?」
「初恋の人の夢だ」
ちょっと聞いてみたい。土方さんの初恋ってどんなの何だろう。
「どんな人ですか?」
「梅子だ」
その瞬間鶯が泣いた。
梅の木にとまっている鶯は本当にきれいな声で鳴く。
「土方さん、本当に梅の花好きですよね。初恋の女性まで梅子さんとかどうなんですか?」
「言い方だよ。総司」
人切り集団とか鬼の副長とか世間じゃいろいろ言われているけれどこの人は本当にかわいい。
「いつの頃ですか」
「18・9の頃だ」
「なら僕は13・4か……」
「総司お前はそのころもう有名だっただろ」
12で某藩の剣術指南役を破り試衛館では群を抜いていたかもなぁ……。
「土方さん18・9っていうと」
僕はいろいろ遡り頭をひねった。
「江戸の呉服屋に奉公にきて年上の女中と深い仲になり、まぁ、妊娠させた頃」
「うわっ 最低発言」
「しょうがないだろ。性欲は有り余るお年頃なんだから、お前みたいに剣術で精神まで鍛えていたわけじゃねーんだ。俺が試衛館に入った時24だったんだぞ」
「そうでしたね」
沖田は何かを思い出すように眉間にしわを寄せる。
「それでなぜ土方さんは結婚していないんですか?」
「逃げたからだよ」
沖田は3歩後ずさり嫌そうな顔をした。
「そういうな。兄に意見されきちんと始末をつけに帰ったさ。ただその後は会っていないから知らないがな」
「で初恋はその人ですか?」
嫌そうににらみつけるこの男……。
「最低発言パート②ですね」
「まだ何にも言ってないだろう」
言わなくてもわかるだろう。そんな顔、違います一択じゃないか。
「俺が親なら決闘を申し込む勢いですよ?」
胡坐をかきながら梅の花を見ていた土方さんは
「初恋は黒船の中だ」
はい?
「ごめんなさい。意味不明なんですが」
「坂本龍馬を知っているか?」
「勿論です」
「では坂本龍馬と俺が初めて会ったのがいつかは知っているか?」
「あったことあるんですか?」
刀に手がかかる。
「総司怖いからやめてくれ」
土方は口笛を鳴らしながらおどけて見せる。
「冗談にしては笑えません。坂本龍馬は尊王攘夷派ですよ?」
「あれは俺がまだ18だった。奉公先からの手伝いで江戸を歩いていた時だ。今じゃない。なれ合ってはおらん。黙って聞け……」 「はいはい」
素振りに飽きたのか縁側に寄ってくる。
「ただの思い出話だ。流して聞けよ……。昔な、転んで泣いていた小さな女の子に寄り添って地面に座り込んだ女がいたんだよ」
「はぁ~またけったいな人ですね」
「俺はその女が好きでな。そいつはいつも同じ飯屋にいたから俺もよくそこで食べていた」
「ストーカーですね」
「うるさい!俺は一度だけその女に薄い茶色いサクサクの食べ物をもらったことがあったんだ」
「サクサク?」
「ビスケット……というのだと教えてもらった。今思えばあれが別れの手紙だったのかもしれん」
「要領を得ませんが……」
「坂本龍馬の女かと思ったさ」
頭はいいはずなのに玉に凄く馬鹿なんじゃないかというような発言をする。
「そんな顔で見るな。その女が初恋なんだ」
「坂本龍馬の浮名はかなりありますよ。坂本龍馬のどの女ですか?」
しかし土方さんは首を横に振った。
「いや、切りかかられそうになった時その人は、」
土方さん今なんて言った?あまりにもびっくりしたもので飲んでいた湯吞をぶちかまし、着物がびしょびしょだ。
「何をしているんだ。汚いな」
貴方に言われたくはないんだよ。
「誰のせいですか……」
「俺のせいか?」
「当然。切りかかられるって誰にですか?」
「覚えていないな。どっかのボンボンだ。ただ内容は覚えている。影を踏んだというのが理由だ」
「男の影を踏んだとかですか?くだらない男だな」
「その女もそう思ったんだよ。で啖呵を切った。」
「はぁ」
お前信じてないのか?
「だって普通それ切られてますよ?近くにいたのが僕なら助けてあげられますけど、当時の土方さんじゃ無理でしょう?」
嫌味な奴だが間違っちゃいない。
「でっ、どうなったんですか?坂本龍馬が助けたんですか?」
「時は嘉永6年だ」
「嘉永6年?……まさかマシュー・ペリー……」
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