富豪デスゲーム

JOKER

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二日目

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二日目

 全員がホールに集合した。
「どうだ、みんなちゃんと寝れたか?」
 祐介が有り得ないことを聞いてきた。
「そんなの無理に決まってるでしょ 。たった一夜で死んだ人のこと忘れられるわけ無いじゃん」
 麻結が答えた。
 ホールの隅に花江の亡骸に毛布がかかっていた。きっと、花江の部屋の毛布だろう。各自の部屋には幸い鍵のない扉だった。
「……で、これからどうするの?」
 詩織が聞き出した。
「黒幕の手がかりか何かを探そうと思う。なにか質問はあるか?」
「……本当に黒幕なんかいるのか?」
「でも、何もしないよりはマシね」
「黒幕が外から誰か観てるってことは無いの?」
 彩香はそう思い聞いた。
「それは考えにくい。ここにはネットも繋がっていない。知っていると思うが俺たちの私物はクローゼットの中に入っている。その中の携帯の電波も繋がらず圏外だ」
 この情報は全員が知っているようだった。部屋には冷蔵庫もあり、水と食料が入っていた。
「まぁ、特に話すこともないから、ここで解散して各自自由行動ということでいいかな?」
「それでいいでしょ」
みんなだんだんと散らばって行った。
そこで彩香は思い出した。

(結衣の部屋に行かなきゃ)

 彩香は急ぎ足で目的の場所へ向かった。

「やっぱり来たんだ」
 結衣はベッドに座っている。彩香は近くにあった椅子を引っ張って、そこに座る。
「結衣が呼んだんでしょ。で、私に言う事ってなに?」
 結衣が真っ直ぐ彩香を見て言い放った。
「このゲームには必ず勝てる必勝法があるの」
「どういうこと!?」
 必勝法。この死のゲームに勝つ方法がある。このゲームから抜け出すことができる。
そう考えると、思わず身体が前のめりになる。興奮が止まらない。
「今すぐおしえて」
「まぁ、落ち着け。必勝法と言ってもあと、三人いないとダメ。誘うの手伝ってくれる?」
 彩香は大きく頷いた。

 三人誘うのに時間は掛からなかった。このゲームに勝てると言ったら、すぐについて来てくれた。部屋にいるのは、彩香、結衣、友也、祐介、麻結。
「方法を説明する。ここにいるのは五人。この五人でグループを作る。全員がカードの強さを明かす」
 カードを明かすという言葉に、部屋の空気が一変したかのように、緊張が高まる。
「五人中、二人が強いカードを持っている人に投票、残り三人が誰か一人に票を集める」
「……なるほど。これで勝てる」
友也が呟く。彼の顔には微かな微笑みが見えた。
しかし、祐介が反論した。
「確かに、勝率が高まる。でも、これだと確実じゃない。グループ外の七人の票によっては、作戦が失敗することもある」
「じゃあ人を増やせば……」
「それはだめ」
結衣が即答する。
「このゲームに勝てるのは五人だけ。人を増やしたら、いずれグループで争いが起きる」
「でも、確実じゃないなら危険過ぎる。もっとよく考えれば……」
「納得できないなら出て行って。他の人を誘ってグループを作るよ。そうしたら祐介君負けるよ? それでもいいならいくらでも反論すればいい」
結衣の言葉に、祐介は反論することはなかった。
「全員異論無いね?」
「……仕方ない。だがもし僕たち全員生き残ったらこの後はどうなるんだ?」
誰も根本的なことに気づいていなかった。
「……ど、どうゆう事?」
「ちょっと考えてくれ。もしこの5人全員が生き残ったとしたなら必然的に残っている他の7人を殺す事になる」
「それって殺人になっちゃうって事?」
彩香が慌てて聞いた。
「そんなの終わってから決めれば良いじゃん」
全員が結衣の言葉に驚いた。
「死にたくなければ殺すしかないでしょ?」
「……そうだよね。今何もしないんじゃ生き残ることも出来ないもんね」
「じゃあまずはこの全員が生き残るって事でいいね?」
全員が結衣の意見に賛同した時、彩香は少し胸騒ぎがした。
「それじゃあ全員カードの数字をおしえて」
全員がカードの数字を伝え、情報を交換した。

「グループ外の誰を指名するの?」
彩香が結衣に聞く。
「正直、誰でもいい。恨みのある人とか、殺したい人とかいないの?」
結衣の問いに全員黙り込んだ。しかし、彩香には重い浮かび上がる顔があった。
「……詩織とかは?」
全員の顔を見回しながら言った。
「詩織に恨みとかでもあるの?」
「いや……なんとなくだけど」
麻結の鋭い質問に彩香は上手くごまかす。しかし、結衣は疑いの目で彩香を見つめていた。
「詩織じゃない人に……してくれないかな」
「……え?」
言ったのは祐介。
「何で? 詩織だとだめなの?」
彩香の口調が強まった。
「いや、詩織とは仲良く話す関係だからさ、まだ死んでほしくないんだ」
彩香は驚きの顔を隠しきれずにいた。彩香は、詩織と祐介の仲がいいことを初めて知った。詩織を許せない気持ちと、怒りが込み上げて爆発しそうになる。
「もう誰でもいいよ。自分が生き残りさえすれば」
結衣の言葉に誰もが共感した。
「私は楓にしたいんだけどいいかな?」
メンバーの反論はなかった。
「……良心が痛むが今回はそうしよう」
メンバーが部屋を出るとき、結衣が大きく言った。
「絶対に裏切らないでね。この五人でここから脱出するんだから」
彼女の重みのある言葉に彩香はただただ見ているだけだった。

彩香はまだ、あの作戦について考えていた。
あの作戦は確かに強力だった。しかし、一歩間違えたら最悪な場合になってしまうと彩香は思っていた。今日の投票では、全部で12票。その中の5票は決まっている。問題は残りの7票だ。上手く散らばってくれると、作戦通りにゲームを進めることが出来る。だが、指名されたのが両方グループメンバーだと、最悪の事態を招くことになる。もしそうなったら、他の人を誘ってグループを作り直すか、グループが割れてお互いに殺し合うか。
「……彩香大丈夫?」
誠がホールの椅子に座っていた彩香に声をかけた。
「う、うん。大丈夫」
「やっぱり、こんなところにいると気が狂っちゃうよな。何も考えられなくなるって感じ」
とても落ち着いた声で言った。誠の視線は花江の方を向いていた。その目は明かりのない目をしている。
「もう、狂ってるのかもしれないな」
ふと、呟いて隣の椅子に腰掛けた。
「どうゆうこと?」
「彩香はここから出たいと思うか?」
彩香は軽く頷く。
「じゃあ、なんでここから出ようと必死になったりしないんだ?」
「そんな……べつに……」
急な問いかけに言葉を詰まらせた。
「こんなところにいて、人が死んで、俺たちはそれが普通になりかけてないかな? もし、そんな事になったら簡単に人を殺してしまう気がして……」
彩香には彼がそんな事を言う意図が分からなかった。脅しているのか、怖がっているか分からず声を出せなかった。
「こんな出口の扉も窓もない建物、どうやって建てたんだろうな」
「本当にこれ建物か?」
横から友也が割り込んできた。
「地下を掘って作ったとしたら?」
「そうだとしたら、あっ!」
誠が勢いよく立ち上がって、上を見上げる。
「ど、どうしたの?」
「上だ。ここが地下だとしたら、出口は天井かもしれない」
誠が走ってホールを出て行く。
「例えばの話なんだけどな……」
少し経って、誠が帰ってきて行った。
「……あったよ! 出口!!」
三人は急いで全員を呼び叫んだ。


「……これが出口?」
全員の視線が集まる先は天井。その天井には四角形の跡が浮かび上がっている。
「これ扉なの? 開く感じしないけど」
「これ使って」
ホールへの扉から、祐介が椅子を持ってきて言った。
「祐介頼んだ。お前身長高いだろ」
支持された祐介は不機嫌そうに椅子の上に乗って、天井に腕を伸ばす。そして、天井に手を触れ、少し叩いたその時、
「……くっ!」
祐介が突然よろめき、首を抑えて椅子から倒れ落ちた。あいにく、頭から落ちることなく、背中から落ちた瞬間、体を回転させて衝撃を吸収するような落ち方をした。
「触るなってことか」
友也が祐介の背中をさすりながら言った。祐介は息を切らして辛そうだ。首に真っ赤な痕がはっきり残っている。
「……また……あの……電撃だ……」
ほとんど声が出ていなかった。
彩香たちの脱出の希望は、無残に消え去ってしまった。


脱出の希望が途絶えて数時間が経ち、もう二度と聞きたくない音が鳴った。

ゴーン、ゴーン、ゴーン

この音に誰もが息を呑んだ。
「やっぱり始まっちまうのかよ」

『ハ~イ、始マリマシタ第2弾』
『デハ前回ト同ジヨウニ2人ヲ指名シテ下サ~イ』

彩香は不安だった。自分たち5人の作戦はかなり有効だ。だがもしもの事があると考えてしまうだけで平常心を保つ事が出来なかった。
「じゃあ私たちは1番数の大きい友也でいくよ」
今日の昼、結衣の部屋で話したことを思い出す。5人の中から選ばれた友也はハートのAを持っている。このカードに勝つカードは2のみ。負ける確率が限りなく低い。
「なぁ、みんな誰を指すんだよ」
翔太が小声で言う。
「まだ言えない」
美咲が冷たく答える。
「しっかり考えて投票してよね。あんたのせいで花江が死んだんだから」
「はあ?」
楓の発言に美咲が怒りを表した。
「あんただって花江のこと……」
「うるせぇーな! おい!」
和也が吠えた。美咲の舌打ちの音が微かに聞こえた。
全員が音も立てず、椅子に座ったまま静止している。まるで、時が止まっているようだった。だが、考えている様な素振りは見られなかった。
「そろそろ投票しないとな」
誠が椅子に座りなおす。
少しの沈黙の後、健が全員に聞いた。
「もう、みんな決めたよな?」
何人かが頷いた。
「全員もう決めたな。せーの!」
健が言った直後に、全員が腕を上げ投票した。

『2名ガ指名サレマシタ~』

彩香たち5人は作戦通り友也に2票、楓に3票入れた。この作戦は思いのほかうまく事が進み、友也が4票、楓に6票、彩香と詩織に1票とずつとなった。今回は綺麗に分かれた。

『今回指名サレタノハ友也サン、楓サンデ~ス』

今回の勝負は友也の勝ちのはずだ。なのに楓の顔には恐れが無かった。
「彩香?どうしたの?顔色が悪いよ」
この場所に来てから最悪の事態を考えてしまうことが多くなった。

『前回ト同ジヨウニ2人ハ円ノ中心二集マッテ下サ~イ』

二人はゆっくりとした足取りで中心へと向かう。両者の手にはカード。友也の手には強力なAのカードが握られている。全員の視線が円の中心に集まったその時

『ソレデハカードヲ全員二見セテ下サ~イ』

「私はエース」
楓が言った。彩香は耳を疑った。急いで立ち上がり、楓のカードを奪い取って見る。他もつられて立ち上がる。楓の持っていたカードはクローバーのAだった。
「……同点だ」
友也が呟きながらカードを表にする。勝利を確信した楓の顔が一瞬にして凍りついた。
同点は両者とも消去……
「……嘘でしょ? 同点って……」
楓の言葉を遮るようにして、二人の体が飛び上がった。近くにいた彩香もその轟音と熱風に尻餅をついた。全て同じだった。花江の時のように。
「……そんな……」
詩織の視線の先にいる二人は目が最大に見開かれ、激しい痙攣を抑えられずにいた。
「い、いやああああ!!」
詩織が叫んでホールを飛び出て行った。続くように翔太も走って行った。
彩香は出て行く二人の背中を見つめていた。
部屋に残った人は倒れた二人に目を向けず、帰る者、立ち尽くす者それぞれが部屋に戻り悪夢にうなされて過ごした。

彩香は一人、部屋に戻り、ベッドの上に倒れこむ。
「こんなの全部嘘だよね……? これはただの悪い夢なんだよね……?」
彩香の心は限界だった。誰にも頼れずこの最悪のゲームに耐えるしかなかった。
まだ、生きているのは10人。この中から5人は死んでしまう。このゲームが始まるまで、死についてこんなにも考えたことはなかった。その死の恐怖が目の前に迫って離れようとしない。
「……う、うあぁぁぁっ」
その夜、彩香はこのゲームが始まってから初めて涙をこぼした。

2日目END

死亡者3名  生存者10名
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